「鋼鉄くらげ」さんのページ
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<レビュアー名の由来>
・自分を海の生物に例えたら「くらげ」だと思った。
・これだけでは何か物足りないと思い、辞書を引いて面白そうな単語を探していたところ、たまたま開いた辞書のページに「鋼鉄」という単語を発見した。
・その二つの単語を足して「鋼鉄くらげ」になった。
という単純な由来です。
<点数基準>
0―3点 つまらない漫画 嫌いな漫画
4―6点 普通の漫画
7点
割と面白いと思った作品。100点換算にすると 70 ― 79 点 評価。
世間の評価とかはあまり関係なく個人的に「面白い」と思ってしまえば割と気軽にこの点数を付ける傾向があるため、自分の7点評価はあまり参考にしないでほしいと思っている。
8点
結構面白いと思った作品。100点換算にすると 80 ― 89 点 評価。
一年に数回付けるかどうかと言う点数。基本的に続巻はここまでの点数しか付けないようにしている。7点評価との違いは、作品そのものの面白さとは別に、その作品にしかない個性や魅力、あるいは独自性のようなものがあるかどうか、という点が評価のポイントになっている。
なお、点数のインフレを防ぐために、そう簡単には8点評価を付けないようにしている。
9点
かなり面白いと思った作品。100点換算にすると 90 ― 94 点 評価。
一年に一回付けるかどうかと言う点数。基本的に完結した作品のみに付ける点数で、自分が文句なく面白かったと思う時に付ける点数。
10点
傑作と呼ぶに相応しい作品。100点換算にすると 95 ― 100 点 評価。
物語の完成度の高さが抜群であり、何度読んでも「面白い」と思える凄さが作品そのものに宿っている作品に付けている。

<はじめに>
とりあえず今回は色々書きたいことがあったので、いくつかのテーマに文章を分けました。
正直なところ、このタイミングで終わるとは全く思っていなかったで、実はかなり驚いています。しかし、よくよく読み返してみると、10巻あたりからもう既に物語を畳む雰囲気が、そこかしこから醸し出されていたのを考えると、このタイミングでの幕引きは必然であり、むしろ当然だったのかなとも思います。
<ストーリーについて>
得点は8点。9点ではなく8点。この点数評価は偏に「ストーリー」の物足りなさから由来しているものです。「帯をギュッとね!」と「モンキーターン」。前の二作ではきちんとストーリーをある一定のピークのところまで持って行って話を終わらせましたが、この作品は○○○(ネタバレ防止のために伏せました。○の数も合っていません)と、ひどく中途半端なところで終わっています。ここから先は色々と邪推してしまいますが、自分の考えをまとめると要するに、雑誌異動とか色々あって「作品そのものを無事に完結させられるかどうか不安になったため、ある一定のところで物語に区切りを付けたんじゃないか」というのが自分の予想です。
だから合宿の話が異様に長く、また新入生もこれ以上入ってこないし、他校の新しいライバルなど新キャラも登場しない。話をまとめ上げられなくなるから。そんな事情でこのタイミングで物語を完結させたのではないかと思います。まぁ、ただの推測になってしまいますが。
そんな訳で面白くなかったのではなく、物足りなかった。その表現が一番しっくりくる気がします。
<「書道」とは何か>
最終巻の巻末コメントで作者は「自分は字が上手くなかった」と述べていますが、私もそれと同様で、昔から字が下手で習字の時間が苦痛でした。「しんにょうのはらい」の形がどうとかそんな細かいことを指摘しないでほしいとか、見本通りにきちんと正確に書きなさいとか言う割には、世の中の良書と呼ばれる作品群が読めないものばかりなのは何だか納得いかないとか、そういった考えを持っていたので、正直「書道」は自分にとって理不尽な世界そのものでした。
しかし、この作品を読んで改めて「書道」というのはどういうものだったのかを考えてみるとやはり「自身の内面を表現するための手段の一つ」であり、茶道や剣道、柔道などと同じく「道」を追求する分野の一つだったんじゃないかと思います。もちろん、当時小学生だった自分にはそんなこと思いもしませんでしたが。古典や漢文と同じく、ある程度年齢を重ねてからその世界に踏み入れてみると、また違った側面が見えてくる。そんなことを学んだ良い機会でした。
<結び>
作品全体の感想をまとめると、ストーリー漫画としては不完全燃焼でしたが、書道漫画としてはこの上ない良作でした。
最後に、この作品の第13巻176・177ページに掲載されている
井上有一 作 「噫横川国民学校」
の書は、日本人ならぜひ一度は見て欲しい書です。
ただ、心して見てください。
「書」ではなく、身も心も引き裂くような魂の慟哭。
悲しくも激しい表現者の姿がそこにはありました。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2015-05-30 23:48:26] [修正:2015-05-30 23:54:55] [このレビューのURL]
8点 ヤンデレ彼女
実際のところ、物語自体はまだ完結していないんですが、話の根幹部分である「田中家の家庭の事情」が一段落し、また、自分の中でもある程度評価が固まってきたので、今回この作品のレビューを書きたいと思います。
詳しい話の内容はあらすじなどを読んで知ってほしいとして、今回はなぜ(自分基準で)「そう簡単には付けない」8点をこの作品に付けたのか。その理由について、この作品のレビューと併せて書いていこうかと思います。
この作品が8点だと思う理由。それはズバリ「心理描写が優れているから」です。もっと言えば、ある登場人物が別の登場人物から一つの言葉を投げかけられた時に、受けた側の登場人物が何を思うのか。また、思った上でどのような言葉を述べるのか。その過程と台詞選びが抜群に上手いと感じ、今回この作品に8点を付けました。
一例を挙げたいと思います。13巻115ページから。主人公の田中が「大事な二人のうち、どちらか一人を見捨てなければならない状況に陥った時あなたならどうするか」と生徒会長に尋ねた時、生徒会長は「二人とも助ける」と答えました。「それはどちらか一人を選べないくらいに、どちらも大切だからという意味か」と再度田中が尋ねたところ、生徒会長は「違う」と答えました。生徒会長は「どちらか一人を助けたとしても、助けられた方の一人は僕をもう今までと同じようには見てくれないだろう。僕にはそれが耐えられそうにない。だから選べない。」と選べない理由を答えます。
このような、明らかに違う考え方を持つ登場人物を巧みに使い分け、また、そうした異なる考え方を持つ者同士が物語を通してぶつかり合った時に、彼らがそれぞれどのような発言を行なっていくのか。そしてそれらを基にどのような物語が展開されていくのか。その理解と把握が実に見事です。
絵柄は可愛らしく、一見するとよくある日常系の作品かと思われてしまいそうですが、実際はヘタなドラマよりもずっとドラマチックです。ただその一方で、「田中家の事情」の話は正直かなり重たすぎる内容になってしまったので、読者層のことを考えるとちょっとやりすぎだったんじゃないかなとも思います。
いずれにしても「物語」として優れている、良い作品だと思います。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2015-01-09 22:08:58] [修正:2015-01-09 22:39:07] [このレビューのURL]
8点 月刊少女野崎くん
つまるところアニメから生み出される「面白さ」というのは、生のままでも充分美味しい食材(原作)が目の前にあったとして、その食材を捌く料理人(製作スタッフ)がいかに上手く、その食材を調理できるかどうかに懸かっている、ということと同じことなのかもしれません。
そういった意味ではこの作品は良い料理人に恵まれた幸せな作品だったのですが、勿論原作の方も充分面白いです。
「少女漫画家あるある」ネタをギャグにして繰り出すボケは、華やかで煌びやかな印象を与える少女漫画の世界も、一歩裏口に入り、その舞台裏を覗いてみれば実にリアルで生々しい、人間臭い世界に満ち溢れているという至極当たり前な姿を、ギャグの力を借りて読者に見せつけてくれます。
現行の巻数もそれほど多くないのでぜひ多くの人に読んでもらいたい作品です。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2014-10-03 22:12:13] [修正:2014-10-03 22:12:13] [このレビューのURL]
8点 SKET DANCE
おそらくこの作品は
「今私たちは青春時代を楽しんでいる」現在進行形の物語ではなく、
「かつて私たちは青春時代を楽しんでいた」過去完了形の物語。
つまりこの作品は、終わってしまった青春時代に対して、大人になった作者が後ろを振り返った時に、あの頃は楽しかったなとか、あの頃に戻りたいなとか、そういった郷愁や追想の念を込めて作られた物語であり、一種の回顧録のようなものだったと私は考えます。
その時は気付かない「今が楽しい」という事実。
その時は気付かない「今の時間」が持っている輝かしさ。
そんな、ともすると青春時代の美化とも揶揄されないこの作品は、作者の、「大人」としての立場から送られたメッセージが随所に盛り込まれています。しかし多くの子供たちはそれらの「作者が贈ったメッセージ」には気付かないでしょう。かつて私たちが、大人たちから言われた多くの言葉を忘れてしまったように。卒業式に述べられた式辞。卒業文集に書かれた言葉。先人たちが残した言葉の多くは、自分たちがその立場になった時に初めて気付かされます。
夏休みに課された自由研究。
退屈で仕方が無かった古典の授業。
大人たちが子供たちに伝えたかった言葉や思いは、いつの時代も十年越しです。
この「SKET DANCE」という作品に込められた作者の言葉や思いが、十年後の大人たちに無事に届いた時に初めて、この作品は完結を迎えるのではないかと考えます。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2013-08-09 20:20:26] [修正:2013-08-09 20:33:19] [このレビューのURL]
8点 テラフォーマーズ
火星に移住したい人類が、ゴキブリを撒いて地表面を黒くすることで温室効果を発生させ、火星の地下内部に眠る冷凍の二酸化炭素を溶かす計画を考えた。500年後、人類が火星に降り立ってみると、どういうわけか、火星にばら撒いたゴキブリが異常な進化を遂げ、生身の人間ではとても対処できないような、途轍もない身体能力を持った生物に進化していた。
なんていう、さすがにSFものはツッコミどころ満載だなと思う基本設定のこの作品。
ただ、SFものに現実的なツッコミをいれても仕方が無いので、今回はそういうのはナシでいきます。
『このマンガがすごい!2013』のオトコ編で1位になったこの作品。多分自分は、この作品が『このマンガがすごい!2013』で1位を取らなかったら、一生この作品を読むことは無かったんじゃないかと思います
(絵柄的な好みの問題で)。ですが、確かに1位を取るだけあって話の内容は面白いです。
タイプ的には同じ雑誌に掲載されている『GANTZ』と似た様な感じです。なので、人体がバラバラになって血しぶきが飛び散ったりだとか、臓器が体からはみ出たりするようなグロい描写が苦手な人は、きっとキツいと思います。基本バトルはガチの肉弾戦なので。
1巻の終わり方はまるで最終回のような終わり方なんですが、1巻の内容は言わば2巻目以降の壮大な伏線みたいなものです。1巻でベースとして築き上げた物語の基本設定が、歴史の積み重ねによって2巻目以降に更に活かされていきます。なので、1巻だけで読むのをやめてしまわずに、ぜひとも2巻目以降も読んでみて欲しいと思います。というか、2巻目以降がゴキブリとのバトルの本番です。
正直、1巻ずつチマチマ読んでいくと話の続きが気になって仕方が無いので、本当は全部物語が完結してから読んだ方がいいんじゃないかと思います。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2013-02-15 22:23:33] [修正:2013-02-15 23:34:16] [このレビューのURL]
8点 魔法陣グルグル
自分が好きなギャグ漫画のトップ3に入ると思うこの作品。
この作品の面白さは何と言っても「フィクションとして守るべき最低限のルールを『ギャグだから大丈夫』という訳のわからない理由で平然と飛び越えてしまうところ」にあると考えます。
当たり前ですが、フィクションがフィクションとして存在するためには、ある程度のリアリティを排除しなくてはいけません。恋愛ドラマのクライマックスで、彼氏が彼女に愛の告白をしようとしている時に、どこからともなく石焼き芋の声が聞こえてきたら変ですし、そのあと、キスをしようとしてお互いの顔を近づけたら、彼氏の鼻の穴から鼻毛がはみ出ていたなんてこともあり得ません。しかし現実にはあり得ます。可能性としては限りなく低いですが、あり得ないことはありません。人間ですから。現実ですから。つまりフィクションというのは、ある程度のドラマ性を確保するために、そうした現実的な、引いては人間的な側面を排除しなければならない舞台設定だと言えます。
しかしこの作品は、そんな、物語がフィクションとして存在するために必要な「現実性の排除」をことごとく無視しまくっています。
ダンジョンに入ればどこからか焼肉の匂いがしますし、シリアスな場面では他の誰かが屁をこきますし、勇者の投げたナイフで盗賊のお頭(おっさん)が半ケツ状態になりますし、資金集めのために始めた店屋では半裸のオヤジが脇の下でおにぎりを握っていますし、しまいにはラスボス戦で勇者がう○こに行きたいと言い出す始末です。もうやりたい放題です。
ただ、そうした発想こそがギャグの本質だと思うんですよね。シリアスな場面にあえて人間臭さや現実的な側面を持ち込むことで、それがギャグにつながり、見る人(読む人)の笑いを誘うというか、そんな感じがします。
しかし、勿論そうした下ネタ気味なギャグだけではなく、まるで少女漫画の様なメルヘンチックでロマンチックでファンタジックな要素もふんだんに盛り込まれています。(特に10巻辺り)ギャグだけではなく、繊細な心の描写もきちんと描ける辺り、さすがプロの作家だなと感じます。
ちなみに、この作品の中で自分が特に好きなエピソードは、「ノコギリ山」と「ゲソックの森」の二つです。この二つだけは10点を付けたいほどの面白さなんですが、途中、長期連載の弊害からか結構長い期間、物語が中だるみするので、その点を考慮して今回は少し減点して8点の点数を付けました。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2013-01-25 23:19:45] [修正:2013-01-25 23:19:45] [このレビューのURL]
8点 神さまの言うとおり
このレビューはネタバレです。コミック既刊分だけでなく、2012年10月現在まだ発売されていない5巻目の内容も含んでいますので、コミックで続きを読んでいる人は、最新刊の5巻が刊行されてから読んで下さい。
ある日突然、授業中に教師の頭が吹っ飛んで中からダルマが飛び出てきて、ちょっとでも動いたら即死する恐怖の「だるまさんがころんだ」ゲームが始まったことから物語がスタートしたこの作品。
最初の「だるまさんがころんだ」は、クラス代表決定戦。
次の「ねこふんじゃった」は、学校代表決定戦。
三番目の「こけし+綱引き(箱)」は、地区代表決定戦。
そして、いよいよ各「箱」の生き残り達によって行われた全国大会の「大運動会」。
その二種目目。全体を一年から六年の六チームに分けて行われた棒倒し。但し、その棒倒しは普通の棒倒しと少し違っていて、棒の先端に爆弾が付いているため、倒した人間とその周囲にいる人間はその爆風によって死んでしまう。そんな理不尽極まりない死のゲームに対し、主人公の高畑瞬は、同じチームの天谷と共に爆弾の付いた棒を主催者である「神」に投げつけ、「神」の爆殺を謀ろうとした。爆発まであと二秒。
果たして「神殺し」は実現するのか?
という、最高の盛り上がりを見せておいて、まさかの週刊少年マガジンへの移籍が発表されました。
良く言えば週刊少年マガジンへの栄転ですが、逆に言えば週刊少年マガジンからの引き抜きです。
この作品は別マガの中でもかなり好きな作品だっただけに、正直何だかなーという思いです。
まぁ一人の読者としては、これまでと変わらず面白いままの「神さまの言うとおり」でいてくれればそれでいい話なんですが、メジャー誌に移籍することによって、周りの目を恐れて萎縮してしまったり、表現方法に規制や制約がかかってしまわないかが少し心配です。
ちなみに、「神さまの言うとおり 弐」は2013年の1月から連載開始らしいです。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2012-10-12 21:51:33] [修正:2012-10-12 22:17:28] [このレビューのURL]
人間の価値観は千差万別で十人十色。百人いれば百通りの好みや価値観が存在します。そんな中で、全ての人間の価値観に符合する「誰が読んでも面白い作品」なんてものは、未来永劫、半永久的に存在しえないなんてことは、今更ここで長々と語るまでもなく明白なことです。しかし、そんな人類不変の絶対真理を語っておいてなお、この作品に対する感想を述べさせてもらうと、「この作品は面白いです」。
さすがは荒川先生と言うべきか。農業高校の学校生活なんていう地味なテーマの話でも、実に興味深く、そして分かりやすく、作品のテーマから引き出す事のできる面白さを十二分に伝えられています。
さて、今回レビューを書くにあたって作品全体を見た場合、現段階ではレビューを書くにはまだまだ話そのものが始まったばかり。道半ばという段階です。なので今回は、2巻まで読んだ中で特に印象に残ったエピソードを一つ、紹介するだけに留めておこうかと思います。
そのエピソードとは、1巻134ページから展開される「獣医になる夢を叶えるために必要なものは何か?」という主人公の台詞に対して獣医が答えた言葉。
「殺れるかどうか」です。
例えば「小さくて可愛いペットが大好きだから」なんて理由で将来ペットショップ屋さんになりたいなんて言うのは、それこそ幼稚園児レベルの発想で、そんな志望動機は、実際にペットショップ屋さんが抱える苦悩や葛藤をまるで理解していないからこそ出てくる台詞そのものでしかないわけです。
生物を育てるにしろ、生物を救うにしろ、「命」を養うという事は、同時に「命」を奪うという事もその裏返しとして存在しています。そんな厳然たる事実を置き去りにして、安易で一時的な感情論で物事の指針を判断していると、いつか必ず「命」を扱う仕事が抱える絶対的な問題に直面します。それはつまり「死」です。自分が対象生物の生き死にを扱う覚悟があるのか。その覚悟を受け入れる事が、獣医として(命を扱う仕事として)必要な「資格」であると。そんな事を言いたいシーンなんじゃないかと思います。
普段。私たちの食生活は「命」を感じる事が少なくなってきています。今どきの子供たちは、スーパーの魚の切り身がそのまま海を泳いでいると思っている、なんて笑い話もあるくらいです。しかしそれは、逆に言えば、それだけ「生物=食物」という意識が希薄化していると言う事の証明でもあります。食物が大量生産され、製造工程が機械化されれば、それだけ「命」の存在感が薄れ、消失していく。それが善か悪かの二元論では無く、歴史の必然と言われれば、それは人間の傲慢なんじゃないかと、そんな事をこの作品を通して考えます。
自動化され、流動化される時代の中で、敢えて「生(せい)」を描くこの作品が、今後どのような物語を辿るのか。とても楽しみです。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-12-28 20:44:29] [修正:2011-12-28 20:52:39] [このレビューのURL]
8点 D-LIVE!!
漫画のコマ割りというものを考えた時に、漫画のコマ割りがまるで映画撮影の時と同じようにフィルムの一枚一枚をつなぎ合わせていく作業と同じものだと仮定すると、「いつのタイミングのシーンを切り取って、ストーリーの流れとしてつなぎ合わせていくか」という問題は、作品そのものの出来にも大きく影響する、とても重要な問題です。
ある対象物が球体内の中心にあるとして、その対象物を四角いフレームの中に収めようとする時に、どういった「方向」から、どれくらいの「距離」で、更に言えばどの「タイミング」でフレームの中に収めるのか。それを熟慮し、その結論に基づいた、それに相応しい「画(え)」を生み出していく事が、漫画のコマ割り作業の本質だと考えます。
そんな前置きをしてこの作品ですが、この作品はそういった漫画のコマ割りのセンスが抜群に優れています。
超人的な運転技術を持った主人公が、多種多様な乗り物を操って次々に襲いかかる難題を辛苦の末にクリアしていくこのストーリー。そんなストーリーを基盤に持つこの漫画は、ストーリー毎に出てくる乗り物を使った超絶アクションの見せ方が途轍もなく巧いです。それはもう、先程の例に挙げたように、このアングルで、この距離感で、このタイミングでしかないという、ドンピシャな瞬間を切り取ったような「画(え)」で、読者に臨場感や緊張感をダイレクトに訴えかけてきます。
しかし勿論、見所はその「画(え)」だけではなく、話としても一級品です。多少シナリオに他者の介入が入っている部分は否めませんが、それでも、事前の準備や予備知識の収集、あるいはそれらの資料に基づいた緻密かつ精密な描写は、正にプロの仕事です。(描き手からしてみれば、それくらい当然だと言われてしまいそうですが。)
絵柄そのものに好き嫌いが出るかもしれませんが、カッコよくて面白い漫画を読みたいという人にはぜひともオススメしたい作品です。
ナイスレビュー: 2 票
[投稿:2011-05-05 21:51:33] [修正:2011-05-05 21:55:56] [このレビューのURL]
8点 壬生義士伝
反骨精神という言葉があるように、まだコンピューターグラフィックによる漫画の作成が出来ずに、更にはスクリーントーンさえ無かった時代、多くの漫画家志望者達は全て自分の手で(つまりは画力で)万物の全てを描写し、表現しなければなりませんでした。そういった逆境とも言える時代の中で育った漫画家達は、確かに今現在の漫画家達と比べても格段に画力が高いです。自分の手で描かなければ伝えたい事を伝えられなかった時代。上手くなる事は、むしろ必然の結果だと言えたのかもしれません。
そんな前置きをしてこの作品ですが、絵だけをとって見れば、文句無しに10点です。もう惚れ惚れしてしまうほど、その画力は素晴らしく、別マガの中でも群を抜いてその巧さが際立っています。同誌に掲載されている他の作品群が子供同然に見えてしまうほど、その巧さはもはや別次元です。
ただストーリーとしては、自叙伝に近いものがあるため、「楽しむ」というよりは「知る」という感覚の方が強いかもしれません。しかし幕末の時代劇物を楽しみたいという人にとっては、その抜群の画力と綿密かつ緻密な時代考証あるいは舞台設定から繰り広げられる、吉村貫一郎の壮絶な人生叙事詩に充分満足できる作品なのではないかと思います。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2011-02-20 22:28:19] [修正:2011-02-20 22:28:19] [このレビューのURL]
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