「朔太」さんのページ
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- 病弱だった少年時代から、読みたくて読みたくて仕方のない漫画が周囲に沢山ありました。他にすることもない寝床で読む漫画は、1ページ1ページが宝物のようで、丹念に時間をかけて食べるように吸収されていきました。漫画のある国に生まれて良かった、と思えるくらいの喜びでした。以来、数十年、私の周りには多数の未読の漫画本が常備されています。漫画がサブカルチャーと位置付けられて久しいですが、今や映画もドラマも漫画が原作でないものが珍しくなってきました。文化としての名作漫画を探しつつ、私個人の探訪歴(読書歴)として、このサイトを利用させてもらっています。
8点 神童
主人公うたのピアノの才能に魅了される大学生和音を
はじめとする周囲の人々が、うたが創造する美しい
世界にどんどん引き込まれていく。
天才うただから許容される奔放さと何者にも囚われない
自由な感覚が、快感である。
無垢な存在とこれに対峙するあるいは魅了される
常識の人間社会との対比が、さそう独特の設定だ。
手塚治虫文化賞に相応しい作品。
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[投稿:2013-08-25 18:25:18] [修正:2020-07-23 06:47:17] [このレビューのURL]
8点 乙嫁語り
美しい描画と美しいお話が、1ぺージ1ページに丹念に
かつ精緻に紡がれた作品です。
ゆっくりとした時間の流れの中で、原始の時代から
人間が築き上げてきた文化の恵みを受け継ぎ、
またこれを次代に継承していく生活を感じさせてくれます。
中心となるカルルクとアミルの8歳違いの微笑ましい
夫婦のお話も面白いですが、5人の兄弟に嫁いだ未亡人
タラスとスミスのお話が一番のお気に入りになりました。
現代社会ではあり得ないですが、大人の事情に泣く
女性の物語と中央アジアの背景がマッチしています。
作者の森さんは、子供時代から中央アジアの生活や
文化に憧れがあったそうです。
それを大人になって、憧れの具現化をこんな形で
実現されているのは、素晴らしいことです。
マンガらしくない漫画ですが、底流に流れる美しさ、
憧れを読者が共有できるのは表現力が豊かな森さんの力ですね。
2014年にはマンガ大賞を受賞されていますが、
それに相応しいものだと思います。
ちなみに前年と2011年にも2位を獲得されています。
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[投稿:2020-07-16 06:11:33] [修正:2020-07-16 06:11:33] [このレビューのURL]
8点 奇子
手塚の意欲作。壮大なスケールで圧倒されました。
まずは、時代背景ですが、真に前近代的日本の封建的
家督制度の時代です。
横溝正史も殺人事件の動機、背景を前近代的な日本社会に
求めた小説が多いですが、本当の田舎の悲劇を表現しています。
現代のドラマで本当の田舎の悲劇を描いたものは
皆無ですから、現代人には「まさか?」の世界だと思いますが、
戦前以前の田舎では極めて自然な家制度の産物だったと思われます。
三男のセリフに「家系を調べると、まるで汚物ダメだ。
兄妹、姉弟、夫婦、いとこ、血縁関係が、およそ犬か
猫みたいに混ざり合って、それが子を作りその子同士が
また混ざり合って、小作人や他人の女にまで子を産ませ・・。
その都度金と権力でもみ消してきた。」
そんな陰惨な家の犠牲により、23年間監禁生活を過ごす
奇子ですが、決して主人公ではありません。
戦後の占領下でGHQやCIAの思惑により翻弄される日本人
スパイの次男も田舎で家督を継ぐためには命も差し出す長男も、
倫理を説く三男も家を出て客観的な視線を送る長女も含めて
皆が主人公です。
しかし、全員が善人ではありません。
悪人もいませんが悪魔的悪意を潜在的に持っています。
長女ですら傍観することで罪を犯したことを自覚していません。
彼らが紡ぐ大団円は、ドラマとしては当然の帰結と言えます。
読後感としては、一編の小説かテレビドラマか映画を
見せられたような思いがします。
手塚は一流の脚本家でもあったように思います。
やはり天才です。
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[投稿:2020-06-26 07:32:33] [修正:2020-06-26 07:34:09] [このレビューのURL]
8点 ナニワ金融道
青木雄二さんの独特の世界感をベースに、続編の
カバチタレ!他、数十年継続して受け継がれた
裏金融漫画の原点がこれですね。
青木雄二さんの功績は、その後の原作者を育ててきたことでしょう。
本作品が世に出た時点では、全く従来になかった
裏金融漫画であったと想像できます。
世の中の裏側では、金融やくざや今で言う半ぐれの
シノギの事情を世に伝えてくれた功績も大きいと思います。
借金の有無で人生が大きく変わっていく怖さに対して、
自分がこのような苦境にあった時の解決策を知りたい
という欲求がこの漫画を読ませる強い動機になっています。
漫画としての独特の個性があって、強い魅力を感じます。
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[投稿:2020-05-22 06:56:54] [修正:2020-05-22 06:56:54] [このレビューのURL]
8点 カバチタレ!
ナニワ金融道では、罠をはる金融業側からのシナリオで、
高利貸しの内幕を公開してくれた痛快さがあった。
本編では、行政書士があくまでも正義側に立つ法律家の
視点であり、やや視点が明るい。
しかし、遺産相続、賃貸、貸借など人生の交錯点に立って、
人間生活の悪臭部分をドラマ化してくれる。
このドラマは法律的理解をしながら見ると一層面白いので、
一気読みも時間が掛かりますが、それだけの価値はあります。
普通の行政書士はここまでしないよね。対価に合わないもの。
13巻まで読みましたが、何とか続編も入手します。
<追加記入>
20巻全巻読破しました。
行政書士を法の専門家として呼ぶシーンが何度も出て
きますが、実際のところ街の行政書士さんは、手続き以上の
問題解決まで相談に乗ってくれるのでしょうか?
原作者も法の限界以上のところを話の展開上盛り込んで
しまっていると言っていますが、実務上一般市民にとっては、
それでも救世主です。
本来は、弁護士がその役割を果たしてほしいところですが、
基本的にはドラマに出てくるような悪徳権力者の
片棒の担い手か、市民運動で赤い色に染まった思想家
くずれの悪いイメージしか出てきません。
所詮、漫画の世界とは思いつつも、現実に起こる世間の
罠に嵌められる悲劇は存在するわけですから、
カバチタレの世界もある種の恐怖を感じざるを得ない
リアルさに読むふけってしまいました。
劇中の遊郭に身を落とす一般女性、借金地獄、DVなどは
ナニワ金融道の二番煎じというより、
原作者が監修しているので、長期連載が継続している感じです。
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[投稿:2012-08-26 19:03:55] [修正:2020-05-16 10:07:53] [このレビューのURL]
8点 紅い花
2020年1月、欧州最大規模の漫画の祭典、
第47回アングレーム国際漫画祭で特別栄誉賞を
受賞されたことで、本作品のことを思い出しました。
伝説の名作ですので、中途半端なレビューはできません。
おかっぱ頭のキクチサヨコという少女の名前は、
その後の多くの漫画や小説で見かけることがあります。
それは、つげ義春に対するリスペクトを込めたオマージュなのでしょう。
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[投稿:2020-05-01 11:15:16] [修正:2020-05-01 11:15:16] [このレビューのURL]
実在のプロ野球選手を題材にギャグマンガとして仕上げた
日本最初?の先駆け的作品でしょう。
その後も、江川や佐々木など個性的かつ天才的な選手を
ギャグの対象に抵抗なくできたのも、この作品が先行的に
あったおかげと思われます。
いしいひさいち氏のギャグは毒がなく、とにかく上品で
安心して笑えるので、好きです。
その後、となりの山田君はあの朝日新聞に採用された
ぐらいですから、文部省推薦漫画くらいの重みがありそうです。
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[投稿:2020-01-12 07:48:45] [修正:2020-01-12 07:48:45] [このレビューのURL]
8点 うさぎドロップ
血のつながらない幼子を行きがかり上、引き取った時点で
ドラマが生まれるのは必須でしょう。
親子物語が延々続くことを想像しましたが、案外違っていました。
子どもを通したシングルマザーのつらい現実や子育てを
放棄する母親の問題など展開はバラエティーでしたね。
何といっても、8巻あたりからの最終話に至る二人の
関係性の変化には驚かされました。
主人公にはいつも心に刻まれた場面として、幼子が
思いのたけをぶつけて泣く姿を放っておけない
シーンが最初にある訳です。
その気持ちが全ての始まりだったわけですが、
読み終わった後もとても共感できます。
その時に生まれた主人公の覚悟が始まりであり、
全編を貫く人の優しさの原動力だったと気づきます。
良い作品だと思います。
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[投稿:2020-01-08 01:00:04] [修正:2020-01-08 01:00:04] [このレビューのURL]
8点 落第忍者乱太郎
TVアニメでその存在を知りました。
見ればみるほど、大人の感性に訴える内容ですので、
これを子供がどのようにとらえているのか、
不思議でした。
子どもを子ども扱いしない尼子さんのギャグセンスが
素晴らしいです。
あまりに長期連載だったので、その一部しか読めていない
のですが、多くの子供たちに支持されたように思います。
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[投稿:2019-12-04 18:16:29] [修正:2019-12-04 18:16:29] [このレビューのURL]
8点 DEATH NOTE
世界累計発行部数3000万部以上、1部当り200万部以上のメガヒット作品。
連載開始時から毎号の展開を追っていた記憶がある。
次号の展開は凡そ予測するものだが、
展開スピードが速く、1週分の情報が重い。
とても漫画の領域ではなかった。
しかし、エル無き展開に期待以上のものは得られず、
後半はやや失速気味か。
デスノートの設定なら、犯人と探偵の頭脳戦以外の
展開にも持ち込めただろうから、
「もう一つのデスノート」も在り得るのではないか?
<追記修正>
改めて12巻全巻を再読しました。
初めて読んだ時の感動は蘇らなかったのは意外でした。
むしろ論理のアラが目立ち、夜神月がそれほど緻密な
論理性を駆使しているように見えませんでした。
展開の結論に影響を受けた訳ではありません。
世界のどこにいるのかわからない、かつ絶対的な超能力と
力の根源も明らかでない絶対的存在のキラが、
数限りない失策とボケをかまして追い込まれていく訳です。
その過程で、最大の違和感は、TV放映に出た最初のLの
偽物をその場で感情的に殺してしまうことです。
このことで一気に、キラは日本の関東地方に住んでいる
ことが分かり、70億人の内1千万人に絞られてしまい、
FBI捜査官にちょっかいを出すことで、数十人に絞られます。
馬鹿としか言えません。普通、放置するでしょう。
容疑者がライトになって以降では、理屈臭くて次第に
感動は薄くなっていきます。
具体的には、絵で見せる漫画ではなく、文章で説明する
漫画になってしまったことが、質を落としてきた原因でしょう。
良い素材と設定なのだから、アナザストーリー2,3があり得ると考えます。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2011-09-25 16:04:47] [修正:2019-11-17 16:24:24] [このレビューのURL]
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