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7点 鬼門街

第一巻の巻末に、本作の構想にイニシエーションに関する記述がある。
作者の幼馴染が、集団暴行事件によって、ある日突然亡くなる。
その理不尽さ、残酷さに対して、暴力事件への抑止力となる
漫画を描きたいと願ったそうである。
そういう意味では、この作品は空想、妄想とは呼べず、
ある意味においてリアルである。

安部元首相襲撃事件は悲惨であった。
加害者に対して「民主主義への挑戦で、この暴力には屈しない。」とか
口走る政治家のなんと想像力のないことか。
安部氏の政治信条には関係ないと報道されているにも関わらず、
コメントを求められたメディア関係者は一様に同じセリフを
口にするにつけ、こいつらは被害者である安部氏に何の同情も
していないことが分かった。
ましてや、加害者の背景に思いを馳せる人間は皆無であった。
事件の背景が明らかになるにつれて、加害者と加害者の母、兄妹に
対する世間、社会、特に旧統一教会の鬼のごとく仕打ちが
明らかになってきた。
この世に鬼がいる、というのは本当である。
餓鬼もいる。そんじょそこらに、うようよといる。

この作品に描写された世界は、まさにリアルな現実社会である。
先の安部氏襲撃事件の加害者にも、その鬼の存在が他の誰よりも見えていたのかもしれない。

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[投稿:2024-05-11 09:04:07] [修正:2024-05-11 09:04:07]

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