「朔太」さんのページ

総レビュー数: 740レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年01月09日

10点 子連れ狼

全403話28巻の長編である。長編ではあるが、無駄に長くはない。
武士道を語り、時代の理不尽さを語り、親子を語るには
6年の時間と403話の労力が必要だったのである。

本作品をはじめ、小池一夫と小島剛夕による漫画作品は、
エンターテイメントとしていかに優れているか、万遍の
言葉を尽くしても足りない。
本作は、その中でも頂点に立つ最高傑作である。

小池一夫が愛した「もののふの道」は、間違いなく美しく正しい。
現代の多くの人々に支持されながらも、その生き方は
尋常ならざる確信がなければ貫けない。
しかし、それを貫き通す美しい境地は、かくあるべしと、
小池が分かりやすく説明してくれているかのようだ。
紆余曲折の末、いかに最終話を迎えるのかと思うと、
途中で投げ出せなくなる面白さも備えている。
はたして、最終話は最高のエンディングである。
いろんな思いが綜する最終話だと感じ入った。

海外でもリメイクされた作品が紹介されているようだが、
肝心の日本では小池の残した作品群が古めかしく過去のものと
いう扱いがされているようで残念である。

是非、心ある日本男子には一読をお願いしたいと思うばかりである。

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[投稿:2023-08-13 09:00:29] [修正:2023-08-13 09:00:29] [このレビューのURL]

テーマが、ワイン醸造、父の夢を継承、悪役の叔父が事業を
妨害、腕は立つが偏屈な青年の手腕にかかるワイン・・・。

あまりにも定番過ぎて、先読みができてしまう。
「夏子の酒」以来の同じ系譜と言えば聞こえが良いが、
二番煎じどころか五番くらい。
直球だけの展開に変化球を交えてほしいところでしたが、
使い古されたワインをテーマにした時点で無理かな。

企画段階での失敗を感じてしまう作品でした。

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[投稿:2023-08-06 05:30:11] [修正:2023-08-06 05:30:11] [このレビューのURL]

ラズウェル細木氏の漫画はどの作品を読んでも同じに見える。
毎回、テーマにしていることは、他愛もない季節の風物詩
だったり、いくつかの薀蓄だったり、ニュースを扱ったり、
基本的に暑い、寒い、いや普通なんてことを繰り返す。
特にストーリーはない。

いやネガってるわけじゃなくて、安定的におもしろく、
そしてなにより大事だが食べ物が非常に美味そうに見える。
氏は食べることも飲むことも心から好きなんだろうな。
同じ食い意地のはった人間として深い共感を覚える。

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[投稿:2023-07-31 09:31:15] [修正:2023-07-31 09:31:15] [このレビューのURL]

無法者の無法の街なんだから、無法都市なんじゃないの、
というクレームを逆手にとったようなタイトルのネーミングでしたね。
B級映画のようなB級漫画という言葉がぴったりの作品でした。

全てが予定調和の展開ですが、盤流市の頂点に立つ
盤流源一郎の個性が立っていて、彼の魅力で濃厚な味付けができました。
でも、読み返す気には絶対ならない、と自信をもって言えるB級漫画でした。

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[投稿:2023-07-25 05:43:45] [修正:2023-07-25 05:43:45] [このレビューのURL]

寺沢大介氏は、料理マンガを少年誌で普及させた第一の
功労者と称せられるべきであろう。
本作品でもそのテイストは維持され続けている。

短期連載で打ち切られたようだが、ラーメンに始まり、
カレー、餃子、鯛料理、チャーハンと定番料理対決で
やや飽きられたのかもしれない。
いつか読んだような、いつものお話が展開されるが、
寺沢氏の料理マンガは絵が見やすいせいか、
いつものように楽しめるのが良い。
安定した品質を持っている。

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[投稿:2023-07-20 08:30:44] [修正:2023-07-20 08:30:44] [このレビューのURL]

小林俊彦氏の「ぱすてる」は、1巻辺りで挫折してしまう程、
内容の薄いものでしたが、
本作品は主人公の女子高生管理人の性格が可愛く、
しかも毎回裸体をさらして奮闘するのが見逃せません。
下宿人の女性たちのキャラも立っていて、主人公のMキャラに
対して、いずれもややSぽいところが相性抜群です。

彼女たちの引き起こす騒動は罪がなく、愛らしさを感じさせてくれます。
意外に結構、楽しく読めました。

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[投稿:2023-07-15 05:13:16] [修正:2023-07-15 05:13:16] [このレビューのURL]

8点 蜜の島

一編の高級ミステリー小説を読んだような味わいがあります。
この世の存在しない孤島、謎の少女、不可思議な島民たちの
行動など、こってりと濃い味付けがされています。

4巻と長編とも呼べない分量でまとめて頂いており、ついつい
読む手が止まらなくなり、一気に数時間で読んでしまいました。
真相が解明さえた後も、最初から読み直してみるという良作です。
思いがけない掘り出し物かもです。

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[投稿:2023-07-10 18:26:44] [修正:2023-07-10 18:26:44] [このレビューのURL]

3話未完のまま連載中止になった「ファウストの天使」が
元ネタになった作品である。
三山氏の遺作[レクイエム]に掲載された「ファウストの天使」
を読む機会を得て、完成作を読んでみたいと手に取った。
正直に言うと、原作で感じた期待感を越えるものにはなっておらず、
少し残念だった。
元のまま、神的あるいは悪魔的な超常現象としての
解釈を残したまま、一人の男の人生の変化を楽しんでも
良かったのではないかな。
結局、一人の天才研究者とその娘が作り出す電脳世界と
いうものに落とし込む必要はなかったように思える。

三山氏の描く女性美は相変わらず素晴らしく、悪魔的な
世界への誘いを描くに十分な画力を感じた。

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[投稿:2023-07-06 21:55:21] [修正:2023-07-06 21:55:21] [このレビューのURL]

表題から連想するストーリーは、本宮ひろ志ばりの
極道が組織でのし上っていく展開でした。
しかし、小競り合いから中々脱出できず、新宿界隈の
小さな話になってしまいました。
極道で出世するというのは、やはり大変なようです。

相変わらず、女性は美しく絵も綺麗な土山しげるさんの
いつもの独壇場でしたね。

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[投稿:2023-06-18 18:03:51] [修正:2023-06-18 18:03:51] [このレビューのURL]

10点 キーチVS

前作に続く新井氏の衝撃の作品。
その昔、三島由紀夫という自害小説家がいたが、
対談させてみたいというのが、最初の感想だ。
圧倒的な熱量、強烈なパワーが紙面から読者の脳に伝播する。
これは、カリスマ物語でも、はっちゃけ熱闘青春物語でもない。
そこの基本のところを誤解している人がいるのは至極残念である。

前作、「キーチ」では、確かに人間キーチの成長と真っ当に
生きることの意味を問い続け、何故真っ当に生きる人間の
美しさを見せてくれた。
しかし、本作品ではキーチの体を借りて、日本という
得体の知れない国の息苦しさの正体を表現してくれた。
それは誰もが知ってて知らぬ顔をする薄汚い日本の側面だ。

漫画というエンターテイメントツールを利用して、社会に
対する強烈な新井氏個人の問題提議を世に発信していると信じたい。
なぜなら、エンターテイメントであるならば、不快感に
まみれた失敗作だからである。
苦々しい気持ちにさせる問題作品だからである。

新井氏の主張は、ただ一点。
「社会の問題に対して傍観者であることは罪である」だ。
作中、子供が描いた「世の中のしくみ」は極めてシンプルだ。
確かに大人は、全て了解していて、そのくせ訳知りに
その構造の中を泳いでいくことが、大人と嘘ぶく。
また恩恵にあずかれない階層の人間は、世の中で仕組まれる
ことにはことごとく何でも批判し、拒否する。
日本は、まさに前者と後者の階層で闘争をしている印象だ。
この点を指摘した知識人は、未だ見たことも聞いたこともない。

前者は言わずとも既存権力者側+既得権者+取り巻き(官僚、
企業、マスコミ・・)、後者は負け組。
この両者で階級闘争をしている。
困ったことに、後者の応援をしているふりをするマスコミ
(支持を受けるとスポンサーから資金が獲得できる)や
政治家(票が獲得できる)などの存在が、階級闘争の本質を
見失わせる。
いや、気づいたところで、本物の応援者はいないことに気づいて、
傍観者に成り下がる。

キーチは、日本には現れない後者の本物の応援者、カリスマ
として登場させた。
しかし、エセ民主主義、既得権者の中での何をどう抗って
いくのか、誰も分からない。
長期ビジョンにより、既得権者の下、力を蓄えることを志向
した甲斐の方法論が至極マトモに見えるが、新井氏とキーチは
それを否定し妨げる。
理詰めではなく(理詰めだと既得権者の土俵で戦うので、
よほどの戦略が必要だからね)、はっちゃけた熱情と仲間を
作って打破していくスタイルを選んだ。
しかし、成り行きとはいえ、現状打破が一種のテロ行為であるとは。

この方法を選択したキーチ、新井氏に残念な気持ちが消えな
かったのだが、作中、ある人物が語る言葉に気づかされた。
「敵にとんでもないどうしようもない力があって、デモしようが、抗議しようが何にも変わらねば、できることはテロしかないのじゃないか。」

すごいね。新井英樹氏は単なる激情型作家ではないんだ。
はてさて、漫画の虚構の世界と笑うなかれ。
世界を変えるには、何が正解なのかは分からないもの。
ただ、必要条件はこの漫画で学べる気がした。

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[投稿:2023-05-31 09:04:22] [修正:2023-05-31 09:04:22] [このレビューのURL]

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