「朔太」さんのページ

総レビュー数: 741レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年01月09日

大人気テレビドラマになったということで、試し読みを致しました。
中学生と中学女教師の間の言わば、よろめきドラマです。
内容的にはどこかで見たような既視感があるので、
それほどときめき感はありませんが、
主人公の中学生は思春期病の典型美男子ですし、
女教師はいわば天然のはかない美しさがありますので、
少し条件が揃い過ぎの特別な美男美女の物語にも見えて、引きます。
高校生になった2巻で撤退します。

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[投稿:2020-06-29 11:43:33] [修正:2020-06-29 11:43:33] [このレビューのURL]

8点 奇子

[ネタバレあり]

手塚の意欲作。壮大なスケールで圧倒されました。

まずは、時代背景ですが、真に前近代的日本の封建的
家督制度の時代です。
横溝正史も殺人事件の動機、背景を前近代的な日本社会に
求めた小説が多いですが、本当の田舎の悲劇を表現しています。
現代のドラマで本当の田舎の悲劇を描いたものは
皆無ですから、現代人には「まさか?」の世界だと思いますが、
戦前以前の田舎では極めて自然な家制度の産物だったと思われます。
三男のセリフに「家系を調べると、まるで汚物ダメだ。
兄妹、姉弟、夫婦、いとこ、血縁関係が、およそ犬か
猫みたいに混ざり合って、それが子を作りその子同士が
また混ざり合って、小作人や他人の女にまで子を産ませ・・。
その都度金と権力でもみ消してきた。」

そんな陰惨な家の犠牲により、23年間監禁生活を過ごす
奇子ですが、決して主人公ではありません。
戦後の占領下でGHQやCIAの思惑により翻弄される日本人
スパイの次男も田舎で家督を継ぐためには命も差し出す長男も、
倫理を説く三男も家を出て客観的な視線を送る長女も含めて
皆が主人公です。
しかし、全員が善人ではありません。
悪人もいませんが悪魔的悪意を潜在的に持っています。
長女ですら傍観することで罪を犯したことを自覚していません。

彼らが紡ぐ大団円は、ドラマとしては当然の帰結と言えます。
読後感としては、一編の小説かテレビドラマか映画を
見せられたような思いがします。

手塚は一流の脚本家でもあったように思います。
やはり天才です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-06-26 07:32:33] [修正:2020-06-26 07:34:09] [このレビューのURL]

9点 ヒミズ

社会の底の閉塞感を文学的に哲学的になり過ぎず、
適度の分かりやすさで表現している。

「僕といっしょ、1997年」、「グリーンヒル、1999年」
に続く一連のシリーズも同様ながら「ヒミズ」は
救いようのない底辺の底の息苦しさが今まで以上に
切迫しており、これ以下はないと思える設定である。
この後の「シガテラ,2003年」、「わにとかげぎす,2006年」でも
絶望の状況はあるが、一筋の光が見え隠れしている。

今回もお節介な女性理解者には同様に救い神としての
役割が与えられているのだが、結局は主人公が受け
入れていない点で、他にはない地獄っぷりである。
何事もなく、貧しくとも平穏を求めるだけで、清く
正しく生きるつもりだった主人公の絶望ぶりは
半端ないものである。

単純に言えば“行き場のない暗い”作品だが、
切り捨てられない魅力がある。
こんな主人公や哲学に共感しないまでも理解できる
読者がいるとすれば、私も含めて病人と呼んでも
良いのではないだろうか。

大きな熱量とインパクトを持った作品である。
漫画として成立しているのが不思議ではあるが。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-06-18 17:09:57] [修正:2020-06-18 17:09:57] [このレビューのURL]

おどろおどろしい表紙なので、ずっと読むのを避けて
きましたが、結構評判が良さそうなので手に取ってみました。
よく調べると、この先延々と続編があることが分かり
ましたので、途中で挫折を覚悟して、第一の惨劇から
順番を間違えることなく読もうと思っています。

まず、作画を女性作家にして、萌え系の登場人物が
ほとんどという点で違和感を感じました。
コンピュータゲーム用に制作されたためでしょうか。

次に人里離れた雛見沢村の中学生がこんな格好してるの
かという疑問、また、男子学生が登場しないこと、
何年生かわからない違和感がります。
さらに、全体に主人公の主観で語られるので、
どの情報も疑心暗鬼によって、嘘情報にしか
思えません。
結局、本編だけでは十分な情報を与えられていない
段階ですから、単に悲劇が起こったという
プロローグのような気がしています。

本作品だけを読んだ時点でのレビューですので
不満が多いですが、解決編まで読んだところで
できれば大きなサプライズが欲しいところです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-06-16 18:35:00] [修正:2020-06-16 18:35:00] [このレビューのURL]

10点 蟲師

日本の風土と日本人に根づいた原世界がそこにあります。
全ての人が心の底に持っている懐かしい世界です。
私は幼少期に目にした夜の闇や日暮れ時の神秘性を
いつまでも脳の底に残している気がしています。
その恐れが日本なら妖怪、欧米なら妖精などの存在を生みます。
漆原さんは、さらにこれを総称的に蟲と定義し、
時にはナガレモノという自然現象にさえ生命と意味を与えて世界を作りました。

最初に賛辞されるのは、江戸時代でも明治時代でも
なさそうな、およそ文明からは遠く、
しかしとんでもない昔でもない独特な世界観と蟲の存在でしょう。

蟲が人間に及ぼす悪さや自然の営みだけでも、
十分に絵として成立していますが、次に蟲に関わって
しまう人間の織りなす物語がセットで用意されています。
命の根源である蟲に抗っても仕方なく、共生を促します。

どこかの漫画雑誌では「勝利、努力、友情」なんて
共通語で作品を生み出させて商業的に成功していますが、
この作品は全くそのいずれの言葉も当てはまりません。
だけれども、とても気持ち良い時間を与えてくれる、
まるで美しい絵画と静かな音楽を合わせて愛でるような
思いにさせてくれました。
全体を流れる静謐で穏やかな空間と時間が3つ目に
賞賛されるべき点でしょう。
それはきっと水彩画のような薄墨のタッチと自然画の
多用がもたらしたのでしょう。

この作品に出えたことは、大変幸せに思います。
名作です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-06-11 02:19:07] [修正:2020-06-11 02:19:07] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

主人公の心平は、高校時代に特に実績もないのに、妙にプロ野球選手、投手として自信があって、自身の売り込みでドラフト外で入団します。
本当の実力を隠しているようなんですが、オープン戦も力を発揮できず、開幕戦から出場ってあり得ません。
しかも、抑え投手として出場したとたん、超遅球だとか左右投げとか、だまかしながら14連続セーブという活躍です。
その後はやはり活躍できないのですが、自分の計画の一部であることを匂わせます。
2年目は外野手として活躍するのですが、このままの起用法なら野球をやめると言いながら、その後も首位打者を取るなど投手以上に活躍するのに、ストッパーとしてはルール違反のイカさま投法でゴマかしながら活躍します。
球団職員の手を借りて、飛ばないボールを自分だけ投げるあたりは、少年漫画としては不適切です。今の時代ではあり得ないでしょう。
ここまでは、実は前半までの感想です。

以下は、2/3くらいを過ぎた後、本当の自分の計画という内容が明らかになります。
理想の球団を経営するという夢でした。
ここからプロ野球のとらえ方が変わって、選手集めの話が大半を占めてくるようになります。
ドラフト話や女性選手、ラグビー選手のスカウト、山奥で暮らす世捨て人などです。
球団オーナーが外野手兼投手なのですから,ハチャメチャやりたい放題になりました。
水島先生のこんな球団があったらいいなという思いがベースになったような気がします。

水島作品、特にドカベン、あぶさんは好きな作品ですが、この作品は雑な構成で好きになれませんでした。
水島作品の中でも、面白度ではランクの低い作品だと思いました。
主人公とタイトルの設定に一貫性がないので、共感できないことが原因だと思います。

ということで、至る所にタイトルの違和感を感じるシナリオと共感できない主人公の設定がとても苦い作品でした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-06-01 17:58:54] [修正:2020-06-01 17:58:54] [このレビューのURL]

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