「s-fate」さんのページ

7点 ブッダ

「聖☆おにいさん」で本人?が号泣して読んでいたので、「そんなにw」という程度の軽い感覚で読みました。
号泣はしませんが良い作品だと思います。よくこのボリュームで抑えられたものです。
 この作品は手塚流のフィクションだそうですので、もとになる仏典とは違うみたいです。読み終わってあとがきも読んだら、主たるキャラクターが結構架空なのでちょっと驚きました。
 全体の話はブッダがもちろん中心ですが、そのまわりを固める人や、ある意味ブッダを超越した立場の人などもそれぞれ別に話を進めて行くので、ブッダ本人がなかなか出てきません。だから人によっては、伏線の長さに読むのを辞めてしまうかもしれません。ただ、そこをクリアできてブッダが登場し、各登場人物と繋がりができてくると、話が面白くなってきます。ブッダが中盤で悟りを開くあたりが感動のピークでしょうか。もちろん後半もさんざん前半で張った伏線が生きてくるので面白いです。
 また、ホントのブッダがどうなのかは知りませんが、この作品のブッダは非常に人間くさいです。もちろん奇跡や不思議な能力等に彩られ、選ばれた特別な人のような面もありますが、作品中では超越した存在という感じがしません。王族生まれのボンボンで、子供の頃から体が弱くて、意を決して出家してからも洞窟に引きこもってあまり人に会いたがらない時期の描写もあります。そして悟りを開いたあとも、ブラフマン(梵天)に同じところにいないで布教にまわれと尻を叩かれたり、幼少の頃からの友人(弟子)が、子供の頃に抱いた復讐心から逃れられず禁を破って戦いに身を投じて死んでしまったとき、自分の教えはすべてが無駄だったのではないかと迷う様などは、人間そのものだと思います。有名な入寂の場面も、絵は有名なそれですが、実はお尻が大変なことになっていて弟子が布を沢山手配するなど、寸前までとても安らかな感じではありません。
 個人的にはフィクションといえど苦難を乗り越え立派な道を歩んだ人の話として良くできていると思います。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-08-02 21:26:36] [修正:2010-08-02 21:26:36]

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