「朔太」さんのページ

総レビュー数: 741レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年01月09日

叶精作にとっては、ほとんどデビュー作品に近いものだったとは驚きである。
とにかく、描画が上手く、欧米人特に金髪白人の美しさが得意と思いきや、
和風美人はさらに魅力的である。
この特異稀な天才的イラスト描画で、人間の美しさを表現する一方で、
小池一夫の一流の脚本が話の展開を際立たせていく。
面白くないわけがない。

当時、GOROという青年向け雑誌は、篠山紀信のグラビア写真と
本作品のお蔭で相当売れたはずである。
本作品を契機に叶は一流漫画家の仲間入りを果たした訳だが、
原点はすべからくここにあった。

今読み返してもこれに匹敵する画力を他の作家に感じないほどであり、
昭和史を代表する一つの作品になったと思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-04-02 08:33:51] [修正:2017-04-02 08:35:42] [このレビューのURL]

昭和を投影した原風景が背景にある漫画。
誰しも小学生の頃を思い出して、何とバカバカしい毎日
だったとか、なんであんなつまらないことにクラス中が
熱中していたのかとか、玉ねぎ頭のようなクラスメートが
いたりとか、ありますようね。
そんな想い出帳から沢山の友人と家族を引っ張り出して
きては、エピソード話を紡いでくれたちびまる子ちゃん。

爺さんも婆さんもいる実は三世代家族のちびまる子は、
決して孤独ではないのです。といって、自立心がない
訳ではなく、むしろ独特の感性で自分だけの生活を
楽しんでいます。

三世代家族は昭和の時代には典型的家族かと言えば、
そうではなかったと思いますが、むしろ団地族や核家族に
対して憧憬や懐かしさを与えていたのかもしれません。

さらには、作者の独特のクスぐりネタは、共感を呼ぶ
健全な小市民感覚のギャグだからこそ、長く支持されて
きたのでしょう。

アニメを通じて、サザエさんに肩を並べるくらいの
国民的お茶の間漫画の地位を勝ち得たと言えます。
いわば、名作です。
しかし、原点は原作初期にある小さな想い出話に
過ぎなかったことは、驚くべきことだと思います。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2016-10-23 22:43:01] [修正:2016-10-23 22:43:01] [このレビューのURL]

手塚と同世代だが、6歳年下でわずかに遅れてデビュー。
世に横山光輝の名を覚えせしめたのは、いわずとしれた
鉄人28号だが、残念ながらそれを目にしたのは漫画では
なく、TVアニメだったというのが多くの子供だったはず
である。「敵に渡すな、大事なリモコン。」という
フレーズは、浦沢直樹の名作「20世紀少年」にも引用され、
大きな影響を与えている。

伊賀の影丸は、その5年後、少年サンデーの看板タイトル
として連載されるやいなや、新時代のマンガとして世に
受け入れられる。それ以前は、手塚や藤子、石森らの
漫画創生期からの脱皮の時代であった。

そこに登場した横山光輝は、絵は上手いし、登場人物に
エッジは効いているし、忍者といういわば超能力者の
走りである役者を揃えて、完全なストーリを携えてきた。

今でこそバトル形式の勝ち上がり戦を描く漫画などは、
掃いて捨てるほどあるし、何かのパクリと言われる始末
だが、伊賀の影丸では、例えば伊賀忍群vs甲賀七人衆
といった形式で、複数対複数の争いだが、個々の戦い
ごとに駒取りを仕掛けていく対決方法を設定した。
これは伊賀の影丸以前には前例がない。
(鉄腕アトムにも一部同じ仕掛けがあるが、わずかに
後ではないか)

忍術合戦は、いつの時代も子供をわくわくさせ、鍛錬
さえ怠らなければ、いつか自分にも可能性があるのでは
ないかと夢を見させる。その系譜はNARUTOにも引き継が
れており、現代のメガヒットに繋がったと解釈できる。

伊賀の影丸は、20世紀少年の記憶にいつまでも残り
続ける遺産の一つである。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2016-08-18 09:59:04] [修正:2016-08-18 09:59:04] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

8年にわたる連載にも関わらず、相当の構成力で企画されており、
読み返すたびに細部の隠し味に舌を巻く思いである。
様々な説明不足の謎が捨て置かれていて、一見、雑なつくりに見えるが、
これは読者の解釈に任せられているのであって、これを面白がるかどうかは、
読者の胆力次第である。

少し特徴を以下に書く下すと、
・登場人物が多いけれど、再出した時には結構重要な役回りをしている。
・主なキャストには、性格付けをするための副ストーリーが存在する。
 例えば、オッチョ。タイでのショーグンとしての活躍や刑務所暮らし。
 無くても良い話だが、それだけでも独立した話ができる位、入れ込んだ
 描き方をする。これは本筋を追うだけの人には辛いだろう。
・”ともだち”は嘘の塊と断じながら、全体に予知力や念力の存在を示唆している

 等々、胆力の弱い読者を振り落としていく身勝手な”浦沢ワールド”だが、
それも結構と多くのファンは割り切っているのではないか?

追記:2016年5月 21世紀少年を含めて、3回目の読み直しをしてみた。
改めて、浦沢氏の構成力に驚嘆する。ストーリーに一切の破たんはない。
全ての謎は説明できている。特に素晴らしいのは、ケンジの姉の一連の行動の謎は説明され、
カンナの超能力すら持つにいたる理由が軽く説明されていた。
ともだちの正体に焦点が合わされがちだが、存在を消去してしまう少年たちの残酷さ
がかくも壮大な復讐劇につながったと解釈できるだろう。
文字通り何度も読み返してしまう名作と呼んでも異論はないだろう。

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[投稿:2011-09-13 20:58:27] [修正:2016-05-06 22:29:27] [このレビューのURL]

野球少年は必ず読んでいた少年漫画の金字塔の一つ。
第一巻の表紙絵を見て分かるように、ドカベンは当初その体格ゆえに、柔道しかできない少年
であった。明訓高校野球部の岩鬼、殿馬、微笑三太郎、ドカベン、里中のスーパースター達も
登場当初は皆、体格やキャラでコンプレックスやハンデを持っていた。
どこにでもいる少年達が、野球脳を駆使して、不知火ら野球エリートを倒していく
痛快さがたまらなかった。
水島漫画の素晴らしいところは、敵キャラが一様ではなく、やはり体格ハンデのある敵など
様々なアイデアを駆使してくるところ。

健全な少年育成、日本の漫画文化や野球文化への貢献は計り知れないぐらい影響力を持った
作品と言わざるを得ない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2016-02-24 03:09:12] [修正:2016-02-24 03:09:12] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

ゴルフを人生になぞらえた格言は数多く残されていますが、織部金次郎は17年の下積みでも
一向に目が出ません。17年間を支えた妻子もついに離れていきます。
主な原因は、オリキンの人の好さ。メンタル重視のスポーツで、自分のことより周囲を
優先して思いやる性格はプロには向いていません。
しかし、それでもオリキンの周りには、彼のひた向きさ、誠実さに心動かされ、
心底応援したくなる人たちが集まってきます。読者もいつの間にか、こんな優しく善良な
人間が不幸でいるのは見ていられなくなり、頑張れがんばれと応援します。

最終巻では努力が報われるエンディングで、予定調和と言えばそれまでですが、
とても爽快な気持ちにさせられます。
人生はこうでなくては、と納得して読了しました。

ぜひ読んで下さい。名作です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-08-22 16:04:06] [修正:2015-08-22 16:04:06] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

思念波が外部に漏れてしまい、他人に心の中が覗かれてしまう特殊能力者サトラレ。
しかし、同時に天才能力も合わせ持ち、人類への貢献度が高い。
彼らに関わる人達が、不思議に優しく、理解が深いのが救い。
人類は本当にこんなに優しいのだろうか、もっと残酷で見苦しくないか?、
と疑念を持つが、サトラレ種も純粋に設定されているので、
見守る人達をも感化されるのかとも。
いずれにしても、サトラレという特殊な設定を前提に、心のナイーブさを
良く解釈した作品。なかなかの良作です。

追記:その後、改めて全編を通読しました。その上での感想です。
一言でいえば、人間賛歌です。
サトラレであることを知ったために、孤島に一人住む白木。彼の島に漂流する少女との出会い。
サトラレとの結婚とサトラレの子を産む決意の人、小松。
サトラレである娘の将来を案じる武道家の父の無骨な生き方、育て方。
娘、片桐りんの爽快な生き方。

有り得ない架空の設定の下で、人間たるものはきっと当たり前に考え、悩み、行動するだろう
ことを先回りして予見し、美しく描いた作品です。大好きな作品の一つになりました。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-11-21 22:50:40] [修正:2015-07-21 22:42:54] [このレビューのURL]

9点 アカギ

”天”で壮絶な人生観を語った赤木しげるのスピンアウト作品。

圧倒的な強運、豪腕、支配力の権化である鷲巣 VS 悪魔的知略天才アカギの麻雀勝負。

本編の面白さを麻雀の心理戦と捕らえる一面もありますが、むしろ神の領域にある

モンスター鷲巣を絡め獲る知略戦にあるでしょう。

二人の周囲にいる脇役達も一流の勝負師だけれど、彼らに真っ当な戦略を語らせた

上で、さらにその上を行く知略を重ねて読者の驚きを誘うわけです。

また、重要なのは、赤木しげるを通して語らせる死生観、ぎりぎりのところで命を

やり取りする精神の高揚こそ生きがい、

こんな狂気が究極の潔さとしてオーラを放つアカギの魅力です。

勝負の行方もさることながら人間アカギをいつまでも見ていたい。

175話まで所持。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-07-28 11:21:21] [修正:2012-07-28 11:21:21] [このレビューのURL]

カイジの活躍や賭博勝負の在り様も良いけど、何より

賭博を通して社会の構図や人間を俯瞰している点ですごい。

悪党側の会長や利根川は極端な描写ではあるが、社会権力者の代弁であり

資本主義社会の正義を語らせている。

<感銘した台詞>

1.高層綱渡り:死を現実のものと受け止めて命乞いを始める者へ利根川が、

「どんな事態になってもとことん真剣になれない病。いつだって許されると

思っている。借金を踏み倒そうと極論、人を殺したとしても、自分は悪くない

自分は許される、なぜなら今起こったこの事態はあくまでも仮で、本当の自分は

あずかり知らぬこと、そう考えるからだ。・・・ゆえに奴らは30になろうと

40になろうと、自分の人生の本番はまだ先で、本当の俺を使っていないから

今はこの程度なのだといい続け、結局老い死ぬ時に丸ごと本物だったと気づく」

2.カイジの名台詞:「勝たなきゃ、誰かの養分」

3.綱渡りの最中、カイジが、「希望は、・・夢は・・・人間とは別の何か

他のところにあるような気がしていたけどそうじゃない!人間そのものが希望だったんだ」

4.会長が「貧乏人は王にならんと金を求め、逆に現在いる王の存在をより磐石に

する。そういう不毛なパラドックスから出られない。金を欲している以上、

王は倒せぬ。」

並みの社会学者や哲学者、共産主義者では想定できない極限状態だから、

説得力がある。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2011-10-22 18:50:38] [修正:2011-10-26 01:51:56] [このレビューのURL]

1989年連載開始ながら、つい1年ほど前に巡り合って読破。

世に麻雀漫画は数知れずなれど、心理戦、戦術、トリック、いずれをとっても

一級品で驚愕した。

さらに、アカギの刹那的な生き方、終焉の迎え方とその潔さに、ナルシズム

の一つの原型を思い出させてくれた。

少しも教育的ではないし、社会に有益とも思えない賭博漫画だけど、

こんな名作が10年前から世にあったとは、衝撃の一冊でした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-01-02 09:43:54] [修正:2011-01-02 09:43:54] [このレビューのURL]

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