「朔太」さんのページ

総レビュー数: 735レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年01月09日

原作者安部譲二氏の昭和30年代回顧録といった感じです。
負けて終わった戦争の傷跡が残り、人々は貧しく社会は
混とんとしていました。
生き残った者たちは、ただその日その日を送っていくだけで、
辛く厳しい時代ということです。
一面で暴力か才覚でサバイバルに勝ち残り財をなし、
のし上った人物伝も聞く話ですが、一面で厳しく淘汰
された時代なのでしょう。

その多くの後者たちの中でも、絆とか友情とか仲間で生きる
希望を求める時代だったようにも思います。
原作者は、その時代の方が幸せなんじゃないか、と
問いかけているようにも思えます。

2003年から8年の連載で、全22巻の長編ではありましたが、
思いのほか単調な展開でした。
大人買いで全巻を読破しましたが、全編、同じトーンで
終始しましたので、最初の数巻でも良かったかと思います。


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[投稿:2018-01-27 06:25:18] [修正:2018-01-27 06:25:18] [このレビューのURL]

「あしたのジョー」で一世を風靡したちばてつや氏は、
手塚治虫、石森章太郎、藤子不二雄らと並んで既に巨匠でした。
少年マガジン誌はその後、チャンピオン誌やジャンプ誌に
追随され没落していきますが、サンデー、キングもあった
当時の浮沈空母のような存在です。
その人気誌には、ちばてつやの作品は絶対不可欠で、
この後も「あした天気になあれ」と続いていく中での連載です。

鉄平は、ちば氏が最も得意とする少年像です。
「ハリスの旋風」の石田国松とほとんど同じキャラです。
貧しい生活の生い立ちで乱暴で粗悪、暴力、盗みも嘘も全く
平気ですが、仲間を大切にし弱い者への味方を貫く心優しい一面もあります。
勉強は全くできないがスポーツは万能で、最初は一方的に
負ける相手には、無茶苦茶だが尋常でない訓練で勝つまで精進する。
その後も「あした天気になあれ」の向太陽、「のたり松太郎」
でも共通するところは必ず見られます。

ちば氏の作り出す主人公像は、最初不愉快な面もありますが、
やがて読者の共感を呼び、最後には常に人気者になって支持を得ます。
鉄平はその中でも極端な悪から人気者になった典型的な人物像でした。

人間像が支持されているのではなく、その生きるプロセスを
支持しているような気がします。
今はダメ人間でも、鉄平のようにがむしゃらに目の前のことに
(頑張るとか精進するとかの高い次元でなく)熱くなって
いれば、いずれ勝者になれる、それを温かく見守ってくれて
いる人がいるはず、という将来への希望を感じさせてくれます。

私にとって、少年漫画の代表作とも言える作品でしょう。

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[投稿:2018-01-21 08:03:11] [修正:2018-01-21 08:03:11] [このレビューのURL]

長編連載で全編麻雀対決の独特な味わいがします。
しかし、必ずしも典型的な麻雀漫画とも言えない部分があります。
登場人物は、いずれも天才型麻雀の打ち手であり、
定石でない待ちに突然決断しますが、
天才は直観だけでなくいくつかの根拠を持っている
はずというパターンが多いです。
その根拠には触れずですが。

典型的な麻雀漫画には、根拠のすごさで読者を驚かせる
ことが多いのですが、本作品は登場人物たちの圧倒される
ような迫力、いわばキャラの立ち方で魅せつけるのです。

波城組編では、10億円と銀座の利権を賭けて、
日本のやくざと中国マフィアの対決を描くのですが、
これが延々5巻以上を費やしたでしょうか。
その決着(61巻)が圧巻でしたので、お勧めの名場面でしょう。

長編ですが、順々に読み進めるべきとも思えません。
どこをどう切り取っても、同じテイストですので、
抜き取って読み進めるのも許されると思います。


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[投稿:2018-01-11 16:52:30] [修正:2018-01-11 16:52:30] [このレビューのURL]

6点 not simple

最初からよく考えられた構成で、破たんがなく展開が
進行していきます。
しかし、思春期の熱にあてられたかのような登場人物の
羅列が気になります。
主役は生まれつき複雑な事情を抱えているのだから
仕方ないのですが、周りの脇役も含めて全員が鬱のような
精神状態なので、あまり共感はできませんでした。

一編の短編テレビドラマのような風味を長編ではなく、
1巻で味わえた点は評価できます。
また、絵が独特のタッチで好き嫌いはあるかと思いますが、
私は嫌いではありませんでした。

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[投稿:2018-01-10 19:07:15] [修正:2018-01-10 19:07:15] [このレビューのURL]

記憶に残る最高傑作のひとつです。
主たるシナリオはなく、真面目不良高校生の青春日記です。
無口なゴリラーマンの謎が気になって、ぐんぐん引き込まれます。
周囲の不良達の価値観も無定形なんだけど、魅力的です。
主人公は一言もセリフはないため、何もかも謎だらけですが、
彼を取り巻く仲間たちのペーソスを誘う楽しくも健気な日々なんです。

最高の魅力は、繰り出すギャグなんですね。
何気ない言葉の応酬と行動は、今どきの高校生にも
大いに参考になるでしょう。
めったに付けない最高得点を差し上げましょう。

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[投稿:2010-11-21 23:09:15] [修正:2018-01-10 19:04:24] [このレビューのURL]

何というストリーでもなく、盛り上がりも意外性もないの
だけれど、何か気持ちよくなる子持ちの女子プロレスラー物語です。

破天荒で無責任で出鱈目な男のお話は世の中に数あれど、
これの女版というのは意外でした。
男に走って試合を放り出して、5年後に悪びれず
戻ってくる女子って、いそうだけれど好きにはなれないですよね。
ここに出てくる藤はそんな嫌みがない。
絶対にまた裏切られるのだけれど、わかっちゃいるけど
見捨てられない、そんな魅力を上手に描けていました。
こんな母親には、定番のシッカリ娘が育つところが、また見どころです。

作品としての魅力は少ないのですが、全体の雰囲気がとてもヨロシイ。


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[投稿:2018-01-07 12:52:22] [修正:2018-01-07 12:52:22] [このレビューのURL]

8点 JIN -仁-

江戸時代にタイムスリップした現代医師南方仁を中心に
据えた幕末と明治維新の歴史漫画あるいは医療漫画ということです。

タイムスリップということでSFかと思いきや、これは
「あとがき」で作者自身の説明によると、
現代医学を江戸時代に持ち込むための方便だったようで
意外でした。
本当に描きたかったのは、梅毒他感染症に苦しむ当時の
遊女や庶民の苦しみだったようで、漫画の中だけでも
彼らの無念を晴らせないかと考えたということです。
読者の想像もつかないところで創作意欲というものが
生まれるようで驚きました。

作者の意図とは別に、医療漫画というより明治維新を
背景にした当時を生きた人々の活力、清々しさの方が
作品の魅力になりました。
登場人物皆が凛としており、主人公南方仁も現代へ
戻ることよりも江戸時代に生き、積極的な歴史への
参画を始める動機が生まれます。
当時の人々の生き方が関与しているように見えます。

SFとしての締め方には納得できるものではありませんが、
それは本作品では些事なので、とやかく言っては
いけないようです。
歴史を操って人物の清々しさで勝負する点は、
どうしても「龍」との類似性を感じてしまいますが、
村上もとかの真骨頂とも言えますので良しとします。

記憶に残る作品です。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2018-01-02 14:33:44] [修正:2018-01-02 14:33:44] [このレビューのURL]

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