「朔太」さんのページ

総レビュー数: 820レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年01月09日

ドラッカーの啓蒙図書として考えるならば、最高の効果だと思います。
普通ならドラッカーに関心を示すのは、何とか黒字にしたい
儲けたい商売人だけでしょう。
漫画にされると、主人公が自分たちより絶対にマネージメントに
無縁な女子高校生なんだから、読んでみようかなあと
手に取りたくなるはずです。

この本は当時、それなりに話題になり、相当売れたと記憶しています。
ただし、内容的には結論めいたものはあまりなく、話題先行の先細りでしたね。


ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-11-19 10:33:31] [修正:2017-11-19 10:33:31] [このレビューのURL]

探偵が活躍する推理ものかと思いきや、半分コメディ、
半分料理・食べ物のウンチク、雑学知識漫画でした。

連載当初は、立派に殺人事件も起こっていたのですが、
いつのまにやら些細な小事件のお話に変わってきました。
「ミスター味っ子」「将太の寿司」の作者ですから、
元来料理・食べ物に深い知識があるためでしょうか、
面白いトリビアが事件の真相になっていることが多いです。

作家が本業の主人公高野聖也が毎回全開させる食欲は、
まさにマンガレベルで半端ありません。
回を追うごとに極端になり、14巻では漁船で
水揚げする魚を食い尽くす勢いでしたから、有り得ません。
主人公がボケなら、可愛い秘書出水京子はツッコミ役でした。

従来になかったテイストの探偵ものの面白さでした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-11-17 07:30:02] [修正:2017-11-17 07:30:02] [このレビューのURL]

漫画が文化の一つとは誰も認めなかった時代に、白土三平の
孤独な試行錯誤がありました。
50年以上の月日が経って、サブカルチャーとしての漫画が
確立された今、同じ視線で評価を与えることは難しいです。

彼らの時代背景を考えれば、娯楽としての作品作りを
目指していたはずであり、決して高尚な歴史小説まがいの
作品を志向していたはずもないでしょう。
商業的な成功を目指していたはずであり、雑誌の廃刊を
最も恐れながらの活動であったはずです。
にもかかわらず、社会の底辺にある問題提議や深淵な
人間の営みの不可思議さ、いわば曼荼羅模様の世界感を
表現し、品格ある文学作品に仕上げています。
壮大な大陸の開拓者でありながら、先駆的な求道者を
連想させる作者に頭が下がる思いです。

数百年後の今に残る商業的絵画が人類の資産と呼ばれる
ように、カムイ伝もまた後世で同様な評価を得るように
なるように思います。


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[投稿:2017-11-07 18:01:01] [修正:2017-11-07 18:01:01] [このレビューのURL]

歴史文学のような、あるいは大河ドラマのようなテイストがあります。
漫画版大河ドラマがぴったりくる形容ですね。

歴史の起伏をさも大事に描くのではなく、龍という一人の
人間の目を通して、あくまでもその時代を生きた人間の
今を淡々と書き記していくスタイルです。
もちろん、命を狙われる、追われるのアクションやスリルが
ドラマの中に散りばめられているのですが、それは
大局的には些細なことのように思えるから不思議です。

龍の視線の先には、水平線の向こうがあります。
その志の高さに人間としての器や爽やかさを感じます。
これが本作品の魅力です。
決して歴史が先にあって、人間がその流れの中に
生きているのではなく、当然のことですがその真逆なんだと
いうことを強く感じさせられます。


ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-11-03 21:02:09] [修正:2017-11-03 21:05:33] [このレビューのURL]

ストーリーも何もないのですが、何とも雰囲気があって
純文学に近いテイストを持った作品でした。
和服を着こなすヒロインなので、独特の色っぽさが生まれます。

漫画が文学に近づこうと頑張って試行したという感じでしょうか。


ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-10-22 12:21:29] [修正:2017-10-22 12:21:29] [このレビューのURL]

作者の説明によると、TIME KILLERとは「暇つぶし」
「娯楽」の意味だそうです。
何かの制約なしに自分の書きたいものを描き続けて、
その蓄積を短編集として世に表したという感じです。
それが暇つぶし程度になればという意思表示でしょうか。

ところどころに目を引く作品があって、気分転換の一冊と言えます。
中でも「主と某」「乙女の祈り」「深山鶯邸事件」は良かったです。


ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-10-19 18:37:02] [修正:2017-10-19 18:37:02] [このレビューのURL]

溶接施工を生業にした鉄工所の日々をマニアックにテーマにした漫画です。

溶接は過酷な作業環境と忍耐力が必要です。
主人公の北さんは、溶接の奥深さを誇りをもって道を求める毎日です。
テーマは明確ですが、鉄工所で起こるほのぼのとした毎日が
何とも言えない味を出します。

話は変わりますが、こんなに鉄工所では、真面目に品質と効率を追求して、
夜中まで汗と痛みに耐えて働いているのに、生活は楽にならず
経営的に厳しい所が多いのが現状です。

その原因の一つに、社団法人溶接協会が実施する溶接施工資格試験があります。資格に3年前後の有効期限があるのです。
しかも、溶接法の種類、溶接材料の種類、姿勢(下向き、上向き、立向き・・)等
無数に条件が細分化されており、それぞれ数万円の受験料が必要ですし、
資格維持のための練習コストはバカになりません。
例えば、お医者さんの医師国家資格は一生に一度合格すれば生涯資格は
有効ですし、眼科の専門家は循環器はさっぱり知らなくても医師として
開業だってできます。
この両者の違いは何でしょうか?
溶接協会は既得権を持って、この制度の簡略化は何十年も絶対に進めません。
この結果、日本国民はあらゆる鉄構構造物は欧米の同種のものの
コストの倍を支払うことになっています。
その高コスト体質は政府は知っていて、海外の企業の参入障壁を
高くして公共事業は発注できないようにしています。
全ては、溶接協会が元凶になっていることを知っているのか知らずか?

同様に検査業界にも非破壊検査協会というのがあって、ここは溶接以上に
悪者の巣窟になっていて、資格試験が自分たちの力の源泉であることを
公言して憚りません。

この作品では、その辺りの日本の鉄工業界の腐った構造には触れて
いませんが、一工員さんの立場では3Kでこんなに働いても儲からない
カラクリには考えは及ばないのでしょう。
何とも悲しいです。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2017-10-17 19:52:02] [修正:2017-10-17 19:52:02] [このレビューのURL]

10点 巨人の星

何年経っても全編のあらすじが頭に蘇ってくるほど、しっかりと読み込んだ記憶があります。
現在以上にプロ野球の王者巨人軍だった時代がありました。
川上、長嶋、王、堀内が成し遂げたV9時代が背景にあります。
しかし名門巨人軍の影の部分を設定し、復讐をモチーフにする少年誌からぬ不純ぶり。
一方で純粋に野球を追求し続け、才能に恵まれない肉体をいじめに苛め抜く主人公とライバル達。
高校野球編までは、貧乏と常軌を逸した鍛錬ぶりに引き込まれていきますね。

高校野球編が一旦終結し、苦労が実る瞬間があります。
宿敵川上監督が、謝罪とともに背番号16を禅譲してまで巨人軍に勧誘に来る場面では、ここで話を終えても良いのではと思えるぐらい幸福感満載です。

しかし、第二部と言えるプロ野球編において、伝説の大リーグボール1号、2号、3号が炸裂します。
この辺りになると、原作者梶原一騎の天才ぶりも炸裂しています。
ライバルが命を懸けて対抗する、父が親友が大リーガーが敵になる。

何といってもすごいと思うのが、常に登場人物たちに、自身の行動の根拠となるマインドを論理的に整然と語らせるのですよね。
例えば、親友伴忠太や姉明子には星飛雄馬から離れていく理由を、花形にはなぜ命を懸けてまで特訓するのかという気持ちを、左門豊作には花形が羨ましくて仕方ないと吐露させ、オズマにまで飛雄馬は野球ロボットだと語らせます。
登場人物に多くを語らせることで、細やかな人物描写を成功させます。
そして、いずれも真剣で硬派の人間達が頑張れるだけ頑張るお話だから、魅力的なんですね。

私はと言えば、それほど感動して読んだことはないのですが、野球好きもあっていつの間にか体に沁み込んでしまった人生の一冊と言える存在になってしまいました。
やはり不朽の名作と言って良いと思います。


ナイスレビュー: 2

[投稿:2017-10-11 03:32:36] [修正:2017-10-11 03:34:24] [このレビューのURL]

霊能力を持っていることで人の背景や裏事情に通じてしまう。
そのことが結構悲しく辛いことを知ってしまったり、
引くに引けない諸般の世事を引き受けることになって
しまう人々のお話です。

ホラーっぽくならず、雰囲気を醸し出すことに成功していると思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-10-05 02:53:05] [修正:2017-10-05 02:53:05] [このレビューのURL]

不細工上等。童貞OK。非モテ承知。
絶対そうは思っていないどころか、コンプレックス満載ながら、
空威張りで精一杯の虚勢を大声で張り続ける青年、田西君。
普通に自分の隣近所にいれば、ちょっと避けたいタイプでしょう。

考える思考も短絡的、直情的だし、結果を考えない支離滅裂な
行動は、相当周囲にとって迷惑な存在だから孤立してしまいます。
何ができるわけでもない負け組が協調性を無視して頑張るって、
何をどう頑張れば良いのでしょうか?
「非力な人間は負け続けなければならないのか?」と
シューマイ先輩はつぶやきます。
諦めちゃならないと田西は無茶をやり通します。

1巻から登場の植村ちはるは、最初非力なヒーローの救いと
なるヒロインかと期待しましたが、全く違っていましたね。
それどころか悪魔のような所業を本人は意図しないでしてしまうのです。
それも数年後に再び偶然出会っただけにも関わらず、善意の
人からその再会の瞬間から悪意が芽生えるのです。
その豹変ぶりに私は驚いたのですが、普通の女性から見て、
どこにでもいそうな普通の女性だそうです。

非力な人間が社会の底辺でしか生きられないとしたら、
ならばその底辺でどのように生きるべきなのでしょうか?
社会に唾して生きるより、弱者が弱者であることを
認めつつ、やはり走り続けること、
そこにしか解はないということでしょうか。

最終回、最終話には異論はあるでしょうが、
私にはベストな結末で終えてくれたと満足しました。
読み進めるうちに「宮本から君へ」との類似性を
感じましたが、同じ熱を持った主人公だからですね。
だからと言って二番煎じとは思いませんでしたよ。

久し振りに最終巻まで一気に読ませる迫力を持った作品に出会えました。
満足しました。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2017-10-02 20:20:54] [修正:2017-10-02 20:23:50] [このレビューのURL]

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