「朔太」さんのページ

総レビュー数: 740レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年01月09日

[ネタバレあり]

「わにとかげぎす」とは、深海に生息する
「ワニトカゲギス目ワニトカゲギス属」という魚類のこと。
寝てばかりの人生を送ってきた、友人も恋人もいない
ままに38歳になってしまった男を深海魚に例えたということのようです。

レジェンド稲中卓球部から一転、僕といっしょをはさんで、
グリーンヒル以降社会的無力者を一貫して主人公にして描いてきました。
本作でもシガテラと構図は一緒です。
しかし、当初から羽田さんの存在があることで、
極限の絶望には至ることがない点で比較的楽に読むことができました。
お約束の展開ではありますが、単なる変人、偏執狂、オタク
だけではなく、狂気をはらんだヤクザや殺人狂まで
登場しますので、サスペンスまがいのあれこれにも遭遇します。

それでも深海に沈む深海魚である主人公を救いだしたい
羽田さんは天使のようです。
ちょっと非現実的な気もしますが、羽田さん自身も
やや病んだ面をコンプレックスに感じているようなので、
それもありかなと理解しました。

古谷氏の一連の作品は、一見して社会的に価値のなさそうな
主人公を立てて、「孤独、無力、弱者の絶望」をテーマに
しつつ連載が始まりますが、最終話を読み終えると、
こんな自分でも生きてて良いのだと思わせてくれる不思議さ、
未来への希望を感じさせてくれます。

好きな漫画家さんの一人です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2018-12-27 23:06:36] [修正:2018-12-27 23:06:36] [このレビューのURL]

命が尽きた時、人は動物はどうなるのだろう。
絶対に答えがないために、人は死後を恐れ理想郷である
天国や極限の恐怖である地獄を妄想している。
日本人の根底には、実は強い天国と地獄絵図がイメージ
されており、日ごろの勧善懲悪の思想や行動の原理に繋がっている。
言葉にはしないが、日本人には共通の死生感が存在するのである。
スカイハイは、共通の死生感を巧みに利用し、上手い
設定を生み出した。

「怨みの門」は天国と地獄の分岐点にある。
自殺や殺人を犯した人間は、文句なく地獄。
殺されたり不慮の事故で亡くなった人間だけがここに来る。
したがって、基本形は「怨み」を持つ魂の浄化のための門。

あとがきで高橋ツトム自身が記しているが、
世の中のあまりにも浮かばれない被害者の怨みに
焦点を当てた展開を構想したらしい。
しかし、案外怨みを超えた救いのお話が多くなっている。

やっぱり日本人の死生感にマッチするのは、怨みを浄化
してこの世からあの世は気持ち良く旅立ちたい。
つまり救われたい。
シリーズ3回目の本編では、それがテーマになってきた印象である。

相変わらず絵は上手い。
特にやくざや怨み顔を描かせれば、この作者の右に
出る者はいない感じだ。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2018-12-18 17:28:20] [修正:2018-12-18 17:28:20] [このレビューのURL]

各世代でお世話になった超長期連載漫画です。

安定したテイストながら、10代青少年のための
入門編教科書というか、知識偏重の匂いがします。
長い連載を振り返ると、無知な男女の出会いから
成長する夫婦物語と言えば言えるのですが、
いつまでたっても初心な感じです。
シニカルに言えば、一定の役割を果たしていると
思われる教育的漫画でしょうか。


ナイスレビュー: 0

[投稿:2018-12-15 06:36:05] [修正:2018-12-15 06:36:05] [このレビューのURL]

あだち漫画と同じく、お約束の匂いがすっかりしていた
時代の星里さんの作品です。
美人4姉妹と同じ屋根の下で同居ですから、事件が
起きないはずがありません。
毎日、家に帰ってくるのが楽しみですよね。
良き時代のハートフルコメディ、って感じです。


ナイスレビュー: 0

[投稿:2018-12-12 18:01:35] [修正:2018-12-12 18:01:35] [このレビューのURL]

テーマをSMだけに絞って、雰囲気のある長期連載シリーズ
によく仕上がっています。
これだけ長く続くとは思わなかったので、感心しています。
読者もエロに対して成長を促す作品かと思います。


ナイスレビュー: 0

[投稿:2018-12-08 06:35:17] [修正:2018-12-08 06:35:17] [このレビューのURL]

原作が昭和12年の本にもかかわらず、発売半年で200万部
突破のベストセラーとなったそうです。
ジャーナリストの池上彰、コピーライターの糸井重里も
絶賛、ジブリの宮崎駿は映画化するといいます。
明治生まれの児童文学者が、子ども向けに書いた原作が
平成最後の時代に大ヒットする現象が、さらに話題を
呼んで関心が拡がっているように思います。

基本は問題提議の書です。
小学生のコペル君の体験は我々にも普遍的な体験です。
世の中には、悪が対岸にあって突然に正義を貫く
苦しみが天から降ってきます。
自身は絶対に悪には手を貸さないと固く誓っていてもです。
それは仕方ないことと棚上げしながら、多くの人は
大人になり、力を得ることが先決と言って死んでいく
ことを繰り返しています。
そんな人生の末路を多くの人が、何か違うと感じているのですね。
これは人間の悩みの一つの例示なのでしょうが、
案外普遍的な気もします。

考えても考えても答えはありません。
自分を人間分子として小さな存在と位置付けた上で、
生産関係である世界、宇宙の中で、それでも自分で
自分を決定するしかない。
そんな風に結論づけています。

明治から大正、昭和、平成と世は変わっても、
人はあまり変わり映えしないということでしょうか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2018-12-04 23:17:32] [修正:2018-12-04 23:27:24] [このレビューのURL]

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