「朔太」さんのページ

総レビュー数: 742レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年01月09日

19巻を揃えて2日で一気読みしました。
深読みする場面はありませんので、ガンガン読めてしまいます。

高校野球漫画の王道は、地方予選すら勝ちぬけそうに
ない弱体野球部がライバル達との切磋琢磨により、
どんどん成長していき、ついには甲子園に出場する
という成功物語です。
そのセオリー通り、本作品も何を考えているのか
分からない監督を迎えて、どんどん成長していきます。
その過程は14巻までドカベンストーリーそのものです。
エースの入れ替わりが一つの人間ドラマになっています。

納得できないのは喜多条監督の不可解な指導ぷりであり、
いつまでたっても説明はありません。
それは最後まで変わりません。
ただの奇をてらった展開としか思えません。
才能豊かな選手しか起用しないと明言しながら、
言動が一致しません。

15巻からは新たな主人公である江崎の物語が始まります。
話の展開は予定調和的なご都合主義のお話が続きますが、
ドラマチックではあります。
高校野球漫画らしくない後半の展開ではあります。
が、様々なテイストが混じりあいながら、
結局のところ人間賛歌になっているところが、
本来の原秀則らしさといえば言えそうです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2019-10-12 15:13:20] [修正:2019-10-12 15:13:20] [このレビューのURL]

漫画家さんは孤独で傷つきやすいナイーブな存在なんですね。
おだてたり透かしたりしてその気にさせて木に登らせる
のが担当編集者の役割です。
読者の声を代弁して、ネームも何度も訂正させて育てていく。
新人さんを育てて大きなホームランを打つのが編集者の夢。
大学柔道出身の編集者小熊は、夢を追いかける良い
個性を持っていて好感が持てます。
「売れるのではない、売ったのだ。」というセリフは編集者の矜持です。
そんなお仕事を楽しく見せてくれる漫画です。

漫画レビューワーにとって、漫画制作の裏事情を知って
おくことは大切と思いますので、必読の作品です。


ナイスレビュー: 0

[投稿:2019-06-17 20:15:00] [修正:2019-06-17 20:15:00] [このレビューのURL]

やや救いようのない結末が多かった前シリーズに
比べて、柔らかな結着が多いように思いました。
ザワザワした感じが少なく、落ち着いて読めました。

お馴染みのセリフに加えて、「お生きなさい」の
決めゼリフがスッキリはまります。
今のところ、今回のシリーズで完結でしょうか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2019-05-29 01:59:25] [修正:2019-05-29 01:59:25] [このレビューのURL]

命が尽きた時、人は動物はどうなるのだろう。
絶対に答えがないために、人は死後を恐れ理想郷である
天国や極限の恐怖である地獄を妄想している。
日本人の根底には、実は強い天国と地獄絵図がイメージ
されており、日ごろの勧善懲悪の思想や行動の原理に繋がっている。
言葉にはしないが、日本人には共通の死生感が存在するのである。
スカイハイは、共通の死生感を巧みに利用し、上手い
設定を生み出した。

「怨みの門」は天国と地獄の分岐点にある。
自殺や殺人を犯した人間は、文句なく地獄。
殺されたり不慮の事故で亡くなった人間だけがここに来る。
したがって、基本形は「怨み」を持つ魂の浄化のための門。

あとがきで高橋ツトム自身が記しているが、
世の中のあまりにも浮かばれない被害者の怨みに
焦点を当てた展開を構想したらしい。
しかし、案外怨みを超えた救いのお話が多くなっている。

やっぱり日本人の死生感にマッチするのは、怨みを浄化
してこの世からあの世は気持ち良く旅立ちたい。
つまり救われたい。
シリーズ3回目の本編では、それがテーマになってきた印象である。

相変わらず絵は上手い。
特にやくざや怨み顔を描かせれば、この作者の右に
出る者はいない感じだ。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2018-12-18 17:28:20] [修正:2018-12-18 17:28:20] [このレビューのURL]

あだち漫画と同じく、お約束の匂いがすっかりしていた
時代の星里さんの作品です。
美人4姉妹と同じ屋根の下で同居ですから、事件が
起きないはずがありません。
毎日、家に帰ってくるのが楽しみですよね。
良き時代のハートフルコメディ、って感じです。


ナイスレビュー: 0

[投稿:2018-12-12 18:01:35] [修正:2018-12-12 18:01:35] [このレビューのURL]

原作が昭和12年の本にもかかわらず、発売半年で200万部
突破のベストセラーとなったそうです。
ジャーナリストの池上彰、コピーライターの糸井重里も
絶賛、ジブリの宮崎駿は映画化するといいます。
明治生まれの児童文学者が、子ども向けに書いた原作が
平成最後の時代に大ヒットする現象が、さらに話題を
呼んで関心が拡がっているように思います。

基本は問題提議の書です。
小学生のコペル君の体験は我々にも普遍的な体験です。
世の中には、悪が対岸にあって突然に正義を貫く
苦しみが天から降ってきます。
自身は絶対に悪には手を貸さないと固く誓っていてもです。
それは仕方ないことと棚上げしながら、多くの人は
大人になり、力を得ることが先決と言って死んでいく
ことを繰り返しています。
そんな人生の末路を多くの人が、何か違うと感じているのですね。
これは人間の悩みの一つの例示なのでしょうが、
案外普遍的な気もします。

考えても考えても答えはありません。
自分を人間分子として小さな存在と位置付けた上で、
生産関係である世界、宇宙の中で、それでも自分で
自分を決定するしかない。
そんな風に結論づけています。

明治から大正、昭和、平成と世は変わっても、
人はあまり変わり映えしないということでしょうか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2018-12-04 23:17:32] [修正:2018-12-04 23:27:24] [このレビューのURL]

書道漫画という売りがアピールされていますが、
地味な高校生の文科系部活動をテーマにする難しさを
上手く消化しています。

主人公のキャラ立ちも恋愛模様も競技的な対決、勝負の
行方も、それぞれ中途半端な地味さなので、本来なら
1,2巻で途中打ち切りが妥当なテーマ選定でしょう。
しかしながら、どんどん先を読みたくなる魅力は、ごく
普通の高校生の日常会話、生活がハッピーにみえることですね。
特段のできごとが起こらない何げない高校生活は、
読者の共通体験かもしれません。

欠かせないのは、脇役の部員たちですが、特に3年生先輩女子でした。
ヒールのような一面も見せますが、嫌いになれませんでした。

書道に対する知識、薀蓄は事前調査、取材が半端なく
充実していますので、それなりに楽しめました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2018-10-29 18:35:26] [修正:2018-10-29 18:35:26] [このレビューのURL]

1球ごとに投手、捕手、打者の心理、思考を追いかける野球漫画です。
野球の奥深さを言葉にして追いかける内容に、とても新鮮に感じました。
特に、制球は抜群だが球威や球速は凡人の投手を最大限に
生かす捕手の手腕が興味深く感じられます。

1年生だけの新興チームが夏の大会から夏合宿、新人戦、秋大会
1回戦まで来るのに、23巻まできました。
1球ごとの解説、試合が始まれば練習試合でも全イニングを
進める展開では、はっきり言って遅すぎます。
ドカベンを見習ってもらいたい。
このままでは高校を卒業するまでに100巻かかりそう。

一方で、個別練習、合宿や他校との合同練習、甲子園大会への
経験旅行、文化祭への取り組みなど通常描かれない高校生の
普通の生活を細やかに描いており、独特の世界観を醸し出しています。

作者は女性ながら玄人はだしの野球に対する理解を示して
いるだけでなく、普通の高校生の野球生活を興味深く
描いており(ザワさんにも通じる面白さ)、新たな野球漫画の
境地を開拓したとも言えます。


ナイスレビュー: 0

[投稿:2018-10-15 18:51:27] [修正:2018-10-15 18:51:27] [このレビューのURL]

響子さんが霊能者をかこつけて(本人は一言も霊能があるとは言っていない)、数々の困りごとを解決します。
強きをくじき弱きを助ける義侠心溢れる響子さんです。
何といってもその美貌と巨乳ぶりが作品の半分の価値ですね。
また、ライアゲームほどのトリックや心理戦の輝きは
なかったけれど、軽い数字のマジックやマジックネタくらいの
騙しの驚きは魅せてくれました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2018-10-04 03:03:07] [修正:2018-10-04 03:03:07] [このレビューのURL]

2巻を2時間程度で読み下しますと、一編のホラー映画を
見させて頂いたという感じです。
子孫を根絶やしにするという怨念をもった彷徨える怨霊と
対峙する少女の美しさは、しっかりと映像化に値すると思います。
例えば、50年間霊を鎮めるために山寺で籠りをしてきた僧が、
「私は徳を積めたでしょうか?」と少女に問いかけるシーンでは、
少女は「モチロンです」と答えます。
その姿に僧は菩薩を見ます。このシーンは美しく、高橋ツトムの
渾身の描画だと思いました。映画なら一番の見せ場でしょうか。

ところで現世は修行であって、徳を積むために生まれ変わって
くるという輪廻の教えは、仏の立派な知恵ですね。


ナイスレビュー: 0

[投稿:2018-09-03 19:39:57] [修正:2018-09-03 19:39:57] [このレビューのURL]

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