「鋼鉄くらげ」さんのページ

総レビュー数: 292レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年10月28日

自分にとって「名言や格言の宝庫」とも言うべき作品です。

この作品の中で、今でも強く印象に残っている言葉は以下の三点。

1 「あんたが年を取ればあたしも年を取る。それでいいじゃないか。」
2 「お前もしかしてまだ 自分が死なないとでも思ってるんじゃないかね?」
3 「できればもう一日生きたい。明日ヒットスタジオに戸川純が出る」

その他にも、この作品の中で登場している数々の名言集をかき集めれば、それこそベスト100の大辞典が編纂できるほど大量の名言集がこの作品には埋蔵されているんですが、今回はひとまず、この三つに厳選したいと思います。

その中でも特に気に入っているのが、一番最初に挙げた台詞。
「あんたが年を取ればあたしも年を取る。それでいいじゃないか。」
これは、若かりし頃の幻海師範が「老い」について悔しさを感じている若かりし頃の戸愚呂(弟)に向けて言った台詞です。

自分が年を重ねれば重ねる程、当然の事ながら周りの人達も一つ、また一つと同様に年を取っていくわけで。しかし、自分だけは変わりたくない。老けたくない。いつまでも「若さ」とか「青さ」とか、そういう若者だけが持つ専売特許を手元に持っていたい。そんな子供みたいなワガママをごねてみても、年が過ぎれば、結局はまた一つ年を取ってしまう。それは「生」を生きる人間にとって(生物にとって)悲劇そのものであり、生きる上での業、四苦八苦の四苦の一つ「老」そのものでもあるわけです。そんな生物そのものが持つ根源的な苦しみや悲しみ、怒りや不満に対して幻海師範はたったの一言で救いの手となる「答え」を提示してみせたのです。

この他にも「幽遊白書」という作品には冨樫義博という稀代の天才が生み出した珠玉の名言集が数多く掲載されているので、まだ読んだ事が無いという人にはぜひとも読んでみて欲しいと思います。なお、1巻第1話を読んだら、その次はいきなり2巻の最終話を読むか、その次の3巻を読む事をお薦めします。その理由は、まぁ個人的な好みの話なのかもしれませんが、1・2巻の内容はベタなヒューマンドラマばかりで、正直そんなに面白くありません。ですが、この部分だけで「幽遊白書はつまらない」と判断されるのは、とても忍びないので、初見の人にはぜひとも3巻以降から始まる霊界探偵浦飯幽助を読んで、「幽遊白書」を判断してほしいと思います。いやもっと言えば、「幽遊白書」が本当に面白くなるのは戸愚呂兄弟が出てきてからなので、ぜひとも暗黒武術会までは行って欲しいところです。ここまで来てしまえば、あとはもうノンストップ、勝ったも同然です。おそらく気が付いた頃には最終巻に手が伸びていることでしょう。

今こうして「幽遊白書」を振り返って、「幽遊白書」がなぜ名作と成りえたのかを考えた時、その理由はおそらく、単にキャラクターの人気やアニメのヒットによる経済的な相乗効果があったからだけではなく、こうした読む人(観る人)の心を打つ数多くの言葉たちがあったからではないかと、今になって自分は思っています。

一つの作品を読み終えた時、作中の何かに感化され、その作品によって自身の考え方や価値観が変容していく。そんな作品を、きっと人は「名作」と言うのだと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-12-10 22:35:23] [修正:2011-12-11 23:40:37] [このレビューのURL]

9点 リアル

非常に評価の難しい作品です。

何故なら、エンターテイメントとしての「面白い」という言葉の概念では、この作品の評価としては不適当なものだと思うからです。

この作品は、いわば三人の若者達のドキュメンタリー作品で、現実に苦悩し、葛藤する若者達の等身大の姿を、ありのままに描き出し、大衆社会へ提示することで、あなたはどう感じるか?を問うているものなのではないかと、私は思っています。

おそらくそこに答は無く、どう感じるかはその人次第。それ故に「娯楽」としての「面白さ」を物差しとしてこの作品を評価する事は、少しズレがあるのではないかと感じます。

もう一つ、この作品の正当な評価を難しくしているのが、この作品が「井上雄彦先生の作品だから」です。

有名作家が描いた作品という一般的事実が、また一段とこの作品に対する客観的な評価を難しくしています。

しかし、そうは言っても当の井上先生はこの上ない画力、構成力を持つ作家であり、「魅せる漫画」を描く作家の一人だと私は思っています。

圧倒的な画力と、キャラクター達の持つ魅力、そして読者一人ひとりを作品の世界観へと引き込ませる力、しかし一方で今後一つの作品として完成度の高いまとまりを持った作品となるかどうかは、まだ未知数である。という、以上の理由から、9点という評価を付けました。

<2011年1月 追記>

10巻まで行っても(10年経っても)未だに一念発起してやる気を見せようとしない高橋に対しては正直8巻辺りからイライラしていたんですが、しかしよくよく考えれば、それこそがごく普通の人間としての「リアルな姿」なのではないかと、そんな事を最近になって考え始めました。

普通の物語ならば、絶望の淵から再起して、社会復帰を目指そうとする高橋の挑戦物語が始まりそうなものなのですが、彼はいつまで経っても再起の一歩を踏み出せず、自分に言い訳をしたり、逃げる場所を探していたりしています。しかし、その高橋の姿こそが本来の人間が持つ姿であり、絶望の淵に堕ちた人間心理そのものではないかと私は考えました。

物語たりえない人間らしすぎる行動。それは、物語を構成する上では非常に大きな欠陥とも言える要素かもしれませんが、「リアル」を写実する上では実に重要な要素です。その意味で高橋は非常に魅力的な行動を取ってくれるキャラクターであり、この物語の中で誰よりも「リアル」の世界を生きているように思えます。高橋が今後どうなるのか。その行く末がとても興味深いです。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2008-11-13 20:21:16] [修正:2011-01-23 23:59:24] [このレビューのURL]

夢を持っている少年達にではなく、夢を持っていた「かつての少年達」に贈られた物語。

人って、少年・少女から「大人」へと変化する過程の中で、突然この世の全てが憎くなり絶望し、最終的にはこんな世界なんか滅んでしまえばいい、なんていう考えになってしまう時期があると思うんです。それはつまり、自己以外の全てに対する存在意義の否定です。しかしそれは逆に言えば、それほど強大な意志を持った、他者に対しての自己肯定の願望意識の現れであるとも言えると思うんです。つまり、「私を認めて欲しい」という意識です。

この物語は、そんな絶望と願望から生まれた作品のように思えます。

ある日突然、子供達は気付いてしまうんです。
世界は限りあるもので、宝島や夢の王国なんていうものは存在しない。
社会は欺瞞に満ちていて、正義のヒーローや神様なんていうものも存在しない。
あるのはただただ「現実」のみで、そこには空虚で冷たい世界しか存在していない。
そんな、社会に絶望してしまった「かつての少年達」に贈られた、「残された希望」とは何かを問い掛けた物語。それが、この「惑星のさみだれ」という作品だったのではないかと思います。

最後に、この作品を一度全て読み終えた人には、もう一度最初から読むことをオススメします。もう一度読み直すと、作者が終盤に向けて序盤に仕掛けた伏線の数々が、意味を持ってもう一度姿を現してくると思います。

「こんな世界なんか、滅んでしまえばいい」

そう思っている人達に、ぜひ一度読んでみて欲しい作品です。

ナイスレビュー: 3

[投稿:2009-04-02 19:48:44] [修正:2010-12-02 12:03:43] [このレビューのURL]

ガンガン発行コミックスの、発行登録番号「0000」を持つ作品。

ドラゴンクエストのスピンオフ作品の中で一番好きな作品というだけでなく、今まで自分が出会ってきた作品の中で、間違いなく上位十傑に入るという作品。この作品の続編である通称「紋継ぐ」に随分と不満な感情を抱くのは、偏に前作のこの作品が途轍もなく面白く、高い完成度を誇っていた作品だったからに他なりません。

基本的な物語のベースとしては、ドラクエらしいシンプルでクラシカルなストーリー展開であるにも関わらず、一方で合体魔法などのオリジナル魔法や、超古代文明の存在といった、プラスアルファの独自の要素も取り入れている、実に果敢で、挑戦的な試みを行なっていた作品です。

では何故10点ではないのかと問われれば、それはやはり最終決戦で、これまでに作り上げてきたキャラクター達の扱いがあまりにも「ぞんざい」だったためだと思われます。せっかくの最終決戦であるにも関わらず、今までのキャラクター達に、ほとんど見せ場が無いまま戦いが決着した事は、やはり長い間ストーリーを追いかけてきた一人の読者としては、一抹の寂しさを感じました。

ただ、そうは言ってもそこに至るまでの過程はかなり熱いものがある作品なので、この作品は、かつての子供達だけでなく、今の子供達にもぜひ読んで欲しい作品です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-03-06 20:27:58] [修正:2010-03-06 20:27:58] [このレビューのURL]

どこまでも広がる大空を、全速力で駆け抜けていくかのような、疾走感と爽快感を持つ作品です。

そそっかしくて向こう見ずな行動ばかり引き起こす主人公の女の子には、見ているこっちもハラハラさせられますが、無事に問題が解決した時は、登場人物のみならず読者自身も「あー、良かった」と、ほっと胸を撫で下ろしてしまいます。

中には多少、時代錯誤な部分もありますが、今読んでも充分面白いと思います。

正直、この作品が当時アニメで放送されていた時の記憶はほとんど無いのですが、何年経っても、ある時ふっと思い出して読んでみたくなる作品。そんな作品は素晴らしいと思います。そして、「終わり」が描けるという事は、悲しい事でもあるけれど、幸せな事でもある、という事を切に感じます。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2008-12-07 20:27:10] [修正:2008-12-07 20:27:10] [このレビューのURL]

自分が生まれて初めて買った漫画です。

この漫画の作者、柴田亜美先生は、ドラクエ4コマ時代の印象が幼心に物凄く強烈に残っていて、今でも自分が多大な影響を受けていると感じる漫画家の一人です。

この作者の織り成すブラックジョークは、正に独特で、それは、4コマ時代の時から明らかに他の漫画家さん達とは一線を画していました。

「パプワくん」の方では、前半その傾向が色濃く反映されましたが、後半は登場人物達の織り成す人間模様にその重きが置かれてしまったため、そういった意味では後半、この作者の持っている持ち味が充分反映されなかったかもしれません。

しかし、いずれにしても、この作者からは、唯一無二の「個性」を色濃く感じます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-10-06 20:29:15] [修正:2008-10-06 20:29:15] [このレビューのURL]

山奥の森の中にある、清く澄んだ泉。

不思議系漫画の中では、一番好きな作品です。

科学では解明できない超常現象を信じる心。

それを失う事は、是か、それとも非か。

二元論で割り切れない心の行方は、どちらにも辿り着けず、今日も彷徨い続けています。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-10-06 20:11:29] [修正:2008-10-06 20:11:29] [このレビューのURL]

正に「アーティストが描いた漫画」です。普通の漫画家が守っていた、漫画を描く上でのルールやセオリーをことごとく無視して、独自の道を歩んでいきました。

漫画家は、プロとして読者に伝わるような話を作らなければならない。漫画家は、プロとして恥ずかしくない画力で作品を作らなければならない。こうした従来の固定観念や既存の価値観を見事に打ち破ったこの作品は、実に革新的な作品だったと思います。

しかし、この作品は一方で漫画界に、ある意味では負の影響も与えてしまいました。それは、この作品以降、あまりにも何を伝えているのか分からない意味不明漫画が横行し出した事です。つまり、この作品の作風を真似た様な漫画が、安易に同じようなヒットを狙いに走り出した事です。

具体例を挙げるとその漫画に失礼なので控えますが、こういう、作者のセンスで作られる作品は、他人が真似ても結局は上っ面だけで終わってしまう様に感じます。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-02-13 21:14:21] [修正:2008-02-13 21:14:21] [このレビューのURL]

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