「鋼鉄くらげ」さんのページ

総レビュー数: 292レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年10月28日

結局のところ、漫画における「巻数」というものは、ストーリーを語る上で「結果としてそうなった」だけのものでしか無く、「巻数」の多さでは物語に対する面白さの尺度は測れないのだということを、この作品を読んで改めて感じます。

なお、この作品は、非常に緻密かつ綿密に物語が組み上げられているため、物語の細部に関して何かを語ろうとすると、必ず物語の核心部分に触れてしまいます。なので、今回は物語の大枠部分だけを簡単に説明して、あとは個人的な感想を少し述べるだけに留めておきたいと思っています。

まず、この作品を一言で表現するのなら、作者の方も述べられている通りSF版「十五少年漂流記」です。

ある時、学校行事で惑星キャンプを実施することになった高校生ら男女9人が、キャンプ先の惑星に到着直後、謎のワープゲートに吸い込まれて、元いた惑星から5012光年離れた宇宙に飛ばされることになってしまった。果たして、彼らは無事に故郷へ帰還することが出来るのか。

というのが、この作品の主なストーリー部分です。ただ、この作者は前作の「SKET DANCE」の時もそうでしたが、非常に論理的で理知的な話を作るのが上手く、この作品でも、実に論理的で現実的な解決方法で、次々に訪れる困難を解決しています。おそらく相当練った構想をしているのだろうと思うのと同時に、おそらくこの作品は「描き始めた直後から」物語の最後までが既に完成されていたのだろうということが容易に想像できるほど、優れたシナリオになっています。

だとすれば、引き延ばしも無駄なエピソードの追加も一切することなく、全5巻ですっぱりと物語を完結させられたことは、この作品にとって本当に幸せなことだったのだろうと思いますし、それによって、この作品が本当の意味で「作品」となることができたという、稀有な例の作品だったのではないか、とも思っています。

最後に、どうかこの作品は全5巻を一気に読んでみてほしいと思っています。最後まで読んだ後にもう一度最初からこの作品を読み返してみると、改めてその完成度の高さに驚かされるはずです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2018-05-02 19:39:11] [修正:2018-05-02 20:12:17] [このレビューのURL]

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