「gundam22v」さんのページ

描かない漫画家というタイトル通り、口だけで実力皆無の主人公を据えて、漫画界の実態や成長を見せる若手漫画家を描いて行く作品。画力・演出に力があり、前半は独自性もあり面白かった漫画です。主人公に描かせないことを守りながら、シリアスシーンでは決めさせて周囲に助言する格好で漫画界の現実を描きながら後押しをする。一種のパターンですけどギャグもキレて面白かったです。業界ネタも良く描けていた方かと。

途中から主人公が現実的に転落して行きます。それでギャグがなくなりシリアスに描いて、周囲から見放される展開が続いてほぼ最後まで行きます(和解したんだろうなと示唆するコマはある程度)。現実という意味では一定の説得力があるのかもしれません。一方で専門家以外モノを語るなに通じた説教臭く苦痛に感じたのが残念です。確かに熱烈漫画ファン的な主人公の言い分は否定しようと思えば否定出来る。けれども作中で何度も周囲の人物を救った功は立てている訳です。存在しなければ漫画を辞めていた可能性がある人物すら数人います。彼らの成功に主人公の論が役に立ったのは揺るぎない現実だった訳です。それを掌返しみたいに全否定して、忘れたかのように二度と現れるなと遠ざけるのは恩知らずに感じ冷めてしまいます(別に金の催促に来ている訳でもないのに)。後半は周囲が主人公に接触拒否して成功を重ねつつ、各所でワイワイするシーンがある訳ですが全然楽しめないです。

専門学校出で成功しているなんてほぼ皆無との現実を描きつつ、主人公をのぞいて周辺がほぼ成功人みたいになっていた演出が上記のため的に露骨に感じてしまう。成功キャラが出ても他は主人公同様に50歩100歩レベルで馴れ合い、その日暮らしの現実を背負いつつ「ワハハ」、しかし全員でその成功者とも格差を越えた友人関係は続くなどの方が良かったかと。最後まで前半の雰囲気で描いて欲しかったです。主人公は最後に人格変わったレベルで卑屈な努力漫画家になりますが、たまに真理的なこと言って成功者すら対象に周囲のムードメイカー的に役に立つ大法螺吹きのアシスタント的存在に落ち着く(手伝いばかりで自作をなんだかんだで理由をつけて作らない限り「描かない漫画家」のタイトルで一貫する)でも良かったかなと。そういう存在が許されても良いのではないかなと思いました。少なくとも面白さではその前半が圧倒的に感じます。前半が本当に面白かったので惜しかった作品です。

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[投稿:2015-01-10 13:08:44] [修正:2015-01-10 15:25:53]

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