「臼井健士」さんのページ

総レビュー数: 439レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年06月18日

久しぶりに良いと思えた青春恋愛漫画。
美術学校に通う男3人と女2人、そして周囲の人々との日々のふれあい。
友情・恋愛・それぞれが背負う過去・泣いて・笑って・そして・・・・貧乏で(笑)
フロなしアパートなんて昭和の話かと思いましたが建物がある以上、平成の世でも立派に舞台として成り立つんですね。でも地震起きたら、真っ先に潰れるような・・・。
何気にギャグも効果的です。絵柄が少し見づらいのが難点か。

タイトルといい、ストーリーといい、雰囲気といい「スピッツ」の曲をかなり意識しているのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

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[投稿:2010-12-03 12:33:16] [修正:2012-01-03 09:54:36] [このレビューのURL]

最近ついに読むことが出来ました・・・・。凄い作品ですね。いろいろな意味で。
たぶんアニメ版を良く知っていればいるほどに面白い作品だと思います。

原作者と画の岡野先生との「意思の疎通が上手く取れていなかったため(笑)」アニメ版では有り得ないような設定が採用されています。

以下、ざっと挙げるとこんな感じです。

1.アムロの性格が「熱血漢」。
よって口調が乱暴かつ、セリフが熱い(笑)。特にガルマ国葬の際のギレン総帥による演説のシーン(例のジーク・ジオンの場面ですな)をテレビで見て、怒りを堪えきれずにブラウン管にバンチの一撃を喰らわせるアムロは最高です。
「負けんぞ・・・・絶対にキサマらになど負けるものか・・・!」とつぶやくアムロと、それを「頼もしい奴・・・」とでも言いたげな嘘臭い表情で見つめる指揮官・ブライトの表情がまた・・・・・。

2.モビルスーツの設定が大きく違う。水中用であるはずのズゴック・ゾックがなんと宇宙戦で飛び回ります。
しかもゾックに搭乗しているのはあの「マ・クベ」!。
最後はガンダムのビームサーベルの二刀流の前に真っ二つにされた挙句の果てに、なぜか近くに位置していた「ドズルの搭乗している母艦にぶつかる」というコンボが決まって(爆笑)、一石二鳥になるってのがまた・・・・。ムサイ艦って大気圏突入できましたっけ。確か、アニメでは宇宙のみだったような・・・。

3.シャア専用モビルスーツに「アッガイ」がある。
ジャブローでの隠密行動では「専用機」らしく、通常機の3倍以上の動きでアムロのガンダムを苦しめます。

4.とにかく戦闘が「力押し」。
ガンダムはビームライフルなんかよりもパンチやキックで(←格ゲーじゃないんだからさ)敵を倒している。
ガンダムハンマーを振り回してランバ・ラルやハモンさんはおろか、ブライトたちにまで「悪魔の如き視線」で見られたり、グフ2体を振り回して空中衝突させるなんてムチャクチャまでやっています。
アッザムなんて一撃で倒してるし・・・・!。ゴッグはホワイトベースが踏み潰した(笑)。←それを見て「ムチャクチャだ・・・」とコメントする連邦の指揮官を総大将のレビル将軍は「いや、あれでいいんだ・・・」と擁護する。
直後のレビルを見る指揮官の「疑わしげな視線と表情」もサイコー!。

5.そしてラストシーンは宇宙に出たばかりで話の諸々の伏線の消化も終わっていないまま、唐突にシャアとの直接対決の直前に話は終わるのだ。
アムロは叫ぶ・・・・!!ガンダムがいる限り「宇宙の平和」は守ってみせる。お前たちの勝手にはさせん!、と。・・・・・・・え・・・・ガンダムって、「宇宙の平和を守る」ことが目的だったんだ・・・・・・あれえ・・・・・?(笑)。

なんか他のロボットアニメの影響が大きく表れた描写であり、キャラであり、ストーリーだという総括になります。
半分「ギャグ漫画」と化している感じはしますが・・・ガンダムファンは一見の価値あります。

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[投稿:2010-12-05 00:22:43] [修正:2012-01-03 09:53:42] [このレビューのURL]

9点 エマ

「メイド漫画」・・・・・・・・・・・と書くと明らかに誤解を生じる。

正しくは、「19世紀末の英国を舞台に、当時の階級差を下地にして描かれたシンデレラストーリー」(・・になるのか?)。
作者も女性で、描写は「いやらしさ」は皆無のメイド・イン・ジャパン(日本製)が「萌え」に非ずという、極めて純愛なお話。

しかも状況は「本家・シンデレラ」よりもある意味障害が多いときている。
シンデレラは「灰被り」でも元々は貴族の娘だから、王子様に見初められさえすれば後は「ハッピーエンド」への道が一直線で拓けているが(しかも物語自体は結婚して終わりなので、「その後」の結婚生活についてはそもそも触れられていない)、こちらは結ばれるまでに多くの障害があって、仮に「結ばれたとしたその後に」さらに多くの障害が待ち受けているであろうことが読者にも作者にも、そして主役の2人は言うに及ばず他の登場人物にですら分かりきってしまっているという全てが逆風の中で「愛し合う2人」が孤立する。

主人公は薄幸の女性。幼い頃からの苦労による苦労でどこか「自分自身の幸せですら、叶わないものとして最初から諦めている」。美人なので寄って来る男は多いが、それらを悉く退けてしまうのは幼い頃の家庭環境から他者に優しくされることに慣れていないせいだと思う。そんな彼女を救い出す「王子役」に指名されたのは「産業革命の激動の中で成功を収めた資産家の跡取り息子」。2代目に有りがちな決断力と行動力に欠けるきらいがあり、純朴さが生み出す「さり気なさ」と「優しさ」が取り得。
王子役としてはいささか頼りないのは問題で、それがエマの主人が亡くなって彼女がロンドンを去っても何も出来ぬまま、かといって彼女を探すために家を飛び出すような覇気もないまま「鬱々とした」日々を送る毎日。ついには意にそわない相手と成り行きのまま「婚約」までしてしまう。

しかし、エマが片田舎で出会った貴婦人が「王子の母親」だったところから運命は再び愛し合う2人を結び付ける。あちこちから「横槍」が入ってくる中で好意的に見ても味方の数は少なく、状況は決して好転してはいない。ここに至ってはもはや荒波に揺れる舟を漕ぐは「2人の愛」という名のか細いオールのみ。

果たしていかように転がるか?まずは「さて、一同お立会い!・・・・」である。

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[投稿:2010-06-18 21:47:02] [修正:2012-01-03 09:50:31] [このレビューのURL]

ギリシャ神話をモチーフとした作者の最大のヒット作品。
地上の平和を世界の裏側から守る女神・アテナと、そのアテナを守護する聖闘士(セイント)たち。

その物語は地上を手中に収めん復活を目論む冥界の王・ハーデスとの「聖戦」が主題になる。
そこに至るまでの聖域(サンクチュアリ)の内乱(サガの乱)。
そして、不慮の事象により復活を遂げた海皇・ポセイドンとの争い。
を経て、ついにハーデス軍が復活する。

特筆は「聖衣」(クロス)・「鱗衣」(スケイル)・「冥衣」(サープリス)に代表される
神話や伝説に登場するモンスターや生物たちを模った鎧を自らの身にまとって戦うという設定である。

それぞれの鎧が身体を覆うパーツに分類される「分解装着図」は毎回毎回よくも考え付くものだと感心させられた。
只、108星に代表されるハーデス軍の冥闘士(スペクター)は大部分が未登場に終わってしまったのが残念な点。

作者自身もそのことを気にかけていたのが、現在、この続編が別の作者で連載中となっている。
そちらでは本編未登場の冥闘士たちが新規登場を果たしております。

個人的には「ポセイドン編」の終わりの引き方がお気に入りです。
「全ての生命は海へと還るんだよ・・・」と余韻の持たせ方が上手い。

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[投稿:2010-07-03 09:57:40] [修正:2012-01-03 09:49:19] [このレビューのURL]

9点 青い花

「放浪息子」で性不同一性障害を扱った作品を描いていることで知られる
志村貴子氏の女子高を舞台にした作品。

松岡女子高等学校に入学した「万城目ふみ」ちゃんと、
藤ヶ谷女学院高等部に入学した「奥平あきら」ちゃんは幼馴染。
小学生の頃はしっかり者のあきらが大人しくて泣き虫のふみを守っていた。
でも、ふみちゃん家の引っ越しで離ればなれに。やがて忘れていった。

が、2人が高校生になってすぐに運命的な再会が待っていた。
通う高校は別々だが「共に女子高」も何かの縁か?
ふみちゃんはひとつショックな出来事があった・・・・。
従姉妹の千津ちゃんが結婚してしまう。
実はふみちゃんは千津ちゃんと一線を越えた関係が・・・・・。
身体を許した相手の裏切りともいえる行為にふみちゃんは泣き崩れるしかなかった。

傷心のふみちゃんが高校で文芸部と間違えてバスケ部に入部してしまう切っ掛けとなった
先輩との出会いがあった。
同性愛の女の子と同性愛ではない女の子。
冒険の始まりが「ボーイ・ミーツ・ガール」であることは
宮崎アニメの名作「天空の城ラピュタ」を観れば明白であるが、
では「ガール・ミーツ・ガール」は何のスタートなのか?

付き合うことになった先輩との関係は親友となったあきらにも言うことを躊躇ってしまうような「秘め事」のようなもの。
実は先輩にも秘密があった。先輩は以前はあきらの通っている藤ヶ谷女学院高等部に通っていた。
でも、好きになった演劇部の顧問の先生に受け入れてもらえず退学した。
で、その頃の後輩の女の子に先輩を想い続けている子がいて、あきらの友人。

進むのは茨の道か?はたまたけもの道か?
「女の子」って男の子よりも同性愛に陥りやすいのかもしれないな・・なんて思った。
心細いとき優しくされたら・・・可愛い子を可愛がることも抵抗はないだろうし・・・。
そして「少女性」は陽炎の如き青春のごく一瞬の煌きにも似たものなのかもしれない。
人は「同じ場所に一瞬たりとも留まってはいられない生き物」なのだ。
だからこそこの作品ではそのせつなさが「一層映える」のである。

漂うのは「危うさ」である。嵌りやすく、惑いやすいのだ。

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[投稿:2010-07-11 23:18:39] [修正:2012-01-03 09:48:19] [このレビューのURL]

確かに「改蔵」よりもネタ的には大人しくなった印象はあります。
しかし・・・同雑誌連載の「花形」を作中で堂々と批判する姿勢は「買い」です。


作品としては、久米田先生を「南国」の頃から見続けてきた方には、先生がどれほど作家としてレヴェルアップされたかは良く分かっているはずです。
「南国」のときは下ネタに頼るしかない、ハッキリ言ったら三流漫画家だったのだが、「改蔵」で大化けされました。カクカクした見難い絵柄が丸みを帯びた見易く可愛らしい画になり、ストーリーも少しずつ下ネタが減り、ついにこの作品中では「下ネタ決別宣言」まで飛び出していました。

下ネタに頼らないと描けないうちは「所詮は三流漫画家」の域を出れないということの証明でしょう。
長い間、漫画家として活躍されている先生の多くは最初はヒットを出せても年月の経過と共に衰退していく方が多い。
けれど久米田先生の場合「元(「南国アイスホッケー部」)」が悪かっただけに、これ以上は悪くなりようもなかったことが幸いした(笑)。
後はドンドン良くなるだけ。

個人的にはマガジンに移ったのだから、自他共に認めるライヴァル(?)の「ネギま!」の赤松先生ともっと張り合っていただきたい。
それこそかつての「お笑い漫画道場」の富永先生と鈴木先生のように(笑)。

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[投稿:2010-11-30 22:41:00] [修正:2012-01-03 09:46:28] [このレビューのURL]

真っ向勝負のガール・ミーツ・ガールを描く百合漫画。
この絵の上手さ・可愛さ・美麗さがなければこの世界観は描けまい。

地味めな高校生・真理子が女子校1年生の2学期、それまで話したこともなかったクラスメイトのあっこに
話し掛けられた。おしゃれや化粧品に詳しくて、友達が多くて、賑やかで、
自分とは正反対で・・・・・・・・・・・。
最初はあっこが自分に近づいてきた意図が分からずに戸惑うばかりだった真理子。
けれど彼女と付き合ううちに自分がそれまで知り得なかった新しい世界を知り、
新しい自分を見出していく。切っ掛けを与えてくれたのは彼女。
いつしか2人は親友に。正反対の性格がどうして惹かれあったのだろう?

そこから始まる2人が結び付くに至った理由とは何か?
それを解き明かすための物語。
ボーイ・ミーツ・ガールが「冒険の始まり」であることは多くの作品で証明されている純然たる事実。
では、「ガール・ミーツ・ガール」は何の始まりなのか?

「恋は友情を前提とするもの」なのか。
それとも「友情の延長線上に恋が存在する」のか。
では「愛情」は?
女同士であろうと、親友であろうと、惹かれあう気持ちは止められず、好きな気持ちは抑えられないのだ!!!
たとえいつの日か終わりを迎えるときが来ようとも、共に過ごした日々は生涯の宝となって胸の奥のしまわれることだろう。

男子を追い出しての青春に一喜一憂するも良し、悶々とするも良し。
陽炎の如き儚さを少女たちの愛らしさの中に見るも良し。
さて、一堂。最後までお立会い!である。

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[投稿:2010-12-04 23:27:55] [修正:2012-01-03 09:45:37] [このレビューのURL]

故・石ノ森章太郎先生のライフワークと呼んで差し支えのない大作。

死の商人グループ「黒い幽霊団」によって世界の各地からさらわれた九人の男女。
新時代の戦闘要員としてサイボーグとされた彼らが自由と平和を求め反乱を起こす。
世界各地で起こる戦争・紛争の影で暗躍する「黒い幽霊団」との果てしない戦いが続く・・・。

前半は「黒い幽霊団」との戦いだったが、後半は神話・伝承へと話がシフトしていったために話が難解になったのが難点か。名シーンはやはり「地下帝国ヨミ編」のラストを挙げざろうえない。
宇宙に飛び去った「黒い幽霊団」を葬るために単身送り込まれた009。そして、009を救出するために宇宙に向けて飛ぶ002は「もう間に合わない」と叫ぶ001に言う。
「間に合わない・・・・かもしれない・・しかし、苦楽を共にした仲間を見捨てるわけにはいかない・・・最後の一秒までチャンスにしがみ付いてやる。そして、その一秒が過ぎたら・・そのときはどうか神よお力添えを。生まれて初めてあなたに祈ります・・・」
スラム育ちの002が生まれて初めて神を信じる瞬間が印象的。

引力圏を脱出した002は009を爆発の中から救いだすが、ロケットの燃料不足から大気圏突入を余儀なくされる。009は自分を見捨てるよに懇願するが、002はそれを拒絶し2人は流れ星となって地球に落ちていく・・・。002は009に聞く「ジョー、君は何処に落ちたい?」
そして地球では2人の姉弟が落ちていく「流れ星」を見ていた・・・・。
姉は流れ星に願いをかける「世界中の人々が争うことなく、平和に暮らせるように」と。

完璧だ・・・。ここで終わっていたら文句の付けようがなかったのだが

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-12-11 17:59:52] [修正:2012-01-03 09:44:19] [このレビューのURL]

8点 AQUA

未来世界を舞台にした「噂の近未来ヒーリング(癒し)コミック」を初体験。

まず作者の画力が激高。人物はそれほどでもないのだが・・・風景・建物にそれが顕著。
そして流れていく時間・空気までも画面上に表現出来る技術に感嘆。カラーページの表紙やコミックスカバーが作者の力量の見せ所(魅せどころ)。

次に「水」をテーマにした世界観と設定に夢があって素晴らしい。未来の人類が「赤茶けた生物も住めない火星」を豊かな水に満ちた惑星に「科学の力」を使って作り変えたという点。科学の発展は大量の資源の浪費、生態環境の破壊・・・等に繋がっていくという絶望ではなく、使い方さえ誤らなければ「素晴らしい恩恵をもたらしてくれるのだ」という希望を感じてならない。

そんな水の惑星となった火星に地球からやって来た主人公がイタリアのベニスよろしく、水上都市のゴンドラ漕ぎになるべく日々を送っていく。そこで様々な人と出会い、色を変えていく景色を目にし、そしていつしか主人公と共に読者もこの「桃源郷のような仮想空間」へと誘われていく。

そこではあくせくと動くことは無意味となり、不可思議な現象にですら寛容になり、そして・・・いつもは早足であるはずの「時間」でさえもその歩みを緩めるのだ・・・・。

メジャー誌では決して育たないであろうこの「未体験の快感」を宝箱の中に誰にも知られないように鍵を掛けて隠しておきたくもあり、おきたくもなし・・・・・。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-06-27 10:54:04] [修正:2012-01-03 09:42:14] [このレビューのURL]

戦争をテーマにした漫画というのは題材として「悪い評価」は付きにくいものではないかなとも思うのだが、これはその中でも広島に落とされた「原子爆弾」にテーマを絞って描かれている点で他作品とは意味合いが異なり、そしてそれこそが正に「世界唯一の核兵器の被爆国」である日本が生み出すに最も相応しい漫画ではないだろうかと思う。

大抵の小・中学校の図書室には常備されているが、内容は「悲惨な描写」が紙面上のこととは思えないようなリアルさを浮き彫りにする。主人公の少年は原爆投下時にたまたま壁に遮られていたために熱線と爆風の直撃を受けずに済むという幸運で命が助かるも、そこは「真の地獄」への入り口でしかなかった。
爆風と熱線の直撃を受けながらも即死出来なかった人々は、焼け爛れた皮膚をボロ布のように引きずりながら水を求めて街中に溢れ、さながら「バイオハザード」のゾンビの群れと化した。街は一瞬にして廃墟となり、やっとのことで自宅に戻った主人公も、たまたま外に出ていた母親以外の家の下敷きとなった父・姉・弟の3人を火事で失う。混乱の最中に妊娠中の母親が妹を出産・・・・と息を付く間もないほどに次々とドラマが巻き起こり、さながら読者も主人公とともに「嵐の波間に漂う小舟」のごとく巨大な力に翻弄されるのだ。

特筆すべきは勿論、これらの出来事が全て虚構の主人公・登場人物を配置しながらも否定することの出来ない現実であるということだ。それは単なる「虚構の中の冒険物語」で味わう悲惨さなどとは完全に一線を画した全くの別物であり、今も現実を生きる体験者にとっては忌まわしい過去を眼前に「向き合え」と突きつけるに等しく、その悲惨さを体験し得ぬ世代には呪縛にも似た恐怖を脳裏に刷り込むことで「平和へのメッセージ」を未来永劫、人類の歴史ある限り発信し続けることだろう。

悲惨な描写の前半から、戦争が終わり復興する広島を描いた後半では原爆の亡霊とも言うべき「放射能による障害」の恐怖と、そして本来は同じ原爆の被害者であるはずの者たちによる「利を貪っての醜い争い」がテーマになっていく。ムスビやカッチンはこれらの犠牲者と言っていい。

たった一発の爆弾はかくも多くの人々の運命を変え、人類の歴史を変え、そして地球の未来すらも変えたのだというお話。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-07-03 09:06:13] [修正:2012-01-03 09:41:08] [このレビューのURL]