「臼井健士」さんのページ

5点 輝夜姫

「少女マンガ」という枠を超えた非常にスケールの大きなSF大作・・・になるはずだった無念の作品。

幼い頃、竹薮に埋められていたところを救出され息を吹き返した少女・晶。
長じてその美貌は周囲の注目(特に同級生女子の)を集めるようになっていた・・・。
捨て子だった彼女が引き取られた養子先で、義理の母親の実子である少女・まゆは彼女に異常なまでの執着心を燃やしていた。
そんな彼女の家にある日二人組みの少年が忍び込んだことを発端として判明する自身の出生の秘密。
そこには「かぐや姫伝説」にまつわる世界規模の陰謀が隠されていたのだが・・・・・・。

この作品最初から晶とまゆの関係に象徴されるような「少女同士の愛情」を強調された作風だった。
作者自身も5巻で「ボーイズラブが流行っている世間の風潮に対抗して描いた」とコメントしていた。

それなのに中盤から「サットンとミラーの男同士のボーイズラブ」がやたらと強調されるようになったのは
納得がいかない。作者が自分で言っていたことを自分自身で覆すとは!

しかも晶の相手役と思われた「由」とは結局のところ結ばれず、かと言ってまゆと結ばれるわけでもなく、
何と当初は本命でも何でもなかった「ミラー」と結ばれるという展開が訳分からない。

クローン人間・遺伝子・ウイルスなどの最先端の技術を反映した展開の数々は確かに
「少女マンガの枠組み」を大きく超えた男性でも楽しめそうな作品ではあったのだ。
絵も「画集」が発売されるくらいに美麗。

が、謎が結局のところ未解決のまま「放置状態」になってしまい終幕するなど、
広げた風呂敷を上手く畳み切れていない部分が多々見受けられます。

全27巻にも及ぶ長編となりながら、最終的には手放しで「名作!」と呼べるような作品には全然なっておりません。
作家としての実力のある方だとは分かっています。
が、この作品に限っては「大風呂敷を広げすぎて収集が付かなくなった」と言わざろう得ない。
スゲー残念です。

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[投稿:2010-07-25 08:08:58] [修正:2010-07-25 08:08:58]