「鋼鉄くらげ」さんのページ

総レビュー数: 292レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年10月28日

本屋で見かけた時に、何となく気になって、とりあえず二巻まで読んでみたのですが、思ったより面白かったです。

話の内容を簡単に説明すると、超有名で美人な読者モデルの姉を持つ妹(主人公)の麻琴が、姉に対するコンプレックスと、自身に対する劣等感を抱えながら高校生になって、新しい学校生活を迎えることになったという、至ってオーソドックスなストーリー内容です。

ただ、この作品の主人公は作中での扱いがあまりにも哀れと言うか、どう頑張ってもセンターには立てないヒーロー戦隊のイエローのように、主人公らしからぬ不遇な扱いを受けています。

ですが、そこが逆に微笑ましいというか、見ていて応援したくなるタイプの主人公だと思います。キャラクターを好きになる理由は、概ね「憧れる」か「親近感が湧く」かのどちらかに分類されるんじゃないかと思いますが、この作品の主人公は、きっと後者に分類されるタイプの魅力を持っているのだと思います。

なお、この作品に限らず少女漫画というジャンルは、オセロゲームと同じように、最後の一個が盤上に置かれるまで白が勝つか黒が勝つかが全く分からないものなので、今後の展開次第ではこの評価が変わるかもしれません。

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[投稿:2012-10-26 22:37:48] [修正:2012-10-26 22:40:42] [このレビューのURL]

読んでいる間は6点と7点の間をゆらゆらと浮遊しながらも、読後感の良さから7点を付けてしまう。そんな、ほんのりとした気持ちにさせてくれる作品です。

異世界人や宇宙人など、いわゆる非日常の登場人物が主人公の元にやってくる、いわゆる押しかけタイプの漫画の多くは

異世界人や宇宙人→ボケ役   (非常識人)
主人公(地球人)→ツッコミ役   (常識人)

の関係性となっているパターンが多いのですが、この漫画は少し違って、

主人公の部屋で地縛っている幽霊の女の子→ツッコミ役    (常識人)
幽霊の女の子がいる部屋で生活している主人公→ボケ役   (変態紳士)

という、一般的なパターンとは全く逆のパターンになっています。そこがこの作品の特異性であり、読んでいて面白いところなのではないかと思います。何にしても、この作品は主人公の変態っぷりと、幽霊の女の子のツンデレっぷりが絶妙で、読んでいてとても面白いです。

読んでいて頭を使わず疲れない。寝転がりながらダラダラと気楽に読めるようなタイプの漫画なので、息抜きにはもってこいの作品だと思います。

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[投稿:2012-05-25 22:45:50] [修正:2012-05-25 22:56:27] [このレビューのURL]

「物語の完結」には二つのパターンがあると思っています。一つは、作者の意に依らない外発的な動機が起因となって引き起こされた「物語の完結」。つまりは「意図しないタイミングで終わらせた強制的な幕引き」です。そしてもう一つは、作者の意に沿う自発的な行動過程の結果によって導かれた「物語の完結」。つまりは「作者の描きたいものを最後まで描き切ったトゥルーエンド」です。(但し、必ずしもハッピーエンドとは限りません。ハッピーであれ、バッドであれ、作者が真に望む結末こそが、物語の真の結末であると考えるためです。)

そういった意味合いに当てはめて「物語の完結」を考えるならば、この作品は間違いなく正しい意味での「物語の完結」。つまり先程の例で言えば後者の、作者の望む形として物語の結末を迎えることができた作品だと思っています。

まず初めに断りを入れておくと、自分はこの作品の原作を読んだことがありません。なのでこのレビューは、漫画のみでの評価になっています。

元は冲方丁先生の原作がベースとなっているこの作品ですが、一個の漫画として見た場合でもその完成度はかなり高いです。何より、漫画としての面白さを漫画家(描き手)自身がとても良く分かっています。

それはつまり、画面全体の「空間」の使い方であったりだとか、各コマごとの「流れ」や「呼吸」の配分方法であったりだとか、漫画を面白く見せる上で重要な要素を漫画家自身がとても良く理解しており、かつそれを上手く体現させるだけの技術も持っています。

別マガ6月号で無事に完結し、最終巻が来月発売だということなので、また最終巻が出たあとに、最初から最後まで一気読みすると、本誌で読んでいた時とはまた違った印象になるのではないかと思います。ただ、途中、(グロいという意味で)結構過激な描写が出てくる場面が多々あるので、そういうのが苦手な人には少しキツい作品かもしれません。ですが、それも表現であり、演出の一部だと割り切ってしまえば、かなりの緊張感を持って物語を楽しむことができる作品なのではないかと思います。

「原作×漫画家」が「プロ×素人」であったためにこれまで数多くの駄作が歴史上積み上げられていきましたが、この作品は正に「プロ×プロ」によって完成したプロフェッショナルな作品だと思います。

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[投稿:2012-05-11 22:00:44] [修正:2012-05-11 22:04:39] [このレビューのURL]

そろそろ最新刊の第7巻が出るんじゃないかと思い、色々と情報を集めていたら、まさかの連載中止という凶報を知り、どうしたものかと軽く茫然自失している今日この頃です。

そんな悲報に衝撃を受けながらも何とか続きを知りたいと思いながら、フレックスコミックスのホームページ「ヒャッコ 第41話 第42話」(ちょうど6巻の続きとなる話)を読んでみたわけなんですが、この2話がもしかしたら永久的にコミックス化されないのかと思うと、もう限りなくテンションが下がっていってしまいました。

ちなみに直近の更新状況は
40話の話が2010年の12月。
41話の話が2011年の8月。
42話の話が2011年の12月。
となっています。

つまり、2話書くのに一年かかってるんですよね。そりゃあ、連載中止になっても仕方ないような状況だとは思いますが、それでもいちファンとしてはどんなに時間がかかったとしても話の続きを描いていってほしいというのが正直なところです。

願わくは、このレビューの次の更新が、「ヒャッコ」完結の総括レビューであればいいと、そんなことを思います。

(その後調べたところ、どうやらカトウハルアキ先生は現在別のwebコミックで「真田ジューイチ」として活動されているようです)

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[投稿:2012-04-27 23:28:54] [修正:2012-04-27 23:43:22] [このレビューのURL]

7点 AQUA

「ARIA」と「AQUA」に興味があるのだけれど、この二つの関係性がよく分からないという人のために説明します。

「AQUA」は言ってみれば「ARIA」の「第0巻」。

つまり内容的には、この「AQUA」の方が「先」の内容になります。なので、「ARIA」を読んでみたいという人は、まずこの「AQUA」全2巻を読んだほうがいいと思います。
(自分はそれを知らずに「ARIA」から読み始めてしまったため、最初は何が何やらさっぱりでした。)

話の内容としては、おおよそ「ARIA」に至るまでの、主要人物との出会いが主となっています。(まぁ中にはフライングして登場している人物もいますが。)
話の深みとしては、評価点が7点であるように、それほど深みのあるものではありませんが、「天野こずえ」という作家が生み出す「世界観の透明性」を、一人でも多くの人に伝えたいと思えるような、心の澄み渡る作品となっています。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-02-10 22:27:17] [修正:2012-02-10 22:28:51] [このレビューのURL]

7点 ARIA

普通の漫画が「遊園地」だとしたら、この漫画は「遊園地」を楽しんだ後に旅館で入る「温泉」。

一般的な評価である「癒し系漫画」の称号そのままに、楽しむというよりは、読んで癒されるタイプの漫画です。

天野こずえ先生の作品は昔から大好きなのですが、先生の作品の魅力は何と言っても、そのシーンが生み出す世界観や空気感の温かさや美しさにあります。ここぞというコマは勿論のこと、一つ一つの小さなコマさえも、独特の世界観や空気感を生み出し、観る者にとっては、まるで自分が本当にその世界の住人として存在しているのではないかと錯覚してしまうほど、その「画」から「空気感」や世界観の「息づかい」を感じ取る事ができます。正に「世界が画面から溢れ出ている」といった感覚です。

「世界」を体感させ、共有させる能力。人はそれを作者が持つ「魅力」であると表現するかもしれませんし、「個性」であると表現するかもしれませんし、「才能」であると表現するかもしれません。いずれにしても、創造の果てにある「世界」とは強制的であり、かつ、問答無用に相手を引き込むパワーなのかもしれません。

話としては何か特別な出来事が起こるという訳ではなく、ネオヴェネツィアと呼ばれる近未来都市での日常風景を、四季折々淡々と紡ぎ上げていくような物語なので、物語としての起伏はほとんどありません。ですが、「天野こずえ」という作家の「空間美」を体感するには、充分すぎるくらいにとても素晴らしく、美しい作品です。

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[投稿:2012-01-13 22:28:06] [修正:2012-01-13 22:28:06] [このレビューのURL]

十個中十個全てが毒漫画。

例えば、ストーリーの一話一話が「お饅頭」だったとして。面白い話は「美味しい饅頭」。つまらない話は「不味い饅頭」。そして毒気のある話は「毒饅頭」。この三パターンに個別のストーリーを分類するとします。

そしてこの漫画の個別のストーリーを、上記の分類法則に則り、「美味しい饅頭」、「不味い饅頭」、「毒饅頭」。この三つの区分に分類するとします。するとどのような現象が起こるか。結論として、分類された個別のストーリー全てが「毒饅頭」のカテゴリーに分類されます。美味しさも不味さも無い。読んでいて感じるのは、只々強い「毒々しさ」です。

そう。この漫画のキーワードは「毒」だと思います。メインとなる話そのものは、模型部で模型製作をしている女子高生達の話なんですが、模型部の活動ストーリーなんてのは、最初の数話だけでほぼ終了し、そこから先は変人ばかりがストーリーの中で好き勝手暴れ回るだけのバーリトゥードな漫画に話の内容が変化していきます。

そのやりたい放題、傍若無人ぶりは、とても有害で有毒です。百害あって一利無しです。よく普通の漫画を「毒にも薬にもならない漫画」なんて表現しますが、この漫画は「毒にしかならない漫画」です。「毒にも薬にもならない漫画」の方が、よっぽどか健全で良心的です。

しかしそんな「毒」だらけで「有害」な漫画に、なぜか自分はハマってしまいました。

これはこの作品の持つ「毒」が、自分の脳細胞を破壊し、正常な判断を鈍らせているのか。
それともこの作品が持つ「毒」が、自分の体内で「薬」として化学変化を起こしたのか。
あるいはこの作品が持つ「毒」が、自分の脳内で「面白い」という幻覚を見せているのか。

事の真相は闇の中ですが、「毒と薬は紙一重」という言葉にあるように、服用量次第で「毒」は「薬」にもなりうるのかもしれません。ただ、「毒」と分かっているものを他人に薦めるなんて愚行は、たとえ「毒」の副作用で正常な判断を鈍らせていたとしても、とても自分にはできる事ではありませんが。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-11-24 20:44:12] [修正:2011-11-25 20:06:33] [このレビューのURL]

よく引き合いに出されるたとえ話ですが、地球のこれまでの歴史を「一年」の時間の中で表した場合、人類の誕生はほんの五日と少し前で、文明がある程度の形となって発達した時間でさえ、ほんの一分未満のわずかな時間しかありません。ましてや、高校生活三年間の時間なんてのは、たったの0.02秒ほどです。

そんな事を思うと、自分がこれまで生きてきた歴史というのは、宇宙全体の歴史から見た場合、ほんの一瞬の閃光のようなものなんだろうなと、そんな世の無常と儚さを感じさせてくれました。

さて、天文部の活動をテーマとしたこの作品。確かに地味で、読んでいて盛り上がりに欠ける部分は多々あるかもしれませんが、それでも読んだ後には思わず宙(そら)を眺めて、どこまでも果てしなく広がるこの遠大な宇宙に思いを馳せてみたくなる、そんな清々しさと爽やかさを持った作品です。

オススメではないですが、ずっと宙(そら)を見上げて夜空の星々に思いを馳せる、こういう高校生活もきっと楽しかっただろうなと、そんな憧れや羨望を抱かせてくれる作品でした。

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[投稿:2011-09-23 20:57:21] [修正:2011-09-23 21:35:06] [このレビューのURL]

マンガで分かる心療内科。もう一つの心理学を題材にした別の作品と比べれば、こちらの方がより正確に、タイトル通りの内容になっているんじゃないかと思います。

しかしまぁそうは言っても、本当に心療内科の具体的内容について詳しく書かれているかと言えば、それは首を傾げてしまう内容で、あくまで心療内科の基本的な事項だけを読者に分かりやすく説明するために、ギャグの力を借りておもしろおかしく伝えている、というのが、作品の本質じゃないかと思います。

まぁ個人的には好きなんですけどね、この作品。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-07-28 22:26:47] [修正:2011-07-28 22:26:47] [このレビューのURL]

間違いなく「過程」を楽しむタイプの漫画だと思うこの作品。

この作品のミソは次の二点。
1 見た目超優等生のメガネちゃんが、実はバリバリのヤンキー。
2 見た目バリバリのヤンキーが、実は元超優等生。
このギャップがこの漫画の面白い所であり、ミソであると私は感じます。

ストーリーとしては全体的に勢いまかせで、ヒネリや伏線も何もないキャラ漫画ですが、その分キャラクター一人ひとりの面白さや魅力が際立っているので、安定した面白さは持っていると思います。

しかしやはり、読んでいて痼り(しこり)として残るのが、物語の最後の結末部分です。果たして、どうしてこのような結末になったのかという事を、あくまで自分の推論として述べさせてもらいます。

まず結末の要点を整理しましょう。

自身の正体と家庭の事情が原因で学校に来る事ができなくなってしまい、引いては卒業式はおろか、大学進学も諦める事になってしまったヒロイン足立花。卒業式の日、品川大地は答辞を読み上げていく中で、この三年間、自分は足立花に振り回されながらも、彼女がいた事で自分の高校生活三年間がいかに輝いていたのかを改めて気付かされ、自分にとって足立花という存在がいかに大きなものだったのかを改めて知り、そこで初めて涙を流すのだった。
そして、四年後。品川大地は母校、紋白高校の教師として働いていた。そして学校行事の社会科見学が迫ろうとしていた時に、ふと休憩がてらにトイレに入っていると、そこに突然、あの足立花が現れた。丁度、初めて二人が登場したあの時(第一話)と同じように。
こうして、二人は四年振りに、今度は先生と生徒として、無事に再会を果たすのだった。

と、まぁこんな感じではないかと思いますが、おそらく、作者の頭の中ではこのラストシーンの方が先にあったために、ああいう流れになったのではないかと思います。
(つまり、分かりやすく言えば、本来予備校編は連載当初から予定されていた話ではなく、連載をある程度引き延ばすために、後から作られた話だったのではないかと。見た目ヤンキーの品川が実は、元有名中学校の在校生だったとか、しかも全国一位の知り合いがいるとか、いかにも後付けっぽい設定ですし。それに、もし仮に足立花の家庭問題が無事に解決し、足立花も品川大地も二人無事に揃って紋白高校を卒業してしまうと、作者が描きたい理想の結末が描けなくなってしまいます。足立花が高校を「卒業」してしまう訳ですから。)

ただまぁ個人的な感想を言えば、これまでの過程を考えると、その結末(品川が殿大に出たにも関わらず母校で教師をやっていて、そこに四年ぶりに高校を中退した足立花が現れたという結末)はちょっと無理があったんじゃないかとも思います。何にしてもこの漫画は結末よりも、その途中を楽しむための漫画ですので、そこに整合性を見出そうとする事自体、ヤボな事かもしれません。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-06-21 14:21:02] [修正:2011-06-21 14:24:37] [このレビューのURL]

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