「臼井健士」さんのページ

総レビュー数: 439レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年06月18日

探偵漫画と言えばすぐにでも思い浮かぶのが「金田一」と「コナン」の二作品。
上記の二作品が探偵漫画というジャンルを確立して、一般の人々の間に広く認識させたという点においては確かに功績があったかもしれない。

だが・・・、ネットでの上記二作品の評価はお世辞にも芳しいとは言えない。何故か?。
殺人事件ばかりが毎回のように起こり、そこに子供であるはずの主人公たちが警察を差し置いて割り込んだ挙句の果てに「ゲーム感覚」で事件を解決していく・・・。しかも下手に人気が出たため、無駄に長期化して質を低下させる事態を招いているしね。これでいい評価を受けるはずがないでしょう。

それに比してこの漫画は事件自体は「地味」だ。1巻で主人公が語っているように、「浮気の調査」とか「失踪した人を探し出す」とか「ストーカー退治」とか。推理もある程度は必要なんだが、とにかく根気のいる作業の連続。間違っても主人公が「毎回のように偶然、殺人現場に居合わせて事件に巻き込まれる」などということはない。「コナン」「金田一」での不自然過ぎる展開に拒絶反応が出ていただけに、そういう作風には好感が持てます。

絵も上手い。女性は美しく華やかに描き、逆に男性キャラは個性的に・・・がポリシーなんだろうか?
主人公は「ゲゲゲの鬼太郎」に似ている。作者が水木先生のファンなのかは定かではないが。
コナンや金田一のような「大ヒット」は望めなくとも、悪評が集中することもないと思われるので、総合的に見たら作品としての質はこちらが上だと思います。

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[投稿:2010-12-03 12:02:56] [修正:2010-12-03 12:02:56] [このレビューのURL]

「ハイスクール」の原型と言える中学生編がこれです。

転校生・河川唯が個性的な友人を欲して鬱々とした日々を過ごす中で出会った変人集団「奇面組」と繰り広げられる爆笑な日常を描く。しかし・・・実はこの話自体が唯ちゃんの・・・・というのは「ハイスクール」を最後まで読んだ方のみが分かる秘密。

キャラの名前が全部「駄ジャレ」になっているという点からして面白い。「番組」「色男組」「腕組」「骨組」「御女組」などの名物集団は、どれも方向性が別々でキャラがしっかりと立っているのが特筆。リーダー以外の他メンバーの描き分けもしっかりとなされているし。

絵がまだまだ荒削りだが、ギャグ漫画に有りがちな「すぐ下ネタ」に走って笑いを取ろうとする・・・という姿勢が無いのは好印象。作家としてのレヴェルが高いのと、しっかりとした信念が感じ取れるのは、第1巻の零と唯の出会い時の「個性の尊重」という作品を通して貫かれているテーマからも明らかだ。
千絵ちゃんにお兄さんがいたはずなのに「ハイスクール」では一人っ子になってたり、「取組」「婦組」「ルッ組」などの前述の集団以外のチームが消えてしまうなど「中学生版限定」の描写も多く、整合性が取れていない点から「ああ、やっぱりギャグ漫画なんだ」と思ったり。


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[投稿:2010-11-27 20:39:26] [修正:2010-11-27 20:39:26] [このレビューのURL]

完全版で初めてキチンと最初から読んでいます。

何よりも桂先生による画のクオリティが激高!
漫画界でも「シティ・ハンター」の北条司先生、「ヒカルの碁」の小畑健先生と並んで最高レヴェルでしょう。間違いなく。

そんな桂先生だから、様は問題はストーリーとキャラのみになると思うのです。
主人公の一貴は所謂「普通の高校生」。優柔不断でそれなりにイヤラしくもあり、たまに妄想癖も見せるという平凡な男子。
そんな彼が片想いしているのがクラスメートで学年一の美少女の「伊織ちゃん」。

物語はほとんどこの2人の心が近付いたり、離れたり、勘違いしたり、喧嘩したりすることに絞られています。
なので時間の経過が驚くほど早い展開で、無駄なキャラも登場しないため2人の関係に最初から集中されたストーリーとなっています。
ただ一貴の「優柔不断」さと独りよがりの「勘違い」が多い点は見ててイライラしたことも事実ですが、本気で人を好きになったら「期待」と「不安」から自身を見失うような行動に出てしまうものかとも思いました。

桂先生はジャンプ連載陣の中でも珍しい存在だと思います。
20巻、30巻を超えるような「大ヒット」は1本も持っていないが、「ウイングマン」「電影少女」とこの作品と15巻前後続いた「中ヒット作品」を3本も持っていらっしゃる。他にはそんな方はいらっしゃらないのではないでしょうか?。
原作者を別に付けた「ファンタジー作品」なんてのも読んでみたいと思わせる方です。

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[投稿:2010-11-27 14:22:08] [修正:2010-11-27 14:22:08] [このレビューのURL]

水沢めぐみの連載作品の中では初期のものに入るが、個人的にはこの作品と次の「チャイム」の頃が最盛期だったような気がします。「姫ちゃんのリボン」から始まる描写やキャラの幼稚化もまだ始まっていないし・・・・。

「赤毛のアン」を意識したと作者はコメントしていますが、実際には「赤毛のアン+ラピュタ」と言ったほうが正しいような。主人公は実は「お姫様」だし。飛行石みたいな(笑)石を持ってるし。
舞台となった時代は19世紀の初頭か?
外国が舞台の漫画は当時の掲載雑誌「りぼん」では異色の存在だったのではなかろうか?。
「メロディ」は水沢作品の中では1番愛らしい主人公だと思います。

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[投稿:2010-11-23 20:33:15] [修正:2010-11-23 20:33:15] [このレビューのURL]

「キートン」の原型として興味深い作品。
「キートン」が文系のプロなら「ジュド・豪士」は理系のプロと書くと分かりやすいか。

画はキートンほど洗練されておらず「ぎこちない印象」は拭えないものの、基本的には「キートン」同様1話完結の「ストーリー」で読ませる作品。そこに「歴史」「紛争」「軍隊」というキートンよりは狭い枠内に的を搾った専門知識の味付けがなされていて十二分に楽しめる作品に仕上がっている。

好きなエピソードは「聖者現る」。マフィアの幹部だった男が組織の追っ手から逃れて田舎の村に牧師として住み付き、希望を失い「生きる屍」と化していた村人と村を勇気付け甦らせていく話。
読後の満足感が何とも言えない。

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[投稿:2010-11-23 20:14:22] [修正:2010-11-23 20:14:22] [このレビューのURL]

近未来。人類がついに宇宙へと本格的な進出を始めた頃から話はスタートする。

登山家だった五郎は相棒のロストマンと共に世界各地の高峰を征服していたが、最高地点「エベレスト」を征服し終わったとき、その目に映ったのは・・・・・天空に光り輝く「月」だった・・・。

宇宙に飛び出した人類が最初に征服する地は・・・・当然最も近い地球の衛星である月・・・ということで、大規模な調査団が米国の主導で編成される。

宇宙に飛び出す初期には「頭のいいエリート」が優先されるが、やがて基地や施設の建設が当然に必要とされる・・・とくれば、所謂「ガテン系」の工作機械や建設用重機を多数操縦する技術を持った者が活躍する場が来る・・・と五郎は読んでいた。準備を進める五郎。

やがて時代は五郎の読み通り「月の本格的な開発時代」に突入する。
物語は初期は「宇宙で起こる様々な事故・トラブルに関わる人間ドラマ」が描かれていたが・・・
徐々に米国と対立する各国との利害の戦場・・・つまり「宇宙戦争」の場へと移行していく。
地上とおなじように・・・いや、ある意味「地上以上の悲惨さ」を以って行われるテロ・犯罪行為。
過酷な宇宙環境での戦いに勝ち残るために開発されるロボット・・・。

かつて石ノ森章太郎先生の名作「サイボーグ009」にて描かれた
「やがてくるであろう宇宙戦争時代」の姿がここにはある。

人がいかに進歩しようと決して無くならぬ「闘争本能」という名の罪業。
神ならぬ身で天空を支配しようとする傲慢にいずれ鉄槌が下るのか?、
もしくは何者かによって下されるのか?

「ノストラダムスの予言書」などよりも余程リアルな「近未来夢想劇の渦中」にダイブするなら今しかあるまい!

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[投稿:2010-11-23 12:58:01] [修正:2010-11-23 12:58:01] [このレビューのURL]

8点 JIN -仁-

名作「六三四の剣」を世に送り出した村上もとか先生の作品なので、総合的な完成度の高さは言わずもがな。

皆さん、浦沢直樹先生の漫画「MONSTER」はご存知でしょうか?
この漫画は、その「MONSTER」の主人公・天才外科医「テンマ」が、過去の世界にタイムスリップして患者の治療に大活躍する漫画!と書くと判りやすいかもしれません。
多士済々の「医者漫画」のジャンルに「過去の世界へのタイムスリップ」というエッセンスを加えたことで、新たな魅力を引き出すことに成功した。
現代医学では「常識」の知識・技術ですらも百年の時代を遡れば「超人・神の所業」へと変貌する。

しかも時は「黒船来航」に端を発した幕末の動乱期の入り口。
数年後には二百年以上も続いた「徳川の世」が終焉を迎えることとなる。動乱期には多くの英雄・英傑が揃う。
主人公がもし「力や武力や勇気に秀でていたのなら、龍馬や海舟と共に維新回天の立役者となる」道もあったことだろう。
けれど、主人公は格闘家でもなく、戦術家でもなく、只の医者でしかない。

しかも神ならぬ身では、たとえ最新の知識を持っていたとしても救えない命とて当然のように出てくる。
そんな時、他の多くの人が「孤独と絶望の淵に身を任せたがる中」この男はあくまでも一人の医師として、その時代を生きる病に苦しむ人々を救うために立ち上がる道を選ぶこととなる。

そんな姿勢は「龍馬」や「海舟」や「西郷」等の、後の世の偉人と称される者たちと何ら変わらぬ熱い魂を持つことの証明でもあった。
そして道は違っても「同じく熱い魂を持つ者」を磁力を互いに持つかのようにして引き合わせていく。
彼等はいずれも徒手空拳ながら「持つ者よりも強く見える」は何故?

とにかく医学的知識もそうだが、幕末の江戸の描写が丁寧かつリアル。
余程綿密な取材を行っていないと、この描写は出せまい。
いよいよ完結!ラストシーンまで見逃せん作品!

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[投稿:2010-11-23 12:56:34] [修正:2010-11-23 12:56:34] [このレビューのURL]

煩悩だけが「取り得」で、美神に低賃金でこき使われるが、美神の色気の前に文句も言えない「横島」が初期はほとんどギャグを担当していました。
が・・中盤にゴーストスイーパーとしての素質に目覚めてからは準主役級に昇格してかなりカッコイイ役どころになりました。スケベは変わらずも意外に「人情家」でお人好し、さらには本人は意識していませんでしょうが、おキヌちゃん・小鳩ちゃん・ルシオラと彼の本当の良さに気付いている女の子にはもてます。

実際、このうちの誰か1人とでもくっ付いてしまっても全然幸せにはなれたとは思いますが、横島はそれでも「美神さん」に結局のところ行き着くのですね。でも美神さんよりはおキヌちゃんのほうが読者人気は高かったような・・・・。最後は、本当に2人の結婚でも良かったと思う。美神さんの横島に対する気持ちも数々の場面でそれとなく描かれていたしね。

サンデー連載作品では「パトレイバー」と並んで「大関クラス」の出来。
でも心配なのが、この作品の後、椎名先生が低迷しているような気がするのですが・・・。
一体、どうしてしまったのだろうか???。

歴代サンデー連載作品中で番付を付けたら「大関以上」は確実でしょう。
ただ、藤田和日郎先生の「うしおととら」を向こうに「横綱」を張れるかというと断言はできないけど。

ギャグとシリアスのテンポの良さに加えて椎名先生の絵柄が決して作風をドロドロした暗いものとしないのが素晴らしいと思います。
全39巻は少し引っ張り過ぎかなとも思いますが、基本的にキャラは年齢を経ない設定だったので下手したら50巻以上は続けられた(続けさせられた?)ところを完結に持ち込めて幸運かと。

椎名先生は実力のある方なのですが、この作品が終了した後の次回作が大コケするなどちょっと低迷されていたのは、どういうことだったのだろう?

でも「絶対可憐チルドレン」で見事に復活されました。「GS美神」と並ぶ代表作となりそうですね。

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[投稿:2010-11-23 12:54:56] [修正:2010-11-23 12:54:56] [このレビューのURL]

「ドラゴン・ボール」と並ぶ鳥山先生の代表作。
「ペンギン村」という架空の世界で繰り広げられる個性的な登場人物たちによるSFコメディ。

ジャンプ黄金期を支えた作家の中でも鳥山先生は作家としての画力とセンスは群を抜いていたことが良く判る。宮下あきら・高橋陽一・車田正美等いずれも「ヒット作」はあるも、「その作品」しか描けないため、後に自分の作品をリバイバルしたりして食い繋ぐしかなかった。しかし、鳥山先生はそんな事をする必要も無いほどに「絵描き」としての実力が突出している。

作品として完璧なほどの世界観の構築がされていることに驚く。連続したストーリーではなく、基本的には1話完結なので、鳥山先生の弱点である「先を見据えたストーリー展開ができない」ことも目立たない。
一時期「ウンチ」が多数登場・・・は普通の漫画なら「下品」「低俗」で終わるはずなのに、なぜか鳥山先生の温かみのある絵柄はそれを意識させないという稀有な才能。

こんな素晴らしい才能を後に「ドラゴン・ボール」の引き伸ばしで食い尽くした「ジャンプ編集部」の大罪を許すまじ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-11-23 12:52:44] [修正:2010-11-23 12:52:44] [このレビューのURL]

天才ピアニストと謳われた「阿字野壮介」。そのピアノの音色は聴くものの心を捉えて離さなかった。
だが、自動車事故によりその腕をケガによって奏者としての生命を絶たれてしまう。さらに同乗していた婚約者も亡くなった。
生き残りながらも「魂の抜け殻」となった壮介は小学校の音楽教員として無為な日々を過ごす。

しかし、一人の少年との出会いが生きる意味を見失った元・天才ピアニストを再生させる。
かつて愛用していて用済みとなった自身のピアノが森に捨てられ、そこで一人の少年の音楽の天分を開花させる役割を担っていたのだった。
一ノ瀬カイ。決して恵まれた家庭環境ではないながら、母親の溢れる愛情を受けて育つ。

そしてそのカイの力を見抜いた同級生の少年、雨宮。
「天才」と「秀才」の対決はそれぞれの師匠である壮介と雨宮の父との代理戦争のような因縁めいた展開へと繋がる。
やがて成長したカイは世界の大舞台にて雨宮とその腕を競うことになる・・・・・・。

秀逸なのはタイトル。普通なら「森のピアノ」とするところを「ピアノの森」とした点。
森がピアノを包むのではなく、ピアノの調べが「森を形成する」という作品を通して貫く主人公の特性。それを現しているのだ。
音楽漫画はいかにして紙面に「音を再現させる」かがキモ。
だから成功作品は少なく、最近では「のだめカンタービレ」と「ピアノの森」くらいだ。

逆に人気の「けいおん!」にはこの両作品のような「紙面上に音楽を再現する」というような技巧は全く見られない。
音楽をテーマとしながらも、前者と後者の決定的な違いを挙げるとしたらそこだろう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-11-23 12:42:11] [修正:2010-11-23 12:42:11] [このレビューのURL]