「朔太」さんのページ

総レビュー数: 746レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年01月09日

相当フェティッシュな要素が組み込まれたラブコメです。

それでも10年近い連載ですが、相当の支持があったのは意外です。
というのも、ヒロインの卜部さんが従来のラブコメの主人公
とは相当違ったタイプなんですね。
思春期に出会う男女が互いにミステリアスな存在である
ことは分かるのですが、思春期で感じる可愛らしさは、
むしろ友人の丘や諏訪野にたっぷりとあるのです。
こちらに焦点を合わせた可愛らしさ、恋愛の危うさを時折、
挟んでくれるあたりはノーマルな恋愛を踏まえており、
安心させてくれています。

私にとって終始一貫して、この漫画が特別なのは、
卜部さんが飾らない、背伸びをしない、格好をつけない、
見栄を張らない性格の女の子であり、とても従来のヒロイン
像とはかけ離れていますね。
前髪で顔全体が見えないヒロインって、それもラブコメの
主人公って、それでも可愛らしさが表現できるなんて、
すごくないですか?

肝心の椿と卜部に戻すと、彼らは世にいう思春期の
プラトニックな恋愛中の普通のカップルですが、
ちょっとアブノーマルな独自の特別な絆で、存在を
確かめあっています。
キスもしない二人にとって極端な絆ですが、その延長
線上に大人につながるエロを感じさせます。
そのような意味では、普通の恋愛模様かもしれません。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-02-12 17:46:38] [修正:2017-02-12 17:46:38] [このレビューのURL]

怪物くんを連想させる表題から、怪物世界の怪物たちと
それを統べる王女の物語をイメージしてしまいました。
しかし、いやいやなかなかどうーして、ペーソスな背景が
あって大人バージョンの怪物くんでしたね。

王族の後継者になるためには、王族兄弟同士で生き残りを
かけた戦いが必要だということ、勝ち残った王族は不死鳥
になるなど、孤独の王女の哀しみが上手く織り込まれて
います。
当事者の王女は、その悲しい運命には一言も触れないの
ですが、それをほのかに感じ取りながら寄り添う部下や
仲間?の同居人がまたうれしい。
本来、人狼と吸血族は敵同士ですが、王女の下でゆるい
関係性で力を合わせる。
血の戦士という弱々しい高校生男子以外は、仲間として
女子しか出てこないのも、女子の友情がベースにある
感じがします。

肝心のシナリオですが、独特の世界感で不思議体験と
冒険が毎号読み切りの基本形でした。
SFとして理解が困難なケースも多かったですが、
私には前述の王女の(姿は勿論のこと)心情の
可愛らしさで毎号納得できました。

良い作品と思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-02-06 20:31:05] [修正:2017-02-06 20:31:05] [このレビューのURL]

スポーツ漫画と呼んではいけないと思う不思議な漫画です。

というのも、主人公は恩ある義父のためにビジネスの世界
でも成功者になったり、愛憎を絡めた展開だからです。
これも9秒台で走れば感じる「光の世界」の魅力は
ビジネスの成功以上だと説明するための伏線だった
とも思えます。

スポーツを主題にした少年漫画は、一定の定型があって、
努力しバトルに勝つプロセスをハラハラドキドキで楽しむ
ものですが、この作品ではバトルはありません。
戦う自分もおらず、「光の世界」に取り憑かれた者たちが
描かれているだけです。

「100mを9秒台で走ることのできた人間は、宇宙を
翔べた人間の数よりはるかに少ない。10秒の壁をうち
破ればそれを成し得た人間にしか体験できない、
9秒台の宇宙というものがきっと存在するんだ。」

そして迎える最終話では、一握りの天才たちだけが
感じる世界が表現されます。バトルのないスポーツ
漫画という分野では先駆的作品ですね。
その後の曽田正人の作品にも同じモチーフを感じて
いますので、想像でしかありませんが、少なからず
影響を与えたのかもしれません。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-01-30 20:37:53] [修正:2017-01-30 20:37:53] [このレビューのURL]

7点 結界師

正義感にあふれる猪突猛進型主人公が、宿命に抗うことなく、家族を含めた周囲の人たちとともに森を守るという少年誌らしい展開です。

森の謎からさらに世界感を拡大できる可能性もあったはずですが、そこは最初に設定した結界師の使命から逸脱してしまうせいか、こじんまりとした世界感、すなわち主人公の生まれ育った町と関わり合いのある人を守るという、まあどう転んでも大差がない感じの緊張感のない背景が生まれてしまいました。
これが結局、最後までたたってしまい、本作品の魅力を半減させた理由でしょう。

兄との確執も前半から絡めたはずですが、途中から後回しになってきました。主人公より兄の方が能力も人間的魅力もずっと上回っているのも困りものでしたね。猪突猛進感情支配型の主人公は無骨で戦略の才に欠け、主人公としての魅力に乏しいものでした。これも本作品の致命傷だったかもしれません。

結界師の異能ぶりも単純で、世界感も分かりやすく設定されている割には、その世界の裏側で様々な権力闘争と森に対する謎が最後まで温存されているため、先の展開が楽しみになり、どんどん読めました。
ヒーローやヒロインには、特別強力な武器があるわけではないのですが、その武器の使い方と組み合わせ方で様々なバリエーションを見せた攻撃には感心しました。

以上は、30巻あたりまでの感想でしたが、最終巻までの大団円までは魅せてくれました。女性作家らしく、テーマは家族愛として、うまくまとめてくれました。
長短いろいろ申しましたが、総じて満足ができる作品かと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2016-11-27 17:12:20] [修正:2016-11-27 17:15:50] [このレビューのURL]

下町人情噺がベースにあって、「人間、生きる限りはこうでなくっちゃ。」
って感じになります。
主人公なつの全てにおいて前向きで、明るい単純明快な生き方は、生き方の
下手な今風の若者の大いに参考になるように思います。難しく考えない、
妬まない、周囲との関係性の中で生きる自分を見失わない、というような
シンプルな原則で生き方が貫かれています。

一方で、両親も義祖父母も他界し、今は天涯孤独のなつを正体は明かせない
まま見守る祖父母の気持ちもやるせなく、相当のウェイトで展開を盛り上げ
ています。

和菓子職人という伝統芸のような世界にあって、日本的で昭和的な人情噺は、
我々にとって今や時折必要なサプリメントかもしれません。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2016-11-12 05:03:40] [修正:2016-11-12 05:03:40] [このレビューのURL]

7点 BUTTER!!!

高校ダンス部での青春群像のお話です。
今風のセリフ回しが多いのも特徴です。

元気印の夏、ネクラで目標のない端場の男女二人を
中心に展開されるお話かと思いきや、周囲を固める
脇役に焦点が移っていき、むしろ味を出しているのは
たった4名のサブキャラ達でした。

コンプレックスで自縛状態の柘、他人とぶつかり合え
ない掛井がお気に入りです。
柘は単なる数合わせ的なメンバーと思っていたら、
突如前髪を上げたりしてサナギが蝶に変身してしまい
ました。それでも根本的なコンプレックスから抜け
きれておらす、むしろ愛おしくなるくらいの魅力ある
キャラになります。

創部者でありながら副部長と影の実力者を装う和美は、
熱情を隠しつつ笑顔を出しません。
部長の高岡は、そんな和美の孤独さに魅かれて
ダンス部を手伝います。

青春には淡い恋心がつきものですが、できるだけ
これを排除して、熱中したり打ち込めること、
楽しめる自分探し、仲間探し、といった女性作家
ならではの視点で物語を進めていきます。
これは男性作家では絶対描けない世界だなあと
思いつつ、一方で自分の青春と重ね合わせて
共感できました。

胸の奥のチリチリした青春への憧憬に火をつけて
くれる作品です。私は結構気に入りました。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2016-10-30 09:05:45] [修正:2016-10-30 09:05:45] [このレビューのURL]

麻雀漫画と分類されているようですが、麻雀の手役の進め方を
説明した場面は一度もありません。麻雀に名を借りた賭博
漫画というか、イカサマ手口で勝負する玄人(バイニン)
商売の世界を紹介しているにすぎません。

戦後の混乱期を背景に、喰うか喰われるか、生き延びるか
落ちるか、の命の賭け方も本人次第であって、誰にとっても
賭博人生だったようです。
様々なイカサマ手口を編み出した玄人が、哲也の前に次々に
現れては敗れていきます。その異様さや特異さは少年誌には
相性が良く、長期連載になった理由の一つでしょう。

警察にとって治外法権である寺の中で、絶対負けない秘策を
持つ僧侶、警察権力を背景に負けを強要する刑事、牌に
気付かない目印を付ける玄人、美人玄人等、個性的な好敵手が
次々に現れて、バトルが繰り返されていくわけです。

青年誌のような大人の臭いをちょっと嗅がせて、
少年誌では見せにくい世界を、程良い異様さで別世界の
ような演出させていることで成功しています。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2016-10-05 05:18:21] [修正:2016-10-05 05:18:21] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

熱を持った主人公の行動や言動は嫌いではないので、
面白く読ませてもらいました。
高校時代のいじめで受けた屈辱が、28歳コンビニ店長の
宇治田(主人公)の心奥底に、このままでは終われないと、
一言で言うと恋人も仕事も捨てて復讐に燃えるわけです。
このように書くとただの偏執狂なんですが、何の力もなく
夢も持てない、未来に展望がない人間、特に20代後半
から40代の男の焦りや失望ってのが土台にあって、
よく心情は分かります。
その共感があって初めて、一連のバカっぷりが理解
できるのだと思います。

宇治田が敵役に訴える言葉に「将来の夢や未来の目標
なんて純粋に描けたら苦労しない。(無力無能な自分に)
そんなもの簡単に見つからない。それでも自分が
おかしいと思うこと不公平と思うことにだけは、
立ち向かっていける。それならできる。」
があります。
多くの若者がたどり着く最後の境地なんでしょうね。
一握りの勝ち組を除いて。
ということで、無茶苦茶な行動には違和感もありますが、
突き動かされる熱情には結構共感することができました。

蛇足ですが、敵役の南をどう感じたかは、個人差が
あるようですね。嫌いと思う人も多いようですし、
人格破綻者と切り捨てる人も。
私は、世界ランカーのボクサーになっても、宇治田を
友人と呼び、彼なりの配慮をところどころで見せる南は、
意外にも嫌いにはなれませんでした。
4巻で終結させるには、惜しい佳作というところです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2016-08-28 16:32:41] [修正:2016-08-28 16:32:41] [このレビューのURL]

“最上の命医”の続編ですが、命医の西條命医師はもはや
神の領域の文字通り、スーパーな活躍だけでなく、
人間性としても最上のポリシーが信条でした。
これはこれで満足できましたが、やはり人間臭さというか
弱さや欠点がないところで少年誌向けという印象も
免れませんでした。

今回の明医最上義明は、西條とは真逆のキャラクター。
“全てにいい加減が良い加減”というポリシーなので、
こんなにうまくいくわけがないと違和感満載になります。
別の意味で少年誌向けのお話という感じになっている。
しかし、相変わらず医療知識については確かな取材に
基づいた内容であり、現代の医療への問題提議も耳を
貸さないわけにはいきません。

特に、ケニア編での指導者上杉謙神の主張には、
日本のエセ民主主義やエセ人道主義を論破する迫力を
感じました。例えば、目の前の患者を救うことに奔走する
主人公たちを尻目に、“金をかけるべきは個人ではなく、
多くの命を救うためのシステムの考案である。”などは、
少年に対する本当の教育かもしれないと思った次第です。

副題から察するに、元ニートが大活躍する医者の話、
という観点が、第3巻あたりから置き去りにされてきた
ことは残念でした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2016-08-02 21:06:51] [修正:2016-08-02 21:06:51] [このレビューのURL]

外科の中でも小児外科という極めてマイナーな医療
分野の小児外科医のスーパーな活躍が主題です。
「小児外科医は子供達の命を救うだけではなく、
その子が未来に出会う仲間や子孫たち…すなわち
無限の樹形図を救っている」という高邁なポリシーの
持ち主が主人公です。
意味するところは、目の前の患者の命を救うと同時に、
患者の関係者、医療関係者の未来に影響を残して
いこうという考えが基盤にあります。
まさに最上の医師と言えます。

同時に最新の外科知識と、特に最新の外科テクニック
が駆使されて、これまでの外科の常識を打ち破りながら、
スーパーな活躍を見せるところが痛快です。
一方で、医療界のヒエラルキーを背景に権力闘争が
8巻まで常に展開されており、医療界の裏側を見せつつ、
最上の真逆の医療界の現実を投影します。
実際のところ、大病院は有力大学による系列化が
存在することは、今や誰でも知っていることですね。
この権力的な構造の維持は、医療現場で患者の
利益に優先されているらしいことも知っています。

このような問題を深刻化しないで、権力側を主人公の
最上の命医の抵抗勢力として描かれている上に、
これと対抗し、やがて勝利します。
このあたりはやはり漫画と言わざるを得ないですが。

いずれにしても少年誌に掲載するには、高すぎる
医療の最新知識と医療といっても外科に特化した扱いが、
読者の一部には関心が持てなくすることもあるでしょう。
綿密な取材と研究で構成された原作と編集者
(K担当が何度も紹介されるので、中心的役割を担って
いるのでしょう)、橋口たかし氏の執念のような
思い入れが良く伝わってくる漫画でした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2016-07-08 21:27:17] [修正:2016-07-08 21:27:17] [このレビューのURL]

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