「臼井健士」さんのページ

ガンダムでまともに観たのはファーストだけなんですけれど、なんだかんだと言っても後々のロボットアニメに与えた影響は絶大。

その漫画版の中で「正統」なのがこれでしょう。
もっと早く描くべきだったとは思うのですが。
アニメを基本的にはベースとしながらも漫画版だけの独自シーンが多数追加されており、ファンならずとも見逃せませんね。

ストーリー的にはファーストは「シャアの復讐劇」に尽きると思う。
父「ダイクン」を政敵・ザビ家に殺され迫害されたカリスマの忘れ形見。
従順という名の仮面に隠された素顔はザビ一族の謀殺を目論む策士・・・・・・。
しかも決して「己の策に溺れぬ慎重さと狡猾さとを併せ持つ。」

戦場を駆け抜ける「赤い彗星」にある者は畏怖し、ある者は憧れにも似た念を抱き、またある者は彼の神話を形成するための生け贄となった。

亡き母の面影を持つ女性・ララァと出会いながらも、奇しくも彼と同じ感情をララァに寄せるライヴァル・アムロとの戦いの末に彼女はシャアを庇って戦場に散った。

ライヴァル・アムロとの決着も妹・セイラの仲裁により付ける事は叶わず、最早シャアに残されたのはザビ家の血統を絶つことだけだった。

戦艦・ザンジバルと共に敗戦が濃厚な要塞を脱出しようとする「ザビ家の死に損ない」に世話になったことの敬礼と共に引導を渡す。

「ガルマ、姉上と一緒に天国で仲良く暮らすといい!」

かつて自分が謀殺した「死の直前まで自分を信じ切っていたお坊ちゃん」に対するせめてもの彼なりの「侘び」のつもりだったのか?

アムロ以上に作品を牽引したのは「敵にしても味方にしてもその心を窺い知る事が出来ない赤い彗星の孤独」にあったのだ。

カリスマは死なず。後の世にても騒乱の引き鉄となる。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-12-05 10:08:36] [修正:2010-12-05 10:09:25]