「鋼鉄くらげ」さんのページ

総レビュー数: 292レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年10月28日

アニメがどうにも「のっぺり」した感じで、しかもなんだか微妙に端折っている感じがしたので、ある程度話のキリがいいところまで原作のコミックスを一気に読んでしまいました。

まず原作を読んでからの印象としては、原作の方が画(え)の見せ方が上手い感じがしますし、漫画特有の画面構成による見せ方を上手く使っているように思えます。

ただこれは、作品そのものの出来不出来というよりも、作品そのものとその媒体における表現方法との相性の問題だと思うで、その辺りは仕方がないかなと思います。

で、この作品なんですが、自分、読む前はファッションなんか全然興味なくて、絶対自分には合わない作品だろうなと、ほとんど期待せずに読んだんですが、思った以上に面白い内容でした。

今まで様々なジャンルの作品を読んできたんですけど、面白い作品っていうのは、全くその分野に興味が無かった相手に対しても、その分野の魅力や面白さを上手く伝えてきますし、またその世界に上手く引きずり込もうとするパワーを持っていると思います。

多分そういう作品は、作者自身が本気でその世界を描きたいと思っていて、その熱量が紙面を通して読者の方にまで伝わってくるのだと思います。

今期、思わぬ良き出会いとなった作品でした。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2020-02-07 18:25:11] [修正:2020-02-07 18:44:58] [このレビューのURL]

この作品の良いところは、きちんと「小人の目線」を忘れないで物語を描いていることだと思っていて、例えば作品内に登場する木の実やブルーベリーがやたらと大きかったり、人間よりも大きい動植物がそこらじゅうに溢れていたり、竹筒を半分に割って湯船を作っていたりと、「小人の世界観だからこそできること」を存分に活かした物語づくりを行なっていることが、この作品の持つ魅力の一つだと自分は思っています。

アニメ化されなかった原作も結構あるので、アニメで作品に興味を持った人はぜひ原作も読んでみてほしいと思っています。特に、作品内で出てきた語句の説明というか、作品内で出てきた語句は、カタカナ表記だったのか漢字表記だったのか、漢字表記でもどういう漢字を使った語句だったのか。その理解を深めるだけでも、この作品の持つ世界観の奥深さを更に知ることが出来ると思っています。

ちなみに、自分のお気に入りは原作第2巻第13話の「卵の美容師」。ああいう、「その作品が持つ世界観でしか語ることが出来ない物語」みたいなものが自分は大好きです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2018-04-06 18:51:29] [修正:2018-04-06 18:51:29] [このレビューのURL]

この作品を評価するポイントは、主人公の子供たち三人が持つ「無邪気な悪意」を許容できるかどうか、という点にあると自分は思っています。

つまり、大人たちの目線、いわゆる常識の目線から見てあまり好ましくない行動を「微笑ましい」と思うのか、あるいは「許せない」と思うのか。前者の視点に立っているのがこの作品に登場する鯨岡さんであり、後者の視点に立っているのがこの作品でカラーズの敵として登場している警察官の斎藤さんなのではないかと思っています。

個人的な立場を言えば、自分としては前者の鯨岡さんの立場に近く「まぁ、子供のやることだから仕方が無いんじゃない。」と割と好意的な視点で見ることもできますが、斎藤さんのような視点で、「いくら子供だからといって何でもかんでも許されるわけじゃない」と批判的な気持ちになる人たちの気持ちも分からないわけではありません。

ただ、この作品は、そうした子供たち特有の「無邪気な悪意」をギャグとして楽しむ作品だと思っていますし、そこが合わないとなると、もはや好みの問題になってしまうので、おそらくどうしようもない気がします。まぁ、自分は結構好きな作品なんですが。いかんせん、可愛さの裏に隠された毒が強すぎるので、そのギャップに対して読み手がどういう反応を示すのか。それ次第の作品だと思います。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2018-04-06 18:50:40] [修正:2018-04-06 18:50:40] [このレビューのURL]

どうにもアニメの進行具合がちぐはぐな感じがするというか、歯切れの悪い印象を受けたので、実際のところ原作ではどうなっているのかと気になって、試しに自分がアニメで観た部分くらいまで原作で読んでみました。

なるほど。確かにこれは(アニメスタッフの方々には申し訳ないのですが)原作の方が読んでいて面白い作品です。というのも実際に原作を読んでみて感じたのが、この作品は、そのコマそのコマごとの一枚絵でその描写を見せるタイプの作品で、モーション、つまり動きとして物語を伝えるタイプの作り方をしていないような印象を受けたからです。その顕著な例が、原作で見開きとして使われているような、アニメとして表現するには少し難しい描写の細かいシーン、あるいは登場人物の心情描写をメインとした伝達構成が難しいシーンなどが、その代表例として挙げられると思います。

ただ物語自体は面白いので、アニメがいまいちだと感じた人は、ぜひ原作を読んでみてほしいと思っています。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-12-23 18:29:19] [修正:2017-12-23 18:55:41] [このレビューのURL]

石黒正数という作家の人間性をこれ以上なく色濃く反映させた作品です。

とりあえずこの作品を読んでおけば、石黒正数という人物がどういう物語を作ることが好きな人間なのか、あるいはどういうキャラクターを作ることが好きな人間なのか、更にはどういう価値観、倫理観、思考回路、物事に対する嗜好などを持った人間なのかということをつぶさに知ることができる、ある意味、作者自身の心の有りようを丸裸にしたような作品です。

ではこの作品はどういう作品なのかというと、それはとても不思議な作品で、日常ものだと言うこともできるし、サスペンスやミステリーだと言うこともできる。あるいはSF作品と言うこともできるかもしれない。つまりは作者自身が今どういう物語を描きたいかによって、その時々の作品全体のカラーが全く別のものに変わってしまうという、非常に多様性に富んだ作品です。

ただ、それでも今回評価点を7点に留めたのは、全16巻のうち後半の何巻かは、かなり話の内容がマンネリ化してきて、初期の頃のような面白みが減ってきた印象を受けたためです。個人的に、この作品は原作第2巻の、タイトルと同名のエピソード「それでも町は廻っている」が本当の最終回だったと思っています。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-10-06 19:29:12] [修正:2017-10-06 19:29:12] [このレビューのURL]

7点 orange

何となく、アニメで毎週ストーリーを追っていくのはしんどそうだったので、原作を先に読んでしまいました。

なお、今回のレビューは結末まで全て知っている前提のネタバレ全開レビューですので、アニメで今後の展開を楽しみたいという人は、このレビューを読まないでください。

10年後にいる未来の自分から、このままだともうすぐいなくなってしまうクラスメートを助けるために、未来を変えて欲しいと頼まれるこの作品。

話のキモはずばり、「自分の心の中にある罪悪感に抱えたクラスメートを、自殺の未来から救うことができるのか」という点です。

その未来を回避するため、未来にいる自分から送られてきた手紙によって伝えられた今後起こりうる出来事を事前に把握し、現在を生きる主人公たちがそれを回避するため、あるいはよりよい未来に変えていくため奮闘する、というのがメインストーリーなんですが、あれですね。思った以上に面白かったですね。恋愛漫画というよりはどちらかというとサスペンスドラマみたいな感じで。このまま進むとバッドエンド直行だと分かりきっているのに、読んでいる読者は何も出来ずにただ登場人物たちを見守ることしかできないというハラハラ感。ホントに、上手く作ってあると思います。

未来を変える。過去改変ものに共通して言えることは「過去に対する後悔」です。つまりあの時ああしていればもっと良い未来が待っていたんじゃないかという結論の出ない仮定論。

ただ、自分はどちらかというと作中の萩田の意見に近く、過去に戻ることなんて絶対に出来ないと思っていますし、仮に戻って過去を変えたとしても、それで必ず今が幸せな未来に変化するとは限らない、とも思っています。結局、過去の後悔っていうのは過ぎた時間の中で生まれた「感情のひずみ」みたいなもので、どんな時間軸を歩んだとしても大なり小なり必ず発生してしまうものだと思います。要はその生まれてしまった「ひずみ」に対して、自分の中でどの程度折り合いを付けるのか。そこが大事なんじゃないかと思います。

この作品のラストで、現在を生きる主人公たちは翔を無事に救うことができましたが、彼が死んでしまった未来にいる主人公の時間軸では、やはり翔の姿は現れませんでした。おそらくそれは、彼らが翔を救うことができなかったことに対して今でもやはり後悔はしているけれども、それでも今は、その出来事を一つの事実としてきちんと心の中に受け入れられる。そんな登場人物たちの心情を伝えるために、こういうラストにしたんじゃないか。そんな風に思いました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2016-07-09 00:53:01] [修正:2016-07-09 01:07:09] [このレビューのURL]

まず原作の名誉のために言っておきますと、原作とアニメは全くの別物です。

アニメ第2話までは今期トップレベルで面白かったのに、第3話以降は、まるで坂を転げ落ちるかのようにつまらなくなっていき、最終回に至ってはまるで擁護のしようのないレベルにまで堕ちていってしまったのは一体どうしてだったのかと思い、急遽既刊の第6巻まで買って読んでみましたが、実際に読んでみて、その理由が何となく分かりました。

要するに、このアニメの制作スタッフはこの作品が持つ「面白さ」を充分に引き出せていなかったのだと思います。あるいは理解しきれていなかったのか、もしくは解釈そのものを間違えていたか。いずれにせよ、正しい「面白さ」を引き出せるようなアニメ作りをしてこなかった。そんな印象を受けました。

原作を読むと分かるのですが、この作品は「まちちゃん可愛い」とまちちゃんを愛でるためだけの作品ではありません。この作品は吉元ますめ先生が生み出す独特の発想とシュールギャグ、そしてほんの少しの「毒」を楽しむための作品です。そこの解釈がまず間違っています。

それともう一つ。漫画とアニメではテンポ。つまり「間」の取り方が違います。漫画はコマの流れで面白さを作りますが、アニメは時間の流れで面白さを作り出します。アニメでは微妙だったヴィレヴァン回もしまむら回も原作で読むと確かに面白いです。その違いは何だったのかと問われたらやはり「間」の使い方。原作の絵とセリフをただ単に映像に起こすのではなく、きちんとアニメとして面白くなるように加工していく。それがアニメの制作スタッフが行なうべき仕事であり、プロとして行なうべき仕事だったのではないかと、そう思っています。

あとは一番肝心のギャグを活かしきれていない。せっかく原作で良いボケポイントを数多く用意してくれているのに肝心のアニメがそれを全く活かそうとしていない。相方のツッコミがヘタクソな漫才を延々と観せられているかのような印象です。正直観ていて微妙だった試食販売回や炊飯ジャー回も、もう少しギャグ寄りに面白く出来たんじゃないかと思うと、やはり力量不足を感じざるをえません。

よく言う刑事編(第4巻)が長いからアニメオリジナルを増やさざるを得なかったという意見も、自分はあまり正しいとは思っていません。仮に刑事編の第4巻をカットして、第5巻以降の話を第4巻での出来事が無かった前提で上手く消去して物語を作っていったとしても、充分作れる内容の原作だったと思いますし、そのストックも充分あったと思います。にもかかわらず、よく分からないアニメオリジナルストーリーばかり作って原作の評価をひたすら下げていき、あまつさえ、登場人物たちのキャラを崩壊させるような最終回を作ったアニメスタッフは明らかに怠慢だったと思いますし、原作者たちは本当に気の毒だったと思います。

アニメでがっかりした人はぜひ原作第5巻以降の「くまみこ」を読んでほしいと思います。そうすればこの
「くまみこ」という作品が持つ本当の面白さを、もう少しは分かってもらえるんじゃないかと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2016-06-25 00:30:57] [修正:2016-06-25 00:39:05] [このレビューのURL]

「ヒャッコ」で知られるカトウハルアキ先生が、「真田ジューイチ」と名義を変え、新たに発表した最新作です。この物語は、ストーカー女、妄想電波女、ドM女、殺人鬼、吸血鬼などといったアブノーマルな特性を持つ女の子たちが主人公の男の子と、キャッキャウフフの学園生活を送る、ごくごく普通の学園ラブコメデイである

わけがなく、

そうですね。例えば深夜アニメには「3話切り」という有名な不文律がありますが、この言葉が広まった主な発端は、「とあるアニメ」の第3話で物語の方向性や雰囲気がこれまでとはがらりと変わり、1話や2話だけでは分からなかった物語の本質部分が3話目を通してようやく分かるようになってきた。だからアニメの視聴を継続するかどうかは、3話目の話を観てから判断した方がいい、みたいな意味ですが、それと同じく、自分は、全く予備知識も事前情報も無い漫画を読む時は出来る限り「2巻まで読んで」それ以降の単行本を購入するかどうかを判断しています。

その理由は主に二つ。一つは面白いのは1巻だけで、2巻以降は徐々に失速し面白くなくなっていくネタ切れパターンがあるから。そしてもう一つは、1巻は面白くないけれど2巻以降から、正確には巻数を重ねれば重ねるほど面白くなっていくパターンがあるから。この作品は今のところ後者のパターンを辿っています。

1巻目はあくまで舞台装置作りと状況説明。2巻目以降から作風ががらりと変わります。
とりあえず2巻まで読んでみて、その作風が合うか合わないかを判断してほしいと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-02-06 22:27:16] [修正:2015-02-06 22:54:30] [このレビューのURL]

(ネタバレなし 既刊4巻までの感想です)

正直、今の展開には驚いています。

というのも、自分は当初今の話は単純にバラライカをさっさと倒して終わりの短いショートストーリーだと思っていたのですが、実際はそうでは無く、

「前作『ハーメルンのバイオリン弾き』の『とある一点』を全く別の方向に持って行ったらどんな物語になっていたのか」

というのをとことんまで突き詰めていった、いわば前作のifストーリーのようなものに話が急展開したからです。

詳しい内容を書くとネタバレになってしまうので詳しくは書けませんが、何にしても、3巻終盤以降の衝撃の展開は、前作を最後まで読んだ人なら驚くこと必至だと思います。

正直、ものすっごい続きが気になります。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-07-22 20:43:44] [修正:2014-07-22 20:45:00] [このレビューのURL]

授業中のヒマ潰しに、国語の教科書の顔写真に落書きをしたりだとか、算数や他の教科書の挿絵にイタズラ書きをしたりだとか、そういう、誰もがやったことがある「授業中のヒマ潰し」を、職人レベルにまで高め、ギャグの域にまで到達させてしまった漫画です。

この漫画の面白いところは、物語の視点が必ず「一人称のみの視点」であり、物語全体が複数人の視点で進行することが無い点だと私は考えています。要するに、誰かの主観(一方的な想像)のみで話が展開されているということです。

横井さんバージョンにしろ、後藤さんバージョンにしろ、各話の話の内容は語り手本人の主観(思い込み)のみで物語が進行しており、当の関くんだって、本人からしたら他の人たちとは全く違った物語を展開しているのではないかと思います。そして、一般人として最も正しいリアクションをしているのは、宇沢くんです。彼のリアクションこそが、本当に主観に依らない客観的な視点での反応なんだと思います。まぁ、この作品内ではデストロイヤーなんですが。

とは言え、この作品の世界観を一番楽しんでいるのは読者でも関くんでも他の誰でもなく、横井さんなんですよね。間違いなく。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-12-20 22:51:10] [修正:2013-12-20 22:55:48] [このレビューのURL]

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