「鋼鉄くらげ」さんのページ

総レビュー数: 292レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年10月28日

ある一人の新任教師が南端に存在する島の学校に赴任し、そこで学校の先生として島の子供たちとの交流を深めていく、という超有名小説そっくりな初期設定です。

まぁ確かに取材をしただけあって南国の島独特の空気感みたいなものはよく出ているんですが、はっきり言ってしまえばそれだけの漫画です。悪い作品ではないのですが、「漫画」としての面白さが全然ありません。絵が巧いとか、ストーリーが秀逸であるとか、あるいは構成が卓越であるとか、発想が斬新かつ奇抜であるとか、そういった漫画を読むときに楽しみとなる、作品としての妙味がことごとく欠けています。

表紙絵のパッと見の印象が良かっただけに、実に残念な作品でした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-12-29 10:22:42] [修正:2010-12-29 10:30:20] [このレビューのURL]

最後の方は目も当てられない程のヒドい有様となったこの作品ですが、トータルで見るとやはり独特のセンスと面白さを持った作品でした。(それでも正直、素直に面白かったと思えるのは10巻前後くらいまでですが。)

ところで、どうして最初の方よりも最後の方が面白くなかったのかと考えてみたのですが、その理由はおそらく「ギャグに対する共感性」の低下なのではないかと考えました。例えばの話ですが、全身タイツの男が目の前から走ってきたとして、その男性が友人たちの間でも人気者のA君なら違和感なく笑って許せるはずですが、普段無口で全く喋らない無愛想のB君なら逆にキモくて、B君頭どうしたの?となる訳です。

つまりどういう事かというと、ギャグというのは起きている現象(=ネタ)そのものもさることながら、その現象を取り巻く環境やバックグラウンドも、ギャグの面白さを決定付ける重要な要素となるのではないかと考えた訳です。

あとは…そうですね。最後の方のジャガーは、最初の方に比べて読んでてツッコみづらいんですよね、ギャグに対して。ボケられてもそのボケが異質過ぎて、読み手としては反応しづらいというか。その辺りも共感性の低下の一部分だったんじゃないかと思います。

まぁ、前にも書きましたが、この作品は定食で言えば添えつけのお新香のような存在です。なのでメインとして楽しむというよりは、あくまで息抜き程度に楽しむと。そういう作品として捉えればいいんじゃないかと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-06-15 20:32:47] [修正:2010-12-04 14:03:07] [このレビューのURL]

夢を持っている少年達にではなく、夢を持っていた「かつての少年達」に贈られた物語。

人って、少年・少女から「大人」へと変化する過程の中で、突然この世の全てが憎くなり絶望し、最終的にはこんな世界なんか滅んでしまえばいい、なんていう考えになってしまう時期があると思うんです。それはつまり、自己以外の全てに対する存在意義の否定です。しかしそれは逆に言えば、それほど強大な意志を持った、他者に対しての自己肯定の願望意識の現れであるとも言えると思うんです。つまり、「私を認めて欲しい」という意識です。

この物語は、そんな絶望と願望から生まれた作品のように思えます。

ある日突然、子供達は気付いてしまうんです。
世界は限りあるもので、宝島や夢の王国なんていうものは存在しない。
社会は欺瞞に満ちていて、正義のヒーローや神様なんていうものも存在しない。
あるのはただただ「現実」のみで、そこには空虚で冷たい世界しか存在していない。
そんな、社会に絶望してしまった「かつての少年達」に贈られた、「残された希望」とは何かを問い掛けた物語。それが、この「惑星のさみだれ」という作品だったのではないかと思います。

最後に、この作品を一度全て読み終えた人には、もう一度最初から読むことをオススメします。もう一度読み直すと、作者が終盤に向けて序盤に仕掛けた伏線の数々が、意味を持ってもう一度姿を現してくると思います。

「こんな世界なんか、滅んでしまえばいい」

そう思っている人達に、ぜひ一度読んでみて欲しい作品です。

ナイスレビュー: 3

[投稿:2009-04-02 19:48:44] [修正:2010-12-02 12:03:43] [このレビューのURL]

『今から君達一人ひとりに「色」を与えます。それは、これから君達が向かう人間界で「個性」と呼ばれるものです。君達はこれから先、人間界で人間として生きていく中で、その「色」を充分に生かした一生を過ごしていって下さい。』

自分達が生まれる前に、神様からそんな手解きがあったのだとしたら、自分に与えられた「色」は何色だったのだろう。そんな事を思った短編集です。

「それ町」でも思った事なのですが、この作者はとても個性的な「色」を持っています。それこそ赤や青などといった単色ではない、モスグリーンやビリジアンなどといった複数の色が混ざり合わさった、とても複雑な色合いです。

面白さを求めるというよりも、作者、石黒正数という人物の人間観察としてこの短編集を読んでみる。作品に対して向かう姿勢としては、そちらの方が正しいのではないかと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-12-02 12:02:26] [修正:2010-12-02 12:02:26] [このレビューのURL]

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