「朔太」さんのページ

総レビュー数: 818レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年01月09日

漫才師島田洋七氏の原作は、昔読んだことがあって、ドラマか映画も
見たような記憶がありました。
最初の数巻は原作に忠実に展開していますが、11巻という長編の中では、
ストーリーも絶対に不足しますので、相当に石川氏の創作が入ってきます。
背景と状況だけ借りた新たな石川氏のがばいが、とても良いです。

時折、挿入される広島に住む母への憧憬、兄との思いやりなどは、
子供なりの健気さがとても良いです。
やはり子供は田舎の自然の中で豊かに育てるに越したことはないと
納得させられます。
もっと言えば、貧乏こそ最大の教育かも知れません。
生活の安定と引き換えに、人間は次の欲望のために豊かな心を失うのです。
青年誌に連載されましたが、このまま少年誌に転載して欲しい作品ですね。

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[投稿:2024-12-07 11:44:55] [修正:2024-12-07 11:44:55] [このレビューのURL]

ほのぼのとした雰囲気のある有為な作品です。
短編読み切り作品のいずれも力作です。
田舎の老医者の徒然日記風に見せてはいますが、なかなかに小さな
昔話のようなテイスト(風花、吊るし柿、久美ちゃんの絵、他)もあって、
読後感が良いです。
事の善悪を判断せず、感情表現の苦手な日本人の特性を逆手にとって、
豊かな情感の世界を上手に表現してくれます。

本作品より先に息子の代になった「本日は休診」を読んでしまいましたが、
主人公を傍観者にした語り部風の本作の方がより一層味わい深いと感じます。宮沢賢治とは言い過ぎでしょうけど、同じような不思議な世界に連れて
行ってくれる感じが残ります。
隠れた名作かもしれません。

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[投稿:2024-08-21 08:04:58] [修正:2024-08-21 08:04:58] [このレビューのURL]

友人一人も作れないなんて、普通の人間では想像外の生き物です。
しかし、実際のところ、実に傷つきやすく人への配慮で精神が
困ぱいする人がいるんですね。
おまけにいじめに遭えば、もう部屋からも出られなくなる。
そんな繊細な人間同士が出会えば、どうなるか。
人と人の出会いと未来は捨てたものではないということでしょうか。

作中、最も魅力的なのは因幡さんです。
超グラマラスで美人なのに、根暗な主人公に惚れてしまいます。
こんな意外性が、また作品を盛り上げています。
好人物が織りなす青春劇ということですね。
意外な掘り出し物です。

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[投稿:2024-06-30 05:18:31] [修正:2024-06-30 05:18:31] [このレビューのURL]

本木雅弘主演で「おくりびと」という映画があったが、この種の仕事は
世の中に必要不可欠だけど、自分はやりたくないなあ、と思ったもんだ。

しかし、ここで出てくる特殊清掃業という職業は、おくりびとの
何十倍も上を行く感じだ。
普段はそんな意識していないが、孤独死なんていう言葉が日常化して
るんだから、酷い場合には死後1年くらい発見されない場合もあるよな。
その住居はそのまま廃墟になるわけじゃないから、再利用というか
その後もまた別の住民が住むことになる。
きっと新しい住民は前の住民の事情なんか知らないで住むんでしょうね。
こんなことが可能なのは、特殊清掃業の方々のお陰というわけだ。

最初は、特殊清掃の悲惨さに目を奪われるけど、孤独死や自殺者の
背景やその後の事情なんかにテーマが移ってきて、一層人間の一生が
哀れになってくる。
若いうちは自分には関係ないこととタカをくくってるけど、他人事でないよな。
いくら身内がいて子供がいても、最後まで一緒に住んでいるとは限らないものな。
むしろ、世の中の実情を見聞きする分には、最後は一人で死んでいく
ケースがほとんどだもの。
いやあ、この作品のお陰で自分の人生を再認識したわ。

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[投稿:2024-06-26 08:59:09] [修正:2024-06-26 08:59:09] [このレビューのURL]

物静かでメガネ。そんな外見とは裏腹に成績は中の下。アナログ人間で不器用。
運動神経は女子以下の町田くん。
得意なことが何もないと本人は思っていますが周りからは愛されています。
その理由は、彼がとても人が好きだからです。
文章にすると、ただのきれいごとですが、これを見事にリアルな世界に
投影して見せている作品です。
町田イズムと称して、何かとても優しい、安心できる世界、それが
町田くんの世界でした。
とても良い作品だと思います。

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[投稿:2024-06-19 01:47:42] [修正:2024-06-19 01:47:42] [このレビューのURL]

あらゆる格闘技、武術、体術をよく研究し尽くしている。
事前の調査努力が半端ないため、従来の格闘漫画の数段上を
行くリアルさが魅力的だ。
各分野で最強と思われる格闘家がぞろぞろ出てくるたびに、興奮が止まらない。

しかし、勝負は格闘の技量で決着するのではない。
表題通り、ルール無視の喧嘩で命のやり取りが決まる。
鍛えに鍛えた精神と肉体と技術も、果たして喧嘩の優劣を決めるのか、
という点で作品から目が離せなくなるのだ。

特に、前半での工藤優作戦で格闘技とは別世界の喧嘩に引き込まれる。
さらに、中段での金田戦は、まさに喧嘩。
柔道世界チャンピョン金田が地を這うように、知力と気力を尽くす
喧嘩とは、かくもエゲツナイものなのかと恐れ入った。

さらには、失礼ながら「最強の格闘技はまだ決まっていない」という
毎回巻頭に入るエピソード編が本編以上に面白い。
これが収束して、最強トーナメントに入っていく続編への導入と
気づかされた時には、素晴らしい演出だと思った。
未だ、この作品以上の喧嘩漫画に出会ったことはない。
(減点2は、蛇足的なシュールな意味不明なギャグ回だ。特に、妹が出てくる回は、作者が思っている程、面白くない。)

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[投稿:2023-12-04 17:59:05] [修正:2023-12-04 17:59:05] [このレビューのURL]

読む手が止まらない。
続きが読みたくて仕方がない。
殺人教師がいるかと思えば、モンスターペアレンツがいたり、
妄信ジャーナリストも登場する。
一体、世の中何を信じれば良いのか?

これはノンフィクションなのか?
本当に現実なのか?
密室で起きたことは、常に藪の中だと心得るべしなのか。
事実の積み上げが、真実にはなり得ないという怖さ。
メディアは常に単なる賑やかしで、無責任ということは
知っていたけれど、時には加害者にもなる。

遂には、原作本も探し出して読んだ。
しかし、ここで新たな疑問が生まれる。
原作者はよく調べ上げたとは思うが、こうなると原作者の
主張も「でっちあげ」と疑えないか?
でっちあげとは言えない程度のごまかしや誤謬があれば、
裁判と言えどもどちらにでも転ぶかもしれないんじゃないか?
いつまでたっても「藪の中」。
社会はどこまでも闇だな。

社会生活から人生を切り離せないなら、必要以上に社会に
身を預けないようにすべきと肝に命じる。
新聞もメディアも国家も信用できない。
最後に思ったことは、少なくとも自分はこんな闇に巻き
込まれたくないこと。
そんな無関心さが、逆に被害者を孤立化させたのかもしれないが。

肝が冷えるほど驚かされたが、知っておきたい社会的問題作品。

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[投稿:2023-09-02 05:32:16] [修正:2023-09-02 05:32:16] [このレビューのURL]

小池一夫、小島剛夕両氏のコンビによる作品群には、
背骨に一本筋が通った生き方が見事に表現されています。

主人公山田浅右衛門も、傑物です。
実は幕臣ではなく、浪人だったのですね。
いわば、アルバイトで首打ち職をしていた。
命を奪う重大な使命に、嫁を取らず子を設けないという
意思を貫くわけです。
一徹な生き方に、この作品でも感銘を受けました。
また、十手持ちの坂根傘次郎と河童の新子が登場する回は、
いずれも楽しめました。
彼らもまた庶民の感覚で、一徹に筋を通した生き方をしており、
かつ人生を楽しむ余裕もあって共感を覚えます。

ただし、「子連れ狼」ほどダイナミックさというか
派手さはありませんので、2点減点としました。

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[投稿:2023-08-29 06:00:11] [修正:2023-08-29 06:00:11] [このレビューのURL]

8点 蜜の島

一編の高級ミステリー小説を読んだような味わいがあります。
この世の存在しない孤島、謎の少女、不可思議な島民たちの
行動など、こってりと濃い味付けがされています。

4巻と長編とも呼べない分量でまとめて頂いており、ついつい
読む手が止まらなくなり、一気に数時間で読んでしまいました。
真相が解明さえた後も、最初から読み直してみるという良作です。
思いがけない掘り出し物かもです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2023-07-10 18:26:44] [修正:2023-07-10 18:26:44] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

平安朝時代の京都を舞台に巻き起こる怪奇事件と権力闘争が
メインテーマです。
在原業平と菅原道真がなかなかの名コンビぶりを見せます。
事件は鬼や物の怪などが原因とされますが、真相は人間たち
によるもの、道真の才覚によって科学的に解明されるので、
ちょっとした金田一少年のような名推理で活躍します。

事件の背景には、朝廷で勢力争いを繰り広げていた
藤原氏や伴氏といった有力貴族の暗躍もあって、
政治的な駆け引きも見ごたえがあります。
何といっても、ヤング道真のクールな眼差し、政治や
出世には距離を置き、将来は遣唐使になりたいという
現実逃避型の価値観で人間臭さを見せます。

一方、業平ら周辺の人間は、道真の才覚を認めつつ、
その才覚を公平公正な世の中のため、ひいては逃避したい
社会を変えるために活かすには、権力を持たねばならない
と緩く諭します。

才ある者の若いゆえの悩みがなんとも言えません。
単行本には、本郷和人氏による平安時代の文化・風俗に
関する解説文が織り込まれており、これも何とも
言えず格調高い作品にしています。
15巻まで面白く読ませてもらいました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2023-03-14 08:32:04] [修正:2023-03-14 08:32:04] [このレビューのURL]

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