「朔太」さんのページ

総レビュー数: 819レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年01月09日

水島先生初期の頃の最初のヒット作品です。
水島作品は徹底して野球だけをテーマにされていますが、
たぶんこの作品以前は、いろいろ描かれておられた
はずですので、この作品の成功が契機になって、ドカベン、
あぶさんにつながっていったのだと想像しています。

藤村甲子園、豆タンなど、主人公、脇役の原型もここにあります。
しかし、よく見ると原作者は別におられたのですね。
意外でした。
以降の水島作品には、当たり外れが結構あったり、
やや歪んだシナリオ展開があったりしますが、
この作品はキチンとしていたように思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-03-23 20:08:21] [修正:2020-03-23 20:08:21] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

全8巻+番外編が破綻なく計画通りストーリーが
展開されたように思えるほどしっかりとした
サスペンスドラマ仕立ての作品でした。
後から思えば、2部構成であり、当初は連続殺人事件
だとも気づかないうちに先行的に主人公の特殊
能力の説明に時間が費やされます。
いつの間にか母親殺しの犯人として逮捕されると
いう衝撃的な1巻の結末から始まります。

しかし、時間遡行と本人の努力により何度も
その現実は塗り替えられるというドラマですね。
全く影すら見せない真犯人とその意図を図りかねる
うちに物語は進展するのですが、残念ながら早い
段階で真犯人は推測できてしまいます。
というのも、子供は多くとも大人の登場人物が
少なすぎますから、簡単に目星がつきます。
大半の興味がここで失われてしまう無念さがありました。
それも6巻で真犯人が暴露されましたが。

ここからが第二部ですね。
第一部に比べると、回想シーンが多くて心理描写の
絵が多く、少し冗長でしたね。
ページをめくるスピードも速くなり、アッと言う
間の最終巻でした。
ここはもっと詰めれたかもです。

ということで、最初の設定や伏線の面白さにどんどん
引き込まれましたので、とても面白く感じましたが、
いわゆる尻すぼみの無念さも残りました。
もうひとひねりできたかもしれません。

あと少しの工夫さえあれば名作になり得た感があります。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2020-02-18 18:55:21] [修正:2020-02-18 18:55:21] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

競馬に関心のない私も、競馬世界に興味をしっかり
そそられてしまいました。
何といっても、主人公上条圭が様々なレースを通じて、
日本ダービーを目指すその成長していく過程で、
強いライバル達の騎手との駆け引きと技術を駆使する
レースそのもののワクワク感が魅力です。

一方、一色登希彦氏の漫画は、やたらとセリフが多いことと、
独特の描画で劇画的であることが特徴です。
したがって、各巻で「プロ騎手とは?」「勝つとは?」
なんて哲学的な問答が多くなります。
人によっては、うざく感じることもあるでしょうが、
概ね自然な流れで語られています。

中でも、20巻では「チャンと生きるって何ですか?」
という上条の問いかけに、ベテラン脇役の財津が
「誰かを笑顔にできるということだな。」とサラッと答えます。
それに続く説明もあるのですが、これが長いこと。
でも、それなりに説得力があります。一色氏の独壇場でしょうか。

シッカリとした構成と展開で、面白く読めました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2019-11-18 23:47:03] [修正:2019-11-18 23:47:03] [このレビューのURL]

19巻を揃えて2日で一気読みしました。
深読みする場面はありませんので、ガンガン読めてしまいます。

高校野球漫画の王道は、地方予選すら勝ちぬけそうに
ない弱体野球部がライバル達との切磋琢磨により、
どんどん成長していき、ついには甲子園に出場する
という成功物語です。
そのセオリー通り、本作品も何を考えているのか
分からない監督を迎えて、どんどん成長していきます。
その過程は14巻までドカベンストーリーそのものです。
エースの入れ替わりが一つの人間ドラマになっています。

納得できないのは喜多条監督の不可解な指導ぷりであり、
いつまでたっても説明はありません。
それは最後まで変わりません。
ただの奇をてらった展開としか思えません。
才能豊かな選手しか起用しないと明言しながら、
言動が一致しません。

15巻からは新たな主人公である江崎の物語が始まります。
話の展開は予定調和的なご都合主義のお話が続きますが、
ドラマチックではあります。
高校野球漫画らしくない後半の展開ではあります。
が、様々なテイストが混じりあいながら、
結局のところ人間賛歌になっているところが、
本来の原秀則らしさといえば言えそうです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2019-10-12 15:13:20] [修正:2019-10-12 15:13:20] [このレビューのURL]

漫画家さんは孤独で傷つきやすいナイーブな存在なんですね。
おだてたり透かしたりしてその気にさせて木に登らせる
のが担当編集者の役割です。
読者の声を代弁して、ネームも何度も訂正させて育てていく。
新人さんを育てて大きなホームランを打つのが編集者の夢。
大学柔道出身の編集者小熊は、夢を追いかける良い
個性を持っていて好感が持てます。
「売れるのではない、売ったのだ。」というセリフは編集者の矜持です。
そんなお仕事を楽しく見せてくれる漫画です。

漫画レビューワーにとって、漫画制作の裏事情を知って
おくことは大切と思いますので、必読の作品です。


ナイスレビュー: 0

[投稿:2019-06-17 20:15:00] [修正:2019-06-17 20:15:00] [このレビューのURL]

やや救いようのない結末が多かった前シリーズに
比べて、柔らかな結着が多いように思いました。
ザワザワした感じが少なく、落ち着いて読めました。

お馴染みのセリフに加えて、「お生きなさい」の
決めゼリフがスッキリはまります。
今のところ、今回のシリーズで完結でしょうか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2019-05-29 01:59:25] [修正:2019-05-29 01:59:25] [このレビューのURL]

命が尽きた時、人は動物はどうなるのだろう。
絶対に答えがないために、人は死後を恐れ理想郷である
天国や極限の恐怖である地獄を妄想している。
日本人の根底には、実は強い天国と地獄絵図がイメージ
されており、日ごろの勧善懲悪の思想や行動の原理に繋がっている。
言葉にはしないが、日本人には共通の死生感が存在するのである。
スカイハイは、共通の死生感を巧みに利用し、上手い
設定を生み出した。

「怨みの門」は天国と地獄の分岐点にある。
自殺や殺人を犯した人間は、文句なく地獄。
殺されたり不慮の事故で亡くなった人間だけがここに来る。
したがって、基本形は「怨み」を持つ魂の浄化のための門。

あとがきで高橋ツトム自身が記しているが、
世の中のあまりにも浮かばれない被害者の怨みに
焦点を当てた展開を構想したらしい。
しかし、案外怨みを超えた救いのお話が多くなっている。

やっぱり日本人の死生感にマッチするのは、怨みを浄化
してこの世からあの世は気持ち良く旅立ちたい。
つまり救われたい。
シリーズ3回目の本編では、それがテーマになってきた印象である。

相変わらず絵は上手い。
特にやくざや怨み顔を描かせれば、この作者の右に
出る者はいない感じだ。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2018-12-18 17:28:20] [修正:2018-12-18 17:28:20] [このレビューのURL]

あだち漫画と同じく、お約束の匂いがすっかりしていた
時代の星里さんの作品です。
美人4姉妹と同じ屋根の下で同居ですから、事件が
起きないはずがありません。
毎日、家に帰ってくるのが楽しみですよね。
良き時代のハートフルコメディ、って感じです。


ナイスレビュー: 0

[投稿:2018-12-12 18:01:35] [修正:2018-12-12 18:01:35] [このレビューのURL]

原作が昭和12年の本にもかかわらず、発売半年で200万部
突破のベストセラーとなったそうです。
ジャーナリストの池上彰、コピーライターの糸井重里も
絶賛、ジブリの宮崎駿は映画化するといいます。
明治生まれの児童文学者が、子ども向けに書いた原作が
平成最後の時代に大ヒットする現象が、さらに話題を
呼んで関心が拡がっているように思います。

基本は問題提議の書です。
小学生のコペル君の体験は我々にも普遍的な体験です。
世の中には、悪が対岸にあって突然に正義を貫く
苦しみが天から降ってきます。
自身は絶対に悪には手を貸さないと固く誓っていてもです。
それは仕方ないことと棚上げしながら、多くの人は
大人になり、力を得ることが先決と言って死んでいく
ことを繰り返しています。
そんな人生の末路を多くの人が、何か違うと感じているのですね。
これは人間の悩みの一つの例示なのでしょうが、
案外普遍的な気もします。

考えても考えても答えはありません。
自分を人間分子として小さな存在と位置付けた上で、
生産関係である世界、宇宙の中で、それでも自分で
自分を決定するしかない。
そんな風に結論づけています。

明治から大正、昭和、平成と世は変わっても、
人はあまり変わり映えしないということでしょうか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2018-12-04 23:17:32] [修正:2018-12-04 23:27:24] [このレビューのURL]

書道漫画という売りがアピールされていますが、
地味な高校生の文科系部活動をテーマにする難しさを
上手く消化しています。

主人公のキャラ立ちも恋愛模様も競技的な対決、勝負の
行方も、それぞれ中途半端な地味さなので、本来なら
1,2巻で途中打ち切りが妥当なテーマ選定でしょう。
しかしながら、どんどん先を読みたくなる魅力は、ごく
普通の高校生の日常会話、生活がハッピーにみえることですね。
特段のできごとが起こらない何げない高校生活は、
読者の共通体験かもしれません。

欠かせないのは、脇役の部員たちですが、特に3年生先輩女子でした。
ヒールのような一面も見せますが、嫌いになれませんでした。

書道に対する知識、薀蓄は事前調査、取材が半端なく
充実していますので、それなりに楽しめました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2018-10-29 18:35:26] [修正:2018-10-29 18:35:26] [このレビューのURL]

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