「臼井健士」さんのページ

総レビュー数: 439レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年06月18日

「フジリュー版封神演技」として成功していると思います。
古代中国の王朝交代劇の裏側で繰り広げられる仙界の戦いを描く。
画が同人誌っぽいのですが、キャラも立っているし、主人公のスタイルの新境地を開拓した太公望もいいです。他にこんなズルくて卑怯で強くて弱くて百歳近い年寄りの主人公を知っていますか?
・・・・・・少なくとも私は知りません(笑)。

最大の見せ場は「13巻:仙界大戦14巻・15巻:十絶陣の戦い16巻死闘」辺り。
闇仲の殷王朝を守ろうとする執念。
楊ゼンの出生の秘密と正体。
王天君の暴走。
そして・・多数の仲間の犠牲・・・・。
戦いに犠牲はつきものとは言っても、ラストでひとりで仲間たちに知られぬ場所で涙を流す太公望の姿が痛々しい・・・・。
その分、以降の展開で盛り上がりを欠いたことは確かだが。

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[投稿:2010-07-24 18:58:27] [修正:2013-11-01 23:03:38] [このレビューのURL]

掲載誌であった「スーパージャンプ」の廃刊に伴い、連載作品の多くが打ち切り終了となった中で、掲載雑誌を移籍しての続編刊行となった。

その煽りで物語上、フリーの仕立て屋であった悠がマルコとセルジュの弟子2人を加えて工房を立ち上げて独立。
一国一城の主感が強くなってきました。

さらに物語に華を添えるのがジラソーレ社の面々。
この作品、初期のハードボイルド的な雰囲気から、ジラソーレ社の女性陣が多数登場するようになってから面白くなって長期連載に繋がった。

特にラウラの登場時のクールキャラ→いじられキャラへのチェンジはお見事!
悠との恋に目覚める・・・・のか?今後に期待!

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[投稿:2013-07-20 12:10:50] [修正:2013-07-20 12:10:50] [このレビューのURL]

9点 マギ

今迄にあったようであまり見なかった「アラビアン・ナイト」の世界観を下地にした正統派冒険漫画。

「ジン」「マギ」「ルフ」
謎に満ちたキーワードの数々が散りばめられ、心躍る。

基本は「旅」である。世界各地を駆け巡るのだ。
そして多くの土地で「出会い」を重ねる。それが仲間を作っていく。

立ちはだかるのは「迷宮」。行き着くのはお宝か?それとも「それ以上の何か?」か。
迷宮突破という「山場」が用意される。

度々、ワープして舞台が変わるため、世界の広さの全貌が明らかにされていないことが返って無限の可能性を感じさせる。
作者は女性というのも異色。「少年誌向けの絵でありながらも、女性ならではの繊細さを感じさせる場面」がいくつもアリ。

久しぶりに夢中になってページをめくった経験に忘れかけていたワクワク感を思い出させてもらった!

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[投稿:2012-01-25 23:23:34] [修正:2012-01-25 23:23:34] [このレビューのURL]

簡単に言うと「赤ちゃんと僕」(「花とゆめ」連載)の少女版。

お母さんが2番目の子供が小さいうちに亡くなって、お父さんと3人家族という設定は同じ。
ただ「赤ちゃんと僕」は男の子の兄弟なのに対して、こちらは女の子の姉妹になるというのが大きな違い。
内容も女の子が主人公のため、「赤ちゃんと僕」よりも断然、恋愛の要素が強くなっている。
小学5年生からスタートした主人公の「杏」がラストでは母親になるまで、掲載雑誌がマイナーな「デザート」だったため全10巻で非常に展開が速いのだが、テンポよく話は進む。

意外だったのは杏が結ばれた相手。
普通の少女漫画なら「初恋の相手とくっ付いてめでたしめでたし」という安易なラストで終わるだろうが、この漫画はラスト付近では現実的な展開になり、普通なら報われないまま終わるであろう当初の杏の初恋の男のライバルに軍配が上がった。

初対面では杏は好意的どころか「苦手」「怖い」とすら思っていた関川と中学校の3年間を通して少しずつ心を通わせていくという展開がいいと思います。
杏に彼氏(鮎川)がいることを知りながらも杏以外の女の子のことを考えられない関川の純情。
人の恋には敏感でも自分のこととなると鈍感で、関川の想いに気が付かない杏を見守り続けるうちに、気持ちには気付いてもらえないものの「苦手意識」と誤解からくる「恐怖」は消えて、安心して手を繋げるまでになった。このときに誤解が解けていたことと成就はしなかったものの「告白」で杏に気持ちを伝えていたことが、後の再会時杏の気持ちを変えることに繋がった。

杏にとっては「初恋の相手」でも杏に寂しい思いばかりさせる鮎川が杏の目の前から去ったとき、ずっと自分のことを大切に思い続けていてくれる男性がいたことに気付いた杏。
自分を愛してくれる人の気持ちに応えるのも「ひとつの恋のかたち」なのだと思えるようになったとき、自分を幸せにしてくれる「ただ1人の人」と出会えていたことを意識できるようになった。
不器用な表現しか出来なかった関川も再会後はストレートな気持ちを杏に伝えられるようになったところが成長の証。
関川は「一生大切にする」と誓って杏を妻としたことだろう。
杏は鮎川とは身体の結び付きはなかったので、関川が「初めてにして唯一の男性」となる。
昔、鮎川との肉体関係を「恥ずかしくて想像もできない」と言っていた杏が同じく初めてであったであろう関川と結ばれ、愛を知っていったのだ。

数年後に生まれた2人の間の子供は女の子か?。髪の毛の色から関川の血を引いていることが判る。
亡くなった杏の母親にとっては孫にあたるその子に「くじらの親子」の話をしてあげる杏。
両親の駆け落ちによる結婚から数十年の年月を経て世代を超えて語り継がれていく想いがそこにはあった。
妹・桃の「小さなお母さん」であった杏が本当の母親になるまでのお話。
鮎川を好きになると同時に関川のことも好きになっていた。
2人の男の子に同時に恋をしていたことを後年の杏は懐かしく思い出せるようになっただろう。
きっと娘にお父さんとの恋物語を語ってあげるのでしょうね。

杏は意識していないのだが、実は杏が好きになった2人の男性、鮎川と関川はいずれもお父さんに似ているのだ。
外見が似ているのは「鮎川」のほうだが、内面的に似ているのは実は「関川」のほう。
杏の母・真弓も当初はぶっきらぼうでしゃべらないお父さんを怖がっていたのだが、やがて少しずつ
「本当は怖い人ではない。優しい人なんだ」と知って好きになっていった。
その点でも、出会った当初は関川が怖くて震えていた杏が少しずつ普通に話せるようになり、やがて手を繋いだとき
「自分の心を覆っていた不安が淡雪のように溶けて安心できるようになった」ことと共通する。

これらが無理矢理な印象は受けず、かえって杏を1番幸せにしてくれる相手だったのだと読者に気付かせてくれたと思い、ベストエンドかと。
欲を言えばラストシーンに子供の父親と杏の妹である「桃」も登場させてほしかったことか。

杏の両親が出会い、愛し合って結ばれるまでを描いた番外編の感動は同じ題材で描かれた「赤ちゃんと僕」のそれよりも数段上だと思う。

とにかく作品自体が作者の最高傑作。

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[投稿:2012-01-14 18:08:03] [修正:2012-01-14 18:08:03] [このレビューのURL]

偉人たちの伝記漫画です。但し、一般的にはあまり知られてはいない人物にスポットを当てて、
業績と現代における評価が必ずしも一致するものではないということを教えてくれる良作です。

偉人の伝記って小さい頃から触れる機会が多いと思う
・エジソン
・ヘレン・ケラー
・ベートーベン
・野口英世

そういった人物の伝記は子供向け漫画でも何冊も出版されていて、多くの子供が読んでいることだと思う。
けれど、その選定基準については実際のところ「曖昧」だと思う。
何故、この人物が選ばれて他の人物が選ばれていないのか?
文部省や政府の後押しがあるかないかが基準なら、選定に偏りが出るのも至極当然かと思います。

また偉人たちは皆、素晴らしい業績を上げて「富」や「名誉」を独占した幸福な人生だと思うのは早計。
彼等もまた「ひとりの人間」でしかなく、多くの人間が自身の理想と思い通りにならない現実とのギャップに苦しんでいます。

大人になった今でこそ気が付くのですが、伝記ってむしろ子供より大人が読んだほうが学ぶことが多いかと思うのです。
人生の様々な困難を乗り越えていくための知恵やヒントが隠されていることが多く、さらに波乱に満ちた生涯を知ることで
「並みの物語」などよりも遥かに多くの感じることがある。

「心に響く」って、つまりはこの漫画のようなものを言うのです。

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[投稿:2012-01-08 08:30:47] [修正:2012-01-08 08:30:47] [このレビューのURL]

山口高志・・・・。

日本プロ野球史上、最も速いボールを投げた投手は誰か?ということが時々ファンの間で話題に上がるが、そのときに必ずと言っていいほどに名前が挙がる投手である。
レコードブックに残る成績は・・実働8年で通算50勝ちょうど。タイトルは入団の年に受けた「新人王」と最優秀救援投手が一度だけ。成績だけみれば確かに「二流」である。

がしかし、彼と同時代を現役で過ごした同僚・ライバルたちは言う。
阪急で同僚で通算284勝の史上最高のサブマリン(下手投げ)・山田久志は言う。
「高志は終速で150キロ出した」
日本シリーズで対戦した巨人の高田外野手は言う。
「山口は明らかに江夏(豊)よりも速かった」
同時代に捕手として多くの投手のボールを受けた河村捕手は証言する。
「自分が受けた投手の中で、(ボールを)捕るのが怖いと思ったのは山口だけだった」
赤ヘル・広島カープの四番、山本浩二は断言する。
「投手としての総合的な完成度では(ナンバーワンは)江夏(豊)、だが球のスピードに限れば山口高志」

その全盛時のピッチングを目にしたファンは証言する。
「ボールが瞬きしている間に、ミットに入っていた」
芥川賞受賞の作家・吉目木晴彦氏は賞賛した。
「山口は、ノーラン・ライアンよりも速い球を投げた」

昭和50年のドラフトで社会人野球・松下電器から入団した、この球史にも稀な超スピードボールを投げる投手はプロ野球に旋風を巻き起こした。しかし・・・無理なフォームで投げ続けたことから腰を痛め、現役生活の後半の4年間は「並以下の投手のピッチング」しかできなかった。
投げる球種の9割が「ストレート」だったという。プロ野球界の門を新たに叩く新人投手が入団会見でよく口にする「ストレートで押せる投手になりたい」という「いずれは、それが甘い考えであることにおそらく誰もが気付くであろう夢」を入団から4年間だけながら実現することができた彼は「幸福」だっただろうか?それとも「不幸」だっただろうか?

とにかく怪童「尾崎」、黄金の左腕「江夏」、伝説の投手「沢村」「スタルヒン」らと並び「日本プロ野球史上最速のボールを投げた投手」だったことは間違いない。

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[投稿:2012-01-08 08:05:23] [修正:2012-01-08 08:05:23] [このレビューのURL]

何よりも「必殺技のでない」テニス漫画であることが重要。
いや・・・ジャンプ連載の某テニス漫画と対極に位置しているなと。
試合のシーンはリアル。そしてタイプの異なる天才の描き方も上手いと思う。試合以上に「人間ドラマ」重視

前作「赤ちゃんと僕」でも思ったことだが、羅川先生は男性が読むのにも抵抗のない漫画を描かれる。
男女で読者を分けないというのは、ファンを獲得する上で重要な事ではないかと思う。
「赤ちゃんと僕」以上の巻数になったし。
テニス漫画の最高峰が現状だとこれ!

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[投稿:2012-01-04 08:16:16] [修正:2012-01-04 08:16:16] [このレビューのURL]

9点 エマ

「メイド漫画」・・・・・・・・・・・と書くと明らかに誤解を生じる。

正しくは、「19世紀末の英国を舞台に、当時の階級差を下地にして描かれたシンデレラストーリー」(・・になるのか?)。
作者も女性で、描写は「いやらしさ」は皆無のメイド・イン・ジャパン(日本製)が「萌え」に非ずという、極めて純愛なお話。

しかも状況は「本家・シンデレラ」よりもある意味障害が多いときている。
シンデレラは「灰被り」でも元々は貴族の娘だから、王子様に見初められさえすれば後は「ハッピーエンド」への道が一直線で拓けているが(しかも物語自体は結婚して終わりなので、「その後」の結婚生活についてはそもそも触れられていない)、こちらは結ばれるまでに多くの障害があって、仮に「結ばれたとしたその後に」さらに多くの障害が待ち受けているであろうことが読者にも作者にも、そして主役の2人は言うに及ばず他の登場人物にですら分かりきってしまっているという全てが逆風の中で「愛し合う2人」が孤立する。

主人公は薄幸の女性。幼い頃からの苦労による苦労でどこか「自分自身の幸せですら、叶わないものとして最初から諦めている」。美人なので寄って来る男は多いが、それらを悉く退けてしまうのは幼い頃の家庭環境から他者に優しくされることに慣れていないせいだと思う。そんな彼女を救い出す「王子役」に指名されたのは「産業革命の激動の中で成功を収めた資産家の跡取り息子」。2代目に有りがちな決断力と行動力に欠けるきらいがあり、純朴さが生み出す「さり気なさ」と「優しさ」が取り得。
王子役としてはいささか頼りないのは問題で、それがエマの主人が亡くなって彼女がロンドンを去っても何も出来ぬまま、かといって彼女を探すために家を飛び出すような覇気もないまま「鬱々とした」日々を送る毎日。ついには意にそわない相手と成り行きのまま「婚約」までしてしまう。

しかし、エマが片田舎で出会った貴婦人が「王子の母親」だったところから運命は再び愛し合う2人を結び付ける。あちこちから「横槍」が入ってくる中で好意的に見ても味方の数は少なく、状況は決して好転してはいない。ここに至ってはもはや荒波に揺れる舟を漕ぐは「2人の愛」という名のか細いオールのみ。

果たしていかように転がるか?まずは「さて、一同お立会い!・・・・」である。

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[投稿:2010-06-18 21:47:02] [修正:2012-01-03 09:50:31] [このレビューのURL]

9点 青い花

「放浪息子」で性不同一性障害を扱った作品を描いていることで知られる
志村貴子氏の女子高を舞台にした作品。

松岡女子高等学校に入学した「万城目ふみ」ちゃんと、
藤ヶ谷女学院高等部に入学した「奥平あきら」ちゃんは幼馴染。
小学生の頃はしっかり者のあきらが大人しくて泣き虫のふみを守っていた。
でも、ふみちゃん家の引っ越しで離ればなれに。やがて忘れていった。

が、2人が高校生になってすぐに運命的な再会が待っていた。
通う高校は別々だが「共に女子高」も何かの縁か?
ふみちゃんはひとつショックな出来事があった・・・・。
従姉妹の千津ちゃんが結婚してしまう。
実はふみちゃんは千津ちゃんと一線を越えた関係が・・・・・。
身体を許した相手の裏切りともいえる行為にふみちゃんは泣き崩れるしかなかった。

傷心のふみちゃんが高校で文芸部と間違えてバスケ部に入部してしまう切っ掛けとなった
先輩との出会いがあった。
同性愛の女の子と同性愛ではない女の子。
冒険の始まりが「ボーイ・ミーツ・ガール」であることは
宮崎アニメの名作「天空の城ラピュタ」を観れば明白であるが、
では「ガール・ミーツ・ガール」は何のスタートなのか?

付き合うことになった先輩との関係は親友となったあきらにも言うことを躊躇ってしまうような「秘め事」のようなもの。
実は先輩にも秘密があった。先輩は以前はあきらの通っている藤ヶ谷女学院高等部に通っていた。
でも、好きになった演劇部の顧問の先生に受け入れてもらえず退学した。
で、その頃の後輩の女の子に先輩を想い続けている子がいて、あきらの友人。

進むのは茨の道か?はたまたけもの道か?
「女の子」って男の子よりも同性愛に陥りやすいのかもしれないな・・なんて思った。
心細いとき優しくされたら・・・可愛い子を可愛がることも抵抗はないだろうし・・・。
そして「少女性」は陽炎の如き青春のごく一瞬の煌きにも似たものなのかもしれない。
人は「同じ場所に一瞬たりとも留まってはいられない生き物」なのだ。
だからこそこの作品ではそのせつなさが「一層映える」のである。

漂うのは「危うさ」である。嵌りやすく、惑いやすいのだ。

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[投稿:2010-07-11 23:18:39] [修正:2012-01-03 09:48:19] [このレビューのURL]

確かに「改蔵」よりもネタ的には大人しくなった印象はあります。
しかし・・・同雑誌連載の「花形」を作中で堂々と批判する姿勢は「買い」です。


作品としては、久米田先生を「南国」の頃から見続けてきた方には、先生がどれほど作家としてレヴェルアップされたかは良く分かっているはずです。
「南国」のときは下ネタに頼るしかない、ハッキリ言ったら三流漫画家だったのだが、「改蔵」で大化けされました。カクカクした見難い絵柄が丸みを帯びた見易く可愛らしい画になり、ストーリーも少しずつ下ネタが減り、ついにこの作品中では「下ネタ決別宣言」まで飛び出していました。

下ネタに頼らないと描けないうちは「所詮は三流漫画家」の域を出れないということの証明でしょう。
長い間、漫画家として活躍されている先生の多くは最初はヒットを出せても年月の経過と共に衰退していく方が多い。
けれど久米田先生の場合「元(「南国アイスホッケー部」)」が悪かっただけに、これ以上は悪くなりようもなかったことが幸いした(笑)。
後はドンドン良くなるだけ。

個人的にはマガジンに移ったのだから、自他共に認めるライヴァル(?)の「ネギま!」の赤松先生ともっと張り合っていただきたい。
それこそかつての「お笑い漫画道場」の富永先生と鈴木先生のように(笑)。

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[投稿:2010-11-30 22:41:00] [修正:2012-01-03 09:46:28] [このレビューのURL]