「朔太」さんのページ

総レビュー数: 839レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年01月09日

表題からは石川サブロウさんが得意とされるほのぼの漫画かと思いきや、
鸚鵡籠中記という江戸時代の第一級史料にある史実に基づいた内容でした。
元禄時代の朝日文左衛門という侍が26年八か月の間、延々と書き残した
日記であり、籠の中にいる鸚鵡(オウム)の日記という表題なのでしょうか。

原作者の演出もあるでしょうが、現代の我々のイメージの侍とはかけ離れた
一面も持ち合わせていたようです。
何分、生類憐みの令の中、堂々と毎日魚釣りをしたことが書かれたり、
幕政批判や藩の幕閣の不義密通事件も書かれています。
史実というだけに、なかなか説得力のあるものですし、興味深いものです。

いずれにしても、石川氏の手にかかると、堅苦しい史料も、なかなかに
ヒューマンな味わい深い作品に仕上がります。
結局、いつもの安定した石川さんの面白さに引き込まれます。
意外な佳作でした。

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[投稿:2024-10-26 10:34:43] [修正:2024-10-26 10:34:43] [このレビューのURL]

小池一夫、小島剛夕のコンビが描く時代劇は、いずれもドラマチックで面白い。
この作品もなかなかものものでした。
将軍吉宗の子が主人公であるが、生い立ちゆえの数奇な人生を送るという
設定から、スーパーな能力、美貌まであり得ないのだけれども、共感を
呼ぶのは、その不幸な生い立ちと命を賭けたミッションのせいですね。
展開が平凡ではなく、山あり谷ありで読者の予見をうまく裏切っています。
満足致しました。

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[投稿:2024-10-20 11:22:24] [修正:2024-10-20 11:22:24] [このレビューのURL]

石川サブロウさんの描く作品には、孤高の芸術家の世界が多いですね。
普通の価値観に縛られない自分を含めた芸術家の夢に、人生の価値を
見出されておられるのでしょうか。
この作品の主人公ゆきは可愛い若い女性なので、一層感情移入が進みます。
特に1巻辺りの自然児的なゆきが、とても可愛らしいです。
恩師である本田画伯との別れは、最大の見せ場です。
このヒロインがいかにして、自分の色、すなわち幸せを見つけていくのか
が最大の関心となります。
紆余曲折を経て成長していくゆきの前向きな姿勢には、共感できます。

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[投稿:2024-10-09 07:50:41] [修正:2024-10-09 07:50:41] [このレビューのURL]

石川サブロウさんの作品には、ほのぼの系と熱情画家系の2種類があります。
私は、前者が好きで選んでいます。

下関を舞台に都落ちしてきた営業マンが主人公で、田舎での奮闘記です。
よくあると言えばありますし、特段の目新しさもないのですが、
ついつい捲る手がやまないです。
原田太郎の人徳というか、生き方が良いです。
そのためか、奥さんも不釣り合いなくらい可愛いです。
生き方がつらく思えるサラリーマン諸君に送るエールのような気もしてきます。
心に残る良作でした。 

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[投稿:2024-10-05 09:55:37] [修正:2024-10-05 09:55:37] [このレビューのURL]

仕事をキチンとこなしたいOLのバイブルです。
世の中のサラリーマン男子の多くは、OLを腰掛気分の気楽な商売と考えています。
実際、結構願望を満たすための居場所と考えている節も見受けられますからね。

しかし、OL全てがそう考えているわけではなく、OLといえども担当する業務は
プロとして上質な仕事をしたいと考える女性も多いはずです。
同時に悩みも多く、特に人間関係やコミュニケーション、男性からの偏見など、
なかなか相談相手も見つからないでしょう。

そんなお悩み全般に対する回答が見つかるかも知れないように思います。
実際、ヒントを得た、あるいは共感を得られたという読者も多数いて、
支持されているのかも知れません。
悩めるOLにこの作品の一読をお勧めいたします。

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[投稿:2024-09-25 07:40:43] [修正:2024-09-25 07:40:43] [このレビューのURL]

四万十川には、ちょっとしたの思入れがあります。
小学生の頃、日本には清流が枯渇しているという学習をしますが、
唯一四万十川だけは住民の努力により、沈下橋などの古橋もそのまま
保存された稀有な地域という憧れが私の中に残りました。
つい2年前、その四万十川を訪れることができ、万感の思いで沈下橋を渡ってみました。
そのような清流の代表格である四万十川という表題に惹かれて読んでみました。

なるほど、アカメと越冬鮎に象徴される四万十川の自然に対する
人間の傍若無人ぶりの振舞いが理解できます。
青柳氏には一平のイメージが強いですが、こんなに優しい作品も描いておられるのですね。
啓蒙的な作品でした。

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[投稿:2024-09-11 08:32:55] [修正:2024-09-11 08:32:55] [このレビューのURL]

プロ野球の実在する賞の中でも、カムバック賞というものがあるくらい、
一度最前線から力を落とし、元の活躍をするのはとても大変です。
一度引退した選手がカムバックするのは、あり得ない現実です。
漫画ならではの絵空事ではありますが、なかなかに大人を堪能させる
リアリティがあり、一気に読ませてくれました。
柳沢きみお氏は多数の作品を世に出されていますが、本作品はその中で
ベスト1と私は思います。

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[投稿:2024-07-25 04:54:40] [修正:2024-07-25 04:54:40] [このレビューのURL]

原作は高校生の頃に読んでいて、夏休みの宿題であった読書感想文として
提出すると、なんと県大会応募されてしまったので驚いてしまいました。
しかし、実はその感想文は評論家の評論文を半分写し取った搾文だったので、
内心それがバレないか戦々恐々で、といって自白することもできず、
落選することを祈っていました。
これは、私の17歳の頃の小さな「人間失格」の始まりでした。

こんなことがあっても、自分の中の「人間失格」要素は懲りることもなく、
どんどん増幅していくのでした。
無自覚に存在する「人間失格」要素は、どこの誰にもあるのかないのか、
本人にしか判断できません。
無垢なる少女にすらそれは内面に蛇がとぐろを巻いて存在するのか、
確かめようもありません。
本当にそんな真実が明かされた時、それを知った時に、人は絶望して
死んでしまうのだろうか。
あるいは逆に人間失格と思った自分を許し、狂気の世間を渡っていく
覚悟ができていく瞬間なのかもしれません。

感受性豊かといえば美辞麗句過ぎて、虚弱で傷つきやすく自活力の
ない青年の自伝ではあるのですが、実は私の中の別人格の一つだったと
気づかされてしまいました。

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[投稿:2024-07-03 07:51:27] [修正:2024-07-03 07:51:27] [このレビューのURL]

最近、話題のまま最終話を迎えた作品です。
決して美男美女とは言えないカップルが主人公の漫画ですが、
意外と読めるので驚きました。
考えてみれば、世の中の大半のカップルは美男美女ではない訳で、
それでも恋は成立しているし、結婚生活にも入るわけです。
カップルがいれば、それぞれに異なる恋愛ストーリが存在することに
改めて気づかされます。

この作品をラブコメと言って良いのか、難しいところですが、
リアルさも同居しており決してギャグ漫画ではないと思います。
意表をついた良作だと思います。

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[投稿:2024-06-08 11:11:01] [修正:2024-06-08 11:11:01] [このレビューのURL]

土山しげる氏は、作家人生の前半をバイオレンス系極道漫画で名を馳せました。
しかし、2000年前後からはグルメ漫画に転身し、成功を収められています。
この「喧嘩ラーメン」は1995年に連載開始で、まさに極道ものと
グルメものが融合された作品になっております。
人生の転機になった作品と言えます。
逆に、グルメ漫画としてのデビュー作とも言えます。

ラーメンに焦点を絞って、しかもトンコツに絞って、道を究めるために
修行の旅に出かけるという展開になります。
今となっては、料理修行のために全国各地を旅する展開は珍しく
ありませんが、意外とページをめくる手が止まりません。
読み終えると、また別の作品に手が伸びる痛快さが、土山さんの作品にはありますね。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2024-06-01 09:02:08] [修正:2024-06-01 09:02:08] [このレビューのURL]

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