「臼井健士」さんのページ

総レビュー数: 439レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年06月18日

「ハガレン」を完結させた著者による新作は農業学校を舞台にした一風変わった作品。
優等生が家庭を離れて何の夢も無く農業高校に進学し寮生活に。
周りは研究者志望の人間や獣医師志望やら農家の跡取りやら。
「場違い感」丸出しで居心地は良くなかった。しかも、慣れない実習生活に心身ともに疲労困憊。
けれど個性的な仲間たちと共に送る生活は自身の新たな可能性を目覚めさせるのか?

農業学校と言っても「農作業」よりむしろ「畜産寄り」の話という印象です。
牛・馬・豚という「食われる側」の悲哀を浮き彫りにする。
「動物のお医者さん」をもっと現代的にしてシリアスな味付けにしたようなイメージ?
週刊誌連載なのでそれなりの巻数にはなるのではないかと思いつつも、ドラマは少なさそうです。

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[投稿:2011-12-17 01:36:41] [修正:2011-12-17 01:36:41] [このレビューのURL]

漫画を楽しむ人間の多くは手塚先生の影響の延長上にあるといえると私は思う。
例え一度たりとも手塚作品に触れたこともない読者がいたとしても、他の作品のほぼ全てが
「手塚作品の影響下にある」からだ。
もっと言えば今日の日本の漫画の隆盛も「手塚治虫抜きでは語ること出来まい」。
だから現在連載中の漫画作品のほぼ全てが「手塚作品の落とし子である」とは言えまいか。

そんな漫画の神様も自身が起こしたアニメ制作会社の経営が破綻したときにはスランプに陥り、長い冬の時代だった。
手塚ももう終わり・・・・そんな声が囁かれていたという。だが、神様は復活する。
自らも医師免許を取得している神様は「ブラック・ジャック」で無免許医師を主人公にして大ヒットを飛ばした。
そんな手塚に連載誌の担当者は〆切を守らせるために夜を徹して張り付いていた。
売れっ子になった手塚は8本の連載を同時に抱える多忙。

しかし手塚の〆切はなかなか守られず、出版社では「手塚番」という専属担当がいたほど。
無茶苦茶なスケジュールに無茶苦茶な仕事量とくれば、連日の徹夜作業が常。
手塚先生は「面白くない」と判断されれば、全ページを全く違う話に描き直すような編集者泣かせの漫画家だった。
この過労が結局のところ先生の寿命を縮めることになったのかもしれない。
本当なら80?90歳まで生きられていたはずが、60歳で胃がんのため死去する。

そして、漫画以外にも「アニメーションに対する情熱」は生涯冷めなかったらしい。
晩年まで新作を世に送り出したいと望み、奔走した。
だが、いざ出来上がってきた作品は「リテイク(撮りなおし)の連発」で、スタッフを泣かせたそうだ。
クリエイターとして「読者や視聴者を楽しませること」に対して妥協が出来ない人だったんですね。

多くの人間に影響を与えた手塚氏は新人や自分よりも人気のある漫画や漫画家に対する嫉妬心・敵愾心も凄かったそうである。
「人間臭い神様」。でも、そんな先生を悪く言われたことのある多くの人も尊敬し、慕っていた。
「ゲゲゲの鬼太郎」で知られる水木先生よりも年下なんですよね。水木先生は現在もご存命だから、手塚先生も今尚生きて作品を生み出されていた可能性だってあったんです。
でも確実なこと。60年の生涯で世界中の人々に夢や希望を与え続けた。いや、その死後から現在に至るまで変わらずだ。
並の人間が100年掛かったとしても到底出来ないことを成し遂げた先生の生涯は・・・・傍から見たら「素晴らしい成果」なんですが・・・・
ご本人は「まだまだやりたいことがたくさんあった」になることは間違いないという総論になりますね。

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[投稿:2011-12-17 01:35:36] [修正:2011-12-17 01:35:36] [このレビューのURL]

この世の境目に生きるものたち「妖怪」を見ることのできる少年が、それ故に受ける受難の日々を描く・・・・・・。

こう書くと、今市子先生が描かれている「百鬼夜行抄」と似た印象だが、実際に読んでみると両作品は「非常に近いジャンル・雰囲気・キャラ立て」であることが判る。

ただ、百鬼夜行抄の主人公・律が特殊能力など持たず(妖怪が普通に見えてしまうという点が夏目と同じくらい)、「基本的には起きる事件の主体ではない」のに対して、この作品は主人公が祖母から妖怪を操り統べる「友人帳」というアイテムを受け継いでいるという点が大きな違い。
よって夏目のほうは毎回の事件に律と比して主体になれる分だけ「積極的な関わり」をしている印象。

用心棒の妖怪が周囲にいたり、親族が主人公が妖怪が見えることのルーツにもなっていたりと、両作品の共通点は多いです。

ただ、読み切りとしての扱いで掲載されたお話が多いので、
「毎回毎回、夏目が妖怪が見えたため周囲の人間から疎外されてきた過去」
を冒頭に「前フリ」のように入れるのは「続けて読んでない新規読者への配慮」とは理解しつつも、こうしてコミックスとして発売された後にまとめ読みしてみると、続けて読んでいる人には
「ややうっとおしい」印象がしてしまいます。

それと上記はあまりにも「夏目の孤独」だけを強調してしまうという結果も招いてしまっています。

百鬼夜行抄の律もロクに友人もいないなどしているのですが、この作品ほど「孤独感を強調されている」というわけでもありません。
両主人公の性格的な違いもありますが・・・・とりあえず上記2作品を「読み比べてみれば」私の言いたいことが分ると思われます。

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[投稿:2011-12-04 20:02:04] [修正:2011-12-04 20:02:04] [このレビューのURL]

近頃、ちょこちょこと本屋の書評で見掛けるようになった「野球漫画」。
だが、主人公は26歳の左投手。高校でドラフト入団も指名は最下位。契約金は僅かに1,500万円だった。
8年経って1軍に中継ぎ投手として定着するも年俸は僅かに1,800万円。
一流どころは1億円がザラの華やかな世界に身置きながらも本人曰く「全然ダメ」な状態。

プロ野球選手は現役時代が「花」。現役時代にいくら稼げるのか?
現役を引退したら翌年は年収が100万円台になったなんて話はいくらでもあった。

これはヒーローが華々しく活躍する野球漫画に非ず。
2流半の男がどうやってプロが鎬を削る厳しい世界で金を稼ぐかに特化した「裏舞台野球漫画」である。
「グランドには銭が埋まっとる」は故・鶴岡一人監督の名言だそうだ。
どの世界でも生き残りは厳しく「ばら色の人生など、何処にもない」のだ。多分。

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[投稿:2011-12-01 23:03:32] [修正:2011-12-01 23:03:32] [このレビューのURL]