「gundam22v」さんのページ
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点数は細分化されているために結構迷います。
完全に主観ですが、6点以上なら及第点
で楽しめた作品という感じです。

売れない漫画家が福島原発作業員となり体験談を描いた作品。取材じゃなく実際現場で見てきたことを漫画という媒体でイメージして読めるのは助かります。素人が無理に漫画を書いて伝えようとしている訳ではなく、漫画家ですから技量が伴っています。2012年から2014年までの労働記ですから時事的にも今読んでおいた方が良いでしょうね。読み物としてはそこにはいつもの日常があり、普通の職場である的な作風は、暗い感じがなく前向きなのも助かります(下記のような問題点も孕むが)。
ただ、どうしても作者の一見聞に過ぎないとしても、主張が強くて福島や作業員への間違った偏見(作中でも触れているデマ。他作品の旅行で鼻血なども思い出した)を払拭したいという意図は賛同出来ますが、それを超えて長期滞在・従事など不透明部分を受け入れるかどうかの自己責任には触れず、大丈夫だから放っておいてくれ的なものを出してしまっていることは好意的には見れなかったです。これは一方で作者が批判する偏った主張をする人間と対極的かつ等価な人達のプロパガンダ的なものになり得るものです(実際作者のインタービューを最も紹介しているのがそんな雑誌や団体の方が多い。ちなみに福島在住子供の甲状腺がんの増加については、作者は個人の感想と前置かず、デマだと決めつけていますが、専門家の議論の分かれている論点なので、決めつけの点で逆向きのデマです)。
一方で作品では多重下請け構造の大変さとか、印鑑が作られてどうなってるか分からなかったり、待機が多かったり呼び出しが急だったりとか、放射能の影響も個人の体験談で危険地域で窓を開けても今は平気としているだけ(将来を考慮した放射能への意識が低いと思う)、上から変なこと言うなよとモーニングに忠告圧力があってそのせいか次の仕事がなくて1年半も待たされたこと(仕事に従事するにつれ作者の意見転向が怖いと思われる)、そして個々の労働の大変さも描写してるし、その割に給与が少ない(通算被爆量で短期しか働けず、待機日は5000円のみ)とか不利に読めてしまう現実も隠さず見聞を描いています。一貫してほぼ明るいノリですが読む人にはその辺の不安や闇も伝わってしまう。本作での漫画とインタビューで稼ぐお金があり(中古とはいえ車が買える)、50歳前後で実家暮らしと生活にゆとりがある作者としては、そこを苦しさを感じずに済んだという事情はあるのでしょうが。
個人的には衝撃でした。少なくとも通算100ミリシーベルトを超えれば発ガンリスクが向上するのが通説で命を賭けて働く訳で。十分な金銭面は保証されていると思いましたから。ここは作者の言う他の仕事と同じという言い方は同業者にも失礼な卑下ではないのか。むしろ違いを認め尊重されなければならない。個人的にこういう所にこそ国が優先的に補助するべきで「細部をみれば十分進んでる。放っておいてくれ」ではなく、作業員や帰還待機者への更なる除染のためにも言われなきゃいけないかと。上記のような過酷な環境にあることは間違いなく、漫画には描いてないがさらに上限を来年から緊急時という留保を付けつつ、累計250ミリシーベルと大幅に引き上げられ、上記状況で誘導的にそうなってしまう。作者はそれでも国が言うからには大丈夫、労働者はもっと働ける(現状圧倒的多数が実際もっと働かないといけない収入状況)と安易に肯定するのでしょうか。労働災害に関しても、因果関係の証明はかなり緩くして、たった年5ミリシーベルトで労働者救済として認定されているほど、国ですら暗示的に危険性を認めているような仕事です。
時事的かつとても興味では覗けないテーマを描いたものとして意義がある漫画ですが、作者の主張をあくまで「現在の生活に余裕があり、健康にも問題がない人間(こう書くと嫌味になるが作中作者の溢れるバイタリティ、やはり現地に行って誰かがしなければならない職に従事していること、読んでて感動すら覚えたボランティアに通うなどの人間性には敬意を感じる)」の一意見として捉えながら注意して読むことが大切になると思います。
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[投稿:2015-11-16 19:44:30] [修正:2015-11-29 02:32:58]
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