「鋼鉄くらげ」さんのページ

総レビュー数: 292レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年10月28日

7点 聲の形

とりあえず1巻のみの感想です。

聴覚障害を持った女子生徒が男子生徒から「いじめ」に遭うという基本設定のこの作品は、そもそも週刊少年マガジンで読切作品として掲載されるよりも更に前、「別冊少年マガジン」で読切連載された時に、かなりのインパクトを受けた作品だったのですが、その作品がまさかこうして週刊少年マガジン本誌で週刊連載されるようになり、更にはこうして単行本化されるとは、その当時はかけらも思っていませんでした。

さて、本題。

本来、「いじめ」という現象は日本独自のものでなく、世界中のどこの国でも見られる現象ではあるのですが、日本のように、集団の中から異質の存在を見つけて、追い込み、排除するという異質排除のいじめ行為は、いかにも島国であり、単一民族国家である日本特有のいじめ現象のように思えます。

他に違う人種や民族のいない日本人にとって、自分たちと違う存在がいることは不気味であり、恐怖です。「周りと違う」それだけで敵意の対象になります。村社会。同族意識。結の精神。日本人が作り上げた民族歴史の中には、そうした集団関係を強く意識した言葉が、数多く隠れ潜んでいます。

そうした中で、今回のこの作品のように、ごく普通の小学生ばかりが通う小学校のクラスの中に、耳が聞こえない女子生徒が転入してきたらどうなるのか。答はもはや語るまでもありません。彼女はクラスメイトからいじめられ、彼女をいじめていた男子生徒も彼女が転校した途端、いじめの矛先を向けられるようになりました。

本来、こうした話をすることは何一つ意味が無いことを充分承知で話をするなら、この一連の話の中で「誰が一番悪かったのか」と考えるなら、自分は「先生が悪い」と答えます。

とにかくこの先生。読切の頃からろくでもない対応ばかりで「お前、本当に教師か?」と軽く問い詰めたくなるくらいに何一つ教師らしいことをしていません。自分が一番嫌いな事なかれ主義の先生です。本来なら、担任の先生が先陣を切って聴覚障害の生徒がきちんと授業を受けられるよう対応し、また生徒たちにも理解を得るよう指導していく立場であるはずなのに、完全に傍観者を決め込んでいます。そしてしまいには加害者の男子生徒に対して「お前のせいだろ、責任とれ」と責任転嫁する始末です。本当に呆れてしまいます。

出会った不幸。環境の不幸。理解されなかった不幸。
とにかく1巻は、ひたすら不幸で終わったこの作品。
この作品が今後、どういう展開を辿っていくのか。とても楽しみです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2013-11-29 23:30:56] [修正:2013-11-29 23:35:40] [このレビューのURL]

予測不能で意味不明、理解不能で非現実的なギャグが次々と、前後左右どこからともなく360度全方向から襲い掛かってくるようなギャグ漫画です。

何と言ってもそのギャグが物凄く個性的というか独創的で、思いもよらぬボケをかましてくるので、当たらない時はさっぱり当たらないのですが、当たった時はまだ自分でも知らない未知のツボを押されたような感覚で不思議な笑いがこみ上げてきます。

ギャグのタイプとしては「マサルさん」や「ジャガー」で有名な「うすた京介」先生と似たタイプの方向性を持った漫画なので、そういうシュール系ギャグが好きな人は楽しめるかもしれません。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-10-27 23:51:04] [修正:2013-10-27 23:51:04] [このレビューのURL]

7点 GANTZ

確かに、トータルで言えば7点くらいなんですが、最終章の「カタストロフィ編」に限っては4点くらいです。
それくらい、物語終盤の凋落ぶりがハンパない作品でした。

何となく興味が薄れてしまい、途中で読むのをやめてしまったという人は、最終巻一つ手前の36巻だけでも読めば充分です。そこで物語全体の大体の「謎」は解明されますから。但し、便宜上の範囲で。

はっきり言って、36巻の「真理の部屋」で語られた「物語の真実」は、ダウトであり、作者がもっともらしく作り上げた「後付けの真実」だと言わざるを得ません。

そもそも、何年も前から宇宙人が地球へ侵略のために飛来していて、彼らに対して対抗するための手段として「GANTZ」のシステムや装備が作られたのなら、もっと正式な機関(つまりは国家とか軍隊とか)が、周到かつ綿密な準備と訓練のもとに対抗策を講じるはずです。それにも関わらず、「たまたま運悪く死んだ人の肉体」を「GANTZ」の戦闘候補生として選び出し、訓練させ、最終章である「カタストロフィ編」で宇宙からの侵略者に対して、人類全ての希望として戦わせるなんていう作品全体の流れは、どう考えても非論理的ですし、合理性に欠けています。それだったら、最初から軍隊とかプロアスリートとか、戦闘兵として素質のある人達に「GANTZ」の武具を装備させて異星人と戦わせて経験を積ませていった方がよっぽどか合理的ですし、確実です。わざわざ死んだ一般人に異星人と戦わせる理由が分かりません。

結局のところ、作者自身が考え無しに物語を描いてきた結果、初期設定との整合性がつかなくなったんじゃないかと思います。まぁ仕方無いですね。「GANTZ」という作品は元々そういう作品。つまりは、作者の自己満足で描かれていたような作品ですし。

結果、一時の娯楽としてはそこそこ楽しめるエンターテイメントにはなったと思いますが、あくまで、そこまでの作品だと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-10-11 23:49:35] [修正:2013-10-11 23:53:55] [このレビューのURL]

マニアックな面白さを持つギャグ漫画の魅力を伝えるのは難しいです。

伝わらないことを承知で例えて言うなら、この漫画のギャグの仕掛け方はまるで「酔拳」です。予測不能の動きでこちらへ近づいてきて、予測不能のタイミングでギャグという拳法技を繰り出してくる。しかもそれは酔拳のようにふらついてるので、相手に上手く当たらないこともあるが、上手く当たった時の破壊力は抜群。と、そんな感じのギャグ漫画です。なので、ハマる人は超絶ハマると思いますし、ハマらない人はこれっぽちもハマらないと思います。まぁでもいいです。それがギャグ漫画だと思いますし。

後半、やたら物語がハーレム化していきますが、自分はそんなに気になりませんでした。ただ結局のところ、一番面白かったのは最初の1巻だけという、ギャグ漫画にありがちな結末にはなりました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-09-27 23:11:44] [修正:2013-09-27 23:20:43] [このレビューのURL]

18禁ゲームの制作会社に勤める姉が、人手不足なのを理由に高校生の妹に18禁ゲームの声優を任せる、なんていう悪ふざけ以外の何物でもないような初期設定のこの漫画ですが、結構面白かったです。

面白かった理由を考えるなら、それはおそらく主人公と同じ目線で「知らない世界」を知ることができるから。つまりは、「18禁ゲーム業界の世界」という、「知らない世界」を知ることができる(知的好奇心が満たされる)からだと思います。

単純に、そういう描写が苦手だと言う人はどうしようもないかもしれませんが、そういう描写は極力抑えられていますし、それよりもむしろ「18禁ゲーム業界」の実態を知る上でとても興味深い、ノンフィクションの姿が分かりやすく描かれています。

なので、そういう描写は一旦置いておいて、「18禁ゲーム業界」の実情を知るという視点で物語を読んでみると結構面白いんじゃないかと思います。

ちなみに、終盤やけにあっさりと物語が終わりますが、高校生が18禁ゲームに出るとは何事だ、とかそういうややこしい展開になって話全体の空気が暗くなるよりは、こういうあっさりとした終わり方のほうが良かったんじゃないかと、自分は思っています。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-09-27 23:11:13] [修正:2013-09-27 23:19:06] [このレビューのURL]

まず始めに結論から言っておくと、「2」ってのは大概面白くないのが一般的で、「1」で人気が出たものだから調子に乗って作ったはいいけども大失敗! なんてオチが大半なんですけど、この「魔法陣グルグル2」は(いい意味で)予想に反して面白かったです。

いかにも「グルグル」らしい、とでも言うんでしょうか。ファンタジーの世界観なのに、登場人物一人ひとりが人間臭く、生々しい。決めるべきところで決まらず、締めるべきところで締まらない。そんな限りなくリアルな立ち振る舞いを、独自のセンスでギャグに昇華させてしまう、作者のこの発想力は相変わらず健在で、唯一無二の個性を持っていると思います。

取りあえず、これから先、話の展開がどうなるかはまだ何とも言えない状況なので、今回は様子見で7点にしておきました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-07-26 23:21:23] [修正:2013-07-26 23:35:36] [このレビューのURL]

自分にとって水沢先生の描く絵柄っていうのは、初恋の人に対する思いと似たようなもので、実際に話が面白いかどうかはそれほど重要ではなく、ただその絵柄を見ているだけで癒されるというか安心できるという、そんな存在な訳です。

で、そんな存在だったこの作品なんですが、何とわずか3巻で終わってしまいました。正直、もうあと3巻分(三姉妹一周分)くらいは続いて欲しかっただけに、この段階での終了はとても残念です。

お寺で暮らす三姉妹の、それぞれの恋愛模様を描いたこの作品。それぞれの姉妹が持つ恋愛事情は実に明確で、はっきりとしたテーマが提示されています。しかし、だからこそ三姉妹全員に共通する肝心要の「跡継ぎ問題」を、物語の結論としてきちんと提示してほしかったというのが、一読者としての率直な感想です。

個別の話は面白いんですが、最終的なまとまりがいまいちだったので、今回は7点にしました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-22 23:26:44] [修正:2013-02-22 23:26:44] [このレビューのURL]

野球で言うなら「三回に二回の割合で右中間ヒットを放つ三番打者」といったイメージのこの作品。要するに、大事な場面できちんとヒットを打って、確実に1点を取る技巧打者。そんな、手堅い印象を与える作品です。

主人公の山田は相手とキスをすることで、相手と自分の人格が入れ替えてしまう能力を持っている。そんな、少女漫画とかでありがちな基本設定に少年漫画らしいお色気シーンもプラスした、正に男の子の好みのツボを的確に押してくるかのような、堅実さ満点のストーリー展開です。

そんな手堅い印象を与える作品なので、別段褒めるところも非難するところもありません。話の内容も、どこまで優等生なんだと思うくらいに普通の起承転結ストーリーです。強いて言えば、主人公や男性キャラが皆同じ顔(正確にはみんな前作の『ヤンキー君とメガネちゃん』の主人公、品川)に見える、ってところくらいです。(おそらくこれは、作者の趣味が反映されているのだと思います。)

基本、話のノリは前作のヤンメガそのままなので、前作(の最初の方)が好きだった人は、ほとんど抵抗なく読めるんじゃないかと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-15 22:22:50] [修正:2013-02-15 22:35:14] [このレビューのURL]

「空が灰色だから」の阿部共実先生の短編集。

自分はこれまで、この「阿部共実」という作者の人物像をいま一つ理解できずにいました。しかし、「空が灰色だから」を4巻、この短編集を1巻。計5巻を読んでいって、ようやくその人間性の一端を、朧気ながら理解することができたような気がします。

それを説明するにあたって、こんな例え話を考えてみました。

ある時、地球人と仲良くしたいと思った宇宙人が地球にやってきました。しかしその宇宙人は(あくまで地球人の価値観と照らし合わせた時)奇形もしくは異形と呼ばれるタイプの外見をしており、そのままの姿を地球人に見せたのではとても友好的な態度を取ってもらえないことは明白でした。

そこで、その宇宙人は二種類の着ぐるみを用意しました。一つは日本という国の女子学生と呼ばれる外見をした着ぐるみ。そしてもう一つが透明人間の着ぐるみです。悩んだ末に宇宙人は、(せっかく出て行っても姿を見てもらえないんじゃ仕方が無い)と思い、女子学生の着ぐるみを着て地球人の生活に潜り込みました。

潜入は成功しました。宇宙人は女子学生として他の地球人となんら変わらない日常生活を過ごし、彼女らと一緒にごく普通の学校生活を続けることに成功しました。

しかしやがて問題が発生しました。学校生活を通して仲良くなった一人の少女に、自分の正体を打ち明けたところ少女は大声を上げて、恐怖に慄き、走って逃げて行ってしまいました。宇宙人にとってこれはショックでした。せっかく意を決して自分の正体を打ち明けたのに受け入れてもらえなかった。

そこで今度は、透明人間の着ぐるみを着て地球内部への潜入を試みました。しかし周知の通り、透明人間ではその存在を気付いてもらうことが出来ず、ただ一人でキャッチボールをしているかのように、一方通行のコミュニケーションばかりが続いていきます。どれだけ声を上げても気付かれない。どれだけ手を振っても応えてもらえない。結局、その宇宙人が地球人と仲良くすることは出来ませんでした。

と、やけに長い例え話になってしまいましたが、つまり、「空が灰色だから」に限らずこの作者が抱えている人間性というのは、「異質な自分に対する周囲からの孤独感」です。異質であるがゆえに周囲から孤立し、浮いてしまう。しかし、本来の自分をさらけ出せば更に周囲から引かれ、距離を置かれてしまう。そんな、
ただ留まることしか出来ない、どうしようもない閉塞感が具体的な形となって表れたのがこの短編集であり、「空が灰色だから」という作品なのではないかと、そんなことを考えます。

となると、一般大衆である読者にとって「特異な他者」である作者の人間性を受け入れることができるかどうかが、この作品を評価するポイントとなりますが、少なくとも自分は、この作者の作品に対する方向性に全面的に賛同しています。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-01-12 19:22:48] [修正:2013-01-12 19:52:39] [このレビューのURL]

マラソンで言うところの給水ポイントで、高速道路で言うところのサービスエリア。

つまり、やたらと過激で刺激的な内容が続く別マガ内で「休憩地点」としての役割を与えられたのではないかと思うこの作品。であると同時に、この作品を単体として読んだ場合、確かに刺激というか、パンチが足りないという印象を受けるのもまた事実です。

正直なところ、別マガ本誌か、それとも単行本か、どちらでこの作品に出会ったかによって、この作品の評価は大きく変わるのではないかと思います。自分は本誌でこの作品に出会ったので、この作品が持つ「癒し」の雰囲気を、この作品の持つ「魅力」として肯定的に受け止められるのですが、単行本からこの作品に出会った人は、この作品が持つのんびりとした雰囲気は少し退屈に感じられるかもしれません。

どちらから出会うのが正解か、と問われると難しい問題ですが、とりあえず自分としては単行本から入る場合、この作品を読む前に物凄くキッツい作品(例 進撃の巨人など)を読んでからこの作品を読んでもらえると、別マガ内でのこの作品の立ち位置が分かってもらえるのではないかと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-12-17 23:05:24] [修正:2012-12-17 23:09:56] [このレビューのURL]

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