「朔太」さんのページ

総レビュー数: 741レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年01月09日

ドカベン、キャプテン、名門!第三野球部などの長期少年野球漫画の系譜を継承した作品でした。11年間462話51巻連載の野球漫画のレジェンドと称される作品ですが、不思議とレビューされた方がおられません。

物語の展開は、他のスポーツ漫画とも同様に、高校一年生から始まり、夏の大会を延々19巻まで進めます。その先は春の大会が40巻まで続き、その後ようやく高校二年生の夏の県予選という具合です。
因みに、最終話は高校二年生の夏の甲子園初戦で終わります。この辺りは、先の長期少年野球漫画の常道ではありますが。

身長が156cmしかない幼児体型の主人公が特長であり、決定的とも思える欠点なのですが、1%の才能と99%の努力を父の教えとして守り抜くのが、全編を通したコンセプトです。
最初の方では、それも絵空事のように感じますし、都合よく魔球が出てきたり、サヨナラホームランを打たせたりでした。しかし、むしろ選手としてのレベルが上がるほどに、超人ではなく、努力によって開花している点が強調されるようになります。さらに球速を速くする工夫をするなど、だんだんと努力と成果の関連性に説得力が出てくる印象があります。
特に、24巻辺りでは、鈍足だった走力改善のために、陸上部とともにトレーニングを行い指導を仰ぎます。これにより、運動能力全般が向上し、特に守備力が増すといったところは、腑に落ちました。

また、単なる強力ライバルを登場させるだけでなく、勝ちのためならどんな卑怯な作戦も厭わない監督を擁するチームだとか、主人公以上に実力を持ちかつ魅力的な好青年のワンマンチームの悲哀だとか、ドカベンとは異なるバリエーションに富んだ対戦を仕組んでいます。
さらには、自チームには海外帰りの外人まがいのボブ牧田もなかなかの好キャラですね。

とても格好いいとは言えないが可愛い主人公、と同様に、格好いいというより変なタイトルですが、11年の長期連載を成し遂げた名作でした。
因みに1986年チャンピョン連載開始ということもあって、私は最近その存在を知って、全51巻を完読しました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2022-08-17 09:02:32] [修正:2022-08-17 09:12:05] [このレビューのURL]

8点 死役所

設定の面白さが群を抜いています。
人が死んだ経緯をネタに、ほとんど無限に人生ドラマ
が描けそうです。

死後から振り返った人生の振り返りをするパターンが
多くて、上手く生きたいのに上手くいかない不運な
人生や自分勝手で思い上がりの強い人生や様々な
人生模様の多様さに気づきます。
良く生きるより善く生きることが大切だということが
死後の世界から見えるんですね。
48条しるし、が特に心に響きました。
死後の世界が本当にこんな風だったら、もっと気楽に
生きていけそうだなと考えたのは私だけでしょうか?
「87条お先に」では感じ入ります。
死んで生きたことを思い出すことがあれば良いのですが・・。

作者のきしさんは、大変な苦労人で40作品ほどの投稿を
した上で、本作品で初めての連載を獲得されています。
絵は、細線だけを使ったモノトーン風で、個性的です。
一作一作が丁寧に練り込んでいる印象があって、好感が持てます。
善悪の判断は読者に投げていますが、様々な人生ドラマの
面白さを提供してくれました。

私的には、巻末にある業務報告書と題されたエッセイ漫画が、
気に入っています。
さくらももこさんに通じるユーモアセンスと洒脱さがとてもよろしいです。
現在19巻まで出ていますが、長く連載が続けばと思っています。
18巻まで読みました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2021-09-09 07:35:06] [修正:2022-05-21 08:46:08] [このレビューのURL]

一目ぼれ同士の18歳と16歳の若い新婚カップルのお話です。
唐突な出会いで唐突な恋らしきものが始まるのですが、
意外と違和感がないですね。

表題の通り、トニカクカワイイから納得性が高いです。
ヒロインの司が文字通りの可愛いだけのブリブリではなくて、
男性ぶったり、恥じらいをほのかに漂わす感じがよろしい。
青年誌でしたら、新婚ものと言えば、中心は必ず性生活に
焦点があってしまいます。
生活の中心が性であって、幸せや充実感は性生活を経由して
獲得する話になりがちです。
しかし、少年誌ですからそういうわけにはいかない。
では、嘘っぽくって幼い少女漫画のようになるかというと、
そんなことはない。
生活用品を買い揃えたり、食生活を切り詰めたり、
両親への挨拶を進めたりと、結構キチンとした、
むしろリアルな大人びたイベントが続きます。

リアルで地味な生活感がいっぱいなんですが、主人公が
可愛いお嫁さんを前に、本当に幸せ感のオーラを出します。
それを嬉しいと言葉には出さないけれども、一層可愛くなる
お嫁さんといった展開です。

少年たちは、この漫画を読んで、将来は自分も可愛い
お嫁さんをもらうぞ、ときっと誓うことでしょう。
良作だと思います。

追記 少しだけ先読みした所、ちょっとSFぽい展開が
待ってそうです。それはどうかなと心配にもなっています。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2021-12-31 09:15:19] [修正:2021-12-31 09:15:19] [このレビューのURL]

8点 D-LIVE!!

定番のバイク、自動車のみならず、高速列車、航空機、
建設機械、キックボード、水上自動車・・等々、
ありとあらゆるビークルが登場してきて、深い仕様
情報をもとに、ビークルに適合したアクションの
提供がなされます。
まるで、登場するビークルが先にあって、後からスジが
考案されているかのようです。
ACEドライバーという設定も斬新なアイデアですね。
たかがドライバーですから、武器を持たずスパイ活動や
敵と戦うなんて、無理っぽいのですが、毎話上手い
展開に持ち込んでいます。

仲間も秀逸で、それぞれ個性が際立っています。
主人公はドライブテクニックが秀逸な特技がありますが、
それ以外は基本へたれなのです。
しかし、波戸やオウルが彼を評して言います。
「大丈夫。斑鳩悟は仲間を必ず助けに来る奴だから。」

主人公悟は終始ぶれることなく、この言葉に裏打ち
された行動を取り続けます。
さらには、悟の致命的欠陥とされているのが、
ビークルと一体化し過ぎて、ビークルから手を離さない
というポリシーです。
これもなかなか面白い設定です。
これで危機になったり、助かったりということが起こるわけです。

少年誌にはやや過剰なメカニック情報のように思えます。
興味を持った少年は相当オタクのように思えます。
人物表現は少年誌向け、メカニックとアクションは
青年誌向けの印象ですが、十分楽しめました。
15巻完読です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2021-11-30 05:29:22] [修正:2021-11-30 05:29:22] [このレビューのURL]

恋愛もの、特に女性作家が描く恋愛小説が苦手な私
ですが、これには嵌まってしまいました。
全5巻を2日で読んでしまう自分が意外でした。

三十路の二枚目という設定の関根君ですが、
既存の価値観には迎合していないモテ男でした。
その上、生徒会長でスポーツ万能のキャプテン、
女性には言い寄ったこともなく、去る者も追わず、
自主性を捨てています。
羨ましいばかりの関根君がする恋とは、どんなものなのか。
良かったです。
似合いの恋を否定しているところも良かったです。
如月皿さんが、最終回でのセリフ「次に見つけた関根さんの
恋は、きっと全力で協力しようって何でか思っていたんです」
に、関根君が眉間を寄せて涙を一筋流すシーンが最高です。

ぜひ、映像化したものも見てみたい気がします。
なかなかの秀作でした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2021-10-27 08:55:44] [修正:2021-10-27 08:55:44] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

あだち先生の作品は相当読んでいますが、どの作品にも
共通して2人のヒーロー、ヒロイン高校生の淡い恋心が
テーマになっています。
悪く言えば、偉大なるマンネリとなりますが、どの作品を
読んでも読み飽きない、むしろ他の作品も読みたくなる
魅力があります。

本作品は、1980年、しかも少女漫画誌に連載されました。
その後の多くの作品の原型がここにあって、エッセンスが
集約されています。
敵役も決して悪役ではなく、むしろ非の付け所のない
好男子ですが、恋人であるこの好男子よりも身近にいる
(同じ屋根の下で暮らす)下宿人との距離を次第に
縮めていく日々が描かれています。

1部では得意の甲子園を目指す野球部での活躍が舞台に
なっています。
野球経験のない応援団長が活躍して、甲子園まで
もう一歩と大活躍するのは、いつもながら非現実的ではありますが。

本作品の良さは、2部以降での日常生活を通して恋心の
芽生えの過程が微笑ましく共感できるとことろです。
大きな出来事はないのに、日常の中で描かれる気持ち
の変化、心の機微が細かく表現されます。
脇役の有山君のあこがれである圭子ちゃんとの関係を、
主役の二人以上に応援したくなります。
あだち作品には不可欠の脇役のスパイスが効果的に味付けされています。

あだち作品の初期の原型でありながら、いまだに古臭くない代表作品でした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2021-09-19 08:46:34] [修正:2021-09-19 08:46:34] [このレビューのURL]

伊賀と甲賀忍者のバトルロイヤルです。
昔から忍者ものは、ほぼチーム対抗の勝ち抜き戦に
なってしまいます。
私はこの勝ち抜き戦が結構好きです。
それぞれのプレーヤーがどのような必殺技を駆使して
強敵を倒すのか、期待でワクワク感が止まりません。

本作でも、これまでの忍者ものの原型を崩していません。
一対一の戦いは基本ですが、感心なのはヨーイドンで
対抗戦が始まるのではなく、家康が交付した
人別帖すら甲賀側は手に入れることができないところ
から始まるのです。
勝つためには卑怯な騙しもむしろ忍術のコアです。

大人のシビアな駆け引きが魅力ですが、一方使われる
忍術は超能力なのでややバランスが悪いですね。
いずれにしても、良くも悪くも原作山田風太郎氏の
作風に強く依存しています。

エンターテイメントとしての伊賀と甲賀の戦闘は
これからも何度も繰り返すでしょうが、
せがわまさき氏版の本作品は記憶に残るものになると思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2021-04-26 08:16:21] [修正:2021-04-26 08:16:21] [このレビューのURL]

離島に住むしがない漫画家のどうでもよい日常の物語
という触れ込みですね。
1話を読んだ時点では、若者の離島物語かと
思いましたが、それなりに面白く読むと、
2話から全く思いもしない展開でした。
主人公が全く別のところにいた驚きとほのぼのした
どうでも良い日常が何とも心地よく、
漫画家さんの苦悩とちょうどよいバランスがよろしいです。

しかし、これを少年誌で連載とは、編集さんも
思い切った判断です。
因みに、タイトル名が全く意味不明のように思えますが、
「葦の髄から天井を見る」のことわざから引用されたようです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-11-08 06:42:28] [修正:2020-11-08 06:42:28] [このレビューのURL]

8点 茄子

大人テイストの漫画です。
起承転結は有りません。
日常の一部分を切り取って、若い男女であれ、
成人男女であれ、格好つけない渋さが魅力的です。
渋いのに老人が出てこないのが、また渋い。
絵も決して上手ではないと思うが、墨筆も使って
水墨画のようなタッチも使えています。
雰囲気が十分です。

もっともっと続編が読んでみたい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-08-26 01:55:08] [修正:2020-08-26 01:55:08] [このレビューのURL]

1年未満で連載が打ち切られることとなり、福本氏
自身も「読者の心情を読めず、不人気の末に打ち
切られた失敗作である」と認めたらしい。
しかし、ギャンブル、ゲームをテーマに置いて
面白さを出した他の作品との違いを際立たせた
結果になって、良かったのではないでしょうか?

絶望的な状況に身を置いても、決して諦めず冷静に
打開策を講じていくサバイバル漫画としての
切り口をむしろ重点的に展開した感じです。
さらに、他作品でも見られる福本氏の社会的矛盾や
ヒエラルキーに対する怒りがいつも以上に冴え渡っています。

例えば、4巻で少年達だけの会話で語らせます。
「拘束されている訳でもない環境で、喰えて寝れて
適当に遊べて、なんであんなに苦しかったのか?」
「それは夢が叶っていないから、あるいは夢が
見つかっていないからじゃないのか」
「ミュージシャンやタレントが煽ってくる夢、明日、
あきらめないで、という今の時代に蔓延している夢を
追うことは最高って価値観がそもそもおかしい。」
「夢といえば聞こえが良いが、要するに本人の欲だろう。
欲ってのは、適度に達成されなければ、困ったことに
毒や苦しみに転化する。」
「したがって、これだけ夢を欲する時代なのに、
いつまでもこの世界は夢があふれた世界にならない。
むしろ逆に毒が満ちてくる。」

簡潔にまとめたつもりでも長文になってしまう
上記の文章を平気で漫画にしてきます。
福本氏には相当の主張が溜まっているように見えます。
因みに、結論として「欲しがらないこと、が幸福だ」と諭します。
決して暴論ではなく、ある意味でサンデー教授の哲学
教室のような面白さが醸し出されており、最高ですね。

福本作品は概ね失敗がなく、安定した品質を維持して
いますが、これも良作でした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-08-06 07:22:08] [修正:2020-08-06 07:22:08] [このレビューのURL]

月別のレビュー表示