「朔太」さんのページ

総レビュー数: 741レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年01月09日

10点 巨人の星

何年経っても全編のあらすじが頭に蘇ってくるほど、しっかりと読み込んだ記憶があります。
現在以上にプロ野球の王者巨人軍だった時代がありました。
川上、長嶋、王、堀内が成し遂げたV9時代が背景にあります。
しかし名門巨人軍の影の部分を設定し、復讐をモチーフにする少年誌からぬ不純ぶり。
一方で純粋に野球を追求し続け、才能に恵まれない肉体をいじめに苛め抜く主人公とライバル達。
高校野球編までは、貧乏と常軌を逸した鍛錬ぶりに引き込まれていきますね。

高校野球編が一旦終結し、苦労が実る瞬間があります。
宿敵川上監督が、謝罪とともに背番号16を禅譲してまで巨人軍に勧誘に来る場面では、ここで話を終えても良いのではと思えるぐらい幸福感満載です。

しかし、第二部と言えるプロ野球編において、伝説の大リーグボール1号、2号、3号が炸裂します。
この辺りになると、原作者梶原一騎の天才ぶりも炸裂しています。
ライバルが命を懸けて対抗する、父が親友が大リーガーが敵になる。

何といってもすごいと思うのが、常に登場人物たちに、自身の行動の根拠となるマインドを論理的に整然と語らせるのですよね。
例えば、親友伴忠太や姉明子には星飛雄馬から離れていく理由を、花形にはなぜ命を懸けてまで特訓するのかという気持ちを、左門豊作には花形が羨ましくて仕方ないと吐露させ、オズマにまで飛雄馬は野球ロボットだと語らせます。
登場人物に多くを語らせることで、細やかな人物描写を成功させます。
そして、いずれも真剣で硬派の人間達が頑張れるだけ頑張るお話だから、魅力的なんですね。

私はと言えば、それほど感動して読んだことはないのですが、野球好きもあっていつの間にか体に沁み込んでしまった人生の一冊と言える存在になってしまいました。
やはり不朽の名作と言って良いと思います。


ナイスレビュー: 2

[投稿:2017-10-11 03:32:36] [修正:2017-10-11 03:34:24] [このレビューのURL]

10点 封神演義

1700万部世に出たらしい。
何といっても魅力的な登場人物が続々登場する点で、ワクワクさせる。

まずは太公望。
彼は12歳で両親や家族を失ったらしいが、その悲しみを表面に出さず、
頭脳戦が得意な崑崙一の策士として大活躍かと思いきや、仲間からは
尊敬されない普通の人を装う。
マイペースで飄々としたリーダーは、時に赤穂の昼行燈のように支持されるようだ。

聞仲も素敵な敵役だ。
たった一人で十二仙や元始天尊を撃破していく強さと部下に敬愛される
ストイックさがある(この点、太公望と真逆)。
しかし、何か悲しげな背中が魅力である。

妲己は、典型的な悪女であり、世の皇帝をたぶらかして悪政を引くトンでも女子。
しかし、常に語尾にハートマークを付ける可愛らしい喋り方は憎めない。
表面上の敵役だったことが,後編で分かるので、なお哀れな感じもする。

四不象は、太公望の片腕というか秘書というか乗り物だが、基本は
ツッコミ役である。戦いでボロボロになる時もあったりして、涙を誘った。

そしてラスボス、女禍。
これが登場する頃になると、戦闘の意味や世界感が一気に宇宙的規模、時空を
超えた哲学の世界へと誘う。やや難解な世界感でもあるが、それがまた
サプライズをもって受け入れられたのではないか。

本来は中国明代の小説が原作のはずだが、まったくもってとんでもない漫画に
仕上げてくれた点で、めったにあげない10点を差し上げたい。
感動した。


ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-01-01 07:07:56] [修正:2017-01-01 07:07:56] [このレビューのURL]

幼少期に巡り会った少年ならば誰でも、終生影響を受け続けざるを得ないと確信するほど、
力強い発信力を持っていた。
9人の仲間の国籍も超能力もそれぞれが異なっており、異なる個性がある。
人の心を持ちながら、人でも機械でもない存在の悲しみを、彼らに語らせていた。
さらに、001はなんと0歳児である。こんな着想が50年前に存在したとは。

少年たちは自分だけの空想の世界に浸るために、9人の名前に始まり、超能力、誕生日まで
調べ、競って記憶しただろう。ウルトラマン怪獣やエピソードを記憶するごとく。
超能力やサイボーグを日本という国に定着させた功績は、理科系少年を多くこの国に育てた
一因になったというのは暴論だろうか?
少なくとも私は、この漫画のゆりかごの中で育ったと断言できる。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2016-02-13 17:27:30] [修正:2016-02-13 17:27:30] [このレビューのURL]

45年前の作品というから驚く。

シナリオと絵の構成が確かであり、以後の漫画家らの水準を決めたとも言える。

市を案じる佐武、佐武を命に代えて守る市の気概を中心に、江戸の人情と情緒も

表現されている。美しい日本を今でなく45年前から意識していた。

余談ながら、40年くらい前にTVアニメ版が放映されていたのを子供の

頃、視聴した記憶がある。アニメといっても、動画ではなく台詞つき静止画の

スタイルだった。動画も可能な時代だったが、敢えて静止画にした演出だった。

これが返って、とても良い味を出していた。大人向けに製作した証拠に

放映時間は10時だったと思う。10時からの放映に耐えるアニメって想像できますか?

日本漫画界の至宝とも呼べる傑作の一つ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-17 22:44:04] [修正:2011-04-17 22:44:04] [このレビューのURL]

矢島正雄氏+弘兼憲史氏の油が乗り切った渾身の集大成作品。

青春時代に本編に巡り合えた幸福を感じます。

毎回、読み切りのオムニバス形式なので、原作者矢島正雄氏の貢献大なるも

以降の同氏作品にも色濃く影響が残っていますので、

原作者と漫画家の分担というより、文字通り共同作業がうまく共鳴したと

感じさせます。裏方さん達のご苦労も偲ばれます。

中にはハズレもありますが、珠玉の作品群が一級品の名作の輝きを

放ちます。

私にとって、日本が世界に誇る最高級の漫画と言わざるを得ません。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-11-14 10:15:03] [修正:2010-11-14 10:18:43] [このレビューのURL]

小池一夫と小島剛夕のコンビの代表作は、なんといっても「子連れ狼」だが、それに続く不朽の名作はこれ。サムライの筋の通し方が常にテーマである。本編では、証刑一郎と可憐の愛がベースにあるが、公への身の処し方を優先した愛の姿を表現する。貫きたい自我と、悲壮な自己の抑制の姿のバランスが主人公の周辺ならびに読者の魂を揺さぶる。
日本人が美しいと思う精神を見事に表現してくれている小池一夫と小島剛夕の作品は、世界に類を見ない日本固有の文化であり、後世にわたりこの日本の精神文化を分かり易く世界に紹介できるツールに成り得る。
多くの日本人に共感を呼ぶはずの精神世界。思い出してほしい、日本人のこころ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-06-06 06:33:21] [修正:2010-06-06 06:33:21] [このレビューのURL]

青春時代の一冊。主人公五代の管理人響子さんに対する恋心に感情移入してしまっていた頃を思い出す。現実の恋人にまで管理人さんを投影してしまっていたのではと感じる位、共鳴した。
”青春、恋心”をこれだけ爽やかに表現した作品、同時にギャク化できた作品はなかった。天才高橋留美子のなせる業だろう。
間違いなく私の人生に影響を与えた作品だ。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-01-16 16:47:57] [修正:2010-01-16 16:56:11] [このレビューのURL]

最下層の人種が織りなすドラマが、読み手の心を抉ってくる。
残酷シーン自体は、自粛のせいか直接的な描写は避けられているが、
間接的にグサッとナイフで刺される、切られる、抉られる。
そんな気分だから、自分の体調が良くないと、すぐに本を閉じて
しまって読めなくなる。

1か月以上かかって18巻分読んだけど、もう手が出ない。
基本的にダメ人間が堕ちていくんだが、世の中にダメでない人間と
ダメな人間は、紙一重なんじゃないか?
読者は「ああ、オレはまともな人間で良かった。」と安堵するかもだが、
長い人生、いたる所に罠がいっぱい仕掛けられていて、穴に堕ちた後、
ここが地獄だったと気づくんじゃないか、と不安にさせる。

大人の教育用教材として、国から18歳成人になったら無料配布
すればいいんじゃないか。
世の中、それで結構浄化されるかもよ。
いろいろ妄想を抱かせるこわーい漫画だった。
もう読みたくない名作。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2024-04-13 09:48:54] [修正:2024-04-13 09:48:54] [このレビューのURL]

ジャンプ連載開始の号は1999年発刊ですが、今でもはっきり覚えています。
文明と古代がない混ぜになった独特の世界観の中で、陰影の少ない見や
すい描画が当初からオリジナリティを感じさせていました。

15年の長期連載だそうですが、連載中にストーリーを追いかけるには
読者に負担が大きい展開でしたね。
私も皆さんと同様に、中忍試験までは毎号が楽しみでHUNTERxHUNTERと
ともに、漫画というものに心を奪われました。
しかし、サスケが抜け忍になった以降は、ボリュームの大きさが辛く、
脱落してしまいました。
今回、大人買いで揃えて、一気読みをしました。
といっても全73巻700話ですから、4か月かかりましたが。

結論を言えば、名作ですね。
全巻を通して、主人公NARUTOのバリューがブレていません。
意識的に今どきの馬鹿キャラを当てはめて、周囲の人間からは落ちこぼれ
扱いされながら始まっています。
しかし、仲間に対する飢餓感が動機になって猪突猛進の性格を形成して
おり、その姿勢がNARUTOへの支持を集めていきます。
この展開はゆっくりと物語の骨格になってきており、少年誌に必要
不可欠な要素でもあります。

登場人物は多く、人間関係が極めて複雑で、穢土転生という忍術は死人を
生き返らせたりするものですから、さらに理解不能なレベルになって
しまいます。
連載中の読者は、相当コアなファンでないと、毎号の登場人物はほとんど
誰なのか分からなかったのではないでしょうか。
それでも、長期連載の中でほとんど破綻はなく、人間同士の絆を賛美する
姿勢を継続し続けた漫画として、強く心に残る作品となりました。

岸本氏には長期連載をご苦労様でしたと頭が下がります。
スピンアウト作品がその後も多数出ているようですが、岸本氏の違った
作風も読んでみたい気がしています。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2024-01-22 07:31:06] [修正:2024-01-22 07:35:43] [このレビューのURL]

従来になかったスタイルで魅せた作品。
結構、巷では話題になっていたように思います。

まずは、台詞の多さ。
NHK番組中学生日記のような教育現場に焦点を当てているにも関わらず、一般的ないじめや受験、不良、親の二極化などのありきたりな教育テーマにはそっぽを向いて、先生と先生、生徒と先生が細部のディベートを繰り返します。
読者はこんな理屈が滔々と語れる中学生はおらんだろうと思うから、ここで脱落するものも多いのをモノともせず、最後までこのスタイルを貫きます。

次に、論理の理屈ぽさ。
私は、11巻を完読しましたが、2か月の時間をかけて読みました。
その原因はああ言えばこう言う形の理屈の重畳が、読む気をダウンさせるから。
1日1話でお腹満杯になる感じで、読み進められないのですよね。
しかし、先々の展開が気になって途中で諦めることはしませんでしたが。
この辺りは同じように理屈っぽい「なにかもちがっていますか」に比べて面白さが劣ります。

途中相当だれますが、11巻にて私の満足度は逆転満塁本塁打のように急上昇しました。
理由は、「神の娘」の実在ぷりです。
神の娘こと、小川蘇美への敬いぶりに違和感を感じていたのですが、最後は納得できました。
大人の世界でもこんな女性がいたらなあ、と憧れ度満点です。

また、演劇の指導内容に玄人の匂いを感じました。
作者は演劇の理論に相当造詣が深い印象です。
どうやら、本作品は、演劇のテクニックがふんだんに盛り込められているようですね。
画期的な手法による新しい漫画に出会えたことに大変満足しています。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2023-11-30 17:17:21] [修正:2023-11-30 17:17:21] [このレビューのURL]

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