「朔太」さんのページ

石川サブロウは、比較的好きな漫画家ではあるが、それは2000年以降の
熟成された頃以降かな。
この作品は石川氏の初期であり、初の長編連載作品である。
画家としての熱情で自身を成長させていくプロセスを読者が見守る構図だが、
はっきり言って地味だ。
致命的なのは、漫画では油絵などの絵画の迫力や感動が表現できない点である。
漫画にできないことはないとかって大家の漫画家が豪語されたことがあったが、
この作品を読むとそれは誤りだと気づく。
小説で音楽の感動を表現できないのと同じだ。

話を戻すが、本作の主人公には一片の超人的要素はないし、読者が感じる
人間的魅力も憧れにも縁遠い。
また、ほとんどは主人公の些細な事件で終始し、終盤でようやく絵画対決の
場面が出てくるが、やはり絵画でオークション落札価格で勝負だとか、
雌雄を決する対決とか、相当無理がある。
この作品を契機に以後石川氏は、画家を主人公にした作品も多いが、
切り口を変えて共感しやすくなっていく。
そういう意味では、何故読者に21巻にわたる長い支持を受けたのか、
不思議でもある。
いつかはなろう、あすなろの木、そうこれはあすなろの記である。
そんな気分が支持された時代だったのかな、1980年代とは。
 

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[投稿:2025-01-05 09:45:56] [修正:2025-01-05 09:45:56]

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