「鋼鉄くらげ」さんのページ

総レビュー数: 292レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年10月28日

この作品との出会いのきっかけは本当に何でもないことで、たまたま買った別のコミックに今月の新刊情報の紙が挟まっていて、その中に、この作品のことが紹介されていた、というのがそもそもの発端です。そんな経緯でこの作品に興味を持ち、いざ実際に読んでみたんですが、これまた何とも異端というか、異質というか、とりあえず、正当ではなく、正常でもない作品だということは間違いないだろうなと。そんな事を感じさせてくれる作品でした。

何て言うんですかね。

ボケてるわけでもなく、ウケを狙っているわけでもない。
好かれようとしているわけでもなく、嫌われようとしているわけでもない。
褒められようとしているわけでもなく、非難されようとしているわけでもない。

あるのは純粋な「主張」だけ。
まるで、「これが『私』だ」と作者が作品の内側から大声で叫んでいるかのようです。

そんな作者の純粋かつ真っ直ぐで、しかも無茶苦茶な「主張」が、好き嫌いの分別や善悪倫理の判断基準を飛び越えて、作品の中から溢れ出てきているかのような作品です。とはいえ、きっと一般的な価値判断基準を持った人がこの作品を読んだら、「何この作品? 気持ち悪くて訳分かんねー」で終わってしまうかもしれません。しかし、こういった作品こそが、商業主義に染まらない100パーセント純正な「作品」の姿なんじゃないかと。そんなことを思います。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2012-03-09 22:02:13] [修正:2012-03-09 22:02:13] [このレビューのURL]

この夏に読んでみるといいかもしれない怪談漫画。

この作品が本誌に掲載されていたのは自分が子供の頃の、「ドラゴンボール」や「スラムダンク」と同じ時期だったと思うのですが、今こうして再び読んでも普通に面白いと感じるのは、結構凄い事だと思います。

やはり学校の怪談というのは、極めて普遍的でオーソドックスなテーマであり、いつの時代も変わらない不変的な面白さを持っているのかもしれません。しかし十何年も経って、改めてこうして怪談話を読んでいると、こういった怪談に対する畏怖の感情と言うのは、つまりは「未知」の物に対する畏怖の念であり、「未知」という領域、つまりは経験で補いきれない「知らない物」に対する恐怖の感情から生まれてくるんじゃないかと、そんな夢もロマンチシズムも欠片も無い感想を抱いてしまいました。当時はこの漫画が怖くて読めなかったんですけどね。ホント、可愛げの無い成長を遂げてしまいました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-08-12 23:10:05] [修正:2011-08-12 23:17:30] [このレビューのURL]

困った事に作者の趣味丸出しのこの作品が、
困った事に自分の趣味とかなりマッチしてしまったこの作品。

作品そのものの本質としては、割とベタな事件解決ものなんですが、4巻から5巻、物語の終盤で明かされる「物語の真実」を知った途端、これまでの1巻から3巻までで起きていた様々な事件の本質が、全く違った視点で見えてきます。

その真実が具体的に何なのかは、ここでは言えませんが、多分、結構驚くんじゃないかと思います。

あと一点。今日この日にこの作品のレビューを書いた事には、きちんと理由がありまして、その理由は、この作品を最後まで読んでもらえばきっと分かってもらえると思います。
(ヒント:今日は何の日?)

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-07-07 22:36:31] [修正:2011-07-07 22:36:31] [このレビューのURL]

この作品。言わずと知れた「2010年マンガ大賞」受賞作なんですが、自分の率直な感想を言わせてもらうと、そんなに面白くはありませんでした。にも関わらず、なぜこんなに賞賛され、絶賛の嵐を浴びているのかというのを考えてみたところ、歴史上で似たような事例が見つかりました。

その事例というのは、「コロンブスの卵」です。

「コロンブスの卵」についての詳しい説明は省略しますが、要するに、この作品は、風呂漫画という誰も考えつかなかった切り口で、おもしろおかしく漫画を描いたその斬新さが、世間一般で高く評価され、結果マンガ大賞を受賞する事となったのではないかと、そんな事を考えました。

ただやはり、話としては面白くない。というかワンパターンです。
古代ローマ人が現代にタイムスリップし、そこでの入浴設備やシステムの違いに驚き、深いカルチャーショックを受ける。やがて彼は、自分の時代に戻った後で古代ローマの入浴施設にも現代の入浴設備やシステムを取り入れて、やがて人々から賞賛され、絶賛の嵐を受ける。と、かいつまんで説明すればこんな感じです。

確かに発想の奇抜さや、設定の斬新さには多少驚かされた部分もあるんですけど、果たしてそれだけでその漫画が面白い漫画と言えるかどうかは全くの別問題で、少なくとも自分は面白さを感じる作品ではありませんでした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-16 22:46:39] [修正:2011-04-16 22:48:26] [このレビューのURL]

あくまで「今のところ」の点数としての6点。

そもそも桜場先生の作品の特徴というのは、一話一話が断絶された読み切りタイプの話の中で、絶妙な落としどころに落ちたオチを、その面白さとして楽しめるところが作品そのものの、引いては作者そのものの大きな魅力であると感じている訳なんですが、この作品はあくまでストーリー全体が、一つの繋がりを持っているため、そのウリである一話ごとのオチがひどく弱いものになっていると感じます。

まぁ、まだ一巻だけなので何とも言えませんが、「今のところ」は6点です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-03-10 23:03:45] [修正:2011-03-10 23:03:45] [このレビューのURL]

1巻の表紙絵とタイトルの「あざとさ」から、どうせ2、3点止まりのネタ本だろうと、その面白さに対して全く期待をしていなかったんですが、いざ実際に読んでみるとその予想に反して、結構な面白さを持った作品でした。正直、悔しさを感じるくらいに。しかも更に悔しいのが、面白いのはどうせ最初の1巻くらいで巻数を重ねれば面白くなくなるんじゃないかと思い、現行の3巻まで読んでみたのですが、それでもやっぱり面白かったという事で更にその悔しさが増幅されました。

簡単にこの作品の内容を説明すると、兄大好きの超ブラコンな妹が、思春期丸出しのバカな兄貴を心の中で罵りながらも、その行動を思うがままに手玉に取り、弄ぶという、言葉だけで表現すると何とも気持ち悪い事この上ない初期設定です。そんな訳で、まぁ、この漫画は変態だらけのギャグ漫画だと思ってくれればほぼ間違いないと思います。

おそらくこの面白さは一時的で、今後絶対に面白くなくなるはずだ。

そういう自分の「呪い」の意味も込めて今回は6点を付ける事にします。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-02-11 22:50:27] [修正:2011-02-11 22:59:29] [このレビューのURL]

『今から君達一人ひとりに「色」を与えます。それは、これから君達が向かう人間界で「個性」と呼ばれるものです。君達はこれから先、人間界で人間として生きていく中で、その「色」を充分に生かした一生を過ごしていって下さい。』

自分達が生まれる前に、神様からそんな手解きがあったのだとしたら、自分に与えられた「色」は何色だったのだろう。そんな事を思った短編集です。

「それ町」でも思った事なのですが、この作者はとても個性的な「色」を持っています。それこそ赤や青などといった単色ではない、モスグリーンやビリジアンなどといった複数の色が混ざり合わさった、とても複雑な色合いです。

面白さを求めるというよりも、作者、石黒正数という人物の人間観察としてこの短編集を読んでみる。作品に対して向かう姿勢としては、そちらの方が正しいのではないかと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-12-02 12:02:26] [修正:2010-12-02 12:02:26] [このレビューのURL]

難解な漫画とは何か?

という問い掛けをした時に、多くの人は政治を扱った漫画だとか、医療、法律を扱った漫画だと答えるかもしれません。しかし私は、ギャグ漫画こそが、実は最も複雑で難解なジャンルの漫画ではないかと考えています。

なぜなら、ギャグ漫画の面白さを味わうためにはその国の文化や価値観、言語の持つ特質性、あるいは倫理観や道徳観、果ては宗教観までも理解していなければ、その本当の面白みを味わう事は出来ないと考えるからです。

恐らくこの漫画を、ただ単純に英語に翻訳して外国人に見せたとしても、多くの外国人はその「面白み」を理解できないのではないかと思います。しかしそれは、単に読んだ外国人の理解力が低いからではありません。それはつまり、この漫画で用いられているギャグの根底が、日本独自の文化や価値観などに由来しているためです。

要するに何が言いたいかというと、ギャグ漫画というジャンルは、その国の文化や価値観などといったその国独自の固有性をモロに反映するジャンルだという事です。それらを踏まえた上でこの漫画の感想を述べると、少年誌で連載されている割には、そこで用いられているギャグは非常にシニカルで、毒の強いタイプのギャグ漫画だと思います。一見すると何がオチなのかは少し分かりづらいのですが、よくよく反芻してみると、成程と思えるような、「それ町」とは一味違った「ギャグ」の姿が浮かび上がります。

甘くない、ビターチョコレートのようなギャグ漫画です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-10-19 11:00:48] [修正:2010-10-21 16:17:26] [このレビューのURL]

結構好きな作品だったんですが、「掲載誌の休刊」という問答無用の処刑宣告により、終了を余儀なくされてしまった作品です。

話そのものとしては至って普通で、取り立てて特筆すべき事はありません。というか、ストーリーそのものが最初の三話で燃え尽きてしまっている感があるので、正直、残りの話は蛇足みたいなものです。

しかし、そうは言っても、こういう分かりやすくて直球勝負な作品は、自分の好みでもあるので、出来ればもう少し続いて欲しかったというのが本音です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-06-02 19:43:48] [修正:2010-06-02 19:43:48] [このレビューのURL]

実に多角的な視点から検証する事の出来る作品です、今回、ここでは三つの側面からこの作品を考えてみたいと思います。

1 アニメから原作本という流れで出会った一個人としての感想
アニメを見てからこの作品を読んでまず思った事が、よくこの作品をあれだけ魅力あるアニメ作品にしたなという事。つまりそれは、言い換えればそれだけ京都アニメーションという制作会社に優れた製作能力が備わっていたという事の証明に他ならない訳ですが、いずれにしてもアニメから原作本という流れを取った人の多くは、原作そのものの質を見て肩透かしを食らってしまった人も多いのではないでしょうか。

2 原作本そのものの評価
至って普通の漫画です。絵がとびきり上手い訳でも無く、話が別段優れている訳でもない。本当に、普段はありきたりの日常とありきたりのイベントだけが通り過ぎていって、たまにちょろっと演奏をしている程度の内容です。アニメで見られた様な、多少の山も谷もありません。本当に全くの、平坦な一本道が進んでいきます。

3 メディア化の成功例として見た「けいおん!」
若干の嫌味を含めた表現をしてしまうならば、「京アニさんは、実に良い仕事をしました」。つまり、アニメ化をしても成功し得なかった事例が数多くある中で、この作品はアニメ化をした事でかえって大成功を収めた作品だと言えます。しかし、苦心して様々な作品を世に生み出している作家の方達からして見れば、この作品のヒットは「ズルい」と感じてしまうのではないでしょうか。つまり、それは製作元の優秀さとメディア戦略が上手くいった結果で売れているだけじゃないか、と。そこには、作品そのものの本質が持つ面白さが置き去りにされているんじゃないか、と。大変繊細で難しい問題ですが、売れる事と面白い事は全くの別問題である事。この作品を見ていると、その不条理さをつくづく痛感させられます。

かなり長くなりましたが、結論としては、やはりアニメの方が面白いです。原作はその補完という形に留めておくのが妥当ではないかと思います。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-04-20 19:30:10] [修正:2010-04-20 19:30:10] [このレビューのURL]

月別のレビュー表示