「朔太」さんのページ

総レビュー数: 740レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年01月09日

自虐的私小説風漫画です。
漫画家残酷物語の延長にあります。
ヒット作品の出せない(売れない)漫画家の最大の弱点は
エンターテインメントとなるストーリーテラーになる
才能がないことなんですね。
常日頃から思うのは、漫画家の苦しみの大半はネームの
考案なんだから、ここは分業制で原作者と手を組むべきなんです。
商業ベースの漫画家さんには、なんだかんだ言っても
一定レベルの絵なら描ける人は沢山いますからねえ。
自身の適性、才能の限界を知れば、編集者に頭を
下げるべきなんです。
才能ある原作者もそれほど多くはないのかもしれないですが・・。

さて、本作品の第1巻には引き込まれ魅力がありました。
まさに自身の小規模な生活ぶりが、社会の底辺に落ちるか
どうかの瀬戸際で踏ん張っている活力が伝わってきました。
しかし、多少なりとも連載(定収入)を得ても、
編集者と妻と他のライバル達との関わりどころか嫉妬と
優越感との行きつ戻りつを繰り返すのですね。
これには、さすがに2,3巻読んだところで食傷気味になりました。
おまけにそれほどの自虐ぶりなのに、妙な自信が加わって
くるので鼻につくようになりました。

6巻で休載にしてストーリー漫画に転身されたのは、正解でした。
作者も妻に言ってますが、「いつまでも漫画家でいられる
ことはない。そのことは分かっているのか。」
妻は「その時には私が働くから、心配なさんな。」と返して、
作者は最高の妻だと賞賛します。
かような具合で、まさに小規模な生活というより、
小心者の日記と回顧録を見せつけられるという感じです。
私にはやや重かったです。

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[投稿:2019-06-26 19:58:29] [修正:2019-06-26 19:58:29] [このレビューのURL]

漫画家さんは孤独で傷つきやすいナイーブな存在なんですね。
おだてたり透かしたりしてその気にさせて木に登らせる
のが担当編集者の役割です。
読者の声を代弁して、ネームも何度も訂正させて育てていく。
新人さんを育てて大きなホームランを打つのが編集者の夢。
大学柔道出身の編集者小熊は、夢を追いかける良い
個性を持っていて好感が持てます。
「売れるのではない、売ったのだ。」というセリフは編集者の矜持です。
そんなお仕事を楽しく見せてくれる漫画です。

漫画レビューワーにとって、漫画制作の裏事情を知って
おくことは大切と思いますので、必読の作品です。


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[投稿:2019-06-17 20:15:00] [修正:2019-06-17 20:15:00] [このレビューのURL]

性同一性障害という病気がもたらす本人のみならず、
家族や社会との葛藤をテーマにしました。
ナイーブな問題だけれども、想定できる問題や衝突を
余すことなくタブー視しないで問題提議をします。

皆さんの評価は高いので、口はばったいのですが、
全巻を読んだ正直な感想です。
背景を理解するための1巻と結着の15巻の間の
13巻分のお話は、毎号毎巻同じ繰り返しに感じてしまいました。
プロセスの進展はほとんどありません。
周辺の同じ思いを持つ男女、姉、母、女友達の優しい
共感と彼ら同士の反発の繰り返しです。
やや退屈さを感じるほどの行きつ戻りつを繰り返すのが残念です。

また、画は可愛いのですが、人物の描き分けが苦手な
ようで、十人くらいのサブキャラはほとんど誰だか
わからないまま話しが進んでいった感じでした。
まあ、それでも問題ない展開も困ったものですが。

面白いのは、主人公を取り巻く男友達のほとんどは、
無邪気な攻撃を仕掛けてくる敵ですね。
男社会が絶対敵だと理解できます。
要するにオンナ世界になれば、救われる男も沢山
いることを男は知るべきですね。

つまるところ、本当の自分をさらけ出したい欲求と社会と
どのように折り合いをつけていくかの問題なんですよ。
繊細な心を持つ人間は、獣がいる社会では生きていけません。
繊細な世界を好む人たちに守られた駕籠の中の世界だけが、
彼らの住処という結論かと理解しました。

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[投稿:2019-06-09 14:55:45] [修正:2019-06-09 14:55:45] [このレビューのURL]

道路は右端を歩き、横断歩道以外で道を渡りません。
安くてうまい“さんま”のためなら、足を棒にしても
歩きつづけます。
道路交通法を遵守し、自由経済の法則に忠実な
学者生活を滑稽と笑い飛ばします。

今の時代、学者でなくとも変人は山ほど町にあふれる
時代になりましたので、連載開始の1989年には
滑稽と笑えたことも個性の時代となった現代では、
さほどそうでもない、と冷静にみてしまいます。

時代の変化にとても影響を受ける作品でしょう。

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[投稿:2019-06-05 20:03:06] [修正:2019-06-05 20:03:06] [このレビューのURL]

素晴らしいのはタイトル。
確かに心を満たすのはマフラーからまき散らす爆音だけ。
これを日本中にまき散らしたい欲求が上手く表現できている。

簡単に言えば、暴走族物語。
英雄視もしないし、刹那的でもない。
走ってないとただの暇人だからという理由で走る。
未来も大人の先も知らない、考えない。

高橋ツトムの絵が好きだ。
説明できない感情を上手く表情にできる人だ。

惜しいと思うのは、やや冗長なストーリー展開。
雰囲気が最高なので惜しい。


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[投稿:2019-06-05 05:42:36] [修正:2019-06-05 05:42:36] [このレビューのURL]

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