「臼井健士」さんのページ

総レビュー数: 439レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年06月18日

「映画版」が触り程度でしかなかったということを教えてくれる、映画よりも遥かに重いテーマを孕んだ「ナウシカの漫画版」。
恐るべきまでの「世界観」の構築に驚嘆の声が止まる事を知らぬだろう。
「ユーラシア大陸」で全ての事件が展開されていたことを初めて知った!

「ナウシカ」を知る人間は大きく分けて3タイプに分かれると思う。

すなわち、
・「映画版」しか観ていない。
・「漫画」しか観ていない。
・「映画」も「漫画」も観ている。

最も多いのが「映画のみ」で、最も少ないのが「漫画のみ」であろうことは容易に想像が付く。
アニメ映画の世界観が「やや分かりにくい」なとど思っていたが、漫画の複雑さと比較すれば映画は「全くもって一般向き」「間口の広い」作品であることが理解できた。

アニメと漫画の大きな違いは、
ナウシカとクシャナ・クロトアとの関係だろう。

アニメではトルメキア軍がナウシカの父を殺害してしまったことになっている(漫画では「病死」)ので、ナウシカが彼らに憎しみにも似た感情を抱いてしまい、本心からの相互理解が不可能な状況に追い込まれてしまったが、漫画では物語の大半で行動を共にするため特にクシャナ・クロトア側からの「ナウシカへの歩み寄り」が顕著。
両者共にナウシカから受ける影響で当初の「侵略者的な行動」は薄まり、苦難を共に乗り切る過程で「戦友」にも似た感情が生まれていくこととなる。

「腐海」「瘴気」「蟲」「王蟲(オーム)」「巨神兵」はナウシカの世界観を象徴する5大キーワードだと思う。

「滅亡」と「再生」。
「生」と「死」。
「光」と「闇」。
「進化」と「退廃」。

繰り返して示される背反する「2つの言葉の数々」が、浮かび挙げる「人間の業」。
そしてそれら全てを飲み込む形で存在する世界「地球」が、下す「審判の行方」。
「神によって与えられる未来」ではなく、「自らの手によって選び取る未来」を選んだナウシカたちの行く手に広がるのは「殺戮の荒野」か?それとも「豊穣なる恵の大地」か?
「審判」は未だ下されぬのだ。

とにかく1巻・1巻のボリュームが有り過ぎ。
並みの単行本の倍の時間が読み終えるのに掛かる。
不満は「恋愛的な要素」は全くというほど無かったことか。
アスベルともほとんど「別行動」となるのと、事態が急展開するため「それどころではなく」、ロミオとジュリエットにすらならない。
ま、作品の「本来のテーマ」とは外れた部分なので、枝葉のことではあるが。
最強剣士「ユパ」の死も意外だった。しかも部族同士の諍いの巻き沿いだしなあ・・・惜しい人物を失ってしまった・・・。

「漫画版」を読んだ後では「アニメ版」は「ナウシカアイドル化」のための「プロモーション作品」か?という邪推さえ浮かんでしまう問題作。

衝撃に全身を貫かれた証拠として「10点」評を献上させていただきます。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-06-20 11:05:16] [修正:2010-06-20 11:05:16] [このレビューのURL]

原作は未読です。その立場から書かせていただきます。

仮想戦記として良く出来てると思います。
「皇国」は間違いなく「日本」(それも明治?大正期の)をモデルにした勢力。
そして帝国はその「日本」を脅かす「外国勢力」・・という位置づけなんでしょうが、地図上の位置関係とか、軍装なんかから見るにやはり「ロシア」をモデルにしたと見て間違いなさそうです。

その強大な勢力と版図を持つ帝国が突如として皇国の北方領土に進軍してくる。
かくて始まる「防衛戦」は 結局のところ多勢に無勢の撤退であり、主人公のいる部隊が撤退戦において最も難しいであろう「殿(しんがり)役」を命ぜられることになる。

上官は激戦において戦死し、指揮官がいなくなった軍隊を率いるのは下士官ながらも指揮官としては優秀な主人公・・・・と「活躍のためのお膳立て」は整った。
零下の静寂に包まれる白一色の雪と氷の世界。
それを打ち破る「怒号」と「悲鳴」。「血」と「泥」と「涙」は戦争の情け容赦のなさを際立たせる。

「竜」や「術」などの多少のファンタジー的な要素も物語を構成する上では程よい「隠し味」。
必死の防衛戦が功を奏して、友軍の撤退は完了。目的を果たした主人公の率いる部隊は降伏し、捕虜の立場となる。さて、原作知らぬ身としてはここからどう場面が転換していくのかが気になるところ。

「陣形」や「作戦」「戦術」などがしっかりと図にして表示されるのも理解が早くなり好感触。
今後もしっかりと付き合っていきたいと思わせる作品だったが、何と5巻で打ち切り終了してしまう。こんな良作が何故・・と思うが、原作者と作画が別だと権利関係とかで揉めるケースもあり、難しいのかも。
「キャンディ・キャンディ」の例もあるし。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-06-27 11:21:04] [修正:2022-05-13 22:59:04] [このレビューのURL]

浦沢先生の「MOSTER」に次ぐ作品。近年に実写映画化もされた。
60年代を過ごした子供たちが大人になり現実の壁にぶつかり苦しんでいた90年代。
幼い頃の空想の世界の滅亡と立ち向かう仲間たち。

が、その空想の世界を滅ぼそうとする悪の首謀者は「自分たちの仲間の中から出てきた」
集団となり組織化された宗教集団は政界・財界をも巻き込み日本政府の中枢にまで食い込む。

主人公を中心としたかつての秘密基地の仲間たちは冴えない大人の日常を捨てて結集する。
だが、敵の策略によりメンバーは極悪人のレッテルを張られて四散。
近未来は世界を滅亡させようとした男が「人類の救世主」として祭り上げられる偽りの世界が構築される。

子供の頃は様々な夢を描きながらも、大人になったとき現実の壁の前に飲み込まれ、どうしようもなく日々を重ねていたかつての少年・少女たちが
「自分たちの播いた種」を刈り取らねばならなくなる。

そのとき彼等は多くの犠牲を払いながらも人類の滅亡を救う真の救世主として生まれ変わることになるのだ・・・・・・。

だが・・・・そうなった後に彼等は本当にこの結末を望んだだろうかと考える。
「否」。
自分たちが歴史の教科書に勇者として記されるよりも、たとえ冴えないサラリーマン生活であったとしても、平和で穏やかな日常を選んでいたことだろう。

夢を描いていた少年時代から大人になったとき、後悔の連なりかもしれない。
だが、それでも彼等の戦いの軌跡を目にすることで人類は再出発のラインに着いた。

終盤のグダグダと「後付けしたかのような」ともだちの正体が残念なのだが、引き込む力は流石だ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-07-25 08:18:48] [修正:2021-07-18 22:58:07] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

日本では馴染みの薄い「フス戦争」を題材にした物語が遂に完結しました。
シャールカたちの戦争継続反対の声も掻き消され、遂に最後の戦いに赴く面々ですが形勢不利は明らか。
事前に降伏を勧められても拒否し、滅亡への道を進み続ける。
シャールカもそんな仲間たちに殉じて共に戦い玉砕しようとしますが・・・・・。

長きに渡ったフス戦争も集結し、新しい流れが起きます。
但し、それは「和平への道」ではなく、新しい勢力による新たな争いの道と言った方が正しいでしょう。
シャールカと共に長きに渡って戦ってきた仲間たちも命を落とし、生存できた人間は片手で数えるほどしかいません。
結局、「ヤン・ジェシカ」が掲げていた大義は実現できなかったのでしょうか?
九死に一生を得て戦場を脱出したシャールカはヨハンの元に残してきた愛娘・クラーラと十数年ぶりに再会を果たし、物語の幕は引かれます。
思えば物語の開始早々に家族を皆殺しにされ、強姦され、悲しみの淵に沈む暇さえなく戦いに身を投じねばならなかった少女・シャールカ。
多くの悲劇を乗り越え経験した果てにようやく離れ離れだった娘と再会できるのはせめてもの慰めでしょう。
そもそも漫画作品で主人公が妊娠・出産を経験する作品は一部のレディース向け作品を除いて「まず有り得ない」ことであり、大河ドラマのラストシーンとしても極めて異色である本作です。
娘・クラーラは少女時代のシャールカによく似た美しい少女に成長しました。
父親のヨハンの伝手でクラーラが貴族と結婚出来れば、シャールカが孫をその手に抱くことも叶いそうです。
最終巻の年齢はシャールカ30歳、ヨハン31歳、クラーラ15歳。
当時は平均寿命が短く、20歳まで生きた人でも45歳くらいが平均寿命になります。
シャールカもこれからは壮年を経て晩年に至るのでしょうが、家族と共にどうか平穏な後半生を送って欲しい、
そんなことを願わずにはいられない物語の帰結でありました。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2019-06-12 17:05:14] [修正:2019-06-12 17:05:14] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

いきなり結婚から始まる夫婦コメディをサンデーでやる意欲作(?)
事故の真っただ中で出会った女の子にいきなりプロポーズして再会後に本当に結婚した。
夫婦生活は同居するが肉体関係には至りませんので、男の子の暴走で話を進めるのと嫁さんに謎が。
「婚姻届け」という形式的には結ばれても夫婦的にはまだ結ばれていない。
男の子の側からすれば正々堂々女の子を求めてもいいはずだが、結婚がいきなり過ぎて進めない。
赤ちゃんはまだ持てるような状況では全然ないので、とりあえず・・・避妊具を購入して悶々としておきましょう、主人公・・・・・。
但し、男の子の側が求めれば奥さんは身体許してくれそうな感じはする。
結婚する以上、それは覚悟していることだろうし。
現在は同衾したり、胸揉ませてもらったりしているような段階。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2019-05-08 11:01:31] [修正:2019-05-08 11:01:31] [このレビューのURL]

主人公はゲームオタクの男子高校生。
しかし熱中するゲームジャンルは「恋愛シュミレーション系」のみ。
格ゲーやRPGはやらない!ある意味、非常に男らしい性格(笑)。

で、そんな彼が地獄からやってきた見習悪魔の「エルシィ」の駆け魂という悪人の魂を捕獲するための協力者にさせられたことから始まるトンデモストーリーです。

駆け魂は女性の心にのみ憑依して、いずれはその女の子の子供として現世に転生しようとする。それ故に、憑依した女子の心の内側を暴き出す必要があり、抱えている悩み・願望・欲望などを吐き出させるための触媒として主人公の存在がクローズアップされたというわけ。

バーチャル女子の攻略はプロでも、リアル女子の攻略なんてしたことがない・・・と断ろうにも自分の命を人質にとられて、強制的に事件に介入させられていく悲惨。

見習悪魔のエルシィは主人公の腹違いの妹として自宅に同居することになり、最早逃げ道は塞がれた。さて・・・今後はどうなるのか?

この手の漫画にしては珍しく「女の子の裸」を出さず、毎回のヒロインの抱えている心の闇をクローズアップさせて読ませるという姿勢には好感が持てます。
画は当然に可愛らしい!でも「非エロ」というのは明らかに異色!

ただ・・・これだと「長期連載」するには設定がやや弱いのではないかな?と心配になるのですが。その辺、今後に明かされる裏設定でどこまで長期連載に出来るかが勝負の分かれ目かと思います。

コミックスの売り上げは良いようですね。打ち切りは勘弁な方向でお願いします。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-12-11 18:05:19] [修正:2013-08-18 20:19:01] [このレビューのURL]

「秒速5センチメートル」の漫画版です。
通常は小説原作→漫画化→映画化というメディア展開になるのが王道。
しかし、この作品は最初にアニメ映画があり、その後に小説化して最後に漫画化したという逆パターンを辿っています。

内容はアニメ版をベースに小説版の補完部分を融合して、漫画版のオリジナルシーンを若干ながら(あくまでも少し)追加して再構成したという感じです。
アニメが美麗だっただけに余計に作者の絵が荒削りな印象がしてしまいます。
第1章「桜花抄」と第2章「コスモナウト」の前半までが第1巻になります。

巻末の明里の気持ちを描いたショート・ストーリーにも注目!
明里も離れてもちゃんと貴樹を想っていたのですよ。
但し、アニメと小説見ている方には新鮮さには乏しいと思います。
漫画版ならではの独自解釈や展開して欲しかったのが本心。
画力でアニメ版に大きく劣るので、尚更そういう印象が強い。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-12-03 12:00:52] [修正:2013-08-15 14:22:22] [このレビューのURL]

女の子が女の子に恋する所謂「百合系」の漫画。

ただ、舞台が他作品なら「女子高」が当たり前のところを「共学校」を持ってきたり、
どちらかというとコメディ要素が強い作風などが異色な作品。

自宅が空手道場で、お兄さんが3人いて、勉強が出来て、スポーツも出来る村雨純夏さん。
その親友は可愛い女の子が好きですと公言して憚らない風間汐さん。
親友が好きで、その親友が「同性愛者」だと知っていても、
「自分は彼女の眼中にはない」と知ってしまっている辛さ。
彼女に自分の気持ちを知ってもらいたいと思う反面、
知られたら友達ですらいられなくなってしまうかも・・・・と思う度に、
硬直してしまう心。

風間さんは自分を一番の親友と信じて、無邪気に気持ちを吐露してくれるが、
その度に辛くなる。
「なんとか彼女の好みのタイプになれないだろうか?」
好き故に女の子同士であっても「危ない妄想」をしてしまうのは恋に対する不器用さの表れであり、その辺は普通の男女の恋愛と全く変わらない。

女の子同士の恋をテーマにした作品は、ここ最近は特に増えているように思う。
それはやはり男子同士に比して「絵的に美しい」ことも大きな理由ではあるだろう。
逆に「美しい絵」が描けることも作品として成功するための大きな理由だと思う。

両想いになれたとしたって結婚できるわけじゃない。
身体の関係を結ぶことは出来るかもしれないが、背徳感が伴う。
そもそもがそんな道である。負けを覚悟して物語を紡がねばならぬ。
アニメ化して良かった!
などと、素直に喜んでもいられない作品であります。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-09-11 18:15:05] [修正:2012-08-10 08:14:13] [このレビューのURL]

38巻にも及んだ「ネギま!」も最終巻を迎え、グランドフィナーレかと思いきや、何かおかしい。
最終話は巻頭カラーも飾れず、かつての盛り上がりは「最早何処へ?」状態。

しかも、謎ばかりが残って「張っていた物語の伏線」の多くは未解決のまま。

原作の未回収の謎をザッと挙げると

・造物主との戦い
・ネギの本命と結婚相手
・ネギの故郷の石化した人達の蘇生
・あの雪の日のナギの行動と発言
・アリカ姫のその後
・明日菜のオッドアイ
・ネギが復讐の為に習得した高位の魔物を完全に消滅させる超高等呪文
・ゼクトの詳細とその後
・ザジとポヨちゃんの詳細
・龍宮の過去
・超の変えたかった出来事
・本契約の詳細
・エヴァンジェリンの登校地獄解除
・さよが地縛霊になった理由と幻灯のサーカス受けて見た夢の中のリーゼント
・美空とココネの関係
・タカミチの生まれつき呪文詠唱ができない理由
・いいんちょのアーティファクトの真価
・ヘルマンさん再見
・のどかのフェイトへの美味しいコーヒー屋さん紹介
・夕映のアリアドネー留学
・偉大なる魔法使いを目指した小太郎のその後
・明らかに魔法の事を知っているしずな先生の素性
・亜子の傷の原因
・フェイトと桜子の恋愛フラグ
・月詠のその後
・桜子の謎の幸運
・白い羽を持った故に苦労したらしい刹那の幼少時代

大風呂敷を広げ過ぎて収集が付かなくなったか?
作者は以前に作品のかなり細部まで詰めているようなことをコメントしていたが、これがその結果か?
31人ものヒロインの大半は使い捨てとなり、魔法世界編に来てから人気はピークを過ぎて下降線。
「このラストシーン」が連載当初から予定されていたというのは「おかしい」。

わざわざ伏線を無数に張っておいて、投げ出す理由が不明。
38巻にも渡って付き合わせてこの結果。
ファンほどに普通に激怒していいレベルだと思います。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-06-17 21:55:43] [修正:2012-06-17 21:55:43] [このレビューのURL]

「ボンボン」連載作品中、唯一の名作。って言うかこれ以外は全然記憶に残っていない。
当時のガンダムとプラモブームに上手く乗ってヒットしたという印象だが、自分で作ったプラモを操って仮想現実の世界で戦うという設定は現在でも魅力的な設定だ。

それにしてもプラモシュミレーションは現在でも実現は不可能だろう。
それを考えると作中で「町の一プラモ屋のオヤジさん」が開発したって・・・・凄すぎだよ(笑)。
そっちの技術力で儲けたほうがいいんじゃ・・。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-01-20 21:20:22] [修正:2012-01-20 21:20:22] [このレビューのURL]