「gundam22v」さんのページ

総レビュー数: 644レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年12月06日

未完ということで知ってはいましたが、読むのを避けていたことを後悔するほど面白い漫画でした。大音楽家「ベートーヴェン」を主人公に扱う伝記漫画。漫画界の巨匠最後の作品だけあって、オリキャラ(フランツ)を相当に絡めて史実じゃない部分(難聴の原因がフランツの行為等。フランツを作中ナレーションでもこのような記録があると史実人のごとく書いているのは誤解を与える箇所なので個人的にはマイナス印象)もありながらも、史実エピソードも交えベートーヴェンを分かりやすく本質を伝えようとしている部分が素晴らしかったです。だからこそ未完ではありますが、趣旨としてはそれなりに充たしている作品ではあるかと。おそらく最後は途中で第九を匂わす箇所が伏線として出て来ていたので、それをもってフランツとは和解するところを帰着点としているような感じでした(ついでにフランツを破滅させるような匂いも感じましたが)。

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[投稿:2015-04-02 02:22:40] [修正:2015-04-02 02:22:40] [このレビューのURL]

「寄生獣」と設定は違いますが、雰囲気が似ていて画力の点ではこちらが上だと思います。狭い人間関係の割に駆け引きがあり先が読めない展開、竹を割った感がある(粘着質ではない)が本質を抉る心理描写などにもその辺を感じます。さりげないギャグ描写も意外に笑えました。主人公側よりも悪役の佐河に独特の魅力があったと思います。ややラストに唐突感がありましたが上手く畳んだ方ではあったかと。無料で現在配信されている「刻々300日後」という後日談を読めばその唐突感があった人物についても多少掘り下げるフォローもされています。まあ全体として止まった世界での限られた少人数の争いという地味めな作品であることは否定しませんが、近年の秀作であることは間違いないです。作者にかなりのセンスを感じたので次回作も期待します。

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[投稿:2015-02-27 01:59:23] [修正:2015-02-27 01:59:23] [このレビューのURL]

和風退魔アクション系漫画。当初はコテコテの物語スタート、ステレオタイプなキャラ、画力はあるのに安定しない絵などで正直外れかなって感じだったです。

そこからいろりという女の子の仲間キャラ(変な関西弁だけどヒロインよりバトルして、可愛さもあり存在感がある)が出て来てから面白くなって来て、六臣家の因縁・敵の目的など物語全体の構図が明らかになったと同時に、警察や自衛隊が出撃する大事になってから目が離せずに最後まで一気に読めました。最初から妖怪の迫力は素晴らしかったのですが、それが中盤以降の話のスケールの大きさに伴い活きて来て、画力の向上・安定が重なり、なかなか見れない画力レベルでの妖怪バトルアクション漫画になりました。一見の価値があります。話も編ごとに進めるやり方が分かりやすく、それを重ねて進み終わってみれば上手に展開して畳んだと思います(神道信奉者は引っ掛かるかもしれませんが、作中の神は態度がやたら傲慢なので自分としては納得の終わり方です)。

自分が買ったのは豪華版全8冊で全台詞の見直し、結末の修正がなされているようですが、台詞回しがしっかりしており、結末も痛みを残しつつカタルシスを感じる良いバランスでした。ステレオと前述しましたが途中でヒロインに彼氏がいることが発覚したり、主人公に好意を寄せてくれる幼馴染が存在感を発揮したりして、その中で惹かれ合う主人公とヒロインの関係が興味深くなり、結末もハッキリとは明示しなかったのも余韻がありました(今後結ばれるんでしょうが上記二人の存在もあるので、あの時点では正解な演出でしょう)。

次回作で現在連載中の「BTOOOM!」も完結したら読んでみたいと思いました。こちらの方がマイナー作品ですがもしかすると出来が良いのではと思うほど隠れた良作だと思います。


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[投稿:2015-01-18 14:45:18] [修正:2015-01-18 14:45:18] [このレビューのURL]

8点 幽麗塔

名作「医龍」の後で話題が被ることなく、よくこれだけの作品が描けたなというミステリー&サスペンス作品。昭和前半の空気、この時代特有のおどろおどろしさが丁寧に表現され作品に引き込まれました。画力、演出は「医龍」同様にハイレベル。本筋の塔に関する事件を動かしながら、移動して他の事件を解決して行く時もあり、先が簡単に読めませんでした。大量殺人者である死番虫の正体には叙述トリック的なのを漫画媒体で上手くやられて見事に騙されました。細かい伏線も丁寧に回収しています。ジェンダー論をテーマに据えていますがそこについても説得力ある論調が出来ていました。
一方でその辺の微妙な問題を深く扱って、悪く言うと性的変態の集いみたいになっているので少々癖が強かったのは否めません。「医龍」に比べると最後までキャラに馴染みにくかったのもあります(変に人気沸騰で引き伸ばし路線に入らないでキッチリ終われて済んだという面もありますが)。あと死番虫に関しては手強さを描き、正体の謎と共に引っ張った割に、簡単に打倒してしまいあっさりです。真ラスボス役登場からの最終盤も面白さはあったのですが、掘り下げ(一応過去は真ラスボスの口から語られているが)や最後まで立ち塞がって欲しかったという気持ちもありました。

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[投稿:2015-01-14 06:16:38] [修正:2015-01-14 06:19:35] [このレビューのURL]

打ち切りかつ作者本人が失敗作扱いしている作品なので読むのを避けていましたが、少年誌向きじゃない話だから打ち切られたとしか思えないほど話は面白いです。今ままで読んだ福本作品の中では後半に盛り上がって綺麗に終わったという多くない作品。確かに前半はややテンポ悪いなと思ったところはありましたが、一気読みだとそんな気にならず、主人公の生い立ち・考え方に厚みや説得力を持たせるために必要なパートでした。世論(というか主にマスコミに)で厳罰化ばかり求められている少年法の暗部(少年側にとって)にスポットを当てているところに重みがありましたし(それが人間学園のゾッとする正体に繋がる)、立ち向かう孤高の主人公には共感が持てました。ギャンブルなど一切ないですが心理描写の迫真さ、展開のスリリングさ、独特の福本節などは健在です。現在は大漫画家だけに「遅い?引き伸ばしている?」とも言われてもいる作者ですから、この漫画はこれから再評価されて欲しいと思ったりもします。

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[投稿:2014-12-27 16:26:37] [修正:2014-12-27 16:26:37] [このレビューのURL]

他の方も指摘してくれている通りなのですが、裁判員制度のお勉強漫画に留まらない、様々な観点から示唆を与えてくれる漫画だと思います。司法制度全体の闇にも切り込んで行ってますし。少しでも刑事裁判に興味がある人には是非読んで欲しい漫画かと。全体的に堅く重い漫画ではあるので、相当な良作なのに無名なのが残念ですね。全5巻で短く終わったのですが密度も十分で主人公兼ヒロインの掘り下げも良く出来ておりそれなりに纏めた感じがあります。
絵柄が親しみやすく(主人公兼ヒロインが可愛いです。こんなかわいい女裁判官が現実にいるかよというツッコミはおいといて)最初から画力もそれなりにあるのも良し。
ただ素材や事件はたくさんありそうですし、まだまだ続けられたのではという残念さもありますが。あともう少し事件を議論し推理する、どんでん返しなどの要素があればより良かったかなという部分も感じました。この辺はゲームですが『有罪×無罪』という作品が凄く良く出来ていますのでおすすめです(裁判員裁判に参加して有罪・無罪・量刑まで決められます)。全体的に非常に良く出来た全5冊で勉強になり読み応えがある漫画だと思います。

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[投稿:2014-09-21 07:05:48] [修正:2014-12-16 08:05:30] [このレビューのURL]

ガンダムの原点である「ガンダム」の主人公アムロとライバルシャアの永きに渡る決着を描いた一旦の完結編的作品。映像化されてる劇場版の出来が良くて、この作品がガンダムシリーズで一番好きですね。短期決戦ですが「ガンダム」から見違えるほど美麗になったモビルスーツをはじめ世界進化の衝撃は今でも忘れられないし、現在にも十分通じるのではないかと。三十路を超えたアムロとシャアを中心とする人間関係など全体に漂う大人の雰囲気も非常に好きなところです。

まずは予備知識として「ガンダム」、「Ζガンダム」、余裕があれば「ガンダムZZ」までアニメ本編じゃなくも「Gジェネ」などのゲームでも良いから世界観や流れは抑えてからっていうのは前提になると思います。主人公とライバルがガチで敵→味方→敵で終了した作品というのは、思いつくのでこの作品と青山剛昌作の「YAIBA」くらいで独自性があります。そのアニメ映画「逆襲のシャア」を本作はそのまま漫画化したという訳ではなく、原作者がスポンサーの要望で変更を余儀なくされた本来やりたかったものを漫画化した作品です。様々な変更点や映画で描かれなかった掘り下げや深みもあって、既に小説という形でも出版されていますが、昔読んでストーリーではこちらが上なのではとさえ思いました。ただ文章が小説家が本業じゃないので非常に分かり辛い。そこをこの漫画では映画のキャラデザに近く、画力もそこそこで分かりやすく再現しているように感じました。自分の中のガンダム熱も再燃しそうです。このまま綺麗に完結し漫画化として成功して、「ベルトーチカチルドレン」版の認知度も広がって欲しいなと期待しています。

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[投稿:2014-12-14 17:04:20] [修正:2014-12-14 17:04:20] [このレビューのURL]

8点 アルテ

女性差別が現在よりも遥かに強い中世ルネサンス時代に画家になって、自立を目指す主人公の成長物語。まずほぼ新人というのが信じられないくらい画力が高いです。風景描写が上手いので当時の世界に引き込まれるのは好ポイント。当時の世界観を作者がかなり勉強している感じで、物語作りも完成度が高くて引きつけられます。主人公アルテのキャラが魅力的なのが良いです。ウザさを感じないギリギリのラインで前向き。まだ2巻ですが先が気になります。ただ、自立がテーマなのですがアルテが早い頃に師匠に惚れてしまうので、そこにどう結論を出すのか、齟齬を生じないように展開させるのか、ここが腕の見せどころになるのではと思います。

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[投稿:2014-12-14 14:54:30] [修正:2014-12-14 14:54:30] [このレビューのURL]

8点 BLAME!

無口主人公が巨大建造物を探索して、バケモノとバトル
する話。SF漫画ですが質的には最高峰だと思います。セリフが極端に少なく難解なのは事実ですが、作者の頭の中にはしっかりしたものがあるのだろうなというのは感じました。細かい部分はともかく大体は読み進めれば分かって来ます。これの前日談の「ノイズ」と合わせて読めばそれなりの理解は出来ると思います。

特に画力の高さ、センスが素晴らしいです。一枚絵で巨大建造物を描くシーンはスケールの大きさに引き込まれます。バケモノは本当に不気味ですし、その戦いもビームが建造物を貫通しまくるなどスケールとセンスがあります。セリフが少ないからこそ話のテンポは良くて全10巻ですが、体感はもっと短く読めるのも長所です。ストーリーも一見淡々としている割になかなか先が読めずに(何度も死ぬヒロインなど)続きが気になり熱中度がありました。

欠点としては時々絵的に何やっているのか分かりにくいところですね。世界観の理解よりもそちらが個人的には気になりました。漫画好きとして一見の価値があるだけの作品だと思います。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2014-12-12 19:33:38] [修正:2014-12-12 19:33:38] [このレビューのURL]

時事の古さを考慮しても今なお読むに値する柔道漫画ではないかと。堅くなりがちな柔道を題材にライトな要素を取り入れて副題にある「ニューウェーブ」を実現した内容だと思います。当時だったらもっと軽く感じただろうなってほどの部活での爽やかさは今なお独自のものだと思います。主人公がこの手の漫画で珍しい彼女持ちですし、他キャラについて恋愛ネタも結構あります(古き良き時代らしくピュアそのものですが)。キャラもそれぞれ灰汁がある人間がいないのには、多少物足りなさがありますが立っていました。ギャグに古さを感じないと言えば嘘になるところもありますが、それでも笑えるのもありましたし、良い息抜きになりました(特に別所さんのお守りネタが爆笑でした)。

さらに特筆すべきところは、作者が柔道に造形が深いので本格的で分かりやすい解説、見やすい描写、多彩な技(かといってこれは非現実過ぎるというのは排除されている)、一試合ごとに時間をかけないでテンポが良い、質を求める練習内容や猛特訓している光景も頻繁にある(軽さを取り入れるとこいつらいつ練習しているのか的なスポーツ漫画もたくさんあるので)など柔道漫画として本格派の要素もしっかり感じました。全30巻あるのに引き伸ばし感がなく綺麗に完結しています。

少し迫力に欠いてしまう絵柄、キャラ描き分けの少なさ、こんなに上手く行くかよって部分(それで対戦結果が読めやすくなるところがある)はありますが、それでも総合的に名作漫画と呼べるレベルは揺るがないと思います。日本柔道界の斜陽においてもまだまだ健在だった時代なのに予言しており、それも今読んでみて作者の見識が素晴らしいと感じた箇所です。

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[投稿:2014-12-03 03:17:07] [修正:2014-12-03 03:24:19] [このレビューのURL]

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