「鋼鉄くらげ」さんのページ

総レビュー数: 292レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年10月28日

磨き上げる前のダイヤの原石を見ているかのような、非常に「粗さ」の目立つ作品です。

個人的には、もう少し練り上げてもっと完成度の高い作品にしてほしかったというのが、率直な感想です。まぁ、1巻完結の作品に、そこまで求めるのは酷なことかもしれませんが。

いずれにしても、素材に光る余地があった作品だけに、非常に勿体ない印象を受けました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-08-20 19:47:52] [修正:2009-08-20 19:47:52] [このレビューのURL]

女性を描く上手さという点において最も尊敬している漫画家、桂正和先生の代表作です。この人は何といっても女性の身体を描くのが抜群に上手く、自分が「絵に惚れている」漫画家の一人です。

さて、そんな尊敬する人物の代表作であるこの作品なんですが、この作品の特徴は、途轍もなく、こと細かい心理描写と、どこまでいっても交差し続ける人間関係にあると私は感じています。

まず細かな心理描写に関してですが、この作品に登場してくる人物達は物語の進行中、実に様々な事を、心の中で考えています。しかしそれは大概ポジティブなものではありません。つまり、人が恋愛をしていく中で感じていく不安や疑念、恐怖や葛藤などネガティブな言葉が心の声として読者に伝わってきます。

そして、そうした不安や葛藤などが実際の行動に反映されていき、やがて誤解やすれ違いを生んでいく。つまりは二番目の特徴である、どこまでも交差し続ける人間関係へとつながっていきます。しかし、そうした揺れ動く人間関係の変化や心理状態の変化における描写は実に見事です。そこがこの作品の素晴らしい所だと私は思っています。

「アウターゾーン」の時と同様に、子供の頃には分からなかった「言葉」が、今になって届いたような気がします。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2009-08-07 20:24:24] [修正:2009-08-07 20:24:24] [このレビューのURL]

おそらく、この作品は作者の前作「電影少女」を読んだかどうかで評価が大きく変わる作品だと思います。ちなみに私は「電影少女」を読んで、この作品の評価を下げました。

というのも、改めて読んでみると、結局この物語は、終始主人公にとって都合の良い物語でしかないように感じたからなんですね。あまりに虫がいいというか。

しかしそう感じる理由はおそらく、登場人物達の心理描写が主人公一貴の一人称でしか描かれていないためだと思われます。つまり、主人公だけじゃなく周りの人間も、その時々でどう思っていたのか。それが読者に把握出来ないでいると、読んでいる読者としてはなぜそのような結果が生まれたわけか、納得できない部分がある訳ですよね。「結局、都合の良いように話が進んでいくだけか」と。

失敗作、というよりは、少し正当すぎた作品だと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-08-07 20:22:42] [修正:2009-08-07 20:22:42] [このレビューのURL]

会者定離、愛別離苦。出会うものは必ず別れる。これはある意味では人生における真実と言えますが、作者が望むべき形で終わることの出来たこの作品は本当に幸せな作品であり、私自身がこの作品に出会えたこともまた本当に幸せなことだったと、連載が無事に終わった今、痛切に感じます。

<ストーリーに関して>
まず、この作品のストーリーに関して、特に優れているといえるのは、何と言っても「常に読者の予想を裏切り、上回り、超えてくる」事。この一点に尽きると私は思います。

予想が裏切られるという事は、つまり次のページをめくる楽しさがある、という事。簡単なようで難しい、読者を惹きつける基本中の基本が、この作品には最大限に詰め込まれています。

<画面構成に関して>
次に、この作品のもう一つの魅力として、奇抜で個性的、かつ独創的な画面構成が挙げられます。視覚的なトリックというのか、ある意味では斬新で革新的なその画面構成は、読んでいてストーリーとは別の楽しさがありました。


ところで、これは常々思う事なのですが、漫画と人生の決定的な違いは「めでたしめでたしの後も、人生は続いていく」という事。漫画に限らず物語というのは、その登場人物達の人生における、ある一部分を切り取ったものであり、作品におけるハッピーエンドというのは、あくまでその一部分のみを見た結果でしかないという事。

だから、「人生は漫画のように上手くはいかない」というのは正解でもあるし、間違いでもあると私は考えています。つまり、漫画というものは上手くいった部分だけを切り取ったものであるため、それに妄信しすぎてもいけないし、絶望しすぎてもいけない。どの程度自分の人生と照らし合わせるかはその人次第なんじゃないかと、そんな事を思います。

最後に、「出会えて良かった」という感謝の意を表して、この作品に10点を贈ります。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2008-12-04 20:03:42] [修正:2009-08-05 19:31:39] [このレビューのURL]

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