「朔太」さんのページ

何とも言えない上品な文芸作品に接することができた余韻が残ります。
まず、洋風名画に匹敵するような美しい描画力です。
車椅子の少女ビエールカの美しさは目を見張ります。
沙村の描画力、構図の美しさは、絵描きとしても成功していたと思われます。

次に、ロシア革命直後の混乱した圧政下の非道理不尽な世界を背景に、
謎がかった少女と従者の不思議な取り合わせという人物設定の妙、
没落貴族や王家生き残りという歴史的史実の絡め方など、
小説としても興味をそそる内容で、展開もスリリングです。
魅力的な人物も散りばらめられており、文章化、映像化しても
一定の成果が得られることが期待できるような内容です。

さらに、読後に感じるのが、タイトルのすばらしさです。
春風のイメージとはかけ離れた全般の印象が、
最後のシーンですべて決着してしまいます。
最後のシーンまで計算し尽くした上で、作品タイトルを
決めていたのでしょうか。
してやられた感で満載になりました。

すべての点で、漫画としての最高のレベルにありますので、
10点をつけざるを得ません。

今後の沙村広明さんの活躍に目が離せません。

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[投稿:2021-07-04 07:49:59] [修正:2021-07-04 07:49:59]

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