「朔太」さんのページ
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- 病弱だった少年時代から、読みたくて読みたくて仕方のない漫画が周囲に沢山ありました。他にすることもない寝床で読む漫画は、1ページ1ページが宝物のようで、丹念に時間をかけて食べるように吸収されていきました。漫画のある国に生まれて良かった、と思えるくらいの喜びでした。以来、数十年、私の周りには多数の未読の漫画本が常備されています。漫画がサブカルチャーと位置付けられて久しいですが、今や映画もドラマも漫画が原作でないものが珍しくなってきました。文化としての名作漫画を探しつつ、私個人の探訪歴(読書歴)として、このサイトを利用させてもらっています。
7点 サヤビト
兵器として生まれた人造人間サヤビト。
主人との契約によってしか生きられない運命の中で、
ロボットとして生きるには、感情も心も意思も
寿命すらあるサヤビト。
彼らと人間の間に絆があれば、時にドラマが
生まれるというお話です。
古くはアトムが50年前に描かれた時には、
意志あるロボットの悲哀が時折表現されていました。
本編は50年の進化を経て、感情の機微と襞がほぼ完成
形として再定義されたかのような印象を持ちます。
読み切り1話の形式ですので、どこから読んでも
ドラマとして堪能できました。
特に三巻“エピソード9道に迷って”では、
本来の主役不在ですが、作者の書きたい主題が
表現されたように思います。
本作品のエッセンスが凝縮した渾身の作品だったので、
この1篇では9点くらい差し上げたいと思いました。
月刊誌2年間の連載。偶然に遭遇した上々の良作です。
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[投稿:2016-07-02 18:17:58] [修正:2016-07-02 18:20:40] [このレビューのURL]
7点 ネオ・ファウスト
天才手塚の生涯をとらえて離さなかった、文字通りライフワークとしての
テーマが、「火の鳥」とは別に「ファウスト」であったことを
最近になって知った。
1950年ファウストを出した手塚は22歳、学生の身である。
ゲーテとの出会いにより強いインスパイアを受けたであろう学生手塚の
心に完全燃焼できない自分を見出したのではないか。
21年後、百物語という日本の戦国時代を背景にした和製ファウストを
再生させるに至るのが、その証左である。
それからさらに17年後の1988年、熟成された思いをネオ・ファウスト
という長編で集大成として決着をつけようとしたのではないか。
しかし、1989年に断筆するに至り、構想は夢の途中となった。
火の鳥にも共通するが、ネオ・ファウストについても、手塚は果たして
完成させるつもりがあっただろうか?
いつまで行っても人間とは、時間とは、宇宙とは発散し続けるものであり、
また輪廻転生によりくだらなくも永遠に繰り返し営みを継続していく
ものと言わんばかりである。
とはいえ、その中で小さく花咲く人間ドラマはなんと可愛らしくもあり、
ひ弱くも悲しい。
現代の漫画は相当エンターテイメントに優れ、起承転結と意外性に富み
素晴らしい発展を遂げたが、一方で淡々と流れていく手塚ドラマを
見ていると、そんな感慨を持ってしまう。
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[投稿:2016-06-20 05:43:05] [修正:2016-06-20 05:43:05] [このレビューのURL]
7点 みどりのマキバオー
初見の際の印象は最悪だ。
一見馬には見えないうんこたれ蔵、ミドリマキバオーも駄馬だが、騎士もダメ
人間かつ、どちらも見た目も美しくない。何しろ、鼻を垂らしていて不潔感
一杯である。
しかし、持ち前の負けん気と努力と根性で競馬界を席巻するまでに成長する
ストーリーは、やはり少年誌の王道漫画である。カスケードやアマゴワクチンといった
ライバル達というより、エリート馬に対抗して、限界までレースを競り合う場面では、
しっかり応援させてもらった。
なかなかの一読の価値がある。
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[投稿:2016-06-05 23:06:21] [修正:2016-06-05 23:06:21] [このレビューのURL]
7点 羊のうた
作者は、執筆を始めるにあたり「とにかくメチャクチャ暗くて救いが無くて破滅に向かってGO!な話を描く」と構想したらしい。まさにその通りのシナリオが最初からあり、6年半の連載で実現した。
「羊のうた」という表題も最終話近くまで不明だったが、千砂のセリフを通して「私たちは、羊の群れに潜む狼なんかじゃない。牙を持って生まれた羊なのよ。」と説明させている。
最終局面に至るまでは、破滅しかない苦悩を巡って行きつ戻りつが繰り返され、正直退屈ではあった。しかし、全般的に文芸作品以上の精神の掘り下げがあり、登場人物が少なく、その全て善意の人で構成されるため、俗世的な不愉快さを排除したピュアさを演出している。
純和風の家屋と和服で通す千砂の恰好も相乗効果を生んだ。
一言でいえば、文芸作品を題材にした舞台廻しを観る、というところか。
さらに、冬目景の他の作品も今後読んでみたくなる。
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[投稿:2016-06-01 05:04:54] [修正:2016-06-01 05:04:54] [このレビューのURL]
7点 どろろ
手塚治虫の充実期の作品の一つ。
生まれながらに魔界によって48の体の部品が奪われている百鬼丸が主人公ながら、
脇役の名前が作品タイトルになっています。
「おどろおどろしい話」から「どろろ」というネーミングがされたと長い間勝手に想像して
きました。奇妙で文字通りどろろな内容です。
戦国時代にあって、孤児の2人旅、飢餓や略奪、強盗、とことん悲惨でどうしようもない
時代背景を設定した上での、絶望的不具ですから、どれだけ暗いお話か、となります。
現代なら必ず教育関係者からクレームが来ることでしょう。
そんな中にあって、決して絶望を与えず、むしろ「何があっても生き抜く」ことをテーマに
していることで、微かな明るさ、希望を感じさせます。
悲惨な作品でも少年向け作品ですので、当時の隠し立てのないむき出しの過酷な現実を
知らせた上での子供の成長を願う大人たちの姿勢が感じられます。
深い印象を残す作品と思います
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[投稿:2016-05-15 22:02:13] [修正:2016-05-15 22:03:44] [このレビューのURL]
7点 いばらの王
コールドスリープボックスから目覚める第一話から、どんどん引き込まれます。
目覚めの前の自分の知っていた世界と全く異なる世界というどころか、
いきなり恐竜時代に戻ったかのような危険な世界です。生き残った人たちも
どんどん減っていきます。そんなサバイバルな状況と「なぜ世界は変化したか?
生き残ったメンバーは偶然か?」というような謎の混迷が初めから仕込まれて
います。しかし、その伏線も見事に最終巻でまとめられていて、全てが最初から
設定されていたシナリオだったということが分かります。
キャラの勧善懲悪ぶりがはっきりしていて、やや単純化され過ぎかな、とも思いますが、
逃げ場のない古城からの脱出劇をベースにしたSFと人間劇という感じで、
全6巻の短い中で濃密に堪能させて頂きました。
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[投稿:2016-04-05 06:03:51] [修正:2016-04-05 06:03:51] [このレビューのURL]
7点 あした天気になあれ
「チャー・シュー・メン!」の掛け声は、本編を読んだことがない人まで何となく知っている
くらいに流行した。
少年サンデーのプロゴルファー猿は、少年誌的なアクロバットな技が連発していたが、
その連載を終了するタイミングに合わせたかのように、本編の連載が始まる。
天才というよりも艱難辛苦の努力型主人公が、プロの心理戦も含めた大人テイストの
戦いで魅了する。10年に亘る連載だったが、基本はプロテスト編、東太平洋オープン編、
全英オープン編に大別される。連載中は進展の遅さが気になるも、完全版総集編11巻では
破綻なく読める。
ゴルフ漫画、特に少年誌における金字塔とも呼べる作品である。
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[投稿:2016-01-31 18:07:39] [修正:2016-01-31 18:09:03] [このレビューのURL]
7点 銭ゲバ
1970年連載開始ですから46年前の当時の時代背景を考慮して読むべき作品と思います。
戦後25年復興を懸命に進めた過程では、弱肉強食の資本主義自由主義の旗の下、
社会的な弱者が現代に比べるもなく底辺にうごめいており、切り捨てられた時代です。
泣けども叫べども救いのない時代を何とか凌いで、戦後25年で少し落ち着いてきた中で、
弱者が弱者でなくなった時に過去を振り返って、時代の驕りを表現したといえます。
戦後復興期には混乱に乗じて、裏社会に暗躍し一挙に成り上がった財閥もあるそうです。
彼らは、一般市民から”銭ゲバ”と呼ばれていたように思います。
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[投稿:2016-01-23 10:07:19] [修正:2016-01-23 10:07:19] [このレビューのURL]
7点 バガボンド
バガボンドとは、英語で放浪者、漂泊者の意味。
まさに武芸者の体を借りて、剣術や生を一生をかけて追及する放浪者を描いている。
道を求める哲学者のごとく武芸者、墨絵のごとく描画術(実際、筆で書くらしい)が美しい。
時代の極限性、戦いの恐怖はもちろん飢えの現実等、生死が紙一重の時代背景も一層引き立つ。
佐々木小次郎がろう者であったりと、キャラクターや物語には独自のアレンジが加えられており、
吉川英治の宮本武蔵で作られた既存の武蔵像を超えた美しさと思う。
37巻読破。
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[投稿:2015-12-23 16:27:18] [修正:2015-12-23 16:27:18] [このレビューのURL]
7点 センゴク
合戦の戦術戦略の巧妙さで、途中で読むことを中断できなくらい引き込まれる面白さがある。
織田信長はその冷徹な戦いぶりで、順調に領土を拡大したくらいの知識だったが、
武田信玄や本願寺、浅井・朝倉側の事情で運良く勝ち残った背景が理解できた。
一度は朝倉和睦のために土下座して謝罪したくらい。
それぞれの武将の知略の見事さは秀逸である。武田の三方が原の戦い、木下藤吉郎の金ケ崎の退き口など史実をメイキングしたかもしれないが、ドラマチックである。
朝倉の一乗谷、浅井の小谷城の難攻不落の構造もさることながら、
一夜にして攻め落とす知略も読みごたえが有る。
仙石秀久のキャラやお蝶、斉藤龍興ら傍流話は、添え物であって評価の対象外。
大人買い、一気読みにて15巻読破の価値あり、でした。
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[投稿:2015-12-12 11:19:51] [修正:2015-12-12 11:25:04] [このレビューのURL]
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