「朔太」さんのページ

総レビュー数: 735レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年01月09日

[ネタバレあり]

ここまでレビュー作品数も700を超えた。
そろそろ過去の作品の中からマイベスト10を選んでみようかと
思っているところに、とんでもない作品に出会ってしまった。
面白かった。
マイベスト10あるいは5に入りそうな最高レベルの傑作だ。
これまで作品名さえ知らずに、偶然出くわした幸運に感謝
したいくらいだ。

サスペンスドラマとしても一級品の脚本だから、小説にしても
TVドラマでも良いものになるだろう。
実際、韓国で映画化された上、さらにはハリウッドで2013年
リメイク作品にもなり、好評だったようだ。
(私も後日、米国作品を鑑賞したが、オチは原作以上の分かり
やすさで高評価である。)
しかし、漫画ならではの味わいがあって、特に嶺岸氏の描く
アウトロー、闇世界の表情と相まって、最高の味わいが出ている。
初話から最終話まで、読む手が止まらない。
話の区切りでは、必ず次に繋がる謎や混迷が残るので、
凄さに圧倒されていた。
連載中に出会っていたら、毎号買っていただろうな。

サスペンスの質が何より上質である。
当初は、20年監禁された理由と監禁加害者が謎、監禁した
加害者への復讐劇かと思いきや、加害者の深い闇と対決、周到に
用意されていた舞台と罠の数々、そして大団円を迎えるのだ。
監禁理由がしょぼくて理解不能との声もありそうだが、私は
その辺は気にならなかった。
何しろ望みうるものは何でも手に入る人間が考えることなんだから、
凡人の常識を当てはめるのはナンセンスというものだろう。

むしろ謎解きの後にも残る謎の置き方に感服した。
既に3回読み直しているが、最後のエピローグまで完璧な仕上げ
を施してあるのには驚く。
漫画通ならば、この一冊を見逃すべからずである。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2023-09-19 08:01:57] [修正:2023-09-19 08:01:57] [このレビューのURL]

10点 子連れ狼

全403話28巻の長編である。長編ではあるが、無駄に長くはない。
武士道を語り、時代の理不尽さを語り、親子を語るには
6年の時間と403話の労力が必要だったのである。

本作品をはじめ、小池一夫と小島剛夕による漫画作品は、
エンターテイメントとしていかに優れているか、万遍の
言葉を尽くしても足りない。
本作は、その中でも頂点に立つ最高傑作である。

小池一夫が愛した「もののふの道」は、間違いなく美しく正しい。
現代の多くの人々に支持されながらも、その生き方は
尋常ならざる確信がなければ貫けない。
しかし、それを貫き通す美しい境地は、かくあるべしと、
小池が分かりやすく説明してくれているかのようだ。
紆余曲折の末、いかに最終話を迎えるのかと思うと、
途中で投げ出せなくなる面白さも備えている。
はたして、最終話は最高のエンディングである。
いろんな思いが綜する最終話だと感じ入った。

海外でもリメイクされた作品が紹介されているようだが、
肝心の日本では小池の残した作品群が古めかしく過去のものと
いう扱いがされているようで残念である。

是非、心ある日本男子には一読をお願いしたいと思うばかりである。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2023-08-13 09:00:29] [修正:2023-08-13 09:00:29] [このレビューのURL]

10点 キーチVS

前作に続く新井氏の衝撃の作品。
その昔、三島由紀夫という自害小説家がいたが、
対談させてみたいというのが、最初の感想だ。
圧倒的な熱量、強烈なパワーが紙面から読者の脳に伝播する。
これは、カリスマ物語でも、はっちゃけ熱闘青春物語でもない。
そこの基本のところを誤解している人がいるのは至極残念である。

前作、「キーチ」では、確かに人間キーチの成長と真っ当に
生きることの意味を問い続け、何故真っ当に生きる人間の
美しさを見せてくれた。
しかし、本作品ではキーチの体を借りて、日本という
得体の知れない国の息苦しさの正体を表現してくれた。
それは誰もが知ってて知らぬ顔をする薄汚い日本の側面だ。

漫画というエンターテイメントツールを利用して、社会に
対する強烈な新井氏個人の問題提議を世に発信していると信じたい。
なぜなら、エンターテイメントであるならば、不快感に
まみれた失敗作だからである。
苦々しい気持ちにさせる問題作品だからである。

新井氏の主張は、ただ一点。
「社会の問題に対して傍観者であることは罪である」だ。
作中、子供が描いた「世の中のしくみ」は極めてシンプルだ。
確かに大人は、全て了解していて、そのくせ訳知りに
その構造の中を泳いでいくことが、大人と嘘ぶく。
また恩恵にあずかれない階層の人間は、世の中で仕組まれる
ことにはことごとく何でも批判し、拒否する。
日本は、まさに前者と後者の階層で闘争をしている印象だ。
この点を指摘した知識人は、未だ見たことも聞いたこともない。

前者は言わずとも既存権力者側+既得権者+取り巻き(官僚、
企業、マスコミ・・)、後者は負け組。
この両者で階級闘争をしている。
困ったことに、後者の応援をしているふりをするマスコミ
(支持を受けるとスポンサーから資金が獲得できる)や
政治家(票が獲得できる)などの存在が、階級闘争の本質を
見失わせる。
いや、気づいたところで、本物の応援者はいないことに気づいて、
傍観者に成り下がる。

キーチは、日本には現れない後者の本物の応援者、カリスマ
として登場させた。
しかし、エセ民主主義、既得権者の中での何をどう抗って
いくのか、誰も分からない。
長期ビジョンにより、既得権者の下、力を蓄えることを志向
した甲斐の方法論が至極マトモに見えるが、新井氏とキーチは
それを否定し妨げる。
理詰めではなく(理詰めだと既得権者の土俵で戦うので、
よほどの戦略が必要だからね)、はっちゃけた熱情と仲間を
作って打破していくスタイルを選んだ。
しかし、成り行きとはいえ、現状打破が一種のテロ行為であるとは。

この方法を選択したキーチ、新井氏に残念な気持ちが消えな
かったのだが、作中、ある人物が語る言葉に気づかされた。
「敵にとんでもないどうしようもない力があって、デモしようが、抗議しようが何にも変わらねば、できることはテロしかないのじゃないか。」

すごいね。新井英樹氏は単なる激情型作家ではないんだ。
はてさて、漫画の虚構の世界と笑うなかれ。
世界を変えるには、何が正解なのかは分からないもの。
ただ、必要条件はこの漫画で学べる気がした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2023-05-31 09:04:22] [修正:2023-05-31 09:04:22] [このレビューのURL]

映画の話で恐縮だが、最近2010年作カナダ映画「灼熱の魂」という作品を見た。
こんな無慈悲な人生があって良いものか、という凄まじい内容だった。
その作品に通じるえげつなさを感じさせる作品だ。

沙村氏は人間の狂気を理解している。
第1話から衝撃の嵐。
人間に対する不信感が、腹の底から湧き上がってくる思いだ。
狂気を孕んだ人間は、悪魔のような所業を行うことは周知の通りだが、
怖いのは周囲の人間もそれを拒絶しない、いや、できない。
それを直視するが、罪を論ったり問題があると声をあげたりしない。
ただ、悲しい目をするだけ。

振り返ってみれば、評判になるほどエログロのシーンはなかった。
しかし、かって感じたことのないようなグロい気持ちが残るのだ。
同時に最終話で感じる風の優しさに戸惑ってしまった。

やはり、沙村広明は天才漫画家である。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2023-02-19 09:05:20] [修正:2023-02-19 09:05:20] [このレビューのURL]

何度も読み返しています。
重度障害者とその家族、教師の葛藤、なんて簡単な軽い言葉では表現できません。
彼らは障害と戦っているのではなく、社会の無理解と戦っているのです。

この社会には障害者を家族に持つことが罪悪であると思わせる何かがあるのです。
まさに敵は、隣人であり政治であり人間の存在そのものです。
障害が無慈悲ではなく、障害がなければ感じなくても良い悲しみが無慈悲に感じてしまうのです。
時には絶望的な現実に押しつぶされそうになり、結果、家庭崩壊、自死・自傷、孤立、疎外など壮絶な現実が、家族全員を巻き込んで突きつけられます。
家族のような同志がいても、負担がさらに大きくなる場合もあって癒しにならない不幸すらあります。
ましてや子供と母親だけの場合は、孤立無援の地獄になります。
いくら戦っても、努力しても解決の糸口すら見えない日々、それでも幾分かの希望を灯を支えに生きていく。

貴方が同じ立場にあれば、貴方は生きることができますか?
そのことを思えば、せめて障害者家族を攻撃することだけは止めて欲しい。
冷たい目線で「その子を何とかしろ」とか言わないで欲しい。
それは、畜生の行為だと自覚して欲しい。
健常者には理解しがたい、あるいは想像できない障害者の生活、人生と苦悩する家族や教師たちの実情を、山本氏が丁寧に伝えてくれています。

健常者がさすがに障害者をさして「可愛そう、同情する」といった表現はしなくなりましたが、本当に理解して黙ったわけではないでしょう。
心の底辺にある無理解の気持ちを揺さぶりながら、健常者への理解を助けてくれた作品としての価値は計り知れないでしょう。
あるレベルでの社会への影響のあった作品ではあります。
いくつかのどんぐりの家というネーミングの施設ができたとも聞きます。
しかし、もっともっと、多くの健常者に、この作品を通じて理解を深められるよう願います。
その機会がもっと増えますようにと願います。
そして、我々は寄付以外に何ができるのか、もっと何が応援できることはないのか、深く考えねばなりません。

私は真剣に提案します。
小中学校での啓蒙資料として、あるいは政治参加者、公務員採用候補者への必読書にこの作品を指定しませんか?
健常者が持っている資産の一部を、税金という形でもっと彼らに分配しませんか?
それは彼らへの同情や支援ということではなく、我々人間が人間であるという証明をするために。
全ての人がこの世の意図しない地獄から免れるように。
「仕方ない」で諦めないですむ社会を作る一歩のために。

最後に、漫画というエンターテイメント媒体を通して、この作品を世に出した山本氏とビッグコミック誌に敬意を示したいと思います。
さらに作品中にあるフレーズを紹介します。
障害を持つ子供達は皆、なんらかの形で悲しみや絶望感を持っている。
子供自身も親も、それを克服するのは容易な事ではない。
なぜこの子だけが・・、なぜ自分だけが、障害を持って生まれてきたのだろう・・。
その「なぜ」という問いに、誰も明確に答える事はできない。
しかし、この子等は生まれてきた。自分の生命を花咲かせ、その人生を楽しむために・・。

ナイスレビュー: 3

[投稿:2022-12-31 14:43:11] [修正:2022-12-31 14:46:05] [このレビューのURL]

10点 キーチ!!

新井英樹氏の作品には、ただならぬ熱を感じる。
ページをめくる度に、発散する熱気を顔に浴びる感じである。
その熱気が無駄に暑苦しく、不愉快に感じることもあるが。

社会の中で生きていくための鎧をまとうことを生まれつき拒否する異端児キーチを当初は本能的に毛嫌いしていた。
反社会的で、周囲の人間に迷惑をかけ続ける人間性に嫌悪を感じるからだろう。
一方で、こんな生き方に憧れを持ちながら。
後に、幼少期の子供はこれでいいかもと思えるようになるが。

前半4巻までは、人間キーチの原型ができるまでを長々と説明している体だが、ここが大切なパートである。
「パパがいてママがいて、キーチがいる。・・」のフレーズは、最終回まで持ち越された。
本能のまま生きる幼児期は、ノーの意思表示は暴力しかない。
少年期になれば、「俺に近づくな」と警告できる知恵がつく。
しかし、人間の原型のまま、社会で他人と上手くやって、すり合わせながら生きることを拒否するキーチ。
ひとりで生きることを宣言して、それを貫くために暴力を選ぶしかないキーチ。
私たちに、一人で生きることの覚悟を突きつけるキーチ。
多くの人は、安全に守られる社会に生きる代償として、搾取や権威に従うストレスを我慢する。
これを選ぶ以上、我慢する。
一方で、文句を言うなら一人で生きる覚悟が必要だ。
キーチが我々に問うているのは、この覚悟があるかどうかだ。

後半5巻から、怒りの矛先が目の前の醜いものに向けられる。
この世で醜いものが見えることに我慢がならないと言う。
権力に真正面から刃向かう少年たち(キーチ&甲斐)の姿は、やや荒唐無稽な気もするが、少年だからこそ可能な純粋なレジスタンスは、本当にあっても良いと思った。
才ある少年は、凡庸な大人には二度と追いつけない選民なのだから。
個人的には第61話が心に沁みた。
親は自身を乗り越えていく子供に捨てられることを喜ぶべきか。

読み終えたところで、考えよう。
社会悪と戦うカリスマヒーローを描いた作品?
いや違うだろう。
奇跡を起こしてしまうから、思い違う読者もいるだろうが、それは漫画としての演出だ。
最終87話でちゃんと甲斐が言っている。
損得勘定で多数派が涼しげにしたり顔で作る嘘くさい民主主義社会の限界に、皆気づいているのに、抵抗するすべもなく受け入れる醜悪さ。
それどころか、体制側に法の範囲で迎合する者こそ、勝者と言わんばかりの小狡い小市民が支持するから、一層、偽の民主主義社会が悪循環でどんどん腐っていく。
そんな社会への反撃、革命への飢餓感を表現している。

分かりやすく言おう。
クラスや職場にいじめがあったとして、あなたは「そんなくだらないことは止めろ」と被害者のために声を上げることをする?
半分以上は見て見ぬふり、酷いのは加害者に間接的に加担する奴まで現れる。
あなたもその一人だろう?
なんで、そんなことになるの?
見て見ぬふりは違法行為じゃないから?
いじめもいじめへの加担も、証拠がなければ違法じゃないから?
たとえ被害者に一生消えない心の傷を与えたとしてもね。
誰も問題の解決策を持っていない。
これが多数派の作ったニセの民主主義社会なんだ。
その時に感じるのは、無力感だったり、閉塞感だったり、人によってはこれが大人の社会だ、なんてね。
あるいは、それならそれで学歴なんかの力をつけて、逆に利用してやってやれ、って開き直る。
いや、正しいのは、そこで「いじめなんか止めろ」って声をあげるという、簡単なことなんだけどねえ。
キーチの行動は、教師を含めたクラス全員を殴ることだった。
「ここのところを、ちゃんと理解してるか?みんなで迎合して醜い社会の一員になるくらいなら、ひとりで生きろ」とキーチは本能的に主張している。

極めて根源的な問題を通して、文学的、哲学的に気づきを与えてくれる作品として、大きな感銘を得た作品。
新井英樹の問いかけに、君はどう応えるか?

ナイスレビュー: 0

[投稿:2022-03-05 10:07:16] [修正:2022-05-21 08:53:22] [このレビューのURL]

TVドラマの方を先に見てしまいましたが、原作にほとんど
忠実な描き方をしていることに後で気づきました。
原作に流れるゆったりとした時間、幸福感を損なわない撮り方でした。
ということは、原作のそこがTVを通じて支持されたということ。

とはいえ、医療漫画なので緊迫した手術シーンはつきもので、
こんな天才外科医は、そんなにいないだろというぐらい
神がかり的な医術です。
一息ついては新たな事件が起こり、一息ついては新たな
深刻な病気という繰り返しがマンネリ感をだしているのですが、
離島ならではの癒し感が好きです。

追記
改めて三度目の読み返しです。
いいですね。
何度読んでも、心を揺さぶられます。

本土の大学病院を中心とした嘘くさい医療の実態は、ほとんど
事実に近いものだし、世間からスポイルされる側の人間の
心情が負の世界であるならば、古志木島のコトーや星野彩佳の
持つ優しさはまさに正の人間世界だと思えます。
島の人間を決して美化せず、それでも限りない優しさを表現
できる本作品は、まだまだ何度でも読み返したくなりそうです。
25巻まで。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-10-22 19:30:25] [修正:2021-09-15 09:46:30] [このレビューのURL]

プロフットボールのコーチが主人公に間違いないのですが、
これまでにないスポーツの世界を斬新に切り込んでいます。
ひとりのファンタジスタが選手として挫折し、英国でコーチとして
原点に立って、物語が始まります。
主人公を基軸にして、選手の立場から、球団経営側から、
スタッフから、サポーター、敵役の立場から、ドラマを描いていますので、
あまり例を見ない面白さです。
全ての登場人物に共通しているのは、人生をフットボールに
全力で賭けていること、全員が熱いです。
選手の個性も強いですから、コーチ達海の戦略や作戦も読者は
共有でき、納得感が大きいです。

もちろん、ワクワク感がピークになるのは、強いチームに立ち向かう試合。明らかに力の差がある敵に向かう試合で、選手が突然覚醒し、
勝利を得るシーンではあります。
タイトルも、そこを狙っていますからね。
しかし、この作品の飽きさせないところは、試合の間の
チームの立て直しのドラマなんですね。

私のお気に入りは、30巻?33巻あたりの達海の振る舞いですね。
3連敗した後のコーチは、現実にもあり得ることですが、
恐らく危機感をあおったり、脅したり、選手の入れ替えをしたり、
とにかく選手の尻を叩くことを考えますよね。
達海はどうしたか?
結果的に、読者を含めて、チームは完全に前を向くようになります。
納得性が高いです。
ぜひ、ここのところを堪能してほしいです。

組織運営やマネージメント、リーダーやキャプテンの立場にある人は、必読です。
35巻まで。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2021-07-22 08:03:51] [修正:2021-07-22 08:03:51] [このレビューのURL]

何とも言えない上品な文芸作品に接することができた余韻が残ります。
まず、洋風名画に匹敵するような美しい描画力です。
車椅子の少女ビエールカの美しさは目を見張ります。
沙村の描画力、構図の美しさは、絵描きとしても成功していたと思われます。

次に、ロシア革命直後の混乱した圧政下の非道理不尽な世界を背景に、
謎がかった少女と従者の不思議な取り合わせという人物設定の妙、
没落貴族や王家生き残りという歴史的史実の絡め方など、
小説としても興味をそそる内容で、展開もスリリングです。
魅力的な人物も散りばらめられており、文章化、映像化しても
一定の成果が得られることが期待できるような内容です。

さらに、読後に感じるのが、タイトルのすばらしさです。
春風のイメージとはかけ離れた全般の印象が、
最後のシーンですべて決着してしまいます。
最後のシーンまで計算し尽くした上で、作品タイトルを
決めていたのでしょうか。
してやられた感で満載になりました。

すべての点で、漫画としての最高のレベルにありますので、
10点をつけざるを得ません。

今後の沙村広明さんの活躍に目が離せません。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2021-07-04 07:49:59] [修正:2021-07-04 07:49:59] [このレビューのURL]

素晴らしい!
長期連載ではありますが、30巻で密度濃く時代劇・
活劇を堪能できました。

不死人という設定もさることながら、敵味方の単純
構造ではない設定がよろしい。
逸刀流は当初単純な憎むべき仇役ですが、背景には
共感したくなるポリシーがあって、吐率いる無蓋流と
公儀から追われる弱者にもなってしまいます。
そんな事情に関係なく、双方の対立軸と絡み合う
主人公万次と凛。

登場人物が多いのも特徴です。
15巻で紹介されていましたが、その時点で100人
以上ですから30巻では一体何人出てきたのでしょうか。
しかし、魅力ある剣士や攻撃力がその都度、
ワクワク感を増幅しますね。

天津影久、吐鉤群、六鬼団、偽一らの凄みはそれぞれ
強い個性を持っていますが、なんと言っても乙橘槇絵です。
彼女は生きる希望はすでに捨て去っているという設定
ですが、その表情が設定通りに表現できていることが
素晴らしい。
彼女の顔だけでも描画力10点を差し上げたい。
その雰囲気のまま実力十分で悲劇の剣士が似合います。

最終巻まで魅せてくれます。
最高の舞台で最高の演者たちが最高のドラマを
演じたという感覚でした。

名作です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2021-02-12 06:22:04] [修正:2021-02-12 06:22:04] [このレビューのURL]

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