「朔太」さんのページ

総レビュー数: 741レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年01月09日

お色気も少し交えながら、痛快アクションドラマチックコメディと言ったところです。
毎回のお約束のガンプレーで、必ず毎話数名以上が銃殺される。
ここが意外とコメディの対極にある緊張を生み出します。
また、主人公稲葉十吉の心の声が物語を進行させ、妻を愛するサラリーマンの二重生活が基軸になったコメディを生みます。
この辺りは、若干「静かなるドン」とのかぶりを感じますが、まあ許容範囲としましょう。

20話前後までは、仕方なくヒットマンの仕事に巻き込まれる十吉が、シロートヒットマンの悲哀でピンチに陥るも「考えろ考えろ」のセリフで、気転を利かして窮地を逃れるという数話完結型のお話を繰り返しますので、ややマンネリがきついなあと思ってしまいます。
が、20話を越えたあたりから、シリーズものがやって来て、マンネリの打破が図られます。
確かに、組織コンビニと組織スーマーの攻防は見ごたえがあって、「あとしまつ」での両者の競技風の対決は、最もお勧めしたい回ですね。

トーキチと美沙子もいいんですが、ちなつの終始変わらぬ献身ぶりもなかなかでした。
31巻を完読しましたが、最終話までちなつの想いは通じるのか見ごたえがあって良かったです。
記憶に残る名作かと思います。

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[投稿:2023-01-14 09:31:43] [修正:2023-01-14 09:31:43] [このレビューのURL]

9点 MAJOR

[ネタバレあり]

少年誌連載の高校野球漫画といえば、ドカベンやキャプテン、名門第三野球部、4P田中君などです。いずれも高校野球大会を予選から順番に強敵、ライバルたちと凌ぎを削って、何とか勝ち上がっていきます。
さらには、その先にさらなる強敵が待っていて、これを順番に倒しては、これを繰り返していくパターンが定着していました。そういう意味では、本作品は少しはずしつつも、王道路線を守っているような二面性をもっていますね。

MAJORというタイトルから想像してしまうのは、最終的にはメジャーリーグを目指すんだろうと思ってしまうのですが、幼少期、リトルリーグから始まって、とにかく長い歩みです。
中学に上がる頃にはすでに、肩を壊していますから、これからどっちを向いて展開するのだろうかと心配になるほどです。
中学では軟球野球はやらないと言いつつ、結局どっぷり時間を費やし、高校進学にあたっても名門海堂高校を巡って二転三転で、とんでもない長期化の原因になります。
ただし、首尾一貫して、主人公茂野吾郎のスタンスが変わらず、一球入魂というか、自身の選手生命を顧みず、常にその時の目の前の敵と全力で戦うことを優先しています。
最初から、プロ野球もMAJORも、ありきではないのですね。
他のライバルたちは、ほぼ全員がプロ野球選手になることを視野に入れて、現在の野球に取り組んでいました。
その差が、吾郎の魅力となっています。

長期連載でしんどいかと言えば、これがそうでもなく、一話を読めば、必ず続きを読みたくなるような仕掛けがしてあります。
この辺りは、極めて巧妙であり、連載漫画としては最高の出来ではないでしょうか。
私は、聖秀高校編を終え、マイナーリーグ編の途中まで読みましたが、50巻近くを息つく暇もなく、一気読みさせられてしまいました。
面白い作品だと思います。

<追記>
なんとか78巻最終話まで読み切りました。超長編ですが、他の長編漫画よりは最後に至る展開がチャンと思い出せます。要するに、高校は高校でプロはプロでキチンと区切った展開があるんですね。
W杯でのライバル出現によりMAJORでの戦いが鮮明になってきます。最後のワールドシリーズでの展開も最高の盛り上がりでした。最終話へのまとめ方も腹に落ちるものでした。吾郎の性格、姿勢、考え方は連載開始から終始一貫しており、ブレがありませんでしたね。最終話でも強くそれを感じました。少し粗忽な吾郎ですが、美しさを感じさせました。長編ものの終わり方としては最高点をつけられると思います。ということで、1点加点致します。


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[投稿:2021-08-28 08:12:06] [修正:2022-06-15 10:31:10] [このレビューのURL]

森田まさのり氏の描く不良高校生は、喧嘩はするが悪事を働かない。
嫉妬したり、すねたりの感情雄の起伏が大きいので、
事件も起こりギャグになる。
Rookiesでも感じるが、後味が良い爽やかさがある。

世間の決めたルールをはみ出すことが、ろくでなしなのだろうか。
関西には「やんちゃ」という言葉があるが、
許容範囲を示す世間の寛容さを示す良い言葉だと思う。
実のところ、今や世間のルール内で出世するよりも、
若い時にやんちゃに過ごした人間の方が、
最終的に成功しているように思える。

森田氏の描く不良高校生は、その辺りの気づきを与えているような気もしている。
その感性は海外の人間でも共有できるらしく、若い女性が
森田氏の作品のファンだと言っていた。

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[投稿:2022-01-31 07:59:20] [修正:2022-01-31 07:59:20] [このレビューのURL]

最近の藤井聡太四冠の活躍と相まって、面白く読ませてもらいました。
2度離婚歴のある作者の実生活を題材にしているようです。
これが見事に説得力をもって親子の絆のドラマを表現しています。
ドラマを見るかのような淡々とした人間模様が見事であるし、
悪人が出てこない気持ち良いドラマでもあります。

主題である将棋にまつわる上級者への成長模様も面白いし、
女流棋士さんの諸事情だとか、町の道場模様だとか取材も
しっかりされています。
読めば読むほどに将棋を指してみたくなる、いやしっかりと
勉強してみたくなる漫画です。
忘れてならないのは、ママさんの魅力です。表情が可愛い。

追記 
改めて、再読してみました。
将棋や碁に関する漫画も沢山世に出ていて、思いつくまま列挙すれば、
「月下の棋士」、「ハチワンダイバー」、「ヒカルの碁」、
「3月のライオン」とあります。(他にもあったような気がするが、
思い出せない・・)
碁や将棋は、スポーツものと違って、なかなか勝負の展開を
上手く見せるのが難しく、漫画にならない気がしますが、
それぞれ全く異なるテイストで面白い作品を生み出しています。
本作品も同様です。
シングルマザーの女性の一人息子が将棋にはまり、
自身もその世界に一歩を踏み出す。
将棋の世界よりも親子の将棋を通した日常をほのぼのと表現されています。

『読むと元気に、成る』というキャッチコピーの通り、どこか現実感のない
将棋で飯を食べていくという世界を圧倒的リアリティーで描かれています。
8巻がスッと読めてしまうライトな感じも結構でした。
南Q太さんの生き方が凝縮されているような気がします。
他の作品にも触手を伸ばしたいと思っています。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-08-11 06:03:08] [修正:2021-12-11 10:54:41] [このレビューのURL]

なかなかの傑作です。
特有の世界観がまず目を見張ります。

人界と異界が交わる街という設定は、私にとってとても新鮮です。
異界と言い切らないで人類との接点を摩訶不思議に描く。
超能力でも吸血鬼でもなんでもありの世界です。
異常世界中で、超絶な戦闘能力を有する秘密結社ライブラの
メンバー達の個性が光ります。
その中にあって、普通の青年レオナルドの普通の感情、
普通の苦しみが異常世界にあって対比関係にあり、
とてもヒューマンな役割を果たしています。

それぞれのストーリーは、良く練られたシナリオの下に、
登場人物のそれぞれの事情を絡めたドラマ仕立てになっており、
一個の映画や小説にも匹敵する内容の濃いものです。
あまりにも伏線が見事なので、1回読んだだけでは、
最初のエピソードの意味が理解できなかったりもします。
しかし、読み返してみると最初からキチンと仕組まれた
ドラマであることがやっと理解できるほど、
巧妙な構成になっていることが多いです。
内藤さんはきっとシナリオライターとしても成功を収めた
才能を持っておられます。

新しいタイプのSF&ヒューマンドラマを体験できました。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2021-07-19 06:13:07] [修正:2021-07-19 06:13:07] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

プロ野球オタクならば常識的な範囲での裏事情を
ネタにしています。
しかし、これまでになかったタイプの野球漫画です。

プロ野球あるあるですが、表のヒーロー話ではなく、
球界を構成するために必要な裏方の事情、
すなわち2軍と行ったり来たりの1.5流選手、
スカウト、バッテッィング投手、ブルペン捕手、
監督、コーチ、解説者、記者、球団スタッフ、
代理人、高校野球関係者などなど、裏側の人々の
事情がひきこもごもあって興味が尽きません。

基本的には、球団経営というビジネスがプロ野球の
本質ですから、マネーで選手価値が語られるのですね。
この価値で全てを測ることに拘る主人公凡田ほかの
選手たちが作るお話です。

しかし、最後の3巻程度は、底辺の選手たちの
裏事情からメジャーリーグをまつわる裏事情に
一転して変化します。
志の低い主人公のキャラが変わってきた気が
したのは私だけでしょうか。

こんなプロ野球漫画を待っていましたので、
とても面白く読めました。
続編も絶対読みます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2021-03-07 16:30:22] [修正:2021-03-07 16:30:22] [このレビューのURL]

SFファンタジーという触れ込みの作品でしたが、
少し違った感想を持っています。
シナリオは一応あるのですが、SFの部分は
設定に借りているだけで、とてもゆったりとした
時間の中で高校生活が流れていきます。
ゆっくり過ぎてファンタジーと称されるのでしょう。

宇宙ロケットの飛行士養成コースに進む5人の
友情がほんわかした雰囲気の中で、
押しつけがましくなく表現されていますので
見失いがちですが、むしろ5人の高校生が相互の
感受性に影響し合って生きる物語という印象です。

5人の高校生は、それぞれに事情を持っています。
サボり癖があっても、結局飛び抜けた才能を有する秋、
人への信頼を失って孤独に無理にでも生きようと
決意しているマリカ。
特にこの二人には不治の病と家族との不和があって、
悲劇性を醸し出していますが、
やや過剰な演出だったかもしれません。

私が、気にいっているのは、むしろ普通の高校生、
圭と府中野でしょうか。
圭は、とりたてて特技もなく成績も良くない普通の
女性ですが、アスミも含めて悲劇性を持った
3人の同級生にあって、極めて普通に同情の
気持ちを隠して、明るく接します。

孤独の少女だったアスミも彼女によって救われました。
マリカにもねじ曲がった性格だの、偏屈だの悪態を
つきながらも、絶対に友情は裏切らないことを
直接的に言葉にします。
他の人物たちは、恥ずかしくて言葉にしないような
ことを代弁します。
この普通のセンスの女子高校生が、普通の人間の
存在を肯定してくれているようで、読者も救われます。

もう一人の府中野君が、私の最もお気に入りです。
彼の口癖は、「バカ。・・たくもー。」であって、
非難と愚痴の人です。
アスミとは幼馴染ですが、いじめられるアスミを
直接助けることもありませんが、隠れたところで
アスミを見守ってきました。
どこにもその表現はありませんが、どうやら
宇宙飛行士になりたいのではなく、アスミを見守る
ために宇宙学校に入学した模様です。
そのくせ突き放した態度で、距離を保ったまま
アスミを見続ける府中野君は、感情を見せないだけに
とても切ないです。
ナイスガイと拍手を送りたい気持ちになります。
もちろん夢を諦めないアスミやライオンさんの
存在はとても重要ですが、この脇役の二人に
フォーカスされた場面では、心が動きます。

泣ける、泣かそうとしているという感想が多い中で、
何気ない風景(階段の多い下町の坂道、古い街灯の
ついた道角、夜中に明るく点灯する自動販売機の
前に留められたオートバイな)のイラストも出色ですね。

これまでにない不思議な魅力のある作品に出会えて、
嬉しい気持ちになりました。

<追記> 
実は、私事で恐縮ですが、2020.12.19付 産経新聞の
ビブリオエッセイに上記内容を反映した投稿原稿が掲載されました。

ナイスレビュー: 3

[投稿:2021-01-08 06:35:05] [修正:2021-01-08 06:35:05] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

表題から想像する内容は、星里さんの得意とする
ラブコメでなければ純愛ドラマの辺りでした。
進展する展開にその都度裏切られるサプライズが
心地よかったです。
結果的には純愛ドラマに落ち着いた印象ですが、
とても純愛とは言えないドロドロのヒロイン浮世が
私にはとても新鮮でした。

話は変わりますが、ネーミングとしての浮世は、
浮世離れの意味ですよね、きっと。
浮世のような女性は、同性には本当に嫌われますよね、
現実には。
実際、いますよ、まれに。
すぐに謝る、押しに弱い、断れない、むしろ人に
媚びることで特に男を誤解させる、
結果そんな気はなかったと逃げ出す、
嘘をついてでもその場を繕う。
しかし、放っておけないくらいひ弱で儚い美しさが
あるので、灯りに吸い寄せられるように男が群がってくる。
同性の女性には最も太刀打ちしがたい大敵ですよね。

災厄を呼ぶ女性、浮世。
こんな女性の魅力がベースになっています。
男なら大抵の者は理解できます。
主人公辻もその一人ですが、その危険な匂いに気づいて
絶対拒否する時もありますが、結局は人生のすべてを
失った挙句、彼女の魅力から逃れられない自分に気づきます。

ハッピーエンドかと思われた4巻では、浮世にとって
辻の存在が絶対と感じたその直後の引っ越し屋とのトラブル、
辻との生活を捨てて峰内の元に戻る裏切り、
さらに峰内も捨てる心変わり、の場面は
若干の論理性が欲しいところですが、
それがないから不思議ちゃんの浮世なんですね。
疑うことなく、仕方ないと受け入れることだけが
浮世のパートナーになれる資格を得るわけです

最終巻の展開も、サプライズといえばそうだし、
これでしか話は終わらない感じですが、満足でした。
最初の浮世の出現から最後の展開までこれまで
見たこともない波乱のドラマを見せられた気がします。
名作だと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-11-14 07:04:17] [修正:2020-11-14 07:04:17] [このレビューのURL]

9点 ヒミズ

社会の底の閉塞感を文学的に哲学的になり過ぎず、
適度の分かりやすさで表現している。

「僕といっしょ、1997年」、「グリーンヒル、1999年」
に続く一連のシリーズも同様ながら「ヒミズ」は
救いようのない底辺の底の息苦しさが今まで以上に
切迫しており、これ以下はないと思える設定である。
この後の「シガテラ,2003年」、「わにとかげぎす,2006年」でも
絶望の状況はあるが、一筋の光が見え隠れしている。

今回もお節介な女性理解者には同様に救い神としての
役割が与えられているのだが、結局は主人公が受け
入れていない点で、他にはない地獄っぷりである。
何事もなく、貧しくとも平穏を求めるだけで、清く
正しく生きるつもりだった主人公の絶望ぶりは
半端ないものである。

単純に言えば“行き場のない暗い”作品だが、
切り捨てられない魅力がある。
こんな主人公や哲学に共感しないまでも理解できる
読者がいるとすれば、私も含めて病人と呼んでも
良いのではないだろうか。

大きな熱量とインパクトを持った作品である。
漫画として成立しているのが不思議ではあるが。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-06-18 17:09:57] [修正:2020-06-18 17:09:57] [このレビューのURL]

ヒューマンドラマを集めた短編集です。
テレビドラマ、映画をはじめ小説や漫画のヒューマン
ドラマには、哀しみとともに救いが無いと成立しないものです。

本作品は、哀しみやペーソスが主たるベーステイスト
なのですが、必ずしも救いが存在するわけでもなく、
良い人たちが作るドラマでもないのが特徴です。
その代わりに、“大阪テイスト”という
「転んでもただでは起きひんで」という精神、
したたかさが添え物に味付けされています。

独特の絵柄(私は描かれる美人が好きではないので
評価は高くないですが)と相まって、独特の大阪人間
ドラマが描かれています。
それを最初から狙って描かれたのは、タイトルを
見ても明らかであり、森下裕美さんがそれを
とても好きでそれを愛情をもって表現したいと
思っている気持ちがシッカリと伝わってきます。

それぞれの短編は珠玉のような輝きを放っており、
記憶に残る名作と言えます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-04-13 16:42:09] [修正:2020-04-13 16:42:09] [このレビューのURL]

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