「臼井健士」さんのページ

総レビュー数: 439レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年06月18日

漫画を楽しむ人間の多くは手塚先生の影響の延長上にあるといえると私は思う。
例え一度たりとも手塚作品に触れたこともない読者がいたとしても、他の作品のほぼ全てが
「手塚作品の影響下にある」からだ。
もっと言えば今日の日本の漫画の隆盛も「手塚治虫抜きでは語ること出来まい」。
だから現在連載中の漫画作品のほぼ全てが「手塚作品の落とし子である」とは言えまいか。

そんな漫画の神様も自身が起こしたアニメ制作会社の経営が破綻したときにはスランプに陥り、長い冬の時代だった。
手塚ももう終わり・・・・そんな声が囁かれていたという。だが、神様は復活する。
自らも医師免許を取得している神様は「ブラック・ジャック」で無免許医師を主人公にして大ヒットを飛ばした。
そんな手塚に連載誌の担当者は〆切を守らせるために夜を徹して張り付いていた。
売れっ子になった手塚は8本の連載を同時に抱える多忙。

しかし手塚の〆切はなかなか守られず、出版社では「手塚番」という専属担当がいたほど。
無茶苦茶なスケジュールに無茶苦茶な仕事量とくれば、連日の徹夜作業が常。
手塚先生は「面白くない」と判断されれば、全ページを全く違う話に描き直すような編集者泣かせの漫画家だった。
この過労が結局のところ先生の寿命を縮めることになったのかもしれない。
本当なら80?90歳まで生きられていたはずが、60歳で胃がんのため死去する。

そして、漫画以外にも「アニメーションに対する情熱」は生涯冷めなかったらしい。
晩年まで新作を世に送り出したいと望み、奔走した。
だが、いざ出来上がってきた作品は「リテイク(撮りなおし)の連発」で、スタッフを泣かせたそうだ。
クリエイターとして「読者や視聴者を楽しませること」に対して妥協が出来ない人だったんですね。

多くの人間に影響を与えた手塚氏は新人や自分よりも人気のある漫画や漫画家に対する嫉妬心・敵愾心も凄かったそうである。
「人間臭い神様」。でも、そんな先生を悪く言われたことのある多くの人も尊敬し、慕っていた。
「ゲゲゲの鬼太郎」で知られる水木先生よりも年下なんですよね。水木先生は現在もご存命だから、手塚先生も今尚生きて作品を生み出されていた可能性だってあったんです。
でも確実なこと。60年の生涯で世界中の人々に夢や希望を与え続けた。いや、その死後から現在に至るまで変わらずだ。
並の人間が100年掛かったとしても到底出来ないことを成し遂げた先生の生涯は・・・・傍から見たら「素晴らしい成果」なんですが・・・・
ご本人は「まだまだやりたいことがたくさんあった」になることは間違いないという総論になりますね。

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[投稿:2011-12-17 01:35:36] [修正:2011-12-17 01:35:36] [このレビューのURL]

ドラクエの世界観を上手く漫画化に成功させたと言って良いのではないでしょうか。
ただ、やっぱり子供向けの印象は免れられないな・・・・。

敵側は次々とやられていくのに味方側の死者は実質パランだけってのも都合が良すぎる気が。アバンもヒュンケルもクロコダインも次々と復活したし。後、チウの実力も無いくせに勘違いした振る舞いの数々は見ていて頭にくる。唯一、嫌いなキャラ。
同じドラクエ漫画の藤原カムイ先生の「ロトの紋章」と比較されることが多いようですが、自分は内容的にはほぼ互角。構成力・画力で若干カムイ先生のロトの紋章に軍配が上がるかなと思います。

ポップの最強呪文「メドーローア」ですが、せっかく習得したのに見せ場がほとんど無かったのは残念。
実質、メドローアで倒したのは親衛隊のシグマだけだし。ま、キルバーンのトラップを脱出するのには役立ちましたが、「ドルオーラ」と並ぶ最強呪文がそれじゃちょっと・・・・(笑)

コミックスの呪文紹介にもありましたが、やはり「決まればいかなる敵であろうとも消し飛ばせる」というのは使いどころを難しくしただけだったのでは。相手が強敵であればあるほど一撃で勝ってしまっては困るわけですし。元々「対親衛隊」を想定して身につけた呪文だったからそれでも「結果的には」良かったのかもしれませんが。

最後に疑問をひとつ。バランが滅ぼしたリンガイア王国とフレイザードが滅ぼしたオーザム王国ですが、両国ともに国王の生死が不明のままのような気がするのですが、サミットのときの捜索中は登場の伏線ではなかった?

この作品、大魔王バーンは完全に滅ぼしたものの、冥竜王「ウェルザー」を登場させながらも、最終的に「そのまま放置」・・・という問題が残ってしまった。

ウェルザーは封印されているだけで、しかもその封印もいずれは解ける・・・となれば、明るい未来の完全勝利!・・・・で終わっていない。
まあ、ウェルザー復活までにはまだ数百年以上の年月が必要らしいので、レオナやマァムやポップは人間だから寿命によって生きている間に危機を迎えることは確かに無いのだが。(ダイも寿命的には人間とそんなに差は出まい。)子孫が困る!
「未来に確実に災厄が先送りされてしまった」ので、明るいラストシーンなのだが、前述の問題点を思い出して「ちょっと待てよ・・・」と勘のいい人間なら思う。

この点の解決法として続編の構想もあったようだが、結論からいって「やらなくて正解」。
コミックスにして数えて37巻も続けたのだから、これ以上の引き延ばしは、致命傷になるところだった。
だから前述の問題と、この点が「矛盾」してしまい、
「(ウェルザーの復活する)未来に『ダイ以上の勇者』が現れることを祈ろう!」
という、なんかなあ??っていう妥協点に落ち着いた。でも・・・これは仕方ないのかな・・・?

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[投稿:2010-07-03 09:14:46] [修正:2011-10-30 17:04:32] [このレビューのURL]

高校に入学した新入生男子5人が突然、女体化してしまう。
どうやら女体化は雨が降ると起きるらしい。しかし、学校生活をサボるわけにもいかない。
で、協力者である大人を巻き込んで、女体化時は「女子高生として隣の女子高に通学する」ことになった5人。
男子でありながら同時に女子として生活も送らなければならなくなる。

まず誰もが読んでみて「設定に穴があり過ぎ」な予感がするはずです。
何で雨が降ったら「女体化する」のかが不明。しかもこの5人だけが。
序盤はこの設定の穴ボコボコ状態が気になって、なかなかのめり込めないはずです。

しかし、3巻まで一気に読んでみなさい。
そうすれば見事に話に引き込まれているはず。

ポイントは5人が「男の子時」と「女の子時」は精神は一緒でも別人であるという
「一人二役」で二度おいしいという点です。それが複雑な人間関係を巻き起こし、
・男×女
・男×男
・女×女
の3パターン×5組以上楽しめてしまうわけ。そこが面白いのです。

ちょうど高橋留美子先生の「らんま1/2」の水を被ると女の子になってしまうという設定にヒントを得たと思われますね。
但し、こちらは「格闘」なしですから。あくまでも青春群像劇の体裁を取ります。
そこに前述の「女体化」設定が加わるため、ファンタジー臭が強すぎてリアリティには欠けます。
特に男子5人が純情過ぎだろうとか、何だかんだで馴染み過ぎているとかですね。

5人は男子のままなら絶対に知りえない「女の子の日常生活」を実体験することになる。
制服も靴も下着も女の子のもの。最初は抵抗あったけれど・・・・慣れてくると平気。
「女の子って大変なんだな・・・・・・」
それを理解してあげられる男の子は少ないだろう。
その経験が恋路の助けとなるか、はたまた足枷となるのかは謎だが。
ここまで読んで気になったら、3巻まで一気読み!
絵柄が男性でも読みやすいのは好感です。高校卒業までくらいはやっていただきたい。

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[投稿:2011-10-26 22:25:11] [修正:2011-10-26 22:25:11] [このレビューのURL]

森脇真末味作の漫画ではなくて、「性教育漫画」の女の子バージョンですね。

女の子が主役なので、やはり年相応に恋愛要素が重視されています。
しかし・・・この漫画に登場する「男の子」は憎たらしいですな。女の子をからかう場面なんか特に。
と、感じつつも「でもこういう男子」って何処にでもいたような・・・とも思うのです。
男の子は女の子よりも体格的な成長が遅いのでその分精神的な成長も遅くなる傾向にあるのでしょうか?
ま、勿論個人差はあるでしょうが「自身の未熟さ」に気付けないことはこのくらいの年齢の不幸ではないかと思います。逆にそれにこの年で気付けたなら、後々にかなり違ってくるとも感じます。
その辺りが「柴田」と「田島」との差なんでしょうね。

他の漫画(少女漫画は特に)はもっと「性」に関する問題も作中で取り上げていいと思います。おそらく現実では問題として表面に浮かび上がってくる頃であろうに、作中でその時期を舞台としながらも、それを取り上げる作品は少女漫画であっても少ない。ジャンルとしてもまだまだ未開拓の分野として今後ヒット作を出せるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?。

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[投稿:2010-12-20 23:07:28] [修正:2010-12-31 16:32:56] [このレビューのURL]

古都・鎌倉を舞台にして紡がれる家族・兄弟・仲間たちの物語。
3姉妹が家を出て浮気相手に走った父親の葬儀にて出会った腹違いの妹。
行き場を失くしていた少女を鎌倉の家に迎えることにして、4姉妹の同居が始まる。

・しっかり者の看護師である長女。
・男にすぐ騙されるチャランポランな次女。
・ゲテモノ喰いな三女(笑)。
・登場当初は大人しいと思わせつつ、サッカーを男の子たちと嗜む四女。

鎌倉という土地柄が醸し出す雰囲気を紙面上で再現するこの凄さ!
そこに暮らす人々が抱える様々な悩みを通して家族の有り様・姉妹の絆を映し出す。
江ノ電。寺社仏閣。花。息づく歴史。そして・・・・海。

住んでみたい街ランキングでも常に上位(関東圏)という鎌倉の魅力は正に
「鎌倉版・和風若草物語」の世界である。

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[投稿:2010-12-23 16:06:15] [修正:2010-12-23 16:06:15] [このレビューのURL]

それまでの「柔道漫画」に対する泥臭さや男臭さというイメージを塗り替えた「YAWARA!」と並び比すべき、正に柔道漫画の「NEWウェーブ」。

熱血・クール・チビ・デカ・色モノ(笑)というある意味、「戦隊もの」のキャラを主要メンバーに割り当てて展開される部活動の日々は、爽やかさを前面に押し出した青春ライフ。

ライバル・女子生徒・指導者等の魅力的な脇キャラの数も物凄いことになっており、作者の出世作といってよい。

気楽に部活動をしていた面々が全国大会にまで行くぐらいに急成長を遂げるのはちょっと無理があるところなのだが、全30巻一気に読めてしまうから不思議である。

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[投稿:2010-12-19 08:33:46] [修正:2010-12-19 08:33:46] [このレビューのURL]

「エマ」の森薫先生の新作。相変わらず群を抜いて絵が上手い。
今回も森先生の趣味全開で興味の対象がメイドからシルクロードの遊牧民にシフトしました。

12歳の夫に嫁いだ花嫁はなんと20歳の姉さん女房。
現代で言うならば「小学生の男の子」に「高校生の女の子」が嫁いだようなもの。
草原での暮らしは毎日が平穏・・・で賑やかで家族の関係が強い。
家族関係が希薄になったという日本人とはかけ離れた生活だ。
外の部族から嫁に入った彼女はまだ夫とは性関係は持っていない。

つまり「乙女の嫁」≒「乙嫁」でありました。
8歳の年齢差のある二人が日々の触れ合いから少しずつお互いを慈しむ心を育てていく軌跡。
まだ肉体的に結ばれるには早いけど・・・・・・。その分、心からゆっくりと近付いていくのです。

森先生の趣味≒仕事は正に「好きこそ、ものの上手なりけり」の諺通り(笑)。
エマは「結ばれる(結婚する)まで」。これは「結ばれて(結婚して)から」のお話。

愛はどちらからでも育めるのだと知れる1冊!勿論、「森先生の愛情」もてんこ盛り!

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[投稿:2010-12-18 12:50:02] [修正:2010-12-18 12:50:02] [このレビューのURL]

人気ゲーム「ドラゴンクエスト」の初作が誕生するまでの秘話。
ファミコン黎明期に初のRPG作品として発売されたドラクエは後のRPG作品に絶大な影響を与えた。

発売元のエニックスに「堀井ゆうじ」「中村光一」「すぎやまこういち」らの才能が結集され、多くの試行錯誤の末にシリーズ化される大ヒットに繋がっていくのだった。

伊豆大島への旅行がドラクエの世界観の構築に繋がったりだとか、
ゲーム音楽に作曲家のすぎやまこういち先生を起用するのは当初は反対意見が多かったとか、後半の展開が単調なので、完成間近の段階でモンスタープログラミングを全部組み直したとか、制作側の苦労が語られている。

「面白いゲームを世に送り出したい」という志がゲーム史上に大きな金字塔を打ち立てたのだと知れます。

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[投稿:2010-12-11 18:41:33] [修正:2010-12-11 18:41:33] [このレビューのURL]

8点 一平

警官・刑事漫画のヒューマンストーリーとしてはこれが頂点ではないかと思う。
ジャンプの某警察官漫画とは比較対象にすらならないシリアスな展開と完成度。
連載雑誌がメジャーでなかった関係からか現在は絶版か・・・・?
絵も巻を重ねるほどに上手くなっていったのだが、登場人物の顔が縦に長く伸びたのが唯一の不満点。
刑事になってからはヒューマンドラマにより一層の磨きがかかり、特に最初に一平が経験した殺人事件は印象的な話だった。
しかし・・・最後のマフィアとの国内での銃撃戦はちょっと無理のある展開だったか。

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[投稿:2010-12-05 17:17:25] [修正:2010-12-05 17:17:25] [このレビューのURL]

大正14年の日本。ドイツではヒトラーが徐々に台頭せんと気を窺っていた頃。

ちょうど日本では学生野球が始まっていた。
パーティの席上で女であることを馬鹿にされた小笠原晶子は、その相手と野球で勝負することを思い付き、女学校のクラスメイトたちに声を掛ける。
が、そもそも「野球」って何?という感じでメンバーはなかなか揃わなかった・・・。

女子野球という設定は珍しくて新鮮。
原作小説の漫画化ということで小説版の挿絵を描いている方とは別の方による作画。
見やすいのだが、所々「描きなれていないな」と感じさせる箇所もあり。

アニメでは巴や胡蝶は「左打者」として描かれていましたが、野球黎明期の大正時代はまだ左打者は少ない模様で、
漫画版では全員が「右打者」として描かれています。

そして、アニメ・原作に比して「圧倒的にギャグ・コメディの要素が強い」のが漫画版の特徴です。
これが何と言うか絶妙!とにかくアニメ・原作以上に各キャラの差別化・個性付けに貢献していて面白いのです。

「大正野球娘。」は原作をベースとしながらも、漫画版・アニメがそれぞれ「独自路線」を進んでいて、
同じ題材でありながらも、それぞれが独立した展開として楽しめるという点で他作品とは異なります。

いよいよ第5巻から本格的に男子チームとの死闘が繰り広げられる模様。
それにしても最初の試合までこんなに引っ張る野球漫画は珍しい。
付け加えて言うならば、主人公のポジションが投手でない漫画も異色です。

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[投稿:2010-12-04 23:42:58] [修正:2010-12-04 23:42:58] [このレビューのURL]